30 / 82
運命の反転
しおりを挟む
お昼が過ぎても
日が暮れても
月が昇っても
拓海は来なくて。
「………大丈夫だよね、事故とか事件とか巻き込まれていないよね。もしそんなことになってたらニュースになってるはずだもん。」
やっと22時に電話が来た。
『……ごめん。連絡もしなくて。』
沈んだ声。なにかあったんだろう。
「今、どこにいるの?」
『………下。』
バッと窓から見下ろすと、拓海。
アパートの階段を駆け下りて、拓海をぎゅっと掴んだ。
どこかへ行ってしまいそうな拓海。
どこにもいかないで。
「パーティの準備してたんだ。遅くなっちゃったけど、食べて行って。」
「……うん。ありがとう。ごめんね、おなかすいたでしょう。」
何回も何回もごめんって謝る拓海。
本当に何があったの。
初めて蜜瑠の部屋に上がった。
殆ど物がないこざっぱりした空間の中に、二人の思い出の写真が飾られた写真立てが並んで。
蜜瑠が今日のために用意してくれていたごちそうが並んだ。
胸が苦しい。
「はい、本当は最後に渡す予定だったんだけど。日付が変わる前に渡したかったから。」
照れくさそうに渡された包みは、手作りのチョコレートだった。
「拓海にだけ、自分で作ったんだから。初めてだから、まずかったら捨てていいけど…。」
「いや…。ありがとう。食べるよ。」
苦しい。
「蜜瑠。蜜瑠。」
蜜瑠を抱きしめる。
「なに!?どうしたの、本当に今日変だよ?」
何があったのか、言わなきゃ……。
もう俺、蜜瑠に相応しくない。
…………っ。
言えない。
「そういえばもう春休みに入ってるんだっけ。」
「……ああ。今週頭までは集中講義入れてたんだけど、それも終わったから4月までは暫くないかな。」
「就職活動どう?」
「就職活動はしていないんだ。国家公務員試験に向けて勉強しているよ。春先に試験がある。蜜瑠に負けてられないからな。」
そっかぁ。じゃあ今が一番大事な時だ。
拓海ならばっちり合格するだろうけど。
春休みに入ったら、少しだけ。本当にもう少しだけ会えないかなぁって思ってたけど、誘うのはやめておこう。
蜜瑠に言えなかった。
眠気から覚めると、花梨は服が乱れていて泣いていて。
帰宅した花梨の両親に責められた。
花梨にはヒートの匂いはしなかったから、発情期ではなかったと思うけど。
北村の両親にもすぐ連絡がいってしまって、花梨との縁談の話が出る可能性がある。
俺はどうしても自分が過ちを犯した気がしない。
けれど、否定も出来ずに責められるだけ責められるしかなかった。
もし、結婚しなければならなくなったら…。
蜜瑠と別れなければならない。
どんなにつらくても。
氷室さんは会ってくれなくなっていたし、最後に会ってから日にちも経ってて、保険で香料のきつい香水を今日はつけていたから、拓海は匂いで判断できなかったと思う。
何かあったと、勘違いしてくれたらいい。
ふふふ…。
日が暮れても
月が昇っても
拓海は来なくて。
「………大丈夫だよね、事故とか事件とか巻き込まれていないよね。もしそんなことになってたらニュースになってるはずだもん。」
やっと22時に電話が来た。
『……ごめん。連絡もしなくて。』
沈んだ声。なにかあったんだろう。
「今、どこにいるの?」
『………下。』
バッと窓から見下ろすと、拓海。
アパートの階段を駆け下りて、拓海をぎゅっと掴んだ。
どこかへ行ってしまいそうな拓海。
どこにもいかないで。
「パーティの準備してたんだ。遅くなっちゃったけど、食べて行って。」
「……うん。ありがとう。ごめんね、おなかすいたでしょう。」
何回も何回もごめんって謝る拓海。
本当に何があったの。
初めて蜜瑠の部屋に上がった。
殆ど物がないこざっぱりした空間の中に、二人の思い出の写真が飾られた写真立てが並んで。
蜜瑠が今日のために用意してくれていたごちそうが並んだ。
胸が苦しい。
「はい、本当は最後に渡す予定だったんだけど。日付が変わる前に渡したかったから。」
照れくさそうに渡された包みは、手作りのチョコレートだった。
「拓海にだけ、自分で作ったんだから。初めてだから、まずかったら捨てていいけど…。」
「いや…。ありがとう。食べるよ。」
苦しい。
「蜜瑠。蜜瑠。」
蜜瑠を抱きしめる。
「なに!?どうしたの、本当に今日変だよ?」
何があったのか、言わなきゃ……。
もう俺、蜜瑠に相応しくない。
…………っ。
言えない。
「そういえばもう春休みに入ってるんだっけ。」
「……ああ。今週頭までは集中講義入れてたんだけど、それも終わったから4月までは暫くないかな。」
「就職活動どう?」
「就職活動はしていないんだ。国家公務員試験に向けて勉強しているよ。春先に試験がある。蜜瑠に負けてられないからな。」
そっかぁ。じゃあ今が一番大事な時だ。
拓海ならばっちり合格するだろうけど。
春休みに入ったら、少しだけ。本当にもう少しだけ会えないかなぁって思ってたけど、誘うのはやめておこう。
蜜瑠に言えなかった。
眠気から覚めると、花梨は服が乱れていて泣いていて。
帰宅した花梨の両親に責められた。
花梨にはヒートの匂いはしなかったから、発情期ではなかったと思うけど。
北村の両親にもすぐ連絡がいってしまって、花梨との縁談の話が出る可能性がある。
俺はどうしても自分が過ちを犯した気がしない。
けれど、否定も出来ずに責められるだけ責められるしかなかった。
もし、結婚しなければならなくなったら…。
蜜瑠と別れなければならない。
どんなにつらくても。
氷室さんは会ってくれなくなっていたし、最後に会ってから日にちも経ってて、保険で香料のきつい香水を今日はつけていたから、拓海は匂いで判断できなかったと思う。
何かあったと、勘違いしてくれたらいい。
ふふふ…。
応援ありがとうございます!
2
お気に入りに追加
1,161
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる