暗殺者は王子に溺愛される

竜鳴躍

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シル編

大切なものは手に入らない。

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初恋は、ザックスだった。


そのザックスは、今や兄の妻だ。

次に好きになったのは、ケイだった。

ケイは、幼なじみを選んだ。



いつも自分は2番目。
選ばれない。


兄がザックスだけを選んだので、自分が王太子になり、どうせ自分が選んでもうまくいかないから、親の決めた人たちを妻にして、ハレムを作った。


妻たちは優しいし、賢いし、美人だし、不満はない。

すでに子どももできて、かわいい。

妻たちを愛してはいると思う。



でも。


胸を焦がすものはない。





街の視察。

いつものように白亜の街並み。
人々は賑わい、公益も盛んだ。

馬に乗り、皆に手を振る。

周りには護衛。




ザザッと、目の前で土煙が立ち、黒い影が走る。

護衛が制止し、注視していると、子ども?

ズタボロで汚れた焦げ茶色の髪色の子どもが倒れていた。


「コッ、コラッ!!」

慌てて飛び出したのは、丸々と脂ぎった中年の男。

「申し訳ありません、王太子様!」

倒れた子どもを起こし、頭を抑えて2人、土下座をする。

押さえられながらこちらを睨む青い目に、ゾクゾクした。


「お前はその子の親か?」

「あっ、い……」

男が言い淀んでいるうちに、僕の従者が聞き込んできた。


「若様。この者は、戦争孤児を引き取っては奴隷のように酷使しているそうです。おそらくその者は……。」


「へえ。奴隷、は禁止しているはずだよね。」

「あっ、ち、ちが」

「言い訳は然るべきところで。さて、と。」


男を護衛に拘束させ、馬を降りてその子の前に膝をつく。

「お前、名前は。」

「アル…」


「アル。僕と来い。気に入った。」

「は?今度はお前の奴隷になれってか!性奴隷か!?」


「お前、口を」

護衛を止める。


「奴隷は禁止されている。王族でも同じ。僕は君と仲良くなりたい。」





変なやつに拾われた。

孤児でスラムにいて、あいつに捕まった。

奴隷みたいに、朝晩働かされて。
気に食わないから困らせてやろうって、自分もどうなってもいい気持ちで、王太子の馬の前に飛び出した。


まさか、王太子が俺を気に入るなんて、思わないだろう!?

城に連れて行かれて、風呂で磨かれた。

そして肌触りのいい、白い服。

あいつは、俺をどうしたいんだろう。

体は許さないからな!
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