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新婚編

貴方を癒したい②

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「俺たち、スラムでその日暮らしの生活してた。どんな国にも私服を肥やすばかりで領民の生活なんてこれっぽちも考えない貴族はいるもんでさ。あの頃は、この国も今より酷かったもんだ。嫁いだ王女は儚くなって王子は行方不明。跡取りを失った陛下たちに我先に売り込むような奴らが多くて、今思えば陛下も王妃様も頑張ってたんだろうけど、信頼できる手駒が足りていなかったんだろうな。だから、重すぎる税金や不作や不漁で生活できなくなった者は、どんどん劣悪な環境に追いやられ、自ずとストリートチルドレンも増えていったんだ。」


そのころ、ジャンも両親に捨てられたばかりで。

だけど、俺たちと違ってあいつの親はすむ場所も仕事もあいつに残していた。


あの日。俺はパン屋にパンを盗みに行ったんだ。






はぁ、はぁ。

『捕まえたぞ!』

『ちっくしょう…ッ!』

ぎゅるる……。


『腹が減ってるのか。それならそれは売り物だから、タダの奴をやるよ。ちょっと待ってろ。』


ジャンは、パン屋の主人のところからパンの耳を貰って、自分の家に俺を連れて行った。

ジャンはパンの耳を揚げて、蜜をかけてお菓子を作ってくれた。

んで、パン屋のおかみさんに頭を下げて、俺に仕事を斡旋してくれた。



「そのうち仲良くなってさ、俺たちもガキだったから正義の味方になった気分で、悪いことをしている貴族の家に忍び込んで、悪事を暴いたり、奪われた金銭を元の持ち主に返したり攫われてる女の子を解放してあげたり色々やってたんだよな。でも、正義のつもりでも、やってることは盗賊と変わらなかったんだよ。陛下の騎士団に見つかってさぁ、捕まえられてさぁ。言われたなぁ。『正義を貫くなら、相手と同じ土俵に立ってはダメだ。』って。陛下も、国内の悪い貴族を処分しようとあれこれ探っていたらしくて。かえって邪魔をしてしまってたんだ。」


「なるほど、それで騎士団に入ったんですね。」

「そう。悪いことしている人を調べて、証拠をあつめて、それで捕まえる。正当なやり方で、正義を叶えるように言われた。………俺さぁ。」



ホリックが振り返って僕の顔を見た。


「ポラリス様があいつの妃になってくれて、嬉しいよ。あいつ、本当は寂しいんだ。子どもの頃に捨てられたから。昔、寝てると丸まって泣くんだよ。行かないで、って。しっかりしててもまだ甘えたかったんだ。」



えっ…。

僕の方が先に寝ちゃうから気づかなかった。



「ポラリス殿下はふわふわしてて癒され系だから、癒してやってよ。」


そんな話をしている間に騎士団の詰所についた。





「ジャン!」


「ポラリス!どうしたんだ?」


「みんなに御菓子の御裾分け。騎士団で食べて。」

「ありがとう、みんな喜ぶよ。」



「ジャン。」

ジャンをぎゅっと抱きしめる。



「な、なに?どうしたの??」


貴方を癒したい。
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