ヤンデレ王子は姫騎士を包囲する

竜鳴躍

文字の大きさ
13 / 14

この愛を君に

しおりを挟む
ーーーーー神獣だ。



誰もが息をのんだ。


「ディヴィッド様!私がお守りします! 下がって!!」


アンジュが剣を抜き、僕の前に立つ。


「アンジュ、ありがとう。でもお願い。横にいて。」

「は、はい…。」


アンジュを制して、アンジュの隣に進む。


本当はアンジュを僕が守りたい。

だけど、きっとこれが僕たちにとって最もいい立ち位置。



神獣の目を見る。

静かな、怒り。



思い当たることがある。


クリスが何か言いたそうにしたが、僕は、目で合図をした。



クリスの部隊も、警戒はしつつも、僕を見守ってくれている。



「神獣様。」


僕は誠意をもって片膝をついた。

「神聖な山に立ち入り、騒ぎを起こし、山の者の血を流してしまったことをお詫びします。
今回の過ちは、僕の中で永遠に楔のように残るでしょう。
もはやこのような愚かなことはしない。
過ぎたことは返ってきません、謝罪など意味をなさないかもしれませんが、
申し訳ありませんでした…。」



『人の子の王子よ。分かってくれてうれしい。だが、私の山から勝手にものを持ち出されては困る。』


「…申し訳ありません。勝手な、たいへん勝手なお願いですが、今回だけ!私にブルーローズをわけていただけないでしょうか!?」

『なぜ、この花を望む?』

「この花は、人に勇気を与えると聞いています。不思議と、見ていると心が落ち着き、力が湧いてくるのを感じます。私には、ずっと前からともに人生を歩んでほしい、妃として隣に立ってほしいと願う女性がいます。彼女へ心を伝えるための勇気が欲しかったのです。」


『ふむ…。だが、それは渡せないな。それを持ち出されては、二度とこの花は咲くことがなくなってしまう。それに、地上に持って帰っても、すぐ枯れてしまうだろう。』

「そんな…」


竜が優しくほほ笑んで、鼻先をふいっと横にして、合図をした。

その方向ーーーー隣にいるアンジュを見る。

アンジュは剣をおろし、僕の隣にひざまずいて、頬を染め、潤んだ瞳で、僕の顔をじっと見ていた。


「あっ、あのねっ、それってもしかして…。」

「アンジュのことだよ。僕はアンジュに僕のお嫁さんになってほしいんだよ。」

「私、お茶会や社交界なんて開けないわ!刺繍だってできないのよ?」

「構わないよ。」

「騎士団の仕事好きだわ!」

「僕も騎士の君が好きだよ。どんな君でも君なら好きなんだよ。」


アンジュが泣き出し、僕の肩に縋りついた。


『ほら、ブルーローズは要らなかっただろう?』


いえ、ブルーローズがあったから。
僕は勇気を出せた。


「ありがとうございました。ブルーローズはお返しします。」


容器ごと差し出すと、神獣の懐にブルーローズは消えていった。


『人の子の王子よ、祝いにこれをやろう。ブルーローズの代わりと言っては何だが。』


手を差し出すと、青い、しずくのようなキラキラした石。


『愛する者にくれてやるといい。』


そういって、神獣は消えていった。



帰り道はスムーズで。

城に戻ると、陛下も母も、アンジュの両親も待っていた。

そして、なぜか親戚の公爵がクリスを回収していった。

クリスが青い顔をしていたけど、何か二人の間にあるのだろうか。

アンジュと僕の距離は近くなり、騎士団長は怒っていたけど、ミレニア様にたしなめられて、無事、僕らは婚約者になることができた。


卒業したら結婚するけど、アンジュは騎士団にも入る予定。
本来は王子の方が騎士団の仕事をするんだけど、アンジュに任せようかなと思っている。
僕はボランティアとか、社交界とかその他もろもろの事務をすればいいよね。


「そういえば、おまえ、学園で側近候補は見つかったか?」

陛下に尋ねられた。


「僕はできれば、クリスがいいです。」

「なぜ?年も6つくらい離れてるだろう。」

「僕が暴走したら、止めてほしい。僕が過ちをおかしそうになったら、たしなめてほしい。それができるのが、クリスだからです。」

「わかった。」

クリスの叫び声が聞こえてきそうだけど、僕らに付き合ってもらうことにしよう。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

暴君幼なじみは逃がしてくれない~囚われ愛は深く濃く

なかな悠桃
恋愛
暴君な溺愛幼なじみに振り回される女の子のお話。 ※誤字脱字はご了承くださいm(__)m

【完結】離婚を切り出したら私に不干渉だったはずの夫が激甘に豹変しました

雨宮羽那
恋愛
 結婚して5年。リディアは悩んでいた。  夫のレナードが仕事で忙しく、夫婦らしいことが何一つないことに。  ある日「私、離婚しようと思うの」と義妹に相談すると、とある薬を渡される。  どうやらそれは、『ちょーっとだけ本音がでちゃう薬』のよう。  そうしてやってきた離婚の話を告げる場で、リディアはつい好奇心に負けて、夫へ薬を飲ませてしまう。  すると、あら不思議。  いつもは浮ついた言葉なんて口にしない夫が、とんでもなく甘い言葉を口にしはじめたのだ。 「どうか離婚だなんて言わないでください。私のスイートハニーは君だけなんです」 (誰ですかあなた) ◇◇◇◇ ※全3話。 ※コメディ重視のお話です。深く考えちゃダメです!少しでも笑っていただけますと幸いです(*_ _))*゜ ※AI不使用です。

狂おしいほど愛しています、なのでよそへと嫁ぐことに致します

ちより
恋愛
 侯爵令嬢のカレンは分別のあるレディだ。頭の中では初恋のエル様のことでいっぱいになりながらも、一切そんな素振りは見せない徹底ぶりだ。  愛するエル様、神々しくも真面目で思いやりあふれるエル様、その残り香だけで胸いっぱいですわ。  頭の中は常にエル様一筋のカレンだが、家同士が決めた結婚で、公爵家に嫁ぐことになる。愛のない形だけの結婚と思っているのは自分だけで、実は誰よりも公爵様から愛されていることに気づかない。  公爵様からの溺愛に、不器用な恋心が反応したら大変で……両思いに慣れません。

モブな令嬢は第二皇子の溺愛から逃れたい

エヌ
恋愛
王子様、どうか私に興味は持たないでくださいね!

【完結】番としか子供が産まれない世界で

さくらもち
恋愛
番との間にしか子供が産まれない世界に産まれたニーナ。 何故か親から要らない子扱いされる不遇な子供時代に番と言う概念すら知らないまま育った。 そんなニーナが番に出会うまで 4話完結 出会えたところで話は終わってます。

幼い頃に、大きくなったら結婚しようと約束した人は、英雄になりました。きっと彼はもう、わたしとの約束なんて覚えていない

ラム猫
恋愛
 幼い頃に、セレフィアはシルヴァードと出会った。お互いがまだ世間を知らない中、二人は王城のパーティーで時折顔を合わせ、交流を深める。そしてある日、シルヴァードから「大きくなったら結婚しよう」と言われ、セレフィアはそれを喜んで受け入れた。  その後、十年以上彼と再会することはなかった。  三年間続いていた戦争が終わり、シルヴァードが王国を勝利に導いた英雄として帰ってきた。彼の隣には、聖女の姿が。彼は自分との約束をとっくに忘れているだろうと、セレフィアはその場を離れた。  しかし治療師として働いているセレフィアは、彼の後遺症治療のために彼と対面することになる。余計なことは言わず、ただ彼の治療をすることだけを考えていた。が、やけに彼との距離が近い。  それどころか、シルヴァードはセレフィアに甘く迫ってくる。これは治療者に対する依存に違いないのだが……。 「シルフィード様。全てをおひとりで抱え込もうとなさらないでください。わたしが、傍にいます」 「お願い、セレフィア。……君が傍にいてくれたら、僕はまともでいられる」 ※糖度高め、勘違いが激しめ、主人公は鈍感です。ヒーローがとにかく拗れています。苦手な方はご注意ください。 ※『小説家になろう』様『カクヨム』様にも投稿しています。

【完結】冷遇・婚約破棄の上、物扱いで軍人に下賜されたと思ったら、幼馴染に溺愛される生活になりました。

天音ねる(旧:えんとっぷ)
恋愛
【恋愛151位!(5/20確認時点)】 アルフレッド王子と婚約してからの間ずっと、冷遇に耐えてきたというのに。 愛人が複数いることも、罵倒されることも、アルフレッド王子がすべき政務をやらされていることも。 何年間も耐えてきたのに__ 「お前のような器量の悪い女が王家に嫁ぐなんて国家の恥も良いところだ。婚約破棄し、この娘と結婚することとする」 アルフレッド王子は新しい愛人の女の腰を寄せ、婚約破棄を告げる。 愛人はアルフレッド王子にしなだれかかって、得意げな顔をしている。 誤字訂正ありがとうございました。4話の助詞を修正しました。

婚約者は冷酷宰相様。地味令嬢の私が政略結婚で嫁いだら、なぜか激甘溺愛が待っていました

春夜夢
恋愛
私はずっと「誰にも注目されない地味令嬢」だった。 名門とはいえ没落しかけの伯爵家の次女。 姉は美貌と才覚に恵まれ、私はただの飾り物のような存在。 ――そんな私に突然、王宮から「婚約命令」が下った。 相手は、王の右腕にして恐れられる冷酷宰相・ルシアス=ディエンツ公爵。 40を目前にしながら独身を貫き、感情を一切表に出さない男。 (……なぜ私が?) けれど、その婚約は国を揺るがす「ある計画」の始まりだった。

処理中です...