わんこな庶務は魔王な生徒会長に憧れる

竜鳴躍

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赤点回避と学園祭の準備と卒業生


生徒会室に向かって、バタバタと大きな足音と、それより少し小さな足音が聞こえてくる。

ゼロは、レイナが淹れてくれたダージリンティーを飲みながら、口元を緩ませた。


「あの調子だと…。」

レイナが言いかけて止める。


ガラッとドアを開け、入って来たかわいい大型犬は、キラキラした笑顔で弾けんばかりに明るい声を張り上げた。

「赤点回避しました!!!!全教科!!!!!!!」


後から追いかけていたのだろう、遅れて入って来たオリエは肩で息をしている。


褒めてください~!と言わんばかりに執務机の横まできてヘラヘラしているシュヴァリエの頭を、ゼロは立ち上がってノートでぽん、と軽くはたいた。

「私が教えたのだから当然だ。ゆくゆくは上位に入るようでなくては困る。言っておくが、赤点は回避して当たり前なんだからな?」


シュヴァリエの頭の上の幻覚の耳がしょぼんと折れ、尻尾がしゅんと項垂れているように見える。


「……でもまあ、よく頑張った。」

胸ポケットからコイン二つ分くらいの大きさの小さな金属の缶を取り出し、彼の手のひらに乗せてやる。



「……これは?」



「ご褒美だ。練香水。お前私の匂いが気に入ってただろう。同じ香りじゃないが、同じブランドだ。お前はそっちのほうが似合うと思う。手首とか首の後ろくらいに軽くつけるといい。」


「シトラスですね。確かにシュヴァリエ様には、ゼロ様のローズ系よりはそちらの方が似合う気がします。いい趣味ですね。ゼロの好きな匂いなんでしょう?」

レイナが缶のイラストを見た。


「ありがとうございます!」

ぱああああっと花が咲いたように元気になる。


本当に可愛い。





「ハイハイハイ!いつまでも雑談しないで!みんな揃ったのだから、学園祭の打ち合わせをしますわよ!」


副会長のルナ様の号令で、みんなで会議テーブルに集まった。



「全く、やるべきことは先に終わらせましょう。」

ぎろりと会長を睨む副会長。

見た目は清楚な美少女だが、ゼロと親戚筋にあたるルナは、中身はほぼほぼゼロだった。


「それでは、3か月後の学園祭について、打ち合わせを行う。」

「はい、会長副会長。例年の流れから、今年も同じ場所が学生の模擬店等で使用可能か確認を取りました。加えて、追加で使用できる箇所があるかどうか。リストにしましたので、お配りします。」

「レイナは仕事が早いね。」

「禁止事項は例年と同じです。酒の売買は禁止。それから、今年も剣術大会が学校側のイベントとして同時開催になります。」


ゼロは内心苦笑する。

レイナは仕事が早いが、一人で突っ走る。話し合うべき内容のうち、学校側に確認しておきたいことを既に調べておいてくれたようだ。


「ありがとう。でも、一人でそれだけ下準備するのは大変じゃなかったかい?寂しいな。」


「……あっ。すみません。一人で先走りました。」


悪気はないから、注意するにしてもいい方は気をつけないと。


「………先輩、準備ってあと何を決めるんでしょうか。」


「レイナがリストにしてくれたから、これを学内に張り出して、各学級にも配布する。期限をもうけて申し込みを受け付け、必要があれば場所を巡ってくじ引き。あとは学園祭全体の飾りの準備、生徒会でも何かやるか。かな。」


「そういえば、剣術大会ってどんなことをするんだ?シュヴァリエ、聞いている?」

「各クラスから1名代表を出して、学年ごとに1位を決めるのをずっとやってるんだって。だけど、私は教師だから出られないって。」

オリエの質問にシュヴァリエが応えている。
そうか、シュヴァリエは出ないのか。それは、残念だ。でも、仕方ない。シュヴァリエが出たら優勝は目に見えているからな…。昨年までのクラウド様がそうだった。







ガラガラッ!


「みんな、久しぶり!」

噂をすれば。


急な登場に、面識のないシュヴァリエとオリエが驚いて固まっているじゃないか。


「どうしたんですか。クラウド様。騎士団はお暇ですか?」

この間卒業した、クラウド=ノース侯爵令息だ。


黒髪黒目の凛々しい顔立ち。シュヴァリエより身長が若干高く、一回りがっしりした、戦う男の体躯。
ノース侯爵家の男子は、代々両性具有で生まれてくるが、彼の場合は男よりで、女性の生殖機能はない。

が、この男らしい男を見るたび、この人にそういう部分がついているというのは、たとえ機能していないとしても不思議な気はする。

卒業とともに、エデン王国から留学してきたティナ王女と駆け落ちのように結婚した男は、父親が騎士団長を務める騎士団へさっさと入団した。

頭角を現しているとは聞いているが、入団したばかりの忙しいだろう新人騎士がなぜここに。



「暇か、など酷いな。城への使いのついでに多少の寄り道くらい許されるだろう。学園祭の準備で残っている時期だと思っていたから差し入れを持ってきたのに。」

ちらりと王都で人気の菓子店の包みを見せる。




ゼロ先輩と仲がいい、黒い髪の逞しい男。ちょっと胸が重い。

どういう人なんだろう。


眺めていると、レイナさまが教えてくださった。


「クラウド=ノース様。騎士団長を拝命されているノース侯爵の令息よ。(心配しなくても)卒業と同時に結婚されて、騎士団に入団したの。今年の春、あなたたちと入れ違いで卒業したけれど、ゼロ様の前は彼が生徒会長でゼロ様が副会長だったのよ。因みに、ルナ様はノース侯爵とも親戚筋に当たるわ。」




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