53 / 104
決着を決めるとき
しおりを挟む
「ここです。こちらでお休み下さい。」
「ありがとう。」
広い客間のベッドルーム。
ゆっくりとニーノを下ろす。
「では、私はしばらく弟を見ていますので……」
振り返った瞬間。
呼吸が苦しくなる。
分かっていたはずなのに。
目の前の騎士はフルフェイスの兜を外し、すぐ真後ろに立っていた。
下卑た笑みを浮かべて。
「…………っ!」
「ひひっ。久しぶりだねえ、イーノちゃん。ボクと離れて寂しかったでしょう?酷いよね、ボクらは運命の相手なのに!あの時は君がまだ子どもだったから勘違いされちゃったんだよね。もう大人同士だもん、ボクらの間には障害はないんだよ。ああ、なんて君は綺麗に成長したんだろう。さぁ、ボクの胸に飛び込んでおいで!」
あの時22歳の若者だった男は、40歳になっていた。
年を重ね、騎士として成熟し、筋肉で厚みを増した体。
アッシュがかった金髪とオレンジ色の瞳。
騎士という職に就き、家柄もよかった。見た目だって悪くはなかったのに、何故すべてを台無しにしてまで自分だったのか。
「何を言っているんですか、私は貴方のことをなんとも思っていない。今も、昔も!気持ちが悪い!」
「……――――何を……!!?」
お手洗いに付き添った帰り道に植え込みに連れていかれて怖かった。
周りの騎士が探してくれなかったら………!
服を脱がされることはなかったけど、無理やり口づけをされ、口淫をさせられそうになった。
初めて見る醜悪なそれ。
恐怖で体が竦み、それ以来、男性が怖くて仕方がなかった。
お父様が、カントが……。みんなの支えがあったから!ここまで立ち直れたんだ!
自分が囮になることを、カントは反対した。
だけど、自分が望んだ。
自分の手で始末しなければ、きっと私はずっと、怖いまま。
ニーノが付き合ってくれるといった。
ひとりじゃない。二人なら。
外には、みんなが待ち構えているはず。
やれる。
男が向かってくる。
「犯してやる!そうすれば君だってわかるはずだ!」
ブチっとジャケットのボタンが引きちぎられた。
「ありがとう。」
広い客間のベッドルーム。
ゆっくりとニーノを下ろす。
「では、私はしばらく弟を見ていますので……」
振り返った瞬間。
呼吸が苦しくなる。
分かっていたはずなのに。
目の前の騎士はフルフェイスの兜を外し、すぐ真後ろに立っていた。
下卑た笑みを浮かべて。
「…………っ!」
「ひひっ。久しぶりだねえ、イーノちゃん。ボクと離れて寂しかったでしょう?酷いよね、ボクらは運命の相手なのに!あの時は君がまだ子どもだったから勘違いされちゃったんだよね。もう大人同士だもん、ボクらの間には障害はないんだよ。ああ、なんて君は綺麗に成長したんだろう。さぁ、ボクの胸に飛び込んでおいで!」
あの時22歳の若者だった男は、40歳になっていた。
年を重ね、騎士として成熟し、筋肉で厚みを増した体。
アッシュがかった金髪とオレンジ色の瞳。
騎士という職に就き、家柄もよかった。見た目だって悪くはなかったのに、何故すべてを台無しにしてまで自分だったのか。
「何を言っているんですか、私は貴方のことをなんとも思っていない。今も、昔も!気持ちが悪い!」
「……――――何を……!!?」
お手洗いに付き添った帰り道に植え込みに連れていかれて怖かった。
周りの騎士が探してくれなかったら………!
服を脱がされることはなかったけど、無理やり口づけをされ、口淫をさせられそうになった。
初めて見る醜悪なそれ。
恐怖で体が竦み、それ以来、男性が怖くて仕方がなかった。
お父様が、カントが……。みんなの支えがあったから!ここまで立ち直れたんだ!
自分が囮になることを、カントは反対した。
だけど、自分が望んだ。
自分の手で始末しなければ、きっと私はずっと、怖いまま。
ニーノが付き合ってくれるといった。
ひとりじゃない。二人なら。
外には、みんなが待ち構えているはず。
やれる。
男が向かってくる。
「犯してやる!そうすれば君だってわかるはずだ!」
ブチっとジャケットのボタンが引きちぎられた。
18
あなたにおすすめの小説
借金のカタで二十歳上の実業家に嫁いだΩ。鳥かごで一年過ごすだけの契約だったのに、氷の帝王と呼ばれた彼に激しく愛され、唯一無二の番になる
水凪しおん
BL
名家の次男として生まれたΩ(オメガ)の青年、藍沢伊織。彼はある日突然、家の負債の肩代わりとして、二十歳も年上のα(アルファ)である実業家、久遠征四郎の屋敷へと送られる。事実上の政略結婚。しかし伊織を待ち受けていたのは、愛のない契約だった。
「一年間、俺の『鳥』としてこの屋敷で静かに暮らせ。そうすれば君の家族は救おう」
過去に愛する番を亡くし心を凍てつかせた「氷の帝王」こと征四郎。伊織はただ美しい置物として鳥かごの中で生きることを強いられる。しかしその瞳の奥に宿る深い孤独に触れるうち、伊織の心には反発とは違う感情が芽生え始める。
ひたむきな優しさは、氷の心を溶かす陽だまりとなるか。
孤独なαと健気なΩが、偽りの契約から真実の愛を見出すまでの、切なくも美しいシンデレラストーリー。
王様お許しください
nano ひにゃ
BL
魔王様に気に入られる弱小魔物。
気ままに暮らしていた所に突然魔王が城と共に現れ抱かれるようになる。
性描写は予告なく入ります、冒頭からですのでご注意ください。
【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】
古森きり
BL
【書籍化決定しました!】
詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります!
たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました!
アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。
政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。
男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。
自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。
行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。
冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。
カクヨムに書き溜め。
小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。
身代わりにされた少年は、冷徹騎士に溺愛される
秋津むぎ
BL
魔力がなく、義母達に疎まれながらも必死に生きる少年アシェ。
ある日、義兄が騎士団長ヴァルドの徽章を盗んだ罪をアシェに押し付け、身代わりにされてしまう。
死を覚悟した彼の姿を見て、冷徹な騎士ヴァルドは――?
傷ついた少年と騎士の、温かい溺愛物語。
【完結】弟を幸せにする唯一のルートを探すため、兄は何度も『やり直す』
バナナ男さん
BL
優秀な騎士の家系である伯爵家の【クレパス家】に生まれた<グレイ>は、容姿、実力、共に恵まれず、常に平均以上が取れない事から両親に冷たく扱われて育った。 そんなある日、父が気まぐれに手を出した娼婦が生んだ子供、腹違いの弟<ルーカス>が家にやってくる。 その生まれから弟は自分以上に両親にも使用人達にも冷たく扱われ、グレイは初めて『褒められる』という行為を知る。 それに恐怖を感じつつ、グレイはルーカスに接触を試みるも「金に困った事がないお坊ちゃんが!」と手酷く拒絶されてしまい……。 最初ツンツン、のちヤンデレ執着に変化する美形の弟✕平凡な兄です。兄弟、ヤンデレなので、地雷の方はご注意下さいm(__)m
ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました
あと
BL
「お兄ちゃん!人肌脱ぎます!」
完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け
可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…?
攻め:ヴィクター・ローレンツ
受け:リアム・グレイソン
弟:リチャード・グレイソン
pixivにも投稿しています。
ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
BLゲームの展開を無視した結果、悪役令息は主人公に溺愛される。
佐倉海斗
BL
この世界が前世の世界で存在したBLゲームに酷似していることをレイド・アクロイドだけが知っている。レイドは主人公の恋を邪魔する敵役であり、通称悪役令息と呼ばれていた。そして破滅する運命にある。……運命のとおりに生きるつもりはなく、主人公や主人公の恋人候補を避けて学園生活を生き抜き、無事に卒業を迎えた。これで、自由な日々が手に入ると思っていたのに。突然、主人公に告白をされてしまう。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる