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主役のいない結婚披露宴
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「ふん、主役のくせに披露宴に出ないとは。挨拶だけして引っ込むとは碌でもないな。」
「ポート辺境伯。そんなことを仰らずに。帝国と皇国がいるのですから、両国の相手をするだけでも大変なんでしょう。」
周囲の貴族たちは呑気なものだ。
帝国と皇国。
両陛下はさすがの覇気を持っている。
しかし、考えたらこれが好機かもしれぬ。
ここにはさほど兵はおらぬ。
陛下たちはこの厚いカーテンの奥の特別室。
邪魔なオーレムも、ジニアルも、みな、そこに。
ポート辺境伯はワインを飲み、片手にもう一つのグラスを持ちながら、孫息子に近づいた。
「ハロルド。」
「おじい様…。」
「ハロルドはよくやっているな、主役不在をきちんと回しておる。さすがだ。お前こそ王に相応しいと、わしは誰より思っておるぞ。」
「そんなことおっしゃらないでください。僕は兄上たちを尊敬しております。」
「お前ももう、18だったな。一緒に酒をのもうではないか。」
辺境伯がワインのグラスをハロルドに渡す。
血のように赤いワインを、ハロルドは見つめた。
「兄上の結婚に乾杯。次は、お前の婚礼だな。」
珍しく優しい祖父に気持ち悪さを感じながら、ハロルドはワインを口にした。
それこそが、辺境伯の罠であったのに。
「ポート辺境伯。そんなことを仰らずに。帝国と皇国がいるのですから、両国の相手をするだけでも大変なんでしょう。」
周囲の貴族たちは呑気なものだ。
帝国と皇国。
両陛下はさすがの覇気を持っている。
しかし、考えたらこれが好機かもしれぬ。
ここにはさほど兵はおらぬ。
陛下たちはこの厚いカーテンの奥の特別室。
邪魔なオーレムも、ジニアルも、みな、そこに。
ポート辺境伯はワインを飲み、片手にもう一つのグラスを持ちながら、孫息子に近づいた。
「ハロルド。」
「おじい様…。」
「ハロルドはよくやっているな、主役不在をきちんと回しておる。さすがだ。お前こそ王に相応しいと、わしは誰より思っておるぞ。」
「そんなことおっしゃらないでください。僕は兄上たちを尊敬しております。」
「お前ももう、18だったな。一緒に酒をのもうではないか。」
辺境伯がワインのグラスをハロルドに渡す。
血のように赤いワインを、ハロルドは見つめた。
「兄上の結婚に乾杯。次は、お前の婚礼だな。」
珍しく優しい祖父に気持ち悪さを感じながら、ハロルドはワインを口にした。
それこそが、辺境伯の罠であったのに。
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