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第六十九話 濁流を越えて、炊き出しの湯気
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魔物救助隊の作戦は迅速に開始された。
オークの兄弟ボルとグルはその怪力を活かし嵐で倒れた大木を次々と丸太へと加工していく。
リザードマンは川の流れと地形を読み最も安全に橋を架けられるポイントを探し出した。
ギルとゴブリンたちは身軽さを活かしロープを対岸へと渡す役目を担う。
騎士ギデオンはその豊富な知識で全体の指揮を執った。
人間では何日もかかるであろう作業が、彼らの超人的な能力の前では驚くべきスピードで進んでいく。
数時間後濁流の上には頼りないながらも人がなんとか渡れるだけの一本の丸太橋が架けられた。
「よし! これで道はできた! 次は飯だ!」
湊は厨房に戻ると炊き出しの準備に取り掛かった。
被災した村人たちに必要なのは何よりも温かくて栄養のある食事だ。
湊が選んだのは「具だくさんの豚汁風スープ」だった。
大きな寸胴鍋にたっぷりの水を入れ岩トツゲの骨から取った出汁を加える。
具材は店の貯蔵庫にあるありったけの野菜だ。イモ、根菜、キノコ。それらを食べやすい大きさに切り惜しげもなく鍋に投入していく。
そして主役は岩トツゲのバラ肉。脂身の甘さとコクがスープに深い味わいを与えてくれる。
味噌に似た発酵調味料で味を調え仕上げに刻んだ香味野菜を散らせば完成だ。
大鍋からは湯気と共に人の心をほっとさせる優しい香りが立ち上っていた。
湊と仲間たちはその大鍋を担ぎ危険な丸太橋を慎重に渡り、ホープン村へと向かった。
村は嵐の爪痕が生々しく人々は皆疲れ果て絶望の表情を浮かべていた。
そこに現れた魔物たちの姿を見て村人たちは一瞬身を固くする。
しかし彼らが担いでいる大きな鍋とそこから漂ってくる温かい匂いに気づくと、その警戒心は戸惑いへと変わっていった。
「皆さん! 陽だまり亭です! 温かいスープを持ってきました! どうかこれを食べて元気を出してください!」
湊の声が静かな村に響き渡る。
トーマスが村人を代表しておそるおそる近づいてきた。
彼は湊の差し出す一杯のスープを受け取ると黙ってそれを一口啜った。
温かい。
冷え切った体にその温かさがじんわりと染み渡る。
野菜の甘み。肉の旨味。そして味噌の優しい塩気。
それはただのスープではなかった。
作り手の温かい思いやりが溶け込んだ命を繋ぐ味だった。
「……うめえ……」
トーマスの目から涙がこぼれた。
その一言を合図に村人たちが次々と鍋の周りに集まってきた。
誰もが無言でスープを啜りそして静かに涙を流していた。
その日村に立ち上った炊き出しの湯気は、人間と魔物の間にある最後の壁さえも溶かしていった。
絶望の淵にいた村人たちにとってそれはまさしく地獄に仏、いや「地獄に魔物」の救いの手だったのだ。
オークの兄弟ボルとグルはその怪力を活かし嵐で倒れた大木を次々と丸太へと加工していく。
リザードマンは川の流れと地形を読み最も安全に橋を架けられるポイントを探し出した。
ギルとゴブリンたちは身軽さを活かしロープを対岸へと渡す役目を担う。
騎士ギデオンはその豊富な知識で全体の指揮を執った。
人間では何日もかかるであろう作業が、彼らの超人的な能力の前では驚くべきスピードで進んでいく。
数時間後濁流の上には頼りないながらも人がなんとか渡れるだけの一本の丸太橋が架けられた。
「よし! これで道はできた! 次は飯だ!」
湊は厨房に戻ると炊き出しの準備に取り掛かった。
被災した村人たちに必要なのは何よりも温かくて栄養のある食事だ。
湊が選んだのは「具だくさんの豚汁風スープ」だった。
大きな寸胴鍋にたっぷりの水を入れ岩トツゲの骨から取った出汁を加える。
具材は店の貯蔵庫にあるありったけの野菜だ。イモ、根菜、キノコ。それらを食べやすい大きさに切り惜しげもなく鍋に投入していく。
そして主役は岩トツゲのバラ肉。脂身の甘さとコクがスープに深い味わいを与えてくれる。
味噌に似た発酵調味料で味を調え仕上げに刻んだ香味野菜を散らせば完成だ。
大鍋からは湯気と共に人の心をほっとさせる優しい香りが立ち上っていた。
湊と仲間たちはその大鍋を担ぎ危険な丸太橋を慎重に渡り、ホープン村へと向かった。
村は嵐の爪痕が生々しく人々は皆疲れ果て絶望の表情を浮かべていた。
そこに現れた魔物たちの姿を見て村人たちは一瞬身を固くする。
しかし彼らが担いでいる大きな鍋とそこから漂ってくる温かい匂いに気づくと、その警戒心は戸惑いへと変わっていった。
「皆さん! 陽だまり亭です! 温かいスープを持ってきました! どうかこれを食べて元気を出してください!」
湊の声が静かな村に響き渡る。
トーマスが村人を代表しておそるおそる近づいてきた。
彼は湊の差し出す一杯のスープを受け取ると黙ってそれを一口啜った。
温かい。
冷え切った体にその温かさがじんわりと染み渡る。
野菜の甘み。肉の旨味。そして味噌の優しい塩気。
それはただのスープではなかった。
作り手の温かい思いやりが溶け込んだ命を繋ぐ味だった。
「……うめえ……」
トーマスの目から涙がこぼれた。
その一言を合図に村人たちが次々と鍋の周りに集まってきた。
誰もが無言でスープを啜りそして静かに涙を流していた。
その日村に立ち上った炊き出しの湯気は、人間と魔物の間にある最後の壁さえも溶かしていった。
絶望の淵にいた村人たちにとってそれはまさしく地獄に仏、いや「地獄に魔物」の救いの手だったのだ。
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