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16歳の誕生日が来る
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相変わらず僕の世界は部屋の中。
時折、窓から見えるのは、成長した婚約者が美しい令嬢と仲睦まじく庭でお茶を飲んでいる姿。
ドリルみたいな縦ロールが神々しい、ゴウマン侯爵家のご令嬢、ミレルダ様。
―――――――あれから8年が過ぎ。
僕は、もうすぐ16歳の誕生日を迎える。
誕生日の日に、僕たちは正式に婚約式を結ぶのだ。
――――――嫌だな。
「アミュレット様のお陰で、冬でも食糧が確保できるようになり、ありがとうございます。」
「うん、無事に品種改良できてよかったね。あと、保存容器や蔵が整備できたから、採れるうちに保存食に加工してしまえばいいと思う。」
僕のところには、各地から相談にのってほしいと訪れる人が多い。
この国は長い冬の期間、交通機関も滞り、作物も育ちにくかった。
でもなんとか、民が飢えをしのげるようになって良かったと思う。
「お疲れ様でした。」
シュナイダーが僕に紅茶を出してくれる。
騎士なのに、身の回りのことまでやってくれて、本当に申し訳ない。
彼ももう26歳。
本当ならとっくの昔に可愛いお嫁さんをもらっているはずなのに、僕に縛り付けてしまった。
「ううん、僕なんてちょっと助言しただけで。実際に根回ししてくれたり、工場を手配してくれたりしたのはシュナイダーでしょ。」
「そのアイディアがなかなか思いつけないのですよ。」
シュナイダーは優しく頭を撫でてくれた。
カタン、
部屋の外が少し騒々しい。
「困ります、ゴウマン侯爵令嬢。こちらはアクセル殿下の婚約者の――――――」
衛兵が懸命に止めているようだが、あの令嬢がどうして僕の部屋に?
「知っているわよ。ぶよぶよだらしなく肥え太った醜い方で、引きこもり。アクセル殿下がおかわいそうだわ。一切社交もしていないそうじゃない。もうすぐ学園の卒業パーティがあるのに、パートナーなしだなんて。私がいつもパートナーを引き受けておりますのよ?嫌われているのだから、学園にも入学できないお馬鹿さんには、身の程を弁えていただきたいのよ!」
悔しい…!
アクセル殿下のことはどうでもいいけど、どうしてそこまでこの人に罵られないといけないんだろう。
シュナイダーが僕を抱きしめ、扉を開けてさっと自分の体を前に出した。
僕が見えないように。
「ゴウマン公爵令嬢。友好国であるクローバー王国の王族に不敬ではないですか。殿下のパートナーを引き受けていただいて、アミュレット様はとても感謝しております。ご令嬢と殿下は大変お似合いだと思いますので、どうぞお構いなく。」
「なっ、あなた、………素敵ね。それにその色……!?」
「色がどうかしましたか。私はただの、アミュレット様の騎士ですが。」
「あ、そう……なの。」
シュナイダー。
僕のシュナイダーをそんなふうに見ないで。
僕は思わず、前に出た。
「ゴウマン公爵令嬢。アミュレット=バイス=クローバーです。僕が不甲斐ないばかりに、アクセル殿下には苦労をさせてしまって申し訳なく思っております。僕も身の程は重々承知。ですが、僕たちの結婚は国益、平和のための政略結婚。僕や殿下の気持ちでどうこうできないのです。白い結婚になることは殿下からも宣言されております。貴方に正妃の座をお譲りすることはできませんが、貴方は国母にはなれるでしょう。どうぞ、僕の分まで殿下を愛してあげてください。」
殿下はあげる。
いらないもの。
でも、シュナイダーは貴方だけにはあげたくない。
「……………っ!」
ゴウマン公爵令嬢は納得してくれたのか、去っていった。
よかった。
時折、窓から見えるのは、成長した婚約者が美しい令嬢と仲睦まじく庭でお茶を飲んでいる姿。
ドリルみたいな縦ロールが神々しい、ゴウマン侯爵家のご令嬢、ミレルダ様。
―――――――あれから8年が過ぎ。
僕は、もうすぐ16歳の誕生日を迎える。
誕生日の日に、僕たちは正式に婚約式を結ぶのだ。
――――――嫌だな。
「アミュレット様のお陰で、冬でも食糧が確保できるようになり、ありがとうございます。」
「うん、無事に品種改良できてよかったね。あと、保存容器や蔵が整備できたから、採れるうちに保存食に加工してしまえばいいと思う。」
僕のところには、各地から相談にのってほしいと訪れる人が多い。
この国は長い冬の期間、交通機関も滞り、作物も育ちにくかった。
でもなんとか、民が飢えをしのげるようになって良かったと思う。
「お疲れ様でした。」
シュナイダーが僕に紅茶を出してくれる。
騎士なのに、身の回りのことまでやってくれて、本当に申し訳ない。
彼ももう26歳。
本当ならとっくの昔に可愛いお嫁さんをもらっているはずなのに、僕に縛り付けてしまった。
「ううん、僕なんてちょっと助言しただけで。実際に根回ししてくれたり、工場を手配してくれたりしたのはシュナイダーでしょ。」
「そのアイディアがなかなか思いつけないのですよ。」
シュナイダーは優しく頭を撫でてくれた。
カタン、
部屋の外が少し騒々しい。
「困ります、ゴウマン侯爵令嬢。こちらはアクセル殿下の婚約者の――――――」
衛兵が懸命に止めているようだが、あの令嬢がどうして僕の部屋に?
「知っているわよ。ぶよぶよだらしなく肥え太った醜い方で、引きこもり。アクセル殿下がおかわいそうだわ。一切社交もしていないそうじゃない。もうすぐ学園の卒業パーティがあるのに、パートナーなしだなんて。私がいつもパートナーを引き受けておりますのよ?嫌われているのだから、学園にも入学できないお馬鹿さんには、身の程を弁えていただきたいのよ!」
悔しい…!
アクセル殿下のことはどうでもいいけど、どうしてそこまでこの人に罵られないといけないんだろう。
シュナイダーが僕を抱きしめ、扉を開けてさっと自分の体を前に出した。
僕が見えないように。
「ゴウマン公爵令嬢。友好国であるクローバー王国の王族に不敬ではないですか。殿下のパートナーを引き受けていただいて、アミュレット様はとても感謝しております。ご令嬢と殿下は大変お似合いだと思いますので、どうぞお構いなく。」
「なっ、あなた、………素敵ね。それにその色……!?」
「色がどうかしましたか。私はただの、アミュレット様の騎士ですが。」
「あ、そう……なの。」
シュナイダー。
僕のシュナイダーをそんなふうに見ないで。
僕は思わず、前に出た。
「ゴウマン公爵令嬢。アミュレット=バイス=クローバーです。僕が不甲斐ないばかりに、アクセル殿下には苦労をさせてしまって申し訳なく思っております。僕も身の程は重々承知。ですが、僕たちの結婚は国益、平和のための政略結婚。僕や殿下の気持ちでどうこうできないのです。白い結婚になることは殿下からも宣言されております。貴方に正妃の座をお譲りすることはできませんが、貴方は国母にはなれるでしょう。どうぞ、僕の分まで殿下を愛してあげてください。」
殿下はあげる。
いらないもの。
でも、シュナイダーは貴方だけにはあげたくない。
「……………っ!」
ゴウマン公爵令嬢は納得してくれたのか、去っていった。
よかった。
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