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本編
破滅
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俺は本当はアイスのことをどう思っているのだろうか。
騎士団の仕事の帰りに、久しぶりに冒険者ギルドの酒場に寄って、物思いに耽っていると。
「奇遇ですね。」
ローズ=フルール王子が現れた。
「…あなたのような方でも、こんな所にいらっしゃるのですね。」
「お忍びも楽しいですよ。」
「色々、考えていました。」
カランとグラスの氷が揺れる。
「私のことを考えてくれましたか?」
「…。」
閉店間際の遅い時間。
他には、誰もいない。
「愛しています。クリス!私は本気だ! 一緒に私の国へ行きましょう!」
両手を握られ、抱き寄せられる。
…さあ、首尾は上々かな?
「やめてください! 俺が愛しているのは、アイスだけだ!」
わざと大声で叫び。
「私の妻になにをしている!」
アイスが飛び出してくる。
「お兄様!? 何を馬鹿なことを!国際問題ですよ!」
今度はバイオレット。
「な、なな! バイオレット、お前が言ったんじゃないか! クリスが今夜ここに居るって!」
「嫌ですわ! 鉱山の契約とか、婚約のこととかお話があるから、待ち合わせているというお話ですよ!?」
バイオレットはなおも続ける。
「他国の王族の妻に手を出して、しかも称号持ちを連れ帰ろうだなんて、国際問題ですわよ。こうなったら、私、申し訳なくて、キリス様と婚約なんかできないですわ!」
およよと泣いてみせる。…うまいなぁ。
「クリス様、アイス様。申し訳ございません。」
「いえ、悪いのは王子だけですから。ねえ、フルール陛下。」
アイスの後ろから、お忍び姿の陛下。
怒り心頭の顔だ。
「あ、あわわ…。父上…。」
「バカモンが!お前など廃嫡だ!!」
「ひええ!そんなっ!」
「バイオレット様に免じて、輸出や交流の件はお約束どおり進めますから。もうそのへんで…。」
アイスがおさめる。
「無事、何事もおきませんでしたし、せっかくの最後の夜です。予定どおりディナーをしながら、今後の話をしましょう?」
俺も笑って。
バイオレット王女の作戦は大成功なのだった。
ーーー3日前。俺たちの前に策にのれ!と現れた王女は、なかなか強かで。
「クリス様もアイス様もうちのバカ王子の横恋慕に困っているのではありませんか?
あれはいつも他人のものを欲しがるのです。
あんなのが国王になったら、終わりですわ!」
…だから、アレを破滅させて、私とキリス様の縁談をなかったことに致しましょう?
「さあ、キャサリンさま、出てきてらして?」
キャサリンが扉の陰から姿を現す。
家令に近づけないよう、言ってあったのに。
この王女が連れだしたのだろうか。
「キャサリン…。」
「キリスさま…。」
キャサリンは、涙をためて、お兄様をみている。
お兄様もキャサリンを。
「私で、いいのですか…」
「君が、いいんだ…!」
「ウフフ、想いあっている二人を引き裂く趣味は私にはございませんわ。
キャサリンさま?私が譲ったのですから、幸せにならなければ許しませんよ!?」
そう言って、感動的にしめたまではいいが、ちゃっかり自分の功績として、良い条件での輸出の契約をお兄様に約束させたのだった。
「なんかすっごい王女だったなあ。まさか、美人局をやらされるとは。」
帰り道。
アイスと手をつないで帰る。
「すごく…いやだった。」
ブスッとしているアイスが、かわいい。
「でも、これでめんどくさいのがいなくなった。」
「クリスは、私のこと…」
言いかけるアイスの口をキスで塞ぐ。
「俺が愛しているのは、アイスだよ。自信持て。」
大体、本気で嫌なら、お前の舌を噛み千切るなり、抵抗できたんだしな?
今思うと、まんざらでも無かったんだと思う。
そういうと、抱きしめられた。
…今夜は眠れないかもな。
でも、のぞむところだ。
俺だって、たまにはそういう気分の時もある。
騎士団の仕事の帰りに、久しぶりに冒険者ギルドの酒場に寄って、物思いに耽っていると。
「奇遇ですね。」
ローズ=フルール王子が現れた。
「…あなたのような方でも、こんな所にいらっしゃるのですね。」
「お忍びも楽しいですよ。」
「色々、考えていました。」
カランとグラスの氷が揺れる。
「私のことを考えてくれましたか?」
「…。」
閉店間際の遅い時間。
他には、誰もいない。
「愛しています。クリス!私は本気だ! 一緒に私の国へ行きましょう!」
両手を握られ、抱き寄せられる。
…さあ、首尾は上々かな?
「やめてください! 俺が愛しているのは、アイスだけだ!」
わざと大声で叫び。
「私の妻になにをしている!」
アイスが飛び出してくる。
「お兄様!? 何を馬鹿なことを!国際問題ですよ!」
今度はバイオレット。
「な、なな! バイオレット、お前が言ったんじゃないか! クリスが今夜ここに居るって!」
「嫌ですわ! 鉱山の契約とか、婚約のこととかお話があるから、待ち合わせているというお話ですよ!?」
バイオレットはなおも続ける。
「他国の王族の妻に手を出して、しかも称号持ちを連れ帰ろうだなんて、国際問題ですわよ。こうなったら、私、申し訳なくて、キリス様と婚約なんかできないですわ!」
およよと泣いてみせる。…うまいなぁ。
「クリス様、アイス様。申し訳ございません。」
「いえ、悪いのは王子だけですから。ねえ、フルール陛下。」
アイスの後ろから、お忍び姿の陛下。
怒り心頭の顔だ。
「あ、あわわ…。父上…。」
「バカモンが!お前など廃嫡だ!!」
「ひええ!そんなっ!」
「バイオレット様に免じて、輸出や交流の件はお約束どおり進めますから。もうそのへんで…。」
アイスがおさめる。
「無事、何事もおきませんでしたし、せっかくの最後の夜です。予定どおりディナーをしながら、今後の話をしましょう?」
俺も笑って。
バイオレット王女の作戦は大成功なのだった。
ーーー3日前。俺たちの前に策にのれ!と現れた王女は、なかなか強かで。
「クリス様もアイス様もうちのバカ王子の横恋慕に困っているのではありませんか?
あれはいつも他人のものを欲しがるのです。
あんなのが国王になったら、終わりですわ!」
…だから、アレを破滅させて、私とキリス様の縁談をなかったことに致しましょう?
「さあ、キャサリンさま、出てきてらして?」
キャサリンが扉の陰から姿を現す。
家令に近づけないよう、言ってあったのに。
この王女が連れだしたのだろうか。
「キャサリン…。」
「キリスさま…。」
キャサリンは、涙をためて、お兄様をみている。
お兄様もキャサリンを。
「私で、いいのですか…」
「君が、いいんだ…!」
「ウフフ、想いあっている二人を引き裂く趣味は私にはございませんわ。
キャサリンさま?私が譲ったのですから、幸せにならなければ許しませんよ!?」
そう言って、感動的にしめたまではいいが、ちゃっかり自分の功績として、良い条件での輸出の契約をお兄様に約束させたのだった。
「なんかすっごい王女だったなあ。まさか、美人局をやらされるとは。」
帰り道。
アイスと手をつないで帰る。
「すごく…いやだった。」
ブスッとしているアイスが、かわいい。
「でも、これでめんどくさいのがいなくなった。」
「クリスは、私のこと…」
言いかけるアイスの口をキスで塞ぐ。
「俺が愛しているのは、アイスだよ。自信持て。」
大体、本気で嫌なら、お前の舌を噛み千切るなり、抵抗できたんだしな?
今思うと、まんざらでも無かったんだと思う。
そういうと、抱きしめられた。
…今夜は眠れないかもな。
でも、のぞむところだ。
俺だって、たまにはそういう気分の時もある。
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