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お父様のいない間に
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「ま・り・い~~~~~♡」
「きゃっ!!」
夫の声で、いきなり目を後ろからふさがれて、マリー妃は驚いて刺繍を落としてしまった。
「ミレニア様ですね!」
「えー、なんでわかったのかしら。」
王太子姿のミレニアが口をぷくうと膨らませる。
傍で様子を見ているデイヴィッド王子が目をぱちぱちさせている。
「いつもすごいですね、お父様にしか見えません!本当に、お母さまはどうしてわかるんですか?」
そういうと、マリー妃は頬を染めて、
「…それは、雰囲気?かしら。なんとなく。あ、でもこういうパターンだったら、マクシミリアン様なら抱き着いてくるから、かしら??」
それで、今日は入れ替わっている日なんですね、とマリー妃はミレニアに席を譲った。
ありがとう、と腰かける。
ミレニアさまは今、身重なのだ。大事にしないと。
「久しぶりですね。そういえば、デイヴィッドが、アンジュちゃんと最近遊べなくて寂しいらしいです。一緒に遊べると思って始めた刺繍で、アンジュちゃんを怒らせちゃったみたいで。」
「あの子、刺繍があまり得意じゃないのよね。私も同じだから気にしなくていいのに。」
「そうだったんですか。そういえば、淑女クラスの授業にはマクシミリアン様が出てらっしゃっていましたものね。…本当にマクシミリアン様は何でも器用で…。」
「そこだけは、私とあいつ違うのよね。女の方が細かいことが得意とか嘘だから!嘘!!絶対、リチャード様だってステッチさえ覚えたら私よりずっとできるわよ!」
「ああ、なんか分かります…。」
久しぶりに会って、母親同士がキャッキャと会話をしているのを聞いて、デイヴィッド王子の顔が真っ青になっていく。
「お母さま。アンジュちゃんが僕のこと嫌いって言ったの、僕が刺繍したからなの?だったら、もう僕しない!」
母親たちがハッとなっても後の祭り。
侍女も振り切って、デイヴィッド王子はどこかへ走って行ってしまった。
◆◆◆
つまんないですわ。
お父様遅いですわ…。
素振りばっかりで、騎士団の方はちっとも本気で相手をして下さらない。
子ども扱いして…。
しょぼんとしていると、勝手に「疲れたのかな?果物とお茶くらいしかないけど、ここで休憩するといいよ。」と解釈して、訓練場の片隅の椅子に座らされた。
それで、なんだか商会の人と、事務長さんが怖い話をしている。
私が分からないと思ってるんでしょうけど、わかるんだから。
「…最近、西の国からのルートが物騒で。あの山間の国は鉱物の売買で成り立っていましたが、ろくな技術者も育っておらず、流出するばかりで、技術力向上が目覚ましいこの国が目の上のたん瘤なんでしょう。我々この国の商人が向こうに渡ろうとすると、高い関代を要求されます。少しでも何かトラブルがあると、それを理由に拘束される危険も…。」
えーなにその言いがかり。
「ソレはひどい。国交がある国同士なのに。もう、あの国はダメかもしれませんね…。」
うんうん、私もそう思いますわ!
「…国力も下がって求心力も下がっておりますから、すぐにどうこうする力はないでしょうが、何か起こってもおかしくありませんので…、殿下に進言いただければありがたいです。」
えっ…。
「情報ありがとうございます。申し伝えておきます…。」
それって、もしかして近いうちにもしかしたら戦争になるかもしれない、ってことかしら…。
お父様はお強いから大丈夫だと思うけれど…。
不安になって、涙がこぼれそうになる。
でも、<聞こえてた。理解してしまった。>なんて気づかれたら…。
私はぐっと我慢した。
そして、いてもたってもいられなくなって、お父様を迎えに城の門の方まで行くことにした。
早く、早くお父様に会いたい!!
「きゃっ!!」
夫の声で、いきなり目を後ろからふさがれて、マリー妃は驚いて刺繍を落としてしまった。
「ミレニア様ですね!」
「えー、なんでわかったのかしら。」
王太子姿のミレニアが口をぷくうと膨らませる。
傍で様子を見ているデイヴィッド王子が目をぱちぱちさせている。
「いつもすごいですね、お父様にしか見えません!本当に、お母さまはどうしてわかるんですか?」
そういうと、マリー妃は頬を染めて、
「…それは、雰囲気?かしら。なんとなく。あ、でもこういうパターンだったら、マクシミリアン様なら抱き着いてくるから、かしら??」
それで、今日は入れ替わっている日なんですね、とマリー妃はミレニアに席を譲った。
ありがとう、と腰かける。
ミレニアさまは今、身重なのだ。大事にしないと。
「久しぶりですね。そういえば、デイヴィッドが、アンジュちゃんと最近遊べなくて寂しいらしいです。一緒に遊べると思って始めた刺繍で、アンジュちゃんを怒らせちゃったみたいで。」
「あの子、刺繍があまり得意じゃないのよね。私も同じだから気にしなくていいのに。」
「そうだったんですか。そういえば、淑女クラスの授業にはマクシミリアン様が出てらっしゃっていましたものね。…本当にマクシミリアン様は何でも器用で…。」
「そこだけは、私とあいつ違うのよね。女の方が細かいことが得意とか嘘だから!嘘!!絶対、リチャード様だってステッチさえ覚えたら私よりずっとできるわよ!」
「ああ、なんか分かります…。」
久しぶりに会って、母親同士がキャッキャと会話をしているのを聞いて、デイヴィッド王子の顔が真っ青になっていく。
「お母さま。アンジュちゃんが僕のこと嫌いって言ったの、僕が刺繍したからなの?だったら、もう僕しない!」
母親たちがハッとなっても後の祭り。
侍女も振り切って、デイヴィッド王子はどこかへ走って行ってしまった。
◆◆◆
つまんないですわ。
お父様遅いですわ…。
素振りばっかりで、騎士団の方はちっとも本気で相手をして下さらない。
子ども扱いして…。
しょぼんとしていると、勝手に「疲れたのかな?果物とお茶くらいしかないけど、ここで休憩するといいよ。」と解釈して、訓練場の片隅の椅子に座らされた。
それで、なんだか商会の人と、事務長さんが怖い話をしている。
私が分からないと思ってるんでしょうけど、わかるんだから。
「…最近、西の国からのルートが物騒で。あの山間の国は鉱物の売買で成り立っていましたが、ろくな技術者も育っておらず、流出するばかりで、技術力向上が目覚ましいこの国が目の上のたん瘤なんでしょう。我々この国の商人が向こうに渡ろうとすると、高い関代を要求されます。少しでも何かトラブルがあると、それを理由に拘束される危険も…。」
えーなにその言いがかり。
「ソレはひどい。国交がある国同士なのに。もう、あの国はダメかもしれませんね…。」
うんうん、私もそう思いますわ!
「…国力も下がって求心力も下がっておりますから、すぐにどうこうする力はないでしょうが、何か起こってもおかしくありませんので…、殿下に進言いただければありがたいです。」
えっ…。
「情報ありがとうございます。申し伝えておきます…。」
それって、もしかして近いうちにもしかしたら戦争になるかもしれない、ってことかしら…。
お父様はお強いから大丈夫だと思うけれど…。
不安になって、涙がこぼれそうになる。
でも、<聞こえてた。理解してしまった。>なんて気づかれたら…。
私はぐっと我慢した。
そして、いてもたってもいられなくなって、お父様を迎えに城の門の方まで行くことにした。
早く、早くお父様に会いたい!!
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