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検事 斉藤和巳

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4月も半ばになり、俺は3つ目の実務研修で、検察庁にいた。

「君は優秀だね。本当に弁護士1択なのかい?検事や裁判官も選択肢に入れてほしいな。」


検事の斉藤和巳さんは、まだ30代半ばの若手のエースだ。
優しく指導してくれる。

検事にしては、髪も長くて見た目ちょっとチャラいけど、中身は真面目で優秀な人だ。

そういう面では、ちょっと拓海に似てるかも。

「俺はオメガですし、あまり組織に入るのも。ヒートで迷惑を掛けるだろうし。」

「弁護士だって、最初から個人事務所は無理なんだから一緒だよ。公務員の方が、そういうの融通利くっていうか、配慮しやすいけどね。君が先駆者になれば、オメガも実力次第で公務員になる道も拓けるだろう。」

「それはそうかもしれないですけど……。」


オメガを守る弁護士になりたい。
その思いは変わらない。


「世の中はね、いい人もいれば悪い人もいる。オメガもそうだよ。大体の事件はオメガが被害者で、泣き寝入りしているオメガが多いのも事実だけどね。狙ったアルファを手に入れるために、態とヒートアタックしたり、嵌める悪いオメガもいる。アルファだとやりにくいんだよね。」

証拠を元に公平に取り扱っても、世論にいじめられるらしい。

斉藤さんはエゴサ癖があるそうだ。

……気にしなきゃいいのに。

かわいいところもある人だな。


「まあ、そういうことだから。弁護士以外でも大歓迎だよ。考えておいて。」





夕方。

今日は思ったより時間が余っちゃったな。

腕時計を見て、拓海にLINE。


『時間が出来たから、夕飯だけ一緒にしない?』

『オッケー』

ふふっ。





久しぶりに大学の校門に行くと、偶然西野に会った。

黒髪メガネの男の人と一緒だ。

「あ、西野。久しぶり。」

「久しぶりね。蜂谷君、元気そうでよかったわ。北村君?」

「うん。夕飯誘ったから。隣の人がもしかして旦那さま?」

「ええ。」

「西野健吾です。はじめまして。」


「蜜璃。」

拓海が来た。

やっぱり最近顔色悪いよな。


「西野、やあ。早くいこう、蜜璃。」

「何をそう急いでるの?」



「拓海?」


あれ?あの子は。拓海の幼なじみの。

花梨が近づいて、拓海の腕に手を絡める。


「蜂谷さん。私たち、結婚するの。お腹に拓海の「やめろ!」」

え…………。
ちょっと、どういうこと?


「話をしよう。蜜璃。」

うん……。






3人の背中を見送って、西野夫婦は眉を寄せた。

「大丈夫かしら、蜂谷くん……。」

「あの女の子。あの匂い…。」

「健吾?」

「いや、氷室が最近まで付き合っていた女の子じゃないかって。」
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