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運命の反転

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お昼が過ぎても

日が暮れても


月が昇っても


拓海は来なくて。


「………大丈夫だよね、事故とか事件とか巻き込まれていないよね。もしそんなことになってたらニュースになってるはずだもん。」



やっと22時に電話が来た。


『……ごめん。連絡もしなくて。』

沈んだ声。なにかあったんだろう。

「今、どこにいるの?」


『………下。』


バッと窓から見下ろすと、拓海。


アパートの階段を駆け下りて、拓海をぎゅっと掴んだ。

どこかへ行ってしまいそうな拓海。

どこにもいかないで。


「パーティの準備してたんだ。遅くなっちゃったけど、食べて行って。」


「……うん。ありがとう。ごめんね、おなかすいたでしょう。」

何回も何回もごめんって謝る拓海。

本当に何があったの。






初めて蜜瑠の部屋に上がった。

殆ど物がないこざっぱりした空間の中に、二人の思い出の写真が飾られた写真立てが並んで。

蜜瑠が今日のために用意してくれていたごちそうが並んだ。


胸が苦しい。


「はい、本当は最後に渡す予定だったんだけど。日付が変わる前に渡したかったから。」

照れくさそうに渡された包みは、手作りのチョコレートだった。

「拓海にだけ、自分で作ったんだから。初めてだから、まずかったら捨てていいけど…。」

「いや…。ありがとう。食べるよ。」


苦しい。


「蜜瑠。蜜瑠。」


蜜瑠を抱きしめる。


「なに!?どうしたの、本当に今日変だよ?」



何があったのか、言わなきゃ……。


もう俺、蜜瑠に相応しくない。


…………っ。





言えない。










「そういえばもう春休みに入ってるんだっけ。」


「……ああ。今週頭までは集中講義入れてたんだけど、それも終わったから4月までは暫くないかな。」


「就職活動どう?」


「就職活動はしていないんだ。国家公務員試験に向けて勉強しているよ。春先に試験がある。蜜瑠に負けてられないからな。」


そっかぁ。じゃあ今が一番大事な時だ。
拓海ならばっちり合格するだろうけど。

春休みに入ったら、少しだけ。本当にもう少しだけ会えないかなぁって思ってたけど、誘うのはやめておこう。








蜜瑠に言えなかった。

眠気から覚めると、花梨は服が乱れていて泣いていて。

帰宅した花梨の両親に責められた。


花梨にはヒートの匂いはしなかったから、発情期ではなかったと思うけど。


北村の両親にもすぐ連絡がいってしまって、花梨との縁談の話が出る可能性がある。



俺はどうしても自分が過ちを犯した気がしない。


けれど、否定も出来ずに責められるだけ責められるしかなかった。


もし、結婚しなければならなくなったら…。



蜜瑠と別れなければならない。

どんなにつらくても。











氷室さんは会ってくれなくなっていたし、最後に会ってから日にちも経ってて、保険で香料のきつい香水を今日はつけていたから、拓海は匂いで判断できなかったと思う。

何かあったと、勘違いしてくれたらいい。


ふふふ…。

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