17 / 42
聖者とブレーキ殿下 ※残酷な記述がさらっとだけどあります
しおりを挟む
「お父さん!」
「アンリ!」
おじさんを連れて街に戻る。
潰れた馬車を直し、商品と遺体を乗せて。
そばかすの日に焼けたおさげの少女が駆け寄ってきた。
「うぅ………つ、お父さんもいなくなると思ってた!」
「すまないアンリ。私は運良くこちらの方に助けていただいたのだ。だが………他の者はっ。家族の者に申し訳が……。」
おじさんは涙をにじませる。
だが、遺族の家族だろう。
おじさんを囲み、覚悟の上だったからと声をかけていた。
おじさんは、この街で商会を営む商会長さんだった。
流通ルートを奪われ、また、ゴウマン侯爵に多額のお金を払わなければ仕入れることができない。
街の人たちが貧しくなっていくのを見ていられなくて。
また、隠れ潜んでいる職人がその素材を手に入れられなくて困っているのをどうにかしたくて。
勇士を募って自ら国境を越えたのだという。
遺族のご婦人たちから、体を持ち帰っていただき感謝します、とお礼を言われる。
やるせないよ。
結界を貼っておじさんから聞いた。
スタンピードは人為的なもので、ゴウマン公爵の仕業だった。
スタンピードと流通の独占で皆を雁字搦めにして、逆らう者は皆殺しか、二度と技術職ができないよう潰されてきたという。
研究者は脳を破壊され、生産職は手を潰され………。
ゴウマン公爵。
アクセル殿下の恋人の父親。
愛し合う二人には悪いけど、そんな人の娘を王妃になんかできない。
アクセル殿下は知っているのだろうか。
彼にも王にはなって欲しくない。
王位につくなら気づくべきで、愛していても距離をとるべき。
愛をとるなら、王族を辞めるべきなんだ。
「遅れて申し訳ない…!」
軍馬の音が聞こえる。
ようやく騎士団が到着したようだ。
しかし、騎士団を仕切っているのは、まだ14歳のブレーキ殿下だった。
本当にブレーキ殿下は立派だ。
どういういきさつで彼が騎士団を統率しているのかは分からないが…。
「ああ、犠牲者、がいたのだな…。」
馬車の中の遺体に黙とうを捧げ、ブレーキ殿下は皆をぐるりとみやった。
「………私に出来ることは少ないが、ご遺族の皆様には生活が困ることのないよう、必ず何らかの支援をすると約束しよう。」
そして、俺とシュナイダーに目をあわせた。
結界を張ってブレーキ殿下と対面をする。
部屋には、助けたおじさんと私が仕留め損ねたあの夜の男――――――――――騎士団長。
それに、アミュレット様。
「ミューゼ殿。国民も……本当に申し訳ない。アミュレット様たちもありがとう。アミュレット様がいてくれたお陰で今回は被害が最小限になり、ミューゼ殿だけでも助けることができた。」
「ブレーキ殿下…!!!」
騎士団長もいるところで、アミュレット様のお名前を!
だが、ブレーキ殿下の佇まいや所作は14歳とは思えない。
最後にあったときと全く変わっている。
「……大丈夫。騎士団長はもう、あいつの言いなりにはならない。騎士団員もね。」
ブレーキ殿下は冷ややかにほほ笑む。
「それはどういう?」
「アクセルに国はやらない。僕が次の陛下になる。国に巣食う害悪は全部排除する。シュナイダー様がアミュレット様を助けて避難してくれている間に種は撒けた。僕はまだ子どもと侮られているからね。動き憎い両親の代わりに僕は動いたのだ。スズナ王国のルシフェル殿下やクローバー王国のハピネス殿下が僕を助けてくれた。」
そういうと、どこか一瞬寂しそうな嬉しそうな何とも言えない表情が浮かんで消える。
「この国には、あちこちでゴウマン侯爵に潰されて煮え湯を飲まされている者たちがいるだろう。僕の信書を持って、アミュレット様たちには国中を駆けてもらいたいのです。」
そして、断罪の時は――――――――――。
「おはようございます。アミュレット様。」
宿の窓から光が射しこむ。
「おはよう、シュナイダー。」
身づくろいをして、昨夜のうちに荷物をまとめたリュックを背負う。
冒険者ギルドの2階の宿屋。
2週間しかいなかったのに、ずっと長くいたみたい。
とんとん、階段を降りる。
そこには、ミューゼさんや娘のアンリちゃん、街の人たちが集まっている。
「俺の手を治してくれてありがとうございます!」
「寝た切りだった夫が意識を取り戻して…!!本当にありがとう!」
「時が来るまで俺たちは大人しく潜伏しています。ブレーキ殿下とクローバー王国とスズナ王国が連携してなんかすごい魔法で俺たちを助けてくれるらしいし…。いざとなったらゴーレム人形とすり替わって向こうに逃げてもいいことになっているから……っ。」
「そうそう、俺たちのことは心配しないでください!」
「他の街のみんなも救ってやってください!」
「聖者と勇者の門出に!」
えっ。俺が聖者でシュナイダーが勇者、かな?
なんだか照れちゃう!
「これ、道中で食べてね。」
おかみさんがお弁当を作ってもたせてくれた。
「ありがとうございます!」
荷馬車でこの街に来た僕たちは、ブレーキ殿下がくれた立派な馬に乗って出発する。
この街のみんなの幸福と安全を願って祈りを捧げると、金色の粒子が町中に飛んだ。
「アンリ!」
おじさんを連れて街に戻る。
潰れた馬車を直し、商品と遺体を乗せて。
そばかすの日に焼けたおさげの少女が駆け寄ってきた。
「うぅ………つ、お父さんもいなくなると思ってた!」
「すまないアンリ。私は運良くこちらの方に助けていただいたのだ。だが………他の者はっ。家族の者に申し訳が……。」
おじさんは涙をにじませる。
だが、遺族の家族だろう。
おじさんを囲み、覚悟の上だったからと声をかけていた。
おじさんは、この街で商会を営む商会長さんだった。
流通ルートを奪われ、また、ゴウマン侯爵に多額のお金を払わなければ仕入れることができない。
街の人たちが貧しくなっていくのを見ていられなくて。
また、隠れ潜んでいる職人がその素材を手に入れられなくて困っているのをどうにかしたくて。
勇士を募って自ら国境を越えたのだという。
遺族のご婦人たちから、体を持ち帰っていただき感謝します、とお礼を言われる。
やるせないよ。
結界を貼っておじさんから聞いた。
スタンピードは人為的なもので、ゴウマン公爵の仕業だった。
スタンピードと流通の独占で皆を雁字搦めにして、逆らう者は皆殺しか、二度と技術職ができないよう潰されてきたという。
研究者は脳を破壊され、生産職は手を潰され………。
ゴウマン公爵。
アクセル殿下の恋人の父親。
愛し合う二人には悪いけど、そんな人の娘を王妃になんかできない。
アクセル殿下は知っているのだろうか。
彼にも王にはなって欲しくない。
王位につくなら気づくべきで、愛していても距離をとるべき。
愛をとるなら、王族を辞めるべきなんだ。
「遅れて申し訳ない…!」
軍馬の音が聞こえる。
ようやく騎士団が到着したようだ。
しかし、騎士団を仕切っているのは、まだ14歳のブレーキ殿下だった。
本当にブレーキ殿下は立派だ。
どういういきさつで彼が騎士団を統率しているのかは分からないが…。
「ああ、犠牲者、がいたのだな…。」
馬車の中の遺体に黙とうを捧げ、ブレーキ殿下は皆をぐるりとみやった。
「………私に出来ることは少ないが、ご遺族の皆様には生活が困ることのないよう、必ず何らかの支援をすると約束しよう。」
そして、俺とシュナイダーに目をあわせた。
結界を張ってブレーキ殿下と対面をする。
部屋には、助けたおじさんと私が仕留め損ねたあの夜の男――――――――――騎士団長。
それに、アミュレット様。
「ミューゼ殿。国民も……本当に申し訳ない。アミュレット様たちもありがとう。アミュレット様がいてくれたお陰で今回は被害が最小限になり、ミューゼ殿だけでも助けることができた。」
「ブレーキ殿下…!!!」
騎士団長もいるところで、アミュレット様のお名前を!
だが、ブレーキ殿下の佇まいや所作は14歳とは思えない。
最後にあったときと全く変わっている。
「……大丈夫。騎士団長はもう、あいつの言いなりにはならない。騎士団員もね。」
ブレーキ殿下は冷ややかにほほ笑む。
「それはどういう?」
「アクセルに国はやらない。僕が次の陛下になる。国に巣食う害悪は全部排除する。シュナイダー様がアミュレット様を助けて避難してくれている間に種は撒けた。僕はまだ子どもと侮られているからね。動き憎い両親の代わりに僕は動いたのだ。スズナ王国のルシフェル殿下やクローバー王国のハピネス殿下が僕を助けてくれた。」
そういうと、どこか一瞬寂しそうな嬉しそうな何とも言えない表情が浮かんで消える。
「この国には、あちこちでゴウマン侯爵に潰されて煮え湯を飲まされている者たちがいるだろう。僕の信書を持って、アミュレット様たちには国中を駆けてもらいたいのです。」
そして、断罪の時は――――――――――。
「おはようございます。アミュレット様。」
宿の窓から光が射しこむ。
「おはよう、シュナイダー。」
身づくろいをして、昨夜のうちに荷物をまとめたリュックを背負う。
冒険者ギルドの2階の宿屋。
2週間しかいなかったのに、ずっと長くいたみたい。
とんとん、階段を降りる。
そこには、ミューゼさんや娘のアンリちゃん、街の人たちが集まっている。
「俺の手を治してくれてありがとうございます!」
「寝た切りだった夫が意識を取り戻して…!!本当にありがとう!」
「時が来るまで俺たちは大人しく潜伏しています。ブレーキ殿下とクローバー王国とスズナ王国が連携してなんかすごい魔法で俺たちを助けてくれるらしいし…。いざとなったらゴーレム人形とすり替わって向こうに逃げてもいいことになっているから……っ。」
「そうそう、俺たちのことは心配しないでください!」
「他の街のみんなも救ってやってください!」
「聖者と勇者の門出に!」
えっ。俺が聖者でシュナイダーが勇者、かな?
なんだか照れちゃう!
「これ、道中で食べてね。」
おかみさんがお弁当を作ってもたせてくれた。
「ありがとうございます!」
荷馬車でこの街に来た僕たちは、ブレーキ殿下がくれた立派な馬に乗って出発する。
この街のみんなの幸福と安全を願って祈りを捧げると、金色の粒子が町中に飛んだ。
35
あなたにおすすめの小説
「出来損ない」オメガと幼馴染の王弟アルファの、発情初夜
鳥羽ミワ
BL
ウィリアムは王族の傍系に当たる貴族の長男で、オメガ。発情期が二十歳を過ぎても来ないことから、家族からは「欠陥品」の烙印を押されている。
そんなウィリアムは、政略結婚の駒として国内の有力貴族へ嫁ぐことが決まっていた。しかしその予定が一転し、幼馴染で王弟であるセドリックとの結婚が決まる。
あれよあれよと結婚式当日になり、戸惑いながらも結婚を誓うウィリアムに、セドリックは優しいキスをして……。
そして迎えた初夜。わけもわからず悲しくなって泣くウィリアムを、セドリックはたくましい力で抱きしめる。
「お前がずっと、好きだ」
甘い言葉に、これまで熱を知らなかったウィリアムの身体が潤み、火照りはじめる。
※ムーンライトノベルズ、アルファポリス、pixivへ掲載しています
番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か
雪兎
BL
第二性が存在する世界。
Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。
しかし入学初日、彼の前に現れたのは――
幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。
成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。
だが湊だけが知っている。
彼が異常なほど執着深いことを。
「大丈夫、全部管理してあげる」
「君が困らないようにしてるだけだよ」
座席、時間割、交友関係、体調管理。
いつの間にか整えられていく環境。
逃げ場のない距離。
番を拒みたいΩと、手放す気のないα。
これは保護か、それとも束縛か。
閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。
婚約破棄させた愛し合う2人にザマァされた俺。とその後
結人
BL
王太子妃になるために頑張ってた公爵家の三男アランが愛する2人の愛でザマァされ…溺愛される話。
※男しかいない世界で男同士でも結婚できます。子供はなんかしたら作ることができます。きっと…。
全5話完結。予約更新します。
【完結】伯爵家当主になりますので、お飾りの婚約者の僕は早く捨てて下さいね?
MEIKO
BL
【完結】伯爵家次男のマリンは、公爵家嫡男のミシェルの婚約者として一緒に過ごしているが実際はお飾りの存在だ。そんなマリンは池に落ちたショックで前世は日本人の男子で今この世界が小説の中なんだと気付いた。マズい!このままだとミシェルから婚約破棄されて路頭に迷う未来しか見えない!
僕はそこから前世の特技を活かしてお金を貯め、ミシェルに愛する人が現れるその日に備えだす。2年後、万全の備えと新たな朗報を得た僕は、もう婚約破棄してもらっていいんですけど?ってミシェルに告げる。なのに対象外のはずの僕に未練たらたらなのどうして?
※R対象話には『*』マーク付けます。
愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない
了承
BL
卒業パーティー。
皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。
青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。
皇子が目を向けた、その瞬間——。
「この瞬間だと思った。」
すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。
IFストーリーあり
誤字あれば報告お願いします!
【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】
古森きり
BL
【書籍化決定しました!】
詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります!
たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました!
アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。
政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。
男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。
自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。
行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。
冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。
カクヨムに書き溜め。
小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。
人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました
よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、
前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。
獣人が支配する貴族社会。
魔力こそが価値とされ、
「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、
レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。
そんな彼を拾ったのは、
辺境を治める獣人公爵アルト。
寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。
溺愛され、守られ、育てられる日々。
だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。
学院での出会い。
貴族社会に潜む差別と陰謀。
そして「番」という、深く重い絆。
レオンは学び、考え、
自分にしかできない魔法理論を武器に、
少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。
獣人と人族。
価値観も、立場も、すべてが違う二人が、
それでも選び合い、家族になるまでの物語。
溺愛×成長×異世界BL。
読後に残るのは、
「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。
その首輪は、弟の牙でしか外せない。
ゆずまめ鯉
BL
養子ゆえに、王位継承権を持たないオメガで長男のレイン(24)は、国家騎士団として秘密裏に働き、ただ義弟たちを守るためだけに生きてきた。
第一継承権を持つアルファで次男のリオール(19)は、そんな兄に「ごく潰し」と陰口を叩く連中を許せなかった。自分を犠牲にしてまで守る価値はないと思っていた。なにかと怪我の多い国家騎士団を辞めさせたかった。
初めて訪れた発情期のとき。約束をすっぽかされたリオールが不審に思い、兄の部屋へ行くと、国家騎士団の同僚──グウェンソード(28)に押し倒されるところを目撃して激高する。
「今すぐ部屋から出ろ!」
独占欲をあらわにしたリオールは、グウェンソードを部屋から追い出し、兄であるレインを欲望のままに抱いた。
翌朝、差し出されたのは特注の首輪──外せるのはリオールのみ。
「俺以外に触らせるな」
そう囁かれたレインは、何年も首輪と弟の執着に縛られ続けてきた。
弟には婚約者がいるのに、こんな関係を続けてもいいのか。
本当にこのままでもいいのか。
ひたすら執着して独占したがる弟と、罪悪感に苛まれる兄。
その首輪は、いつか弟の牙で血に染まるのか──。
どうにかしてレインを落としたいリオールと、弟との関係に悩むレインのオメガバースです。
リオール・グランケット(19)×レイン・グランケット(24)
※この作品は2015年頃に本文を書き、2017年頃にオメガバースに改稿、さらに2026年に手直しした作品になります。読みにくいかもしれません。ご了承ください。
三人称ですが攻めだったり受けだったり視点がよくかわります。攻め視点多めです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる