【完結】元SS冒険者の部隊長は王族に陥落される

竜鳴躍

文字の大きさ
334 / 415
アヴニール編【学園編】

俺のお嫁さんです

しおりを挟む
「父さん、母さん、そして冒険者のみんな。この人は、キャットさん。俺は、この人をお嫁さんにします。」


冒険者ギルドの大きなテーブルに向かい合う。


俺たちに一緒に来てほしいって言うのは、キャット先生が不安にならないように守ってほしかったんだな。



なんか遠くの方で、『あれ、絶対そうだぞ…。』とかひそひそ聞こえる。

本人がどんなに努力しても、変わっても、一度世に出た物は消えない。

それって辛い。



「あらまぁ、可愛らしい子ね。」


「それで式はいつにするんだ?」


「結婚式は…やらなくていいんです。」
だって、僕がバージンロードを歩くなんて、笑えるでしょ?

「この酒場で出来ないかと思ってるよ。できるだけ早いうちに。」


えっ…と、キャットが驚いてキリアを見た。


「えーうちでいいの?じゃあ、お祝いのごはんは腕によりをかけなくちゃね!」


「ああ、じゃあ俺の家から結婚指輪と衣装はプレゼントさせてくれないか。」
キャッツアイ先輩が挙手をした。


「えっ、そんな高そうなもの貰うなんて…。」


「気にしないで。せっかくだから花嫁を着飾りたいだろう。どんな衣装がいいかな、アヴニール、たしかここ、2階があったよな。2階で二人で衣装デザインを考えていてもらえないか。」


キャッツアイ先輩が目線でキリアと俺に合図をする。

「いこ、キャット先生!」


「あ、うん…。」




二人がいなくなったのを見計らって、キリアは両親、冒険者たちをぐるりとみやった。


「キャットは、みんなの考えてる通り、キティちゃんです。」


「おまえ、そんなのと結婚する気か?しかも年上じゃないのか?」

古株の冒険者が声をあげる。

処女とまではいかなくとも、なにもそんな何人相手にしたか分からないのをわざわざ選ばなくても、将来有望なキリアなら、もっといい人がたくさんいるだろうに、という親心ではある。


「キャットは好きでああいうことをしてたんじゃない。親が借金を作って、兄弟姉妹全員身売りさせられそうだったから、自分一人で全部背負ったんだ。だから、みんなにはお願い。キャットのこと、どうせみんななら遅かれ早かれ知られるって分かってたから、隠さず言ったんだよ。みんななら、分かってくれるよね?一緒にキャットを守ってくれるよね?」


借金って…あれ設定じゃなかったんだ…。

あの最初のやつ、マジなヤツだったんだ。なんか抜いてごめん。

そんな声が聞こえてくる。


「キャットは裏家業の金貸しに無理やり身売りさせられたんだよ。選択できる状態じゃなかった。それで、自分はエッチが好き、誰でもいいみたいな奔放な顔してたけど、それって、たぶん。」


「クリスと同じね。クリスの場合は旦那様がついていたから、症状は違うけど。心の傷になったんだわ。」

「母さんの言うとおりだよ。俺、調べたんだ。そういうことがあると、自己肯定感が低くなるんだ。自分を大切にしなくなって、誰とでも…そうなっちゃうんだよ。けして、本人が悪いわけじゃないんだよ。俺が、直してあげたいんだ。」




「よし!わかった!!俺たちで守ろうぜ!!!」

「そうだな、昔のことで付きまとうヤツとかいたら、近づく前にやっつけてやる!」

「この話は口外しないぜ!」



「それでこそ、俺のギルドの冒険者だ!!!!」


「ありがとう、みんな。みんなだったら、そう言ってくれるって信じてた。」










「ねえ、キャット先生。俺のドレスは白なんだよ。キャット先生も白がいい?」



「……くろ、黒がいい。」


「黒?」



「白は、『あなたの色に染めてください。』の白。黒はね、「何にも染まらない』色なんだよ。」
今更まっさらにはなれないから、完全にキリアの色には染まらないかもしれない。
だけど、誰にも染まらない、自分が自分のままキリアに寄りそう、そういう意思表示はできるかも。


「わかった、なかなかセンセーショナルだね。ゴスロリ風なんか先生は似合うんじゃないかな。」


「…ありがとう。」


「ねえ、先生。結婚式したら、俺の入隊式の日まで1か月近くあるから、俺たち旅行するの。よかったら、いっしょにW新婚旅行にいかない?」


「いいね!」

二人の花嫁は、窓辺で笑う。
しおりを挟む
感想 106

あなたにおすすめの小説

アプリで都合のいい男になろうとした結果、彼氏がバグりました

あと
BL
「目指せ!都合のいい男!」 穏やか完璧モテ男(理性で執着を押さえつけてる)×親しみやすい人たらし可愛い系イケメン 攻めの両親からの別れろと圧力をかけられた受け。関係は秘密なので、友達に相談もできない。悩んでいる中、どうしても別れたくないため、愛人として、「都合のいい男」になることを決意。人生相談アプリを手に入れ、努力することにする。しかし、攻めに約束を破ったと言われ……?   攻め:深海霧矢 受け:清水奏 前にアンケート取ったら、すれ違い・勘違いものが1位だったのでそれ系です。 ハピエンです。 ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。 自己判断で消しますので、悪しからず。

転生したら魔王の息子だった。しかも出来損ないの方の…

月乃
BL
あぁ、やっとあの地獄から抜け出せた… 転生したと気づいてそう思った。 今世は周りの人も優しく友達もできた。 それもこれも弟があの日動いてくれたからだ。 前世と違ってとても優しく、俺のことを大切にしてくれる弟。 前世と違って…?いいや、前世はひとりぼっちだった。仲良くなれたと思ったらいつの間にかいなくなってしまった。俺に近づいたら消える、そんな噂がたって近づいてくる人は誰もいなかった。 しかも、両親は高校生の頃に亡くなっていた。 俺はこの幸せをなくならせたくない。 そう思っていた…

転生したらスパダリに囲われていました……え、違う?

米山のら
BL
王子悠里。苗字のせいで“王子さま”と呼ばれ、距離を置かれてきた、ぼっち新社会人。 ストーカーに追われ、車に轢かれ――気づけば豪奢なベッドで目を覚ましていた。 隣にいたのは、氷の騎士団長であり第二王子でもある、美しきスパダリ。 「愛してるよ、私のユリタン」 そう言って差し出されたのは、彼色の婚約指輪。 “最難関ルート”と恐れられる、甘さと狂気の狭間に立つ騎士団長。 成功すれば溺愛一直線、けれど一歩誤れば廃人コース。 怖いほどの執着と、甘すぎる愛の狭間で――悠里の新しい人生は、いったいどこへ向かうのか? ……え、違う?

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

借金のカタに同居したら、毎日甘く溺愛されてます

なの
BL
父親の残した借金を背負い、掛け持ちバイトで食いつなぐ毎日。 そんな俺の前に現れたのは──御曹司の男。 「借金は俺が肩代わりする。その代わり、今日からお前は俺のものだ」 脅すように言ってきたくせに、実際はやたらと優しいし、甘すぎる……! 高級スイーツを買ってきたり、風邪をひけば看病してくれたり、これって本当に借金返済のはずだったよな!? 借金から始まる強制同居は、いつしか恋へと変わっていく──。 冷酷な御曹司 × 借金持ち庶民の同居生活は、溺愛だらけで逃げ場なし!? 短編小説です。サクッと読んでいただけると嬉しいです。

BLゲームの展開を無視した結果、悪役令息は主人公に溺愛される。

佐倉海斗
BL
この世界が前世の世界で存在したBLゲームに酷似していることをレイド・アクロイドだけが知っている。レイドは主人公の恋を邪魔する敵役であり、通称悪役令息と呼ばれていた。そして破滅する運命にある。……運命のとおりに生きるつもりはなく、主人公や主人公の恋人候補を避けて学園生活を生き抜き、無事に卒業を迎えた。これで、自由な日々が手に入ると思っていたのに。突然、主人公に告白をされてしまう。

普段「はい」しか言わない僕は、そばに人がいると怖いのに、元マスターが迫ってきて弄ばれている

迷路を跳ぶ狐
BL
全105話*六月十一日に完結する予定です。 読んでいただき、エールやお気に入り、しおりなど、ありがとうございました(*≧∀≦*)  魔法の名手が生み出した失敗作と言われていた僕の処分は、ある日突然決まった。これから捨てられる城に置き去りにされるらしい。  ずっと前から廃棄処分は決まっていたし、殺されるかと思っていたのに、そうならなかったのはよかったんだけど、なぜか僕を嫌っていたはずのマスターまでその城に残っている。  それだけならよかったんだけど、ずっとついてくる。たまにちょっと怖い。  それだけならよかったんだけど、なんだか距離が近い気がする。  勘弁してほしい。  僕は、この人と話すのが、ものすごく怖いんだ。

美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜

飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。 でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。 しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。 秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。 美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。 秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。

処理中です...