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俺の番
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犬獣人は、群れる。
群れの頭さえ潰せば、俺たちは従順だ。
弱者は強者に従う、それが遺伝子に刻まれている。
てっきり捕虜としてとらえられ、牢に入れられるのかと思いきや、俺たちは城に集められた。
そして、俺は兵士の最前列で膝間づき、新しい王の登場を待つ。
一体、シン王は何を俺たちに伝えるつもりなのか。
しばらくして、仮面の男がエン将軍を伴って現れた。
そして、その後ろには、どうみても獣人の尾をもった幼子が。
ああ、いい匂い。
まさか。
そして、その幼子は。
もし、あのとき。出来ていたとしたら、ちょうどこの位ーーーーーーー。
「俺は、かつての申国の過ちは繰り返さない。そして、シルバーウルフ王国の過ちもなぞらない。種族の違いはあれど、それぞれ足りぬところもあれば素晴らしいところがある。それは個性であって、どの種が優れているとかの優劣ではない。そして、不幸や怨嗟の連鎖もここで断ち切りたい。だから、俺は、シンの民もシルバーウルフの民も平等に扱うし、前王の子や孫や家族親族を皆殺しになどはしない。」
仮面の男は、澄んだ水が響くような声で、俺たちにそう宣言し、仮面を外した。
黒曜石のような眼。知性と気品にあふれた、強い眼差し。
俺の番ーーーーーーーーー。
俺の部下たちがざわつく。
そうだ、キャンプにいたあの子だ。
彼は、俺たちに姿を知られていたから仮面をつけていたのだ。
「この子は俺の子だが、半分は君たちと同じ血を引いている。馬鹿らしいと思わないか?こうして混血児がちゃんと生まれてくる、それこそが俺たちが共存できる証ではないか。」
「シン王!!!!!!!!」
俺は、思わず王のそばへ走った。
「会いたかった、あなたは俺の番。約束したことを覚えていますか!?」
抱きしめようとして、襟に隠れたうなじに俺の噛み痕を見た。
間違いない。
「--------お前は。」
「…おかあさま?」
「子どもの前だ、お前とは後で話そう。」
いなそうとした俺を、子どもの声で気づいてやめ、続ける。
「それでは、各自、これまでどおり国のため働いてくれ。
まずは、奴隷を開放し、保護してきてほしい。混血児が生まれていたら、その子も。
ただし、夫となる獣人と良好な関係を築いているなら、引き裂く必要はない。」
ああ、やっと。やっとまた会えた。
群れの頭さえ潰せば、俺たちは従順だ。
弱者は強者に従う、それが遺伝子に刻まれている。
てっきり捕虜としてとらえられ、牢に入れられるのかと思いきや、俺たちは城に集められた。
そして、俺は兵士の最前列で膝間づき、新しい王の登場を待つ。
一体、シン王は何を俺たちに伝えるつもりなのか。
しばらくして、仮面の男がエン将軍を伴って現れた。
そして、その後ろには、どうみても獣人の尾をもった幼子が。
ああ、いい匂い。
まさか。
そして、その幼子は。
もし、あのとき。出来ていたとしたら、ちょうどこの位ーーーーーーー。
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仮面の男は、澄んだ水が響くような声で、俺たちにそう宣言し、仮面を外した。
黒曜石のような眼。知性と気品にあふれた、強い眼差し。
俺の番ーーーーーーーーー。
俺の部下たちがざわつく。
そうだ、キャンプにいたあの子だ。
彼は、俺たちに姿を知られていたから仮面をつけていたのだ。
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「シン王!!!!!!!!」
俺は、思わず王のそばへ走った。
「会いたかった、あなたは俺の番。約束したことを覚えていますか!?」
抱きしめようとして、襟に隠れたうなじに俺の噛み痕を見た。
間違いない。
「--------お前は。」
「…おかあさま?」
「子どもの前だ、お前とは後で話そう。」
いなそうとした俺を、子どもの声で気づいてやめ、続ける。
「それでは、各自、これまでどおり国のため働いてくれ。
まずは、奴隷を開放し、保護してきてほしい。混血児が生まれていたら、その子も。
ただし、夫となる獣人と良好な関係を築いているなら、引き裂く必要はない。」
ああ、やっと。やっとまた会えた。
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