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さようなら

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「アイリ妃がご乱心だ。騎士たちよ、私は確かにマールの第一子かもしれないが最早他国の代表である。その妻に危害を加えようなど到底許されるものではない。」

レナードが声を張り、僕を背に隠してくれる。



でも僕は大丈夫。

(大丈夫だよ。僕に手を出したらどうなるか、みんなに知ってもらわなきゃ。)


「スカイ、アーク。」

僕は初めて僕の精霊たちの名前を呟いた。僕と、レナードにしか聞こえないくらいの微かな声で。

僕を守るために精霊の王様が遣わしてくれた精霊たちは、名前を呟いて初めて実体化することができる。


生まれたときから一緒だった。

友達であり、姉であり。

それでよかったから、特に彼らに分かりやすく力を行使することは求めてこなかったけれど。



<ほいきた!>

<待ってました!>


「なんだかやらかしそうですね。騎士のお兄さんたち、ちょっとみんなを離れさせて!」

メリーが叫ぶ。

「サザンドラ王女たちも離れて!」


「なっ!きゃぁ!」


緑色の髪のグラマラスなアークが人差し指をちょいとやると、アイリの足元の地面がめくれ、アレックスの下へ近づく前にアイリは派手に転んだ。


「うぅぅ。」

みっともなく尻もちをついたのを青い髪でスレンダーな美人のスカイが空に巻き上げる。


「これでも他の人に迷惑にならないようにものすっごく抑えてるんだからね!」



空の旅から帰って来たアイリは目を回し、騎士に連行されていった。





すぐに、処刑されてしまう気がする。




グレイシャスはもう、逆らったり悪態をつく気力がないようだ。
今まで周りの人を虐げていた分、妃に罰を与えられながら生涯『お飾り』としての一生を送るのだろう。








城の裏の花畑に囲まれた場所に、真っ白な大理石の綺麗なお墓があった。

お墓の側には、学園で見たのと同じ、ブランコとガセボ。

その隣に、陛下は埋葬された。



処刑されるアイリは王家の墓には入れない。

今度こそ誰にも邪魔されずにいられるけど、きっとレイチェル妃はもう陛下を相手にしないだろう。







葬儀が終わっても暫くレナードはお墓の前にたたずんでいた。

僕の体にはレナードのコートも着せられてる。

レイチェル様に僕のこと、紹介してくれた。
お腹に赤ちゃんも出来たんだよって。

ウインター王国の王太子になるということも。


「レナード様。」
執事長として、立派な執事服のクリフォートのお義父様が包みを持っていらした。


「陛下の部屋にありました。レイチェル様のものをアイリには渡さなかったようです。」


大きなエメラルドのイヤリング。

「それ、台座に薔薇の意匠があるでしょう。二人が婚約したばかりの時に、陛下がデザインしたんですよ。」




「そっか。」


「レナード。これ、二人で持とうよ。台座と石はそのままでペンダントに変えよう?」

「うん。」

今日のこの日を忘れない。

お腹の子にもこの景色を伝えていこう。







―――――――――――そしてあっという間に僕らは卒業し。
ウインター王国へ向かった。



レナードがますます甘くなったんだけど……。

というか、王太子教育と王太子妃教育始まりますけど。


いきなり現れた僕たちを、この間は受け入れてもらえそうだったけど、ちょっと不安だなぁ。



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