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王子様のキスで呪いは解ける
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「ハロルド殿下!必ず助ける、だから信じて。血をくれ……っ!」
カイザーがそう叫ぶと、ハロルドの動きが止まる。
カイザーは差し出された指に傷をつけ、その傷から血を掬った。
「ああああ。ハロルド、ハロルドをどうか…!」
サリー妃は悲しみに打ちひしがれてぐちゃぐちゃだ。
オーレムがその場で解析し、驚愕する。
「…………遺伝子配列がおかしくなってる。これを人間に戻さないといけない。」
「どうすれば。」
「遺伝子配列を書き換え治す薬を今から作る。できるだけ多くの人間の遺伝子が欲しい。何を材料にすれば治せるのか分からない。みんな、提供してほしい。」
オーレムもジニアルもカイザーもフォートも。みなが提供して、オーレムは不眠不休で解析を続け、やっと薬は完成した。
しかしそのころにはハロルドは………。
「ハロルドはどうなんだ、ジニアル。やっと完成だ、早く飲まさないと。」
研究室から出てきたオーレムは、ふらつき、ジニアルに薬を託した。
「ありがとう。」
かわいそうだが、今、ハロルドを拘束具で縛っている。フォートが拘束が解けないよう、見張ってくれている。
オーレムには説明せずに、時間を惜しんでジニアルは駆けた。
会場につけば、拘束を引きちぎらんとしているハロルドの腕を、なんとかフォートが押さえつけている。
この状態で、薬を飲ませられるのか。
いや、飲まさないといけない。
「薬ができた!一刻も早く飲まさなければ。だが、これでは。」
「殿下!俺に任せてください!!」
カイザーは、ジニアルから薬のカプセルを受け取ると、左手にしっかりと握りながら、ハロルドの巨体に駆け上がった。
「ううううううううう、ああああああああ。」
「ハロルド殿下。きっと、俺が元に戻します。」
自分の口にカプセルを含み、そして、醜いオーガに変貌しているハロルドの唇に、自分の唇を重ね。
そうして、口移しで、カイザーはカプセルを飲ませた。
「もしかして、今日、ハロルドも結婚式になるのかな?」
ジニアルは二人の様子を見守りながら、愛する妻に寄り添う。
光に包まれて元の姿に戻ったハロルドは泣きじゃくり、カイザーは自分の騎士服の上着をハロルドに着せた。
何故なら、彼は何も身に着けていなかったから。
「ありがとう、カイザー先輩。ありがとう、お兄様たち。フォート様。」
「ハロルド殿下。王族を辞めるのなら俺の嫁に来ませんか。俺、ハロルド殿下が好きみたいです。」
ハロルドは戸惑いながら、こくりと頷いた。
数か月後。
2人は『運命の恋人』として一世を風靡し、街では舞台の題材になるほどの人気になるのである。
運命に翻弄された不憫な第三王子と、兄君の騎士。
学園時代に出会って、ほのかな恋心を抱いていた第三王子と婚約者のいた伯爵令息は友情を育むが、王子が思いを告げることはなかった。
真面目な彼を捨てて、他の男に目移りした婚約者に婚約解消をされても、第三王子は想いを明かすことはできない。
なぜなら、彼は伯爵家の跡取りだったから。
だが、ある日。
悪い祖父の陰謀で醜い怪物の姿に変えられた王子を、真実の愛で騎士が救う。
怪物の王子に騎士がキスをすると、呪いが解けて、元の美しい王子に戻るのだ。
カイザーがそう叫ぶと、ハロルドの動きが止まる。
カイザーは差し出された指に傷をつけ、その傷から血を掬った。
「ああああ。ハロルド、ハロルドをどうか…!」
サリー妃は悲しみに打ちひしがれてぐちゃぐちゃだ。
オーレムがその場で解析し、驚愕する。
「…………遺伝子配列がおかしくなってる。これを人間に戻さないといけない。」
「どうすれば。」
「遺伝子配列を書き換え治す薬を今から作る。できるだけ多くの人間の遺伝子が欲しい。何を材料にすれば治せるのか分からない。みんな、提供してほしい。」
オーレムもジニアルもカイザーもフォートも。みなが提供して、オーレムは不眠不休で解析を続け、やっと薬は完成した。
しかしそのころにはハロルドは………。
「ハロルドはどうなんだ、ジニアル。やっと完成だ、早く飲まさないと。」
研究室から出てきたオーレムは、ふらつき、ジニアルに薬を託した。
「ありがとう。」
かわいそうだが、今、ハロルドを拘束具で縛っている。フォートが拘束が解けないよう、見張ってくれている。
オーレムには説明せずに、時間を惜しんでジニアルは駆けた。
会場につけば、拘束を引きちぎらんとしているハロルドの腕を、なんとかフォートが押さえつけている。
この状態で、薬を飲ませられるのか。
いや、飲まさないといけない。
「薬ができた!一刻も早く飲まさなければ。だが、これでは。」
「殿下!俺に任せてください!!」
カイザーは、ジニアルから薬のカプセルを受け取ると、左手にしっかりと握りながら、ハロルドの巨体に駆け上がった。
「ううううううううう、ああああああああ。」
「ハロルド殿下。きっと、俺が元に戻します。」
自分の口にカプセルを含み、そして、醜いオーガに変貌しているハロルドの唇に、自分の唇を重ね。
そうして、口移しで、カイザーはカプセルを飲ませた。
「もしかして、今日、ハロルドも結婚式になるのかな?」
ジニアルは二人の様子を見守りながら、愛する妻に寄り添う。
光に包まれて元の姿に戻ったハロルドは泣きじゃくり、カイザーは自分の騎士服の上着をハロルドに着せた。
何故なら、彼は何も身に着けていなかったから。
「ありがとう、カイザー先輩。ありがとう、お兄様たち。フォート様。」
「ハロルド殿下。王族を辞めるのなら俺の嫁に来ませんか。俺、ハロルド殿下が好きみたいです。」
ハロルドは戸惑いながら、こくりと頷いた。
数か月後。
2人は『運命の恋人』として一世を風靡し、街では舞台の題材になるほどの人気になるのである。
運命に翻弄された不憫な第三王子と、兄君の騎士。
学園時代に出会って、ほのかな恋心を抱いていた第三王子と婚約者のいた伯爵令息は友情を育むが、王子が思いを告げることはなかった。
真面目な彼を捨てて、他の男に目移りした婚約者に婚約解消をされても、第三王子は想いを明かすことはできない。
なぜなら、彼は伯爵家の跡取りだったから。
だが、ある日。
悪い祖父の陰謀で醜い怪物の姿に変えられた王子を、真実の愛で騎士が救う。
怪物の王子に騎士がキスをすると、呪いが解けて、元の美しい王子に戻るのだ。
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