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閑話 クルシュ
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オアシスの国、宗教国クロス王国。
近くの申という国等、他の国にいる人間と違って、みんな多かれ少なかれ魔力を持って生まれてくる。
先祖に精霊が混じっているとか、エルフが混じっているとか、まことしやかに言われるけれど、どれが真実かは分からない。
「これ! 何回言えばわかるんだ、クルシュ!屋根の上に上るんじゃない!!はしたないっ!」
あーあ。下の方で、親父が喚いている。
一応、この王国の王が俺の親父で、母親はいない。
見つかっちゃったかあ。ここから見る景色が好きなんだけどな。
変わり映えのしない景色の中で、遠くの異国がわずかに見えるから。
するすると降りていくと、父親に嘆かれた。
「全くもう、お前というやつは!見た目はエルシュにそっくりなのに…。」
エルシュは俺の母親だ。
俺の亜麻色の髪も、緑色の目も、全部母親の色。顔の造形も母親に似ているらしくて、昔から『黙っていれば美人』『残念王子』とよく言われたものだ。
「産む方なのに、そんなんじゃあ婿が捕まえられないぞ。」
「俺、190くらいあるんだぞ。こんな図体でかいの、元々貰い手なんてないってば。」
運動神経良いし、体動かすの好きだから、なんか剣とか振り回したら筋肉ついちゃったし。
「筋肉があろうが、図体が大きかろうが、お前は美しいんだからそんなことは言うんじゃない。」
そうかなぁ。親の欲目だと思うけど。
「しかし、お前はいつになっても回復魔法が目覚めないな。」
「そりゃあね。回復魔法って、『もう死ぬ―!』って思うような目に合わないと目覚めないんでしょ。俺、才能なかったんだよ。身体強化の魔法なら使えるんだけどねー。」
「…私の時は、ちょっと高いところから突き飛ばされるくらいで目覚められたんだがなぁ。お前は大体平気だからな…。」
「この国の王子が回復魔法使えないなんて、カッコつかないでしょ。誰か優秀な子を跡取りにするといいよ。」
そういうと、父親は顔を真っ青にした。
愛されてるのは分かってるんだ。
ごめん。
でも、正直ここでの生活は窮屈で。
夜の闇に抜けて獣人の国へ来た。
この国はちょいちょい隣国とけんかしてるっぽい。
もふもふ、かわいいなー。
ここへもぐりこむために、隣国の申で準備をした。
戦いに敗れて死んだ獣人から少しずつ毛を拝借して、偽物の耳と尻尾を作った。
毎日、毛玉を回収して香袋に入れて持ち運んだ。
「よっ、お前が新入りか?見ない顔だな?どっからきた?」
「へへ、俺はクルシュ。まあ詮索はよしてよ。みんな脛に傷の一つや二つ、あるだろう?」
身体強化の魔法をこっそりかければ、獣人の運動神経ともさほど変わらないし、人間としては大きかった体も、ここでは平均的だ。
兵士の集団にもぐりこんで3か月。
王が視察に見えた。
うちの親父とは違う、3メートル近い巨躯で、筋骨隆々とした壮年の狼獣人。
ワイルドだなぁ。
集団の中に紛れて、遠巻きに王を見ていた。
しかし、王の目は、こちらを居ぬき。
気が付くと、俺の腕は王に捕らえられていた。
「なかなか愛いやつがいるではないか。」
腕を引かれ、腕の中に拘束される。
「王、そのものはクルシュと言います。どうやら身寄りがないようで、いつのまにか兵士になりました。頭もいいですし、体格はそれほどよくはありませんが、剣筋もなかなかいいですよ。」
宰相が、俺のことを説明している。
「クルシュか、可愛い名前だ。お前は、孕む方だな。気に入った。今日から俺の妃の一人になれ。」
あんぐと口が開き、項を噛まれた。
そのあとのことはよく覚えていない。
気が付くと、人払いをされた部屋で、ベッドに投げ捨てられていた。
「……!!」
裸に剥かれ、耳と尻尾を投げ捨てられていることに気づく。
「あわてるな、最初から気づいていたわ。」
俺は、人間を抱いてみたかったのよ。
「お前が人間だということは、俺しか知らないようにする。お前はもう、俺から逃げられない。一生、この城の中で俺に飼われて、俺の子を孕むのだ。」
「………!!」
抵抗しようとしても、体は動かなかった。
俺は王のいいなり。逆らえない。
これが、番契約の力だった。
王は、自分なりに俺のそこを広げてから入れようと、一応は努力したようだが、途中で飽きたらしい。
「……ッッ!!アアァアアアアアアアアア!!!!!!」
嬌声ではなく悲鳴を俺はあげた。
「これからは、俺のために広げておけ。手間をかけさせるな。」
王のそれは、とても大きく、凶悪で、長かった。
鋭い刀が、俺の中で暴れまわる。
血と精液で体が濡れた。
しぬ。
くわれる。
殺される…。
お父様、ごめんなさい。
勝手に家出してごめんなさい。
悪いことをしたから、罰が当たった。
そう思った瞬間、回復魔法が目覚めた。
近くの申という国等、他の国にいる人間と違って、みんな多かれ少なかれ魔力を持って生まれてくる。
先祖に精霊が混じっているとか、エルフが混じっているとか、まことしやかに言われるけれど、どれが真実かは分からない。
「これ! 何回言えばわかるんだ、クルシュ!屋根の上に上るんじゃない!!はしたないっ!」
あーあ。下の方で、親父が喚いている。
一応、この王国の王が俺の親父で、母親はいない。
見つかっちゃったかあ。ここから見る景色が好きなんだけどな。
変わり映えのしない景色の中で、遠くの異国がわずかに見えるから。
するすると降りていくと、父親に嘆かれた。
「全くもう、お前というやつは!見た目はエルシュにそっくりなのに…。」
エルシュは俺の母親だ。
俺の亜麻色の髪も、緑色の目も、全部母親の色。顔の造形も母親に似ているらしくて、昔から『黙っていれば美人』『残念王子』とよく言われたものだ。
「産む方なのに、そんなんじゃあ婿が捕まえられないぞ。」
「俺、190くらいあるんだぞ。こんな図体でかいの、元々貰い手なんてないってば。」
運動神経良いし、体動かすの好きだから、なんか剣とか振り回したら筋肉ついちゃったし。
「筋肉があろうが、図体が大きかろうが、お前は美しいんだからそんなことは言うんじゃない。」
そうかなぁ。親の欲目だと思うけど。
「しかし、お前はいつになっても回復魔法が目覚めないな。」
「そりゃあね。回復魔法って、『もう死ぬ―!』って思うような目に合わないと目覚めないんでしょ。俺、才能なかったんだよ。身体強化の魔法なら使えるんだけどねー。」
「…私の時は、ちょっと高いところから突き飛ばされるくらいで目覚められたんだがなぁ。お前は大体平気だからな…。」
「この国の王子が回復魔法使えないなんて、カッコつかないでしょ。誰か優秀な子を跡取りにするといいよ。」
そういうと、父親は顔を真っ青にした。
愛されてるのは分かってるんだ。
ごめん。
でも、正直ここでの生活は窮屈で。
夜の闇に抜けて獣人の国へ来た。
この国はちょいちょい隣国とけんかしてるっぽい。
もふもふ、かわいいなー。
ここへもぐりこむために、隣国の申で準備をした。
戦いに敗れて死んだ獣人から少しずつ毛を拝借して、偽物の耳と尻尾を作った。
毎日、毛玉を回収して香袋に入れて持ち運んだ。
「よっ、お前が新入りか?見ない顔だな?どっからきた?」
「へへ、俺はクルシュ。まあ詮索はよしてよ。みんな脛に傷の一つや二つ、あるだろう?」
身体強化の魔法をこっそりかければ、獣人の運動神経ともさほど変わらないし、人間としては大きかった体も、ここでは平均的だ。
兵士の集団にもぐりこんで3か月。
王が視察に見えた。
うちの親父とは違う、3メートル近い巨躯で、筋骨隆々とした壮年の狼獣人。
ワイルドだなぁ。
集団の中に紛れて、遠巻きに王を見ていた。
しかし、王の目は、こちらを居ぬき。
気が付くと、俺の腕は王に捕らえられていた。
「なかなか愛いやつがいるではないか。」
腕を引かれ、腕の中に拘束される。
「王、そのものはクルシュと言います。どうやら身寄りがないようで、いつのまにか兵士になりました。頭もいいですし、体格はそれほどよくはありませんが、剣筋もなかなかいいですよ。」
宰相が、俺のことを説明している。
「クルシュか、可愛い名前だ。お前は、孕む方だな。気に入った。今日から俺の妃の一人になれ。」
あんぐと口が開き、項を噛まれた。
そのあとのことはよく覚えていない。
気が付くと、人払いをされた部屋で、ベッドに投げ捨てられていた。
「……!!」
裸に剥かれ、耳と尻尾を投げ捨てられていることに気づく。
「あわてるな、最初から気づいていたわ。」
俺は、人間を抱いてみたかったのよ。
「お前が人間だということは、俺しか知らないようにする。お前はもう、俺から逃げられない。一生、この城の中で俺に飼われて、俺の子を孕むのだ。」
「………!!」
抵抗しようとしても、体は動かなかった。
俺は王のいいなり。逆らえない。
これが、番契約の力だった。
王は、自分なりに俺のそこを広げてから入れようと、一応は努力したようだが、途中で飽きたらしい。
「……ッッ!!アアァアアアアアアアアア!!!!!!」
嬌声ではなく悲鳴を俺はあげた。
「これからは、俺のために広げておけ。手間をかけさせるな。」
王のそれは、とても大きく、凶悪で、長かった。
鋭い刀が、俺の中で暴れまわる。
血と精液で体が濡れた。
しぬ。
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お父様、ごめんなさい。
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そう思った瞬間、回復魔法が目覚めた。
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