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元事務官長 ボヌック=ファール
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「私はっ。横領がバレるのが怖くて………!なんてことを。だが、ぬかるみに首まで使って。アイリ!あの女にも、処分を!」
元事務官長ボヌック=ファールは地下牢で取り調べを受けている。
「私の目が行き届かないのを良いことに、よくもこう誤魔化したものだ。これからは決裁は全て公開させよう。相手からの領収書も必ず決裁に添えることとする。」
アレックスの実父であるコンフォート伯爵は、呆れるとともに静かに怒り、二度とこのようなことが起こらない体制づくりを進めることとした。
「アイリ妃がどうとかいうが、確かに私たちとて裁けるものなら裁きたい。だがだからといってお前の罪が軽くなるものではない。」
レイチェル妃の殺害に事故前の殺害未遂。
レナード王子の殺害未遂に傷害未遂。
実行犯に雇い入れ、侍女や機関車のスタッフとして潜り込ませた不法者も既に捕らえてある。
レナード王子とアレックスの新婚旅行で機関車に細工をするために再び雇ったことで、そこから全てを明るみにすることができるようになった。
レナード王子が実行犯をしっかり捕らえていてくれたおかげだ。
アレックスに気付かせず、きちんと危険に対処している。
幼い頃にあった出来事が教訓になっているのだろうが、良い婿だ。
「これだけ物証が見つかれば言い逃れも出来んよ。略式裁判は明日だ。実行犯らは組織ごと強制労働所に送られた。ファール伯爵家の縁者は爵位を返還し、商人にでもなるようだ。元々、商会を経営しているようだし、貴族としての地位にこだわりはないのだろう。ファール領は私が吟味して任せられる者に任せるよ。」
「うう…………ああ。」
項垂れるボヌックに、やり場のない怒りを感じる。
貧しくても、懸命に生きて、まっとうに生きている者の方が多い。
反骨精神で成り上がる者も。
だいたい貧しいというが、平民の言う貧しさとは違う。
貴族として自分の望む贅沢が出来ない。
そういう貧しさだ。
頑張っている善良な者たちに失礼だ。
もちろん、生きていけぬほどの貧しさはないようにするのが、貴族や王族の仕事ではあるが。
「陛下。薬の時間でございます。」
毒味をした水と食事、薬を持って、侍女や近衛騎士たちを引き連れ、執事長のクリフォート伯爵は陛下の寝所に入った。
アイリやその手の者、誰に陥れられるか分からないし、何があるか分からないため、常に集団で行動している。
「陛下………?」
静かだ。
ふとサイドテーブルの水差しが目に入る。
口に入るものをけして放置はしていない。
おかしい!
「陛下!」
慌てて陛下に触れる。
「陛下…………つ」
陛下は崩御された。
傍らに走り書きのメモ。
次の王への条件。
「水差しを調べろ!」
伯爵は声を震わせた。
元事務官長ボヌック=ファールは地下牢で取り調べを受けている。
「私の目が行き届かないのを良いことに、よくもこう誤魔化したものだ。これからは決裁は全て公開させよう。相手からの領収書も必ず決裁に添えることとする。」
アレックスの実父であるコンフォート伯爵は、呆れるとともに静かに怒り、二度とこのようなことが起こらない体制づくりを進めることとした。
「アイリ妃がどうとかいうが、確かに私たちとて裁けるものなら裁きたい。だがだからといってお前の罪が軽くなるものではない。」
レイチェル妃の殺害に事故前の殺害未遂。
レナード王子の殺害未遂に傷害未遂。
実行犯に雇い入れ、侍女や機関車のスタッフとして潜り込ませた不法者も既に捕らえてある。
レナード王子とアレックスの新婚旅行で機関車に細工をするために再び雇ったことで、そこから全てを明るみにすることができるようになった。
レナード王子が実行犯をしっかり捕らえていてくれたおかげだ。
アレックスに気付かせず、きちんと危険に対処している。
幼い頃にあった出来事が教訓になっているのだろうが、良い婿だ。
「これだけ物証が見つかれば言い逃れも出来んよ。略式裁判は明日だ。実行犯らは組織ごと強制労働所に送られた。ファール伯爵家の縁者は爵位を返還し、商人にでもなるようだ。元々、商会を経営しているようだし、貴族としての地位にこだわりはないのだろう。ファール領は私が吟味して任せられる者に任せるよ。」
「うう…………ああ。」
項垂れるボヌックに、やり場のない怒りを感じる。
貧しくても、懸命に生きて、まっとうに生きている者の方が多い。
反骨精神で成り上がる者も。
だいたい貧しいというが、平民の言う貧しさとは違う。
貴族として自分の望む贅沢が出来ない。
そういう貧しさだ。
頑張っている善良な者たちに失礼だ。
もちろん、生きていけぬほどの貧しさはないようにするのが、貴族や王族の仕事ではあるが。
「陛下。薬の時間でございます。」
毒味をした水と食事、薬を持って、侍女や近衛騎士たちを引き連れ、執事長のクリフォート伯爵は陛下の寝所に入った。
アイリやその手の者、誰に陥れられるか分からないし、何があるか分からないため、常に集団で行動している。
「陛下………?」
静かだ。
ふとサイドテーブルの水差しが目に入る。
口に入るものをけして放置はしていない。
おかしい!
「陛下!」
慌てて陛下に触れる。
「陛下…………つ」
陛下は崩御された。
傍らに走り書きのメモ。
次の王への条件。
「水差しを調べろ!」
伯爵は声を震わせた。
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