耳が聞こえない公爵令息と子爵令息の幸せな結婚

竜鳴躍

文字の大きさ
25 / 28

母親失格?

しおりを挟む
赤ちゃんが泣いていても、声で分からない。

ずっとずっと見ていないと気づかない。


音のない世界では赤ちゃんを見るのは辛くて。


あんなに小さな体で一生懸命教えてくれているのに、おむつのタイミングもおっぱいのタイミングも、全然分からないなんて。



僕は母親失格だ。



ふと気が付くと、夜中赤ちゃんをあやしてくれているのはサザエル。

おむつも、ミルクも。


僕が寝てしまっているとき、気づかないとき。

サザエルが全部やってくれている。


本当は僕がやらないといけないのに。

これはお母さんの仕事なのに。



ごめんなさい、ガブリエル。僕の大事な赤ちゃん。





ミカエルお父様とハデスお母さまが、クリスお母さまが遊びにいらしたよ、と僕を呼びに来た。

サザエルはお仕事に出かけているから、ベビーベッドのガブリエルを抱っこして、応接間に来た。



「ガブリエル、おばあさまですよ。」

クリスお母さまはニコニコしている。

ガブリエルはお母さまの挨拶を聞いて、ニコニコ笑った。

「もうやだ、クリスがおばあさまなんて似合わないわぁ。」

「何言ってるの、お互いもうすぐ還暦なんだよ?立派なおじいさま、おばあさまじゃない。」


「ガブリエルの髪の毛は銀髪なんだね。サザエルに似たのか。顔もどっちかって言ったらミカエルだね。」

「あらでも、この凛々しい眉毛はハデスだし、アメジスト色の瞳はクリスだわ。目の形はマナちゃんに似てる。」


「もうすっかり、お母さんだね。マナ。」


ううん、と僕は首を振った。


僕は出来損ないのお母さん。



「…クリス。今日クリスに来てもらったのはね。この件でもあったのよ。マナちゃん、頑張りすぎなの。育児は全部お母さんが一人でやらなきゃダメなんだ、完ぺきにやらなきゃ、ってそう思ってるみたいなのよ。」


「そっか…。」

クリスお母さまが僕の手を取った。


「完璧な親なんていないよ、マナ。育児は一人じゃできない。手伝ってもらっていいんだよ。」

「そうよ。私たちだって、だいぶ助けてもらったわ。」


おむつやおっぱいは最初は3時間おきくらいだと思ってたらいいとか。

赤ちゃんの要求するリズムや生活リズムが分かってくると、それを目安に行動できるかもしれないとか。


色々教えてもらった。




僕はできないことも多いけど、サザエルに助けてもらっていいんだね。



僕は出来損ないのお母さんじゃなかった。



ガブリエルを愛している、ガブリエルのお母さん。

お母さんはみんなそれぞれ。



ありがとう。僕たち、親1年生。
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

[離婚宣告]平凡オメガは結婚式当日にアルファから離婚されたのに反撃できません

月歌(ツキウタ)
BL
結婚式の当日に平凡オメガはアルファから離婚を切り出された。お色直しの衣装係がアルファの運命の番だったから、離婚してくれって酷くない? ☆表紙絵 AIピカソとAIイラストメーカーで作成しました。

兄様の親友と恋人期間0日で結婚した僕の物語

サトー
BL
スローン王国の第五王子ユリアーネスは内気で自分に自信が持てず第一王子の兄、シリウスからは叱られてばかり。結婚して新しい家庭を築き、城を離れることが唯一の希望であるユリアーネスは兄の親友のミオに自覚のないまま恋をしていた。 ユリアーネスの結婚への思いを知ったミオはプロポーズをするが、それを知った兄シリウスは激昂する。 兄に縛られ続けた受けが結婚し、攻めとゆっくり絆を深めていくお話。 受け ユリアーネス(19)スローン王国第五王子。内気で自分に自信がない。 攻め ミオ(27)産まれてすぐゲンジツという世界からやってきた異世界人。を一途に思っていた。 ※本番行為はないですが実兄→→→→受けへの描写があります。 ※この作品はムーンライトノベルズにも掲載しています。

悪役令息はもう待たない

月岡夜宵
BL
突然の婚約破棄を言い渡されたエル。そこから彼の扱いは変化し――? ※かつて別名で公開していた作品になります。旧題「婚約破棄から始まるラブストーリー」

BLゲームの展開を無視した結果、悪役令息は主人公に溺愛される。

佐倉海斗
BL
この世界が前世の世界で存在したBLゲームに酷似していることをレイド・アクロイドだけが知っている。レイドは主人公の恋を邪魔する敵役であり、通称悪役令息と呼ばれていた。そして破滅する運命にある。……運命のとおりに生きるつもりはなく、主人公や主人公の恋人候補を避けて学園生活を生き抜き、無事に卒業を迎えた。これで、自由な日々が手に入ると思っていたのに。突然、主人公に告白をされてしまう。

待て、妊活より婚活が先だ!

檸なっつ
BL
俺の自慢のバディのシオンは実は伯爵家嫡男だったらしい。 両親を亡くしている孤独なシオンに日頃から婚活を勧めていた俺だが、いよいよシオンは伯爵家を継ぐために結婚しないといけなくなった。よし、お前のためなら俺はなんだって協力するよ! ……って、え?? どこでどうなったのかシオンは婚活をすっ飛ばして妊活をし始める。……なんで相手が俺なんだよ! **ムーンライトノベルにも掲載しております**

記憶を失くしたはずの元夫が、どうか自分と結婚してくれと求婚してくるのですが。

鷲井戸リミカ
BL
メルヴィンは夫レスターと結婚し幸せの絶頂にいた。しかしレスターが勇者に選ばれ、魔王討伐の旅に出る。やがて勇者レスターが魔王を討ち取ったものの、メルヴィンは夫が自分と離婚し、聖女との再婚を望んでいると知らされる。 死を望まれたメルヴィンだったが、不思議な魔石の力により脱出に成功する。国境を越え、小さな町で暮らし始めたメルヴィン。ある日、ならず者に絡まれたメルヴィンを助けてくれたのは、元夫だった。なんと彼は記憶を失くしているらしい。 君を幸せにしたいと求婚され、メルヴィンの心は揺れる。しかし、メルヴィンは元夫がとある目的のために自分に近づいたのだと知り、慌てて逃げ出そうとするが……。 ハッピーエンドです。 この作品は他サイトにも投稿しております。

政略結婚のはずが恋して拗れて離縁を申し出る話

BL
聞いたことのない侯爵家から釣書が届いた。僕のことを求めてくれるなら政略結婚でもいいかな。そう考えた伯爵家四男のフィリベルトは『お受けします』と父へ答える。 ところがなかなか侯爵閣下とお会いすることができない。婚姻式の準備は着々と進み、数カ月後ようやく対面してみれば金髪碧眼の美丈夫。徐々に二人の距離は近づいて…いたはずなのに。『え、僕ってばやっぱり政略結婚の代用品!?』政略結婚でもいいと思っていたがいつの間にか恋してしまいやっぱり無理だから離縁しよ!とするフィリベルトの話。

いくら気に入っているとしても、人はモノに恋心を抱かない

もにゃじろう
BL
一度オナホ認定されてしまった俺が、恋人に昇進できる可能性はあるか、その答えはノーだ。

処理中です...