27 / 48
ユリウス元王子と孤児のハル
怪しい子
「……おはようございます。」
ぶかぶかの子ども用の服を着て、申し訳なさそうに挨拶をするハルに、私はなるべく笑顔を作った。
これでも長いこと『王子』をしていたのだ。
笑顔を作るのは得意だ。
彼に対して、同情や憐れみといった感情、彼の親に対して憤りを覚える怒りの感情を見せてはいけないと思った。
私だって聖人君子ではない。
可愛そうな人を見れば、同情や憐れみはどうしても覚える。
だが、本人にそういった感情を気づかせるのは失礼だ。
「ハル、寝汗をかいているだろうから、一度お風呂に入って、頭を洗ってあげよう。長いこと酷い生活をしていたから、丁寧に綺麗にしないと。うちはお客様商売だから、身だしなみはとても大事なんだよ。」
「はい。ありがとうございます。」
半年、路上生活をしていたのだ。髪の毛に虫もくっついていたから、夕べ綺麗に駆除はしたが、念のため根気よく続ける必要がある。
彼が休んだ後、彼を通した床や部屋の中は、きれいに拭き掃除をした。
髪の毛に卵や取り忘れが残っていないことを確認し、枕やシーツ、汚れ物の洗濯を始める。
風呂場で洗濯のやり方を彼に教え、後は自分で洗ってもらっている間に、朝ごはんを準備した。
夕べは残り物しかなかったからな。
温めたパン、目玉焼きに厚切りベーコンを焼いたもの。
野菜サラダにオレンジジュース。
これだけあったらまずまずだろう。
今夜は、もっとちゃんと作ろう。
具だくさんのシチューは好きだろうか。
「あの、洗えました…。」
風呂場から声が聞こえた。
「ハル、それじゃあ洗濯物はそのままにして、着替えたらおいで。朝ごはんにしよう。」
下洗いをしたら、ハウスキーピングの人に他の洗い物と一緒に洗濯をお願いしよう。
「うわぁあ。おいしい…。僕、こんなおいしい朝ごはん、初めてです…っ。」
目をキラキラさせて、ごはんをもぐもぐと食べている姿が愛らしい。
「私の料理の腕もなかなかだろう?…と言いたいところだが、温めたり焼いたりしただけなんだ。サラダは洗って千切っただけ。ハルでもできるよ?」
それなら今度は僕が作ってみたいです、というので、明日の朝は一緒に作ることにした。
「店長、おはようございます。」
1階の店舗から声が聞こえる。
従業員が出勤してきたらしい。
「申し訳ない、今開ける。」
窓から顔を出して、慌てて降り、カギを開けた。
従業員のケント、ギル、サリー、クララ。
皆、平民だがしっかりしている者たちだ。
王子時代にこっそり商会を始めたころからの付き合いで、彼らの中でも年配のケントは店長代理を任せていたから、
私が元王子であることも知っている。
黒髪で短髪、ちょっと彫りの深い顔の渋いおじさん系のケントは38歳。奥さんと12歳の男の子の子持ち。
こげ茶の髪にグレーの瞳のギルは24歳。たれ目が優し気な雰囲気で、サリーと交際中。
茶色の髪と青い眼のサリーは18歳。そばかすがチャーミングな女の子。計算が早くて頼りになる。
金髪にも見える茶色の髪に緑の眼のクララは20歳。おっちょこちょいなところはあるが、ムードメイカーで接客はうまい。
遅れて、ハウスキーピングのジョシュアがやって来た。
ジョシュアは15歳。黒髪黒目の男の子で、家計を助けるために働いていて、若いのに家事の達人だ。
「あれ?珍しいですね。2階からいい匂いがする。店長が朝からまともな食事をしているなんて。」
「ああ。ちょっと、子どもを養うことにしたんだ。私は結婚しないだろうから。親に恵まれなくてね。虐待されていたんだよ。悪い親だったがちゃんとした家の子だったから、教育はされている。ただ、今は体が良くないから、しばらくは店には出さずに、私の手伝いで書類関係をやってもらおうと思っているんだ。」
隠しているのも変だから、ハルを紹介しよう。
今はがりがりだけど、取り合えず今の説明でおかしくはない、はず。
「ハル、みんなを紹介するよ。おいで。」
「……はい。」
おずおずと、顔を出す。
「ハルです、よろしくお願いいたします。」
その姿に、守ってあげたいと思えるか、素性の怪しい子だと思うか。
五分五分なくらいには、ハルの見た目は傷んでいて、特にハウスキーピングのジョシュアは冷たい視線を向けていた。
ぶかぶかの子ども用の服を着て、申し訳なさそうに挨拶をするハルに、私はなるべく笑顔を作った。
これでも長いこと『王子』をしていたのだ。
笑顔を作るのは得意だ。
彼に対して、同情や憐れみといった感情、彼の親に対して憤りを覚える怒りの感情を見せてはいけないと思った。
私だって聖人君子ではない。
可愛そうな人を見れば、同情や憐れみはどうしても覚える。
だが、本人にそういった感情を気づかせるのは失礼だ。
「ハル、寝汗をかいているだろうから、一度お風呂に入って、頭を洗ってあげよう。長いこと酷い生活をしていたから、丁寧に綺麗にしないと。うちはお客様商売だから、身だしなみはとても大事なんだよ。」
「はい。ありがとうございます。」
半年、路上生活をしていたのだ。髪の毛に虫もくっついていたから、夕べ綺麗に駆除はしたが、念のため根気よく続ける必要がある。
彼が休んだ後、彼を通した床や部屋の中は、きれいに拭き掃除をした。
髪の毛に卵や取り忘れが残っていないことを確認し、枕やシーツ、汚れ物の洗濯を始める。
風呂場で洗濯のやり方を彼に教え、後は自分で洗ってもらっている間に、朝ごはんを準備した。
夕べは残り物しかなかったからな。
温めたパン、目玉焼きに厚切りベーコンを焼いたもの。
野菜サラダにオレンジジュース。
これだけあったらまずまずだろう。
今夜は、もっとちゃんと作ろう。
具だくさんのシチューは好きだろうか。
「あの、洗えました…。」
風呂場から声が聞こえた。
「ハル、それじゃあ洗濯物はそのままにして、着替えたらおいで。朝ごはんにしよう。」
下洗いをしたら、ハウスキーピングの人に他の洗い物と一緒に洗濯をお願いしよう。
「うわぁあ。おいしい…。僕、こんなおいしい朝ごはん、初めてです…っ。」
目をキラキラさせて、ごはんをもぐもぐと食べている姿が愛らしい。
「私の料理の腕もなかなかだろう?…と言いたいところだが、温めたり焼いたりしただけなんだ。サラダは洗って千切っただけ。ハルでもできるよ?」
それなら今度は僕が作ってみたいです、というので、明日の朝は一緒に作ることにした。
「店長、おはようございます。」
1階の店舗から声が聞こえる。
従業員が出勤してきたらしい。
「申し訳ない、今開ける。」
窓から顔を出して、慌てて降り、カギを開けた。
従業員のケント、ギル、サリー、クララ。
皆、平民だがしっかりしている者たちだ。
王子時代にこっそり商会を始めたころからの付き合いで、彼らの中でも年配のケントは店長代理を任せていたから、
私が元王子であることも知っている。
黒髪で短髪、ちょっと彫りの深い顔の渋いおじさん系のケントは38歳。奥さんと12歳の男の子の子持ち。
こげ茶の髪にグレーの瞳のギルは24歳。たれ目が優し気な雰囲気で、サリーと交際中。
茶色の髪と青い眼のサリーは18歳。そばかすがチャーミングな女の子。計算が早くて頼りになる。
金髪にも見える茶色の髪に緑の眼のクララは20歳。おっちょこちょいなところはあるが、ムードメイカーで接客はうまい。
遅れて、ハウスキーピングのジョシュアがやって来た。
ジョシュアは15歳。黒髪黒目の男の子で、家計を助けるために働いていて、若いのに家事の達人だ。
「あれ?珍しいですね。2階からいい匂いがする。店長が朝からまともな食事をしているなんて。」
「ああ。ちょっと、子どもを養うことにしたんだ。私は結婚しないだろうから。親に恵まれなくてね。虐待されていたんだよ。悪い親だったがちゃんとした家の子だったから、教育はされている。ただ、今は体が良くないから、しばらくは店には出さずに、私の手伝いで書類関係をやってもらおうと思っているんだ。」
隠しているのも変だから、ハルを紹介しよう。
今はがりがりだけど、取り合えず今の説明でおかしくはない、はず。
「ハル、みんなを紹介するよ。おいで。」
「……はい。」
おずおずと、顔を出す。
「ハルです、よろしくお願いいたします。」
その姿に、守ってあげたいと思えるか、素性の怪しい子だと思うか。
五分五分なくらいには、ハルの見た目は傷んでいて、特にハウスキーピングのジョシュアは冷たい視線を向けていた。
あなたにおすすめの小説
一度も話したことないイケメンのクラスメイトと二人組になったらめちゃくちゃ執着されてた
時
BL
「はい、じゃあ二人組作って」──あまり人付き合いが得意ではない夏稀(なつき)にとってそれは地獄の言葉。
けれど高校ではちがう。なぜなら新しくできた友達と『二人組』協定を結んだから。
もう二人組なんて怖くないと思っていた矢先、その友達が風邪で欠席。
ほかに組む相手が見つからず、先生と組むことも覚悟する夏稀だったが、そこで声をかけてきたのは美形の転校生──緒川聖夜(おがわ・きよや)だった。
「俺と二人組にならない?」
その一言をきっかけに聖夜は夏稀との距離を急速に縮めてきて──。
執着美形攻め×平凡受けのちょっと不穏な学園BL。
約九万字、全三十話+αの物語です。
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
【完結】ネクラ実況者、人気配信者に狙われる
ちょんす
BL
自分の居場所がほしくて始めたゲーム実況。けれど、現実は甘くない。再生数は伸びず、コメントもほとんどつかない。いつしか実況は、夢を叶える手段ではなく、自分の無価値さを突きつける“鏡”のようになっていた。
そんなある日、届いた一通のDM。送信者の名前は、俺が心から尊敬している大人気実況者「桐山キリト」。まさかと思いながらも、なりすましだと決めつけて無視しようとした。……でも、その相手は、本物だった。
「一緒にコラボ配信、しない?」
顔も知らない。会ったこともない。でも、画面の向こうから届いた言葉が、少しずつ、俺の心を変えていく。
これは、ネクラ実況者と人気配信者の、すれ違いとまっすぐな好意が交差する、ネット発ラブストーリー。
※プロットや構成をAIに相談しながら制作しています。執筆・仕上げはすべて自分で行っています。
大学一軍イケメンにいちご狩りに誘われた陰キャの俺、なぜかいちごじゃなくて俺が喰われたんだが(?)
子犬一 はぁて
BL
大学一軍イケメン×大学九軍陰キャ
喰われるなんて聞いてないんだが(?)
俺はただ、
いちご狩りに誘われただけだが。
なのに──
誘ってきた大学一軍イケメンの海皇(21)に
なぜか俺が捕まって食われる展開に?
ちょっと待てい。
意味がわからないんだが!
いちご狩りから始まる
ケンカップルいちゃらぶBL
※大人描写のある話はタイトルに『※』あり
美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜
飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。
でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。
しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。
秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。
美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。
秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。
家事代行サービスにdomの溺愛は必要ありません!
灯璃
BL
家事代行サービスで働く鏑木(かぶらぎ) 慧(けい)はある日、高級マンションの一室に仕事に向かった。だが、住人の男性は入る事すら拒否し、何故かなかなか中に入れてくれない。
何度かの押し問答の後、なんとか慧は中に入れてもらえる事になった。だが、男性からは冷たくオレの部屋には入るなと言われてしまう。
仕方ないと気にせず仕事をし、気が重いまま次の日も訪れると、昨日とは打って変わって男性、秋水(しゅうすい) 龍士郎(りゅうしろう)は慧の料理を褒めた。
思ったより悪い人ではないのかもと慧が思った時、彼がdom、支配する側の人間だという事に気づいてしまう。subである慧は彼と一定の距離を置こうとするがーー。
みたいな、ゆるいdom/subユニバース。ふんわり過ぎてdom/subユニバースにする必要あったのかとか疑問に思ってはいけない。
※完結しました!ありがとうございました!
【完結】男の後輩に告白されたオレと、様子のおかしくなった幼なじみの話
須宮りんこ
BL
【あらすじ】
高校三年生の椿叶太には女子からモテまくりの幼なじみ・五十嵐青がいる。
二人は顔を合わせば絡む仲ではあるものの、叶太にとって青は生意気な幼なじみでしかない。
そんなある日、叶太は北村という一つ下の後輩・北村から告白される。
青いわく友達目線で見ても北村はいい奴らしい。しかも青とは違い、素直で礼儀正しい北村に叶太は好感を持つ。北村の希望もあって、まずは普通の先輩後輩として付き合いをはじめることに。
けれど叶太が北村に告白されたことを知った青の様子が、その日からおかしくなって――?
※本編完結済み。後日談連載中。