真面目な近衛騎士は借金返済のために雄っぱぶ嬢になりました。

竜鳴躍

文字の大きさ
17 / 89

一線

しおりを挟む
私のスペースに誘うと、意外にもその客は私の手をとってエスコートをした。
夜会によばれない貴族だから下位貴族だと思っていたが、もしかしたら上位貴族なのかもしれない。

「エスコート……、ありがとうございます。」

「フン。私は今でこそ子爵令息だが、元々は侯爵だったのだぞ!誰が相手だろうと、エスコートくらい身に染みている。」



少し、酒の匂いがする。


「君、いい体してるな。鍛えられた体だ。騎士だったのか?」

「……どうでしょう?」

「俺の父も騎士だった。公爵夫人のお願いなんて無視していれば…更迭なんかされず、俺だって今頃は…。」

「お客様…。」

公爵夫人のお願いをきいたせいで、彼の父親は更迭され、降爵となったのか。
その時に騎士という職も取り上げられたのだろう。


「君も、なんかやらかしたのか?それで騎士だったのにこんなとこにいるんだろう?」

「………ノーコメントです。」


「まあ、いいか。酒を呑もうぜ。何が良い?」

「私はあまりのめないので、軽いものなら…。」

「OK、ママ、マティーニとカルアミルクを。」


胸舐めなくていいのかな…?

このお客様は紳士なのだな。
話相手が欲しかっただけなのかもしれない。


渡されたカルアミルクに口をつける。


「カクテルを呑んだことがないだろう?君、夜遊びしなかったクチだな。」

体がかあっと熱くなる。


「カルアミルクは甘くて飲みやすいが、度数は高いんだ。それに―――――――。」

男の指が私の顎にかかる。


「おきゃく、さま?」

「モスキート=ゴルデン。モスキーって呼んで欲しいなぁ。」

ぞわり。

舌が首を這う。

その感触に背筋が凍る。


どうして。

殿下のことは受け入れられたのに。


モスキートは私の首筋から下へ。そして胸の方へ舌を這わせた。

知らない男の指が、舌が、気持ち悪い。


「ッ。はぁ…ッ。」


なのに、体が、熱い。


「君は酒も回りやすい様だが、薬も効きやすい体質みたいだな。」

「な、…っ。」


「媚薬だよ~。おっと。パラライズ!」

くっ…、体が動かない。声も…。


「これでも元魔法騎士志望だったからね。やらかした男の息子は門前払いだったけど。ふ、君。嬢になったばかりだろう。睨むなんて。お客さんにそんな態度はないんじゃないかなぁ。」


い、いやだっ。


頭の中の鈴が壊れる。


そうだ。私は殿下が好きだから。

信愛じゃない。

殿下になら何をされてもいい。

殿下以外にはいやなんだ。


「合意があれば、最後までやってもいいんだろ?」


私の服が脱がされていく。

ズボンを脱がされると、男が喉を鳴らした。

「こんな煽情的な下着をつけておいて。覚悟していないとは言わせない。」



い、いやだっ。









「その子は私の専属だ。その手を離してもらおうか。」


でんか。


涙で滲んだ視界に、殿下が映る。


頭の遠くで、モスキートとジェームズが何か話している。


そして、私に殿下が触れる。


「私のオランジェ。かわいそうに。消毒してあげよう。」


殿下の唇が、指が、舌が。

はむっと胸の尖りを吸われて、甘い刺激が走った。


(いま、わたしのこと……おらんじぇって。でんか、しって…?)


「うっ、」


「イったね、オランジェ。反応が早い。何か飲まされた?」

「び、びやく…を。」


パラライズの効果は切れているけど、媚薬のせいで体が動かしにくい。


「そうか。たくさんイくといい…。」

下穿きに殿下の指が触れる。

露になった私の花芯を殿下が扱いた。


「あぁ、あぁつ。」


目の前の殿下は欲情した獣のようで。ぱんぱんにはりつめたそこは。

それなのに、殿下は…。


「い、いいんですっ。私はっ、殿下のことが……すき、どうか殿下も私で気持ちよくなって…。」


「だめだっ。私だってオランジェのことを愛している。愛している人がこんな痴態を見せていて、抱きたくないわけなんかないだろう!?でも…っ。」


「わたし、わたしも、殿下がほしい…っ。」

「媚薬にのまれているだけだ。」

「本心です!媚薬の力がなければ本心も言えない、私は臆病です…。ずっと、ずっと愛していた。なんで、自分の気持ちを忘れていたのでしょう…。子は孕めません、結婚はできない。だけど、恋人にはしてくださいますか…?騎士としてお側にいさせてください…。あなたと、いつかあなたが迎えるお妃さまと、お子様を…お守りしたい。」

「ああ、オランジェ。これは夢じゃないだろうか。」

「いいえ、夢じゃありません…っ。」






初めてのその時は。

思っていたより痛くて、でも幸せで。


「……っ、あぁっ、あっ。」

「愛してる…っ、」

殿下が腰を動かすたびに、奥へ沈む快感と、愛される喜びに浮かれて。


殿下に抱かれて仮面が落ちていることも。

その隙間から誰かがその様子を見ていたことも。



その時は気づかなかった。



私と殿下の王太子と側近としての一線は、崩れて、曖昧で。
これからの未来がどうなっていくのか、不安でも。

それでもどうしようもなくて。

甘く、切ない―――――――。
しおりを挟む
感想 21

あなたにおすすめの小説

愛する者の腕に抱かれ、獣は甘い声を上げる

すいかちゃん
BL
獣の血を受け継ぐ一族。人間のままでいるためには・・・。 第一章 「優しい兄達の腕に抱かれ、弟は初めての発情期を迎える」 一族の中でも獣の血が濃く残ってしまった颯真。一族から疎まれる存在でしかなかった弟を、兄の亜蘭と玖蘭は密かに連れ出し育てる。3人だけで暮らすなか、颯真は初めての発情期を迎える。亜蘭と玖蘭は、颯真が獣にならないようにその身体を抱き締め支配する。 2人のイケメン兄達が、とにかく弟を可愛がるという話です。 第二章「孤独に育った獣は、愛する男の腕に抱かれ甘く啼く」 獣の血が濃い護は、幼い頃から家族から離されて暮らしていた。世話係りをしていた柳沢が引退する事となり、代わりに彼の孫である誠司がやってくる。真面目で優しい誠司に、護は次第に心を開いていく。やがて、2人は恋人同士となったが・・・。 第三章「獣と化した幼馴染みに、青年は変わらぬ愛を注ぎ続ける」 幼馴染み同士の凛と夏陽。成長しても、ずっと一緒だった。凛に片思いしている事に気が付き、夏陽は思い切って告白。凛も同じ気持ちだと言ってくれた。 だが、成人式の数日前。夏陽は、凛から別れを告げられる。そして、凛の兄である靖から彼の中に獣の血が流れている事を知らされる。発情期を迎えた凛の元に向かえば、靖がいきなり夏陽を羽交い締めにする。 獣が攻めとなる話です。また、時代もかなり現代に近くなっています。

お前らの目は節穴か?BLゲーム主人公の従者になりました!

MEIKO
BL
 本編完結しています。お直し中。第12回BL大賞奨励賞いただきました。  僕、エリオット・アノーは伯爵家嫡男の身分を隠して公爵家令息のジュリアス・エドモアの従者をしている。事の発端は十歳の時…家族から虐げられていた僕は、我慢の限界で田舎の領地から家を出て来た。もう二度と戻る事はないと己の身分を捨て、心機一転王都へやって来たものの、現実は厳しく死にかける僕。薄汚い格好でフラフラと彷徨っている所を救ってくれたのが完璧貴公子ジュリアスだ。だけど初めて会った時、不思議な感覚を覚える。えっ、このジュリアスって人…会ったことなかったっけ?その瞬間突然閃く!  「ここって…もしかして、BLゲームの世界じゃない?おまけに僕の最愛の推し〜ジュリアス様!」  知らぬ間にBLゲームの中の名も無き登場人物に転生してしまっていた僕は、命の恩人である坊ちゃまを幸せにしようと奔走する。そして大好きなゲームのイベントも近くで楽しんじゃうもんね〜ワックワク!  だけど何で…全然シナリオ通りじゃないんですけど。坊ちゃまってば、僕のこと大好き過ぎない?  ※貴族的表現を使っていますが、別の世界です。ですのでそれにのっとっていない事がありますがご了承下さい。

弟のために悪役になる!~ヒロインに会うまで可愛がった結果~

荷居人(にいと)
BL
BL大賞20位。読者様ありがとうございました。 弟が生まれた日、足を滑らせ、階段から落ち、頭を打った俺は、前世の記憶を思い出す。 そして知る。今の自分は乙女ゲーム『王座の証』で平凡な顔、平凡な頭、平凡な運動能力、全てに置いて普通、全てに置いて完璧で優秀な弟はどんなに後に生まれようと次期王の継承権がいく、王にふさわしい赤の瞳と黒髪を持ち、親の愛さえ奪った弟に恨みを覚える悪役の兄であると。 でも今の俺はそんな弟の苦労を知っているし、生まれたばかりの弟は可愛い。 そんな可愛い弟が幸せになるためにはヒロインと結婚して王になることだろう。悪役になれば死ぬ。わかってはいるが、前世の後悔を繰り返さないため、将来処刑されるとわかっていたとしても、弟の幸せを願います! ・・・でもヒロインに会うまでは可愛がってもいいよね? 本編は完結。番外編が本編越えたのでタイトルも変えた。ある意味間違ってはいない。可愛がらなければ番外編もないのだから。 そしてまさかのモブの恋愛まで始まったようだ。 お気に入り1000突破は私の作品の中で初作品でございます!ありがとうございます! 2018/10/10より章の整理を致しました。ご迷惑おかけします。 2018/10/7.23時25分確認。BLランキング1位だと・・・? 2018/10/24.話がワンパターン化してきた気がするのでまた意欲が湧き、書きたいネタができるまでとりあえず完結といたします。 2018/11/3.久々の更新。BL小説大賞応募したので思い付きを更新してみました。

希少なΩだと隠して生きてきた薬師は、視察に来た冷徹なα騎士団長に一瞬で見抜かれ「お前は俺の番だ」と帝都に連れ去られてしまう

水凪しおん
BL
「君は、今日から俺のものだ」 辺境の村で薬師として静かに暮らす青年カイリ。彼には誰にも言えない秘密があった。それは希少なΩ(オメガ)でありながら、その性を偽りβ(ベータ)として生きていること。 ある日、村を訪れたのは『帝国の氷盾』と畏れられる冷徹な騎士団総長、リアム。彼は最上級のα(アルファ)であり、カイリが必死に隠してきたΩの資質をいとも簡単に見抜いてしまう。 「お前のその特異な力を、帝国のために使え」 強引に帝都へ連れ去られ、リアムの屋敷で“偽りの主従関係”を結ぶことになったカイリ。冷たい命令とは裏腹に、リアムが時折見せる不器用な優しさと孤独を秘めた瞳に、カイリの心は次第に揺らいでいく。 しかし、カイリの持つ特別なフェロモンは帝国の覇権を揺るがす甘美な毒。やがて二人は、宮廷を渦巻く巨大な陰謀に巻き込まれていく――。 運命の番(つがい)に抗う不遇のΩと、愛を知らない最強α騎士。 偽りの関係から始まる、甘く切ない身分差ファンタジー・ラブ!

異世界転移して美形になったら危険な男とハジメテしちゃいました

ノルジャン
BL
俺はおっさん神に異世界に転移させてもらった。異世界で「イケメンでモテて勝ち組の人生」が送りたい!という願いを叶えてもらったはずなのだけれど……。これってちゃんと叶えて貰えてるのか?美形になったけど男にしかモテないし、勝ち組人生って結局どんなん?めちゃくちゃ危険な香りのする男にバーでナンパされて、ついていっちゃってころっと惚れちゃう俺の話。危険な男×美形(元平凡)※ムーンライトノベルズにも掲載

おれの超ブラコンでちょっと変態な兄がかっこよすぎるので

しち
BL
兄(バスケ選手)の顔が大好きな弟(ファッションモデル)の話。 これの弟ver.です。 https://www.alphapolis.co.jp/novel/557561084/460952903

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください! ユィリと皆の動画つくりました! お話にあわせて、ちょこちょこあがる予定です。 インスタ @yuruyu0 絵もあがります Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

処理中です...