【完結】元SS冒険者の部隊長は王族に陥落される

竜鳴躍

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本編

神速の称号を持つ元冒険者

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「あなたはまだ…!」

アイス=クレイソンは、すっかりやつれて年をとった自分の父親を睨みつけた。

クレイソン公爵家は王家に繋がる家系だが、当時の陛下の叔父にあたる先代当主が、権力に執着し、クーデターを起こした。

仮にも王族に連なる者の不祥事に下された処分は、当主の隠居、王位継承権剥奪と代替わり、監視だった。

父を恥じ、甘い処分を申し訳なく思い、それでも当主になった15歳の頃から今まで、母と領民のためにがんばってきた。
自分も30を越え、先日、母が亡くなり、父親も落ち着いたように見えて、酒を酌み交わしていたのに。

「お前は本当につまらないな。その年まで婚約者も作らず、中立を保ち。大方、権力争いを避けているのだろう?今の陛下とお前は年も近い。
側近となるか、子を設けて次代の后をあてがうか、やりようもあったものを!」

全くあの女そっくりだ…。

忌々しげに母のことを吐き捨てられて、カッとなる。

そこへ執事が入ってきた。

「ご準備が整いました。」


拘束されて裏に出ると、ワイバーンが3体、檻に捕らえられていた。

監視役のはずの、若い騎士は、すっかり懐柔されており、父を咎める様子もない。

「何を…まさか」

「ふふっ、こいつらに中央を襲わせるのよ。」

「そのようなことをしたからと言って何になります!? 民に血が流れるだけです!」

父が手を叩き、奥から3名の冒険者が姿を現した。

屈強そうな大柄な体躯の男と
美女にも見紛う程の華やかな容姿の男。
そして、彼らのリーダーだろう男は、まだ学生に見えるほど若く、けれど、しっかり二人を従え、両腰に細身の剣を提げている。
黒髪にアメジストのような青味がかった紫の瞳が神秘的な男。

「国を襲ったワイバーンを、私が依頼したSS級の冒険者が倒すのだ。そして、アイス、お前はワイバーンの最初の犠牲者となり死ぬ。跡取りを失い、悲しみながらも国を救った私。お前がいなければ、当主復帰もあるだろうな?」

醜く歪んだ父の笑顔。

父は、ワイバーンの興奮する薬剤のカプセルを私に投げ付け、それを解き放った。


ワイバーンが一斉に向ってくる。

父の高笑いを耳にしながら、衝撃を覚悟した。


目の前でワイバーンの羽音は止まり、爪が肉を割く音はしたが、私ではない。

目の前には、冒険者のリーダーが。

ワイバーンの口に剣を咬ませ、
私を庇って、額を切り、整った綺麗な顔を血で染めていた。

「お前…っ! 私は依頼者だぞ!!……グワッ!!?」

「部隊長、こちらはお任せください!」

懐柔されていたはずの若い騎士が、父をとらえている。

部隊長?

リーダーは騎士にコクリと頷き、そのまま戦闘に入った。

「うふふ、神速の腕の見せ所ね。」

冒険者の美女に見えるほうが弓を構えて、微笑む。

神速?

そういえば、最近、騎士団が冒険者をチームごと採用したと聞いた。
そのリーダーが、神速の称号を持つ二刀流の剣士。

では、あれが。


仲間が弓で追い込み、弓の彼と私を大柄な彼が槍を持って守る。

空を飛ぶワイバーンを、まるで自身も空を翔けるように、ワイバーンより早く、攻撃を避けながら、遠心力をつけた二本の刃で刻み倒す姿は、まるで踊っているようで。

とても美しい、と思った。



結論をいうと、父の計画は全て陛下に筒抜けだったのだ。

かつて父に惑わされたばかりに爵位を失った執事は、もう惑わされることは無かった。
監視の騎士を通して陛下に計画を伝え、父が3人に依頼をするように仕向けたのだ。

父は、秘密裏に死罪となる。

情けないが、もうそれしかない。


「助けてくれてありがとう。手当もしたいし、礼を兼ねて酒を振る舞いたいのだが。」

そう誘うと、彼は笑顔を見せ、快諾してくれた。

名前はクリス=アッシュフォード。
男爵家の次男。
仲間は、大柄な方がハデス。華やかな方がミカエル。
自分も家族で苦労していること。
今は斥候部隊の隊長をしていること。

くるくる変わる表情が可愛らしくて、閉じ込めてしまいたい。
自分のものにしたい。

初めて感じる執着心に、ああ、私もあの男の子であったのだと嗤いつつ。

酒に眠り薬を混ぜて、仲間を帰して部屋に連れ込み。
意識のないうちに脱がせて拘束し

眠る彼の足を開いて、欲望をねじ込んだ。
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