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本編
魔王も勇者もいなかった
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『あきらめろ。クリスは私のものにする。別にいだろう、私もお前なのだから。私だって、300年前から、彼のことを愛していたのだ。』
「それは、クリスではない! お前だって私ではない! 生まれ変わりなのかもしれないが、別の人間だ!」
『そうだな、私とお前は違うかもしれない。でも、私はお前だし、お前は私だよ。もう、知らなかったころには戻れない。』
既に、闇の中で、記憶を共有してしまっただろう?
遺伝子操作、という神の技術を駆使してモンスターを産んでしまったから。
図らずも世界の危機を招いてしまったから。
『魔王』と呼ばれることになった私。
そして、私を殺したから、勇者と呼ばれるようになった人。
剣先を向けられて、違う出会いをしたかったとどんなに思っただろうか。
殺されるというのに、その相手に惚れてしまうのだから、おかしなものだ。
魔王も勇者も、誰かがつけた肩書であって、私たちは本当は普通の人間だった。
友として出会うこともできたかもしれなかったのに。
どんなに私が恋焦がれたか、お前に分かるだろうか。
『この数日、顕現してから楽しかったよ。』
「魔王、私の中に融合してくれ。」
『耳を疑うな。消えろ、とは言わないのか。』
「お前は私なのだろう? 同一人物なのだから、消えることはできないだろう、どっちも。だが、主導権はこっちがもらう。それは譲れない。」
だから、体を返せ。
「アイス! アイス!!」
突然倒れこんだらしい、私の体に縋りつくように。祈るように泣いているクリスの声が聞こえる。
指先、が動く。
「あい…す?」 どっちだろうと不安そうな顔。
「ただいま。」泣き顔の前髪をかき分けて、傷痕にキスをする。
「おかえり…。」
ぎゅっと、抱きしめた。
魔王が溶け、置き土産があった。
それは、遺伝子研究の副産物。
今、私の中には知識がある。
それを使えば、クリスとの子どもが設けられそうだと思った。
さあ、どうやって切り出そう。
「それは、クリスではない! お前だって私ではない! 生まれ変わりなのかもしれないが、別の人間だ!」
『そうだな、私とお前は違うかもしれない。でも、私はお前だし、お前は私だよ。もう、知らなかったころには戻れない。』
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剣先を向けられて、違う出会いをしたかったとどんなに思っただろうか。
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どんなに私が恋焦がれたか、お前に分かるだろうか。
『この数日、顕現してから楽しかったよ。』
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だから、体を返せ。
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突然倒れこんだらしい、私の体に縋りつくように。祈るように泣いているクリスの声が聞こえる。
指先、が動く。
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「ただいま。」泣き顔の前髪をかき分けて、傷痕にキスをする。
「おかえり…。」
ぎゅっと、抱きしめた。
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それを使えば、クリスとの子どもが設けられそうだと思った。
さあ、どうやって切り出そう。
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