31 / 42
幸せな結婚生活を目指しましょう。旦那様?
第三十一話 羞恥心で悶えそうです。旦那様?
しおりを挟む✳︎ ✳︎ ✳︎
その日、二枚目のローブを使うことになるなんて、一体だれが予想できただろう。アイシュタール公爵家の一年分の予算が、半日で吹っ飛んでいく。そしてその二倍なら、二年分だ。
なぜか午後から、観劇をすることになった。こうなってしまっては、途中でローブを替える必要がある。
たぶんこれは、歴史上でも一番高額な観劇に違いない。
しかも貴族席の中でも、一番いい席はいつでも観られるように空けてあったらしい。
「あの……本当に観る気ですか。旦那様?」
「うん、せっかくだから観ようよ」
私は、すでに席に着いてしまったとはいえまだ覚悟を決められずにいた。
私たちの前世を劇にしてしまったらしい旦那様。
王都で今、一番人気というのは冗談ではなかったらしい。観客席は満席だった。
「えーと。この沢山の人、全部この劇を見に来ているんですよね」
「それ以外にないだろうね」
「――――聖なる瞳の乙女っていう題名は誰が決めたんですか。というよりも脚本誰が書いたんですか」
「あー。君の侍従のハンスっていただろう? 彼の才能は素晴らしいね」
登場機会がないから忘れられていたかもしれないが、リンとともに私についてきてくれた侍従のハンス。
――――こんなところに思わぬ伏兵がいるとは!
よく考えれば、脚本家はハンス! そのままじゃないか!?
ああ、もし気がついていたら止めていたのに。
どう考えても、私が眠っていた一週間くらいの間に書きあげられるボリュームじゃない。
つまり、以前からの計画的犯行……。
そうこうしている間に、劇は始まった。そして、私は約二時間、羞恥心で悶え続けることになる。
✳︎ ✳︎ ✳︎
私が悶え続けて、約一時間半。物語は、佳境に入っていた。
戦場の丘の上に立ったヒロインが、その瞳の力を使う。
誰も彼もが、魔力を失い戦いの手を止める。
『キース!!』
しかし、キースは敵の刃に倒れてしまう。駆け寄ろうとしたヒロインが、途中で止まる。そう、ここは事実と同じだ。それは認める。
しかし問題はその後だった。
『キース、愛しています。私のすべてはあなたのために』
「ふぁっ?! 言ってない! 言ってないよそんなこと!」
両手で顔を塞いでいるのに、指の隙間から見ずにはいられないらしい可愛い妻を、リーフェン公爵は隣で存分に堪能していた。
「しかも何で、登場人物の名前キースとアンナなのぉ! 恥ずか死ぬ!!」
「これが見たかったと言っても過言ではない……」
この後、二人は手を取り合って戦場から去る。
その後、二人がどこに行ったかは誰も知らない。
「――――うっ、キース!!」
素直すぎる妻が、涙をぼろぼろ流すのを見て、リーフェン公爵も少しもらい泣きした。この後の展開に関しては、魔眼の秘密を広めてしまうためあえて脚本には載せなかった。
このあと、やりすぎてしまったリーフェン公爵は、私に本気で怒られるのだが、「はぁ。ルティアの反応が可愛かった。続編」とつぶやいていたので、まったく懲りてはいないようだ。
50
あなたにおすすめの小説
義妹が大事だと優先するので私も義兄を優先する事にしました
さこの
恋愛
婚約者のラウロ様は義妹を優先する。
私との約束なんかなかったかのように…
それをやんわり注意すると、君は家族を大事にしないのか?冷たい女だな。と言われました。
そうですか…あなたの目にはそのように映るのですね…
分かりました。それでは私も義兄を優先する事にしますね!大事な家族なので!
【完】婚約者に、気になる子ができたと言い渡されましたがお好きにどうぞ
さこの
恋愛
私の婚約者ユリシーズ様は、お互いの事を知らないと愛は芽生えないと言った。
そもそもあなたは私のことを何にも知らないでしょうに……。
二十話ほどのお話です。
ゆる設定の完結保証(執筆済)です( .ˬ.)"
ホットランキング入りありがとうございます
2021/08/08
【完】貴方達が出ていかないと言うのなら、私が出て行きます!その後の事は知りませんからね
さこの
恋愛
私には婚約者がいる。
婚約者は伯爵家の次男、ジェラール様。
私の家は侯爵家で男児がいないから家を継ぐのは私です。お婿さんに来てもらい、侯爵家を未来へ繋いでいく、そう思っていました。
全17話です。
執筆済みなので完結保証( ̇ᵕ ̇ )
ホットランキングに入りました。ありがとうございますペコリ(⋆ᵕᴗᵕ⋆).+*
2021/10/04
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
真実の愛のお相手に婚約者を譲ろうと頑張った結果、毎回のように戻ってくる件
さこの
恋愛
好きな人ができたんだ。
婚約者であるフェリクスが切々と語ってくる。
でもどうすれば振り向いてくれるか分からないんだ。なぜかいつも相談を受ける
プレゼントを渡したいんだ。
それならばこちらはいかがですか?王都で流行っていますよ?
甘いものが好きらしいんだよ
それならば次回のお茶会で、こちらのスイーツをお出ししましょう。
王子妃教育に疲れたので幼馴染の王子との婚約解消をしました
さこの
恋愛
新年のパーティーで婚約破棄?の話が出る。
王子妃教育にも疲れてきていたので、婚約の解消を望むミレイユ
頑張っていても落第令嬢と呼ばれるのにも疲れた。
ゆるい設定です
【完結】ツンな令嬢は婚約破棄され、幸せを掴む
さこの
恋愛
伯爵令嬢アイリーンは素直になれない性格だった。
姉は優しく美しく、周りから愛され、アイリーンはそんな姉を見て羨ましくも思いながらも愛されている姿を見て卑屈になる。
アイリーンには婚約者がいる。同じく伯爵家の嫡男フランク・アダムス
フランクは幼馴染で両親から言われるがままに婚約をした。
アイリーンはフランクに憧れていたが、素直になれない性格ゆえに、自分の気持ちを抑えていた。
そんなある日、友達の子爵令嬢エイプリル・デュエムにフランクを取られてしまう
エイプリルは美しい少女だった。
素直になれないアイリーンは自分を嫌い、家を出ようとする。
それを敏感に察知した兄に、叔母様の家に行くようにと言われる、自然豊かな辺境の地へと行くアイリーン…
王妃様は死にました~今さら後悔しても遅いです~
由良
恋愛
クリスティーナは四歳の頃、王子だったラファエルと婚約を結んだ。
両親が事故に遭い亡くなったあとも、国王が大病を患い隠居したときも、ラファエルはクリスティーナだけが自分の妻になるのだと言って、彼女を守ってきた。
そんなラファエルをクリスティーナは愛し、生涯を共にすると誓った。
王妃となったあとも、ただラファエルのためだけに生きていた。
――彼が愛する女性を連れてくるまでは。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる