暗殺者は王子に溺愛される

序曲

最近、珍しく旦那様が家に戻られるようになったわ。

ずっと、辺境の我が家の砦かキャンプ。あまり戻られない方だったのに。

嬉しいけれど、調子が狂ってしまう。


私が産んだ子なのに、前妻の子のニールのように物覚えがよくない息子。

ニールの家庭教師は私がしていたから、同じように教えても理解できない、頭が悪いのだということがよくわかる。

兄弟なのに、母親が違うだけでこうも違うのかと思う。

ニールは母親にあまり似ていないけど、美丈夫の父親にそっくりだ。

なのに、ケイは私に似て、見た目もあまりよくない。


１５歳になって学園に通いだす前に、高名な家庭教師をたくさんつけて、先の学習をさせておかなくては、落ちこぼれてしまう。
遊ばせる暇なんてないのよ。寝る間も惜しんで勉強させないと。

お茶会に行っても、婚約者どころか友達もできない我が子のために、少しでも見栄えのする衣装を購入し、お友達のお家には高位貴族で評判の異国の菓子等、珍しい貢物を送った。

それでも、成果はあがらない。


息子は無口だ。あまり笑わない。きっと恥ずかしがりやさんなのね。
大丈夫よ、ママがあなたのためになんでもしてあげますからね。



なのに、あの人が珍しく帳簿なんて見始めるから。

ずっと家にいて、中のことに口出し始めるから。

友達の家に行ったり、お招きにあずかるのに、毎回高額な貢物なんていらない？
夜会に出る様に着飾る必要はない？
子どもは遊んだほうがいい？


何言っているのかしら。


早くまた、どこかへ行ってくれないかしら。




そう思っていたのに。



「そういえば、友人を招いてホームパーティをしようと思うから、準備をしてくれ。」


「……あら、どなたをお招きしますの？」

この人の友人なんて、聞いたことがあったかしら。


「宰相閣下に、騎士団長、ケヴィン殿下と……高位貴族が集まるからそのつもりでいてくれ。」


あらまあ。それなら、仕方ないですわ。