【完結】元SS冒険者の部隊長は王族に陥落される

竜鳴躍

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本編

隣国の魔女

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レッドキングダムの北部に隣接し、年の殆どを雪で覆われた不毛の地。

資源の乏しさを科学で補うその国には、魔女と呼ばれる女王がいる。

「ナンッで!アイス様が結婚してるのよ!! アイス様は私の夫になるべき人よ!」


忌々しい! と、ワインの入ったままのグラスを従者の男に投げつける。

「…ッ!」

従者の男の頬を切り裂き、グラスが床にあたって割れ、絨毯にしみが出来た。


「この極寒の地が憎い。豊かなかの国が欲しい。手に入れるために公爵を誑かしたのに邪魔が入るし、外相誑かしてスタンピード起こしたのに、大ごとになる前に全部倒されてるし!! 邪魔な国王はそのままで!愛しいアイス様は手に入らない…!!!」

玉座に座りながら、キリキリと爪を噛む。

「アイス様ーーーーーーいえ、魔王様は私のものよ。必ず手に入れて見せるわ…。フフフ…。」



従者は、ぞっとしながらも、反抗できずに場を去った。

従者は、女王の従弟だった。

王族の端くれではあったが、女王の狂気に耐え切れず、逃げようとした親族は皆殺しにあった。
そして、その亡命を利用して起きたスタンピード。

もはや、反抗する気力もない。


女王の年齢は分からない。

短く切った髪、少女のような面立ち。

でも、30になろうという自分が物心ついた時から、彼女は今の姿をしている。

まさに、魔女。


隣国の王族であるアイスにも思いをはせる。

権力に取りつかれた父親によって、世界を統べる力の器、女王の夫となるべく、生まれたときに魔王の核を打ち込まれた、かわいそうな方。

特に今まで何もなく、母親に似た気質は、儀式が失敗したのだと思われていた。
公爵もそう思ってたからこそ、捨て駒にしようとしたはずだ。
だが、最近になって、目覚めの気配がある。


生まれる前から父親に裏切られて、父親の死後も呪いのように苛まれるなんて。

どうか、女王から逃れることができますように。







「風光明媚だな。」

「うちの領地もこんなかんじがいいなぁ。」


クリスマスが終わり、年の瀬。

俺は少し早めに休暇をとり、アイスと新婚旅行に来ている。

ミカエルたちが、温泉に行って、すごくよかったというので、二人で露天風呂付き客室のある温泉旅館に泊まることにした。


馬車から見える景色は、すごくいい。

侍女や従者は俺たちの部屋の近くに部屋を取っている。


「景色見ながら温泉入れるの、すごくいいね。」

「酒を持ち込んでも良さそうだな。」

「酒飲んで風呂は危ないんだから、深酒はできないからね?」

アイスにくぎを刺す。


あーーーーーーおんせんーっ。
早く二人で入りたい。

そわそわしていると、後ろから腰を抱かれた。

「ちょ…あいす」

「温泉は、夕飯の後で。温泉に入ったら、それですまない自信がある。」

きっぱり言うので、面白くなって、吹き出してしまった。


新婚さんの旅行らしく、夕飯は、あーん のサービスでもしてやろう。
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