片思い短編集

雪奈

文字の大きさ
1 / 1

夏祭り

しおりを挟む
「夏祭り誘ってくれてありがとうね」
「私も行きたかったから。一緒に来てくれてありがとう。」
二人で何処か行くのは初めてでどこか浮ついていた。
「うわっ」
夜で下が見えにくくて、人混みもできてきたからか、ただ私が浮かれているか分からないが足がふらついてしまった。
「あぶないよ」
そう言って彼が咄嗟に腕を出す。部活で鍛えられているたくまかしくかっこいい腕に支えられると安心すら覚える。
「ごめん。ありがとう」
「怪我がないなら良かったよ。あぶないから気をつけてね」
と不器用に言いながら手を差し出してくる。
これは…手を繋いでいいのかな…?としばらく躊躇していると
「そろそろ花火だよ。こっちおいで、よく見えるいい場所知ってるんだ」
そう言って私の腕を引っ張り、しばらく人気の無い道を二人で歩いた。こんな道よく知っているな。やっぱり私以外のこと来たことがあるのかと、悪い方へ考えてしまい胸が痛む。
「ここだよ。……大丈夫?顔色悪いけど。」
「大丈夫だよ。心配してくれてありがとう。」
付き合ってないのにこんな事言うのもお門違いだから、この想いを胸にしまい込む。今は二人っきりの空間だから。
「良かった。じゃあ…そこに座って花火見ようか」
私は頷いて。彼の隣に座る。私はここが好きだ。彼の横顔に見とれていると、私の視線に気づき少しはにかみながら首をちょこんと傾げた。
「なぁに?顔になにかついてた?」
「いや!何もついてないよ!大丈夫。いつも通りかっこいいから」
焦ったからか、気が緩んでいるのか本音が出てしまう。
「かっこいいとか…恥ずかしいからあんまり言わないで」
遠くからドンと音がして夜空に大きな花が咲いた。
その光で彼の横顔が照らされている。
「〇〇さんも浴衣似合ってるよ。」
「顔を見ながら言ってくれてもいいんだよ?」
と意地悪に笑う。
すると彼は私の方に向き直して私のぽっぺたを両手で挟んで顔を彼に向けるようにした。
「〇〇、浴衣似合ってるし可愛いよ。…………どう?照れた?笑」
顔を真っ赤にしながら、でもどこか嬉しそうにしている。
「ずるい。」
そう言って彼の手を私の頬から離して花火を見る。
「もうちょっとこっちおいでよ」
そう言って肩を寄せる。ふわっと柑橘系の良い香りが彼から香ってくる。初めて私達が話したときもこの香りだったと思い出していると、彼の手が私の手に触れ重なった。
「ねぇ…俺のこと」

なにか言いかけていたがこの続きは花火の音でかき消されてしまった。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

妻の遺品を整理していたら

家紋武範
恋愛
妻の遺品整理。 片づけていくとそこには彼女の名前が記入済みの離婚届があった。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

お父さんのお嫁さんに私はなる

色部耀
恋愛
お父さんのお嫁さんになるという約束……。私は今夜それを叶える――。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

還暦の性 若い彼との恋愛模様

MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。 そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。 その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。 全7話

離婚した妻の旅先

tartan321
恋愛
タイトル通りです。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

貴方なんて大嫌い

ララ愛
恋愛
婚約をして5年目でそろそろ結婚の準備の予定だったのに貴方は最近どこかの令嬢と いつも一緒で私の存在はなんだろう・・・2人はむつまじく愛し合っているとみんなが言っている それなら私はもういいです・・・貴方なんて大嫌い

処理中です...