貴族の帝国

お嬢様厨

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薔薇庭園にて

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その後、結局メイジを誘拐していた組織はなんだったの?
何故貴女はそれほどにこの世界の過去の事を詳しく知っているの?などシュシュに質問した。

メイジを誘拐していた組織は、奴隷の事をよく思っていない一部の貴族と、その貴族が金を出し救出した奴隷が結成した組織だった。
シュシュ様がやたら過去の事に詳しい理由は、双子に媚びを売り、仲良くなり聞き出したからだそうだ。

こうして全ての謎は解け、シュシュ様は最後に、物騒な事に巻き込んですまなかったと謝罪してきた。また、兵器としての力を最大限使って貴方達を神から守るよう努力するとも伝えてきた。
謝罪するくらいなら最初から私を物騒な事に巻き込むなよ……という感じだが、許して差し上げた。
意味も無く私を物騒な事に巻き込んだのなら許せないが、意味があったんだしまあギリギリ許せたし……。

そしてラフィネの瞬間移動魔法で私達は帰宅した。
玄関で靴を履き替え私達は就寝すべく自室へ向かった。ラフィネは別れ側に、

「おやすみなさい……」

死んだような声でそう挨拶をした。まあ辛い話しを沢山聞かされたんだし無理もないか……。私はとりあえず慰める事にした。

「元気を出して下さいまし」

「申し訳ありませんが無理ですね……。なんというかこの先の人生に希望が持てないんですよね……。だってこの世界の神様は私達を絶望させようとしているそうですし、
この世界の時間はいつ止まってもおかしくないんでしたよね……。
暗澹としていますよね……。私達の人生」

まあ確かにその通りだ……。彼の不安がよく分かる。私は、

「そうですわね……」

と共感する事しか出来なかった。疲れているのかもしれない。

そして

「おやすみなさい」

と挨拶をして彼と別れた。自室に向かい就寝した。


その夜は最悪の悪夢を見た。私が十字架に磔にされ、全身に釘を打たれるのだ……。という恐らくこれは私の精神状態を表しているのだと思う。
昨日私の心は何度も何度も痛め付けられていたし……。死ぬ事はなく、まるで拷問の様に。

寝れた気がしないし目覚めも最悪だった。憂鬱だが、無理に化粧台に向かい髪を整え始める。
髪を整えながら嫌な事ばかり考えてしまう。
いつまでこんな不幸な日々が続くのかしら……?
そんな憂いを感じながら髪を整えているとノックの音が聞こえた。

「失礼します」

ノックをしたのはラフィネだった。

「お話したい事があります。お時間少しよろしいでしょうか?」

「よろしくてよ」

タイミングが悪い気もするが、断る理由もないし許可した。話したい事とはなんだろうか?

「マリアンヌ様、私と共に死にませんか?」

……!!
ぞっとした。そんな事を言い出すとは思っていなかった。それと同時に胸が痛め付けられた……。彼は死にたいと思うほどに病んでいたなんて……。私まで辛い。

「そんな事言わないで下さいまし……」

悪い冗談であってほしいが彼はいたって真剣だった。

「お断りします。だって昨日も言いましたが、私達の未来は暗澹としています。それにもう疲れたんですよね。生きる事に。生きていても嫌な事ばかりじゃないですか」

……同感だった。牢獄や拷問の現場を見たり、地球は新略された事を知らされたり嫌な事ばかりだ……。まあ死にたくなる気持ちも分かる。

「死ねばそういった残酷な事から解放されますよ?」

残酷な事から解放されたいと思う。私の心は揺らいでいた。私は死ぬべきなのかしら……?なんて思っていると彼は、

「それにご友人と共に人生を終えられるなんて素敵だとは思いませんか?」

私の胸を打つセリフを発した。異世界に転移した初日に外を散歩しようと提案された時の様だ。
考えてみれば人生の最期をご友人と一緒に飾れるなんて素敵だった。来世で結ばれるみたいじゃないか……。何故気づかなかったんだ。
そう思った途端、

死んでもいいかなと思えた。

「承諾しますわ。共に死にましょう」

気が楽になっていた。もう辛い思いをしないでいいんですのね……。解放されるんですのね。そう拍子抜けしていると、

「正義はもういいんですか……?」

……確かに死んだら正義を執行する事は出来ない。でもこれでいいと思う。だって、

「死にたいというのは正義に左右されない私の本当の感情なんだと思いますの。
だから正義はもういいですわ」

そう伝えると、

「よかったですっ!」

彼は幸せそうにそう言った。私もこれから素敵な死に方が出来るのだから幸せだ……。幸せを感じていると、

「ではシチュエーションはどうしましょうか?」

「シチュエーションといいますと?」

「死ぬ場所や死ぬ方法などです。どうしましょうか?」

それは考えていなかった。どうしようか……。自殺の方法は苦しくなければなんでも良いと思うが、死に場所は綺麗な場所がいいと思う。
綺麗な場所というと真っ先に薔薇庭園が思い浮かんだ。では、

「薔薇庭園で手首を切って死にましょう」

「かしこまりました」





穏やかな風が吹き、さあああっと辺り一面の薔薇が音を立てる。薔薇が咲き誇る薔薇庭園のベンチに、包丁を持った執事とお嬢様が座っている。

「素敵な音ですね」

「ええ」

「私達はこれから死ぬ所だというのにこんなにも幸せだなんてなんだか幻想的ですね……。これこそが本当のメルヘンなのかもしれませんね」

彼は幻想的の意味を思い出している様だった。私は、

「素敵な事を仰いますのね」

と答えた。そして、

「嬉しゅうございます。ではご機嫌麗しゅう」

挨拶をし彼は包丁で手首を切った。そして私の膝の上にどさっと倒れた。彼は死んでも尚上品だった。

私は彼の手から落ちた包丁を拾い走馬灯を見る様に思う。
本当に酷い人生だった。幼少期に両親を殺され、精神病に罹患し、
神様が必要な物を全て作ってくれる平和な異世界に転移したと思ったら、神の話も、平和も全部嘘だった。最後に、ここは異世界ですらなかった。

でも、私は今幸せだ。辛い事は沢山あったけれど貴方と共に死ぬ事が出来るから。
この世界は嘘で溢れていたけれど貴方との友情は嘘偽りない真実だったから。


終わり
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