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後夜祭

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日中のざわめきも落ち着き、広い校庭に組まれた櫓の前に学生や教師が集まってくる。

雇われた楽団がステージの準備をし、いよいよ学園祭が終わるのだ。



(ふふふ。あのドレスじゃ女神として出てこられるわけはないわ。会長たちも困っているはず。)

メロディは真っ赤なドレスを着たままでいた。

そして何食わぬ顔で生徒会に近寄る。


「聞きましたわ。大変ですわね、何者かにドレスをめちゃめちゃにされたのでしょう?私、ちょうどクラスの出し物で赤いドレスを着ていますの。私が代わりに女神をしても―――――」


「いや、結構。」

エンリケ王子とミリオン公爵令息の視線は酷く冷めて、メロディを蔑むように見る。

「えっ………!?」


「ドレスは問題ありません。確かに前のドレスにはトラブルがありましたが。その話は部外者には漏れていないはず。知っている貴方は、犯人ですね。なりたがっていましたよね、キャンプファイヤーの女神に。」

「キャンプファイヤーの女神は見た目だけで選ぶことはない。女神に相応しい心が伴っていなければ。ニーノがいなくても君だけは絶対に選ばない。器物損壊で学園長に報告しよう。」


(器物損壊?学園長に報告?………ドレスはどうなったのよ!?私はどうなるの!)



楽団の音楽とともに、闇から女神が現れる。
エスコートは王弟殿下。


破れたドレスは、それがデザインであるかのように整えられてカットされ、華やかなマント風の上着に生まれ変わった。

その下は、まるで王子様のような衣装。
男なのか女なのか分からない、神秘的な美。

まさに神。




「なに?何なの!」


後ろからマシューが現れた。


「マシュー様、急にありがとうございます。」

「いえ、ちょうど王子役の衣装も使えましたし、それほど手はかけていませんよ。」

ローズブランドのスーパースタッフであるマシューが来ていたお陰で事なきを得ていた。

「そうですねえ、もしお礼をというのでしたら。私の見合いをセッティングしていただけると。逞しい男性がいいわ♡」

騎士団から探しますよとエンリケ王子が約束している。



櫓では、ニーノが着火するところだ。


炎が広がる。

ブルーノが守るようにして、キャンプファイヤーの女神が下がる。




「ああ……………」

格の違う美貌を見せつけられて、メロディはその場にへたりこんだ。

キャンプファイヤーでは、皆が輪になって踊る。

ニーノはブルーノと踊り、薔薇のような笑顔を振りまいている。

シーザルもマーマレイドと、ヨハネはベリーサと。
クルーズはクラリスと踊る。
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