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聖者とブレーキ殿下 ※残酷な記述がさらっとだけどあります
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「お父さん!」
「アンリ!」
おじさんを連れて街に戻る。
潰れた馬車を直し、商品と遺体を乗せて。
そばかすの日に焼けたおさげの少女が駆け寄ってきた。
「うぅ………つ、お父さんもいなくなると思ってた!」
「すまないアンリ。私は運良くこちらの方に助けていただいたのだ。だが………他の者はっ。家族の者に申し訳が……。」
おじさんは涙をにじませる。
だが、遺族の家族だろう。
おじさんを囲み、覚悟の上だったからと声をかけていた。
おじさんは、この街で商会を営む商会長さんだった。
流通ルートを奪われ、また、ゴウマン侯爵に多額のお金を払わなければ仕入れることができない。
街の人たちが貧しくなっていくのを見ていられなくて。
また、隠れ潜んでいる職人がその素材を手に入れられなくて困っているのをどうにかしたくて。
勇士を募って自ら国境を越えたのだという。
遺族のご婦人たちから、体を持ち帰っていただき感謝します、とお礼を言われる。
やるせないよ。
結界を貼っておじさんから聞いた。
スタンピードは人為的なもので、ゴウマン公爵の仕業だった。
スタンピードと流通の独占で皆を雁字搦めにして、逆らう者は皆殺しか、二度と技術職ができないよう潰されてきたという。
研究者は脳を破壊され、生産職は手を潰され………。
ゴウマン公爵。
アクセル殿下の恋人の父親。
愛し合う二人には悪いけど、そんな人の娘を王妃になんかできない。
アクセル殿下は知っているのだろうか。
彼にも王にはなって欲しくない。
王位につくなら気づくべきで、愛していても距離をとるべき。
愛をとるなら、王族を辞めるべきなんだ。
「遅れて申し訳ない…!」
軍馬の音が聞こえる。
ようやく騎士団が到着したようだ。
しかし、騎士団を仕切っているのは、まだ14歳のブレーキ殿下だった。
本当にブレーキ殿下は立派だ。
どういういきさつで彼が騎士団を統率しているのかは分からないが…。
「ああ、犠牲者、がいたのだな…。」
馬車の中の遺体に黙とうを捧げ、ブレーキ殿下は皆をぐるりとみやった。
「………私に出来ることは少ないが、ご遺族の皆様には生活が困ることのないよう、必ず何らかの支援をすると約束しよう。」
そして、俺とシュナイダーに目をあわせた。
結界を張ってブレーキ殿下と対面をする。
部屋には、助けたおじさんと私が仕留め損ねたあの夜の男――――――――――騎士団長。
それに、アミュレット様。
「ミューゼ殿。国民も……本当に申し訳ない。アミュレット様たちもありがとう。アミュレット様がいてくれたお陰で今回は被害が最小限になり、ミューゼ殿だけでも助けることができた。」
「ブレーキ殿下…!!!」
騎士団長もいるところで、アミュレット様のお名前を!
だが、ブレーキ殿下の佇まいや所作は14歳とは思えない。
最後にあったときと全く変わっている。
「……大丈夫。騎士団長はもう、あいつの言いなりにはならない。騎士団員もね。」
ブレーキ殿下は冷ややかにほほ笑む。
「それはどういう?」
「アクセルに国はやらない。僕が次の陛下になる。国に巣食う害悪は全部排除する。シュナイダー様がアミュレット様を助けて避難してくれている間に種は撒けた。僕はまだ子どもと侮られているからね。動き憎い両親の代わりに僕は動いたのだ。スズナ王国のルシフェル殿下やクローバー王国のハピネス殿下が僕を助けてくれた。」
そういうと、どこか一瞬寂しそうな嬉しそうな何とも言えない表情が浮かんで消える。
「この国には、あちこちでゴウマン侯爵に潰されて煮え湯を飲まされている者たちがいるだろう。僕の信書を持って、アミュレット様たちには国中を駆けてもらいたいのです。」
そして、断罪の時は――――――――――。
「おはようございます。アミュレット様。」
宿の窓から光が射しこむ。
「おはよう、シュナイダー。」
身づくろいをして、昨夜のうちに荷物をまとめたリュックを背負う。
冒険者ギルドの2階の宿屋。
2週間しかいなかったのに、ずっと長くいたみたい。
とんとん、階段を降りる。
そこには、ミューゼさんや娘のアンリちゃん、街の人たちが集まっている。
「俺の手を治してくれてありがとうございます!」
「寝た切りだった夫が意識を取り戻して…!!本当にありがとう!」
「時が来るまで俺たちは大人しく潜伏しています。ブレーキ殿下とクローバー王国とスズナ王国が連携してなんかすごい魔法で俺たちを助けてくれるらしいし…。いざとなったらゴーレム人形とすり替わって向こうに逃げてもいいことになっているから……っ。」
「そうそう、俺たちのことは心配しないでください!」
「他の街のみんなも救ってやってください!」
「聖者と勇者の門出に!」
えっ。俺が聖者でシュナイダーが勇者、かな?
なんだか照れちゃう!
「これ、道中で食べてね。」
おかみさんがお弁当を作ってもたせてくれた。
「ありがとうございます!」
荷馬車でこの街に来た僕たちは、ブレーキ殿下がくれた立派な馬に乗って出発する。
この街のみんなの幸福と安全を願って祈りを捧げると、金色の粒子が町中に飛んだ。
「アンリ!」
おじさんを連れて街に戻る。
潰れた馬車を直し、商品と遺体を乗せて。
そばかすの日に焼けたおさげの少女が駆け寄ってきた。
「うぅ………つ、お父さんもいなくなると思ってた!」
「すまないアンリ。私は運良くこちらの方に助けていただいたのだ。だが………他の者はっ。家族の者に申し訳が……。」
おじさんは涙をにじませる。
だが、遺族の家族だろう。
おじさんを囲み、覚悟の上だったからと声をかけていた。
おじさんは、この街で商会を営む商会長さんだった。
流通ルートを奪われ、また、ゴウマン侯爵に多額のお金を払わなければ仕入れることができない。
街の人たちが貧しくなっていくのを見ていられなくて。
また、隠れ潜んでいる職人がその素材を手に入れられなくて困っているのをどうにかしたくて。
勇士を募って自ら国境を越えたのだという。
遺族のご婦人たちから、体を持ち帰っていただき感謝します、とお礼を言われる。
やるせないよ。
結界を貼っておじさんから聞いた。
スタンピードは人為的なもので、ゴウマン公爵の仕業だった。
スタンピードと流通の独占で皆を雁字搦めにして、逆らう者は皆殺しか、二度と技術職ができないよう潰されてきたという。
研究者は脳を破壊され、生産職は手を潰され………。
ゴウマン公爵。
アクセル殿下の恋人の父親。
愛し合う二人には悪いけど、そんな人の娘を王妃になんかできない。
アクセル殿下は知っているのだろうか。
彼にも王にはなって欲しくない。
王位につくなら気づくべきで、愛していても距離をとるべき。
愛をとるなら、王族を辞めるべきなんだ。
「遅れて申し訳ない…!」
軍馬の音が聞こえる。
ようやく騎士団が到着したようだ。
しかし、騎士団を仕切っているのは、まだ14歳のブレーキ殿下だった。
本当にブレーキ殿下は立派だ。
どういういきさつで彼が騎士団を統率しているのかは分からないが…。
「ああ、犠牲者、がいたのだな…。」
馬車の中の遺体に黙とうを捧げ、ブレーキ殿下は皆をぐるりとみやった。
「………私に出来ることは少ないが、ご遺族の皆様には生活が困ることのないよう、必ず何らかの支援をすると約束しよう。」
そして、俺とシュナイダーに目をあわせた。
結界を張ってブレーキ殿下と対面をする。
部屋には、助けたおじさんと私が仕留め損ねたあの夜の男――――――――――騎士団長。
それに、アミュレット様。
「ミューゼ殿。国民も……本当に申し訳ない。アミュレット様たちもありがとう。アミュレット様がいてくれたお陰で今回は被害が最小限になり、ミューゼ殿だけでも助けることができた。」
「ブレーキ殿下…!!!」
騎士団長もいるところで、アミュレット様のお名前を!
だが、ブレーキ殿下の佇まいや所作は14歳とは思えない。
最後にあったときと全く変わっている。
「……大丈夫。騎士団長はもう、あいつの言いなりにはならない。騎士団員もね。」
ブレーキ殿下は冷ややかにほほ笑む。
「それはどういう?」
「アクセルに国はやらない。僕が次の陛下になる。国に巣食う害悪は全部排除する。シュナイダー様がアミュレット様を助けて避難してくれている間に種は撒けた。僕はまだ子どもと侮られているからね。動き憎い両親の代わりに僕は動いたのだ。スズナ王国のルシフェル殿下やクローバー王国のハピネス殿下が僕を助けてくれた。」
そういうと、どこか一瞬寂しそうな嬉しそうな何とも言えない表情が浮かんで消える。
「この国には、あちこちでゴウマン侯爵に潰されて煮え湯を飲まされている者たちがいるだろう。僕の信書を持って、アミュレット様たちには国中を駆けてもらいたいのです。」
そして、断罪の時は――――――――――。
「おはようございます。アミュレット様。」
宿の窓から光が射しこむ。
「おはよう、シュナイダー。」
身づくろいをして、昨夜のうちに荷物をまとめたリュックを背負う。
冒険者ギルドの2階の宿屋。
2週間しかいなかったのに、ずっと長くいたみたい。
とんとん、階段を降りる。
そこには、ミューゼさんや娘のアンリちゃん、街の人たちが集まっている。
「俺の手を治してくれてありがとうございます!」
「寝た切りだった夫が意識を取り戻して…!!本当にありがとう!」
「時が来るまで俺たちは大人しく潜伏しています。ブレーキ殿下とクローバー王国とスズナ王国が連携してなんかすごい魔法で俺たちを助けてくれるらしいし…。いざとなったらゴーレム人形とすり替わって向こうに逃げてもいいことになっているから……っ。」
「そうそう、俺たちのことは心配しないでください!」
「他の街のみんなも救ってやってください!」
「聖者と勇者の門出に!」
えっ。俺が聖者でシュナイダーが勇者、かな?
なんだか照れちゃう!
「これ、道中で食べてね。」
おかみさんがお弁当を作ってもたせてくれた。
「ありがとうございます!」
荷馬車でこの街に来た僕たちは、ブレーキ殿下がくれた立派な馬に乗って出発する。
この街のみんなの幸福と安全を願って祈りを捧げると、金色の粒子が町中に飛んだ。
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