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クレイ=ジー=バルバール

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「楽しそうですね。クレイ殿下。」

「ああ、リュシー。楽しいとも。あのカスに先に手を付けられてると思うと悔しいが。まあ、私のために慣らしてくれていたと思うことにするよ。あれは短小の爪楊枝だったしな。」


「で、珍しく優しくして。どういう風の吹き回しでしょうか。」


「いやだな、私は女性にはいつも優しいぞ。あの手のタイプは、力ずくで奪うより、優しくした方が効くんだよ。北風と太陽みたいなものだ。それに、今は静養が必要だからな。」


クレイは紛れもなく将来の賢王だった。



あちらこちらに戦争の火種を仕込んで、世界を我が物にせんと企む野心家の父親に辟易している。



いつか。碌でもない兄弟や父親を処してしまうつもりだ。

だが、いまではない。

物事には順番というものがある。


「ベルが早く私の妃になってくれたらやりやすいんだがなあ。」


きっと、私の目的に賛同して協力してくれると思うんだ。



「そうそう、殿下。ベル様の腹心だったカルス副団長がこちらにベル様がいることを気づかれました。」

「おっ、早いな。」

「争いの痕跡と、転移魔法の名残を感じたようです。兵士をすぐに引き返らせて、国の警備を万端にしていますよ。」




「ふぅん…。なかなか優秀。それにいい男らしいね、彼。」

「彼もベル様を欲してらっしゃるようですね。」



「……きっと、どうにかしてここに忍び込んでくるんだろうねぇ…。ふふふ。面白い。」




クレイはニヤリと口の端を歪めた。
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