10 / 44
なんだかうまくいかない
しおりを挟む
「シャワーズ侯爵、良い話があるのですが…。」
「実は、ダイヤが眠っていて…。」
「今度、道が新しく整備され、新たな交易路ができると…。」
私に良い話が自然と集まってくる。
何も考えずに投資話にサインしても、どんなに眉唾な話でも、私が関われば嘘も真になり、侯爵家の富は増えていった。
表向きはリュージュだが、愛しのローズとの間に生まれた可愛い息子のドラゴ。
学園を優秀な成績で卒業し、私について仕事を覚え始めた。
末の王女様がドラゴの婚約者だ。
順風満帆!
要らない息子も高く売れたし。
ところが………。
「石が採れなくなった!?」
「我が領地が新しい交易路から外された!?」
「魔物の群れ!?」
「夜盗だと!?」
全ての目論見は外れ、詐欺のような眉唾話は詐欺でしかなく、まるで一切の女神の加護が消えたような、天罰のような荒天が続き、川は氾濫し土砂崩れはおき、作物もダメになり……。
頼みの鉱山も崩落事故で閉山に…。
収入が途絶え、貧しくなると一気に治安も悪くなり、外から人が寄り付かなくなっていく。
減っていく財産。
「ローズ」が女主人の役割をできるはずもなく、危機的状況について彼女はわからない。
無邪気な息子も一度や二度うまくいかないことがあっても、最終的に取り返せば大丈夫だと信じて疑わない。
「ローズ。王妃様と友人なのだろう?口利き等してもらえないだろうか…。」
「どうして?この家はうまくいっているのでしょう?王妃様に見返りを求めたら、関係性が変わってしまうわ。そんなことできないわよ。」
「あ、ああ……。そうだな…。」
………あれ?おかしい。
どうして急にうまくいかなくなったんだ。
というより、これが『普通』だということをどうして私は忘れていたんだ。
天候に左右されることがあるのは当たり前。
だから、不測の事態に備えて、あらかじめ対策を取っておくべきなのは当然。
うまい話には嘘や裏があるのも当たり前。
だから、事前に自分で情報の真偽を確かめてから乗る必要がある。
それなのに、いつから私はそういう当たり前の努力をしなくなった?
いつからか、ミスをしてもミスにならなくなった。
何も考えずとも富が得られるようになっていた。
そういえば、あれをこの家に迎えてからだ。
ドラゴと顔を入れ替えようとしてもうまくいかなかったアレ。
そういえば、アレはとりあえず離れに押しやっていたが、だれかアレの世話をする者がいただろうか。
いや、いない。
あんな幼子が市井育ちとはいえ、一人で暮らせるだろうか。
食料や衣類などをやった覚えもないのに。
考えたら『野たれ死ね』と言わんばかりの扱いだった。
なのに、どうしてアレは生き延びていたのか。
どうして、変だと気付かなかった?
ああ、もしかして、アレは……。あの子は……精霊の……女神の………⁉
だから今、私は罰を受けているのか……!?
(旦那様、急にどうしたのかしら…。)
ローズは独り言ちた。
旦那様の様子がおかしい。
私に王妃様のご機嫌をとれだなんて…。
冗談じゃない!
同じ悪い魔女、対等な存在のあの女に誰が頭を垂れるものか!
たらしこんだ男が王様だったというだけじゃないか。
急に仕事がうまくいかなくなったというのかしら。
それなら、私がこの魔女の力で、旦那様のもとへ良い縁をつなぐだけよ。
手駒になりそうなやつらは洗脳してしもべにすればいいわね。
洗脳ってやりすぎると廃人にしちゃうけど、他人なんてどうでもいいし。
ライバルはみんな殺してしまえばいい!
父親は真実に気づき始め、自分が大切なものを失ったことをようやく知るようになり。
母親は罪に罪を重ねようとしていた時。
二人の愛する息子であるドラゴは何不自由なく、甘やかされて育った。
離れで暮らす父親の元愛人の子の顔が本当は自分の顔だといわれたが、確かに奇麗だけれどどちらかといえば男の相手となりそうな容姿に、むしろ今の姿の方が男らしくて好ましい、あの顔でなくてこちらもよかったと思った。
魔女の母親が亡くなったらしく、引き取られてきたが、離れで一人暮らし。
進学もしないから、学園で会うことも社交界に一緒に参加することもなく、ただいるだけ。
(俺は美しい王女様を妻にして、お父様の爵位、この家のすべてを受け継ぐ。あいつには何もない。将来はどこかの男に嫁として出されるんだ。)
学園生活は天国だった。
だって公爵家である。
同じ世代に王族はおらず、学園内で自分より立場が上の者などいない。
他人の婚約者だろうと構わず、気に入った女は力ずくでも生徒会室に引きずり込んでコトに及んだ。
婚約解消になった者。
心の病になった者。
学園時代が被った者たちにどれだけ恨みを買っているかなど、ドラゴは気にも留めていなかった。
そういう行いが、今、父親を追い詰めているなんて、知る由もなかった。
まさか、婚約者を穢された令息や穢された令嬢、その家族たちが恨みに思って、父親の商談に罠を張って陥れているなど、考えもしなかった。
「実は、ダイヤが眠っていて…。」
「今度、道が新しく整備され、新たな交易路ができると…。」
私に良い話が自然と集まってくる。
何も考えずに投資話にサインしても、どんなに眉唾な話でも、私が関われば嘘も真になり、侯爵家の富は増えていった。
表向きはリュージュだが、愛しのローズとの間に生まれた可愛い息子のドラゴ。
学園を優秀な成績で卒業し、私について仕事を覚え始めた。
末の王女様がドラゴの婚約者だ。
順風満帆!
要らない息子も高く売れたし。
ところが………。
「石が採れなくなった!?」
「我が領地が新しい交易路から外された!?」
「魔物の群れ!?」
「夜盗だと!?」
全ての目論見は外れ、詐欺のような眉唾話は詐欺でしかなく、まるで一切の女神の加護が消えたような、天罰のような荒天が続き、川は氾濫し土砂崩れはおき、作物もダメになり……。
頼みの鉱山も崩落事故で閉山に…。
収入が途絶え、貧しくなると一気に治安も悪くなり、外から人が寄り付かなくなっていく。
減っていく財産。
「ローズ」が女主人の役割をできるはずもなく、危機的状況について彼女はわからない。
無邪気な息子も一度や二度うまくいかないことがあっても、最終的に取り返せば大丈夫だと信じて疑わない。
「ローズ。王妃様と友人なのだろう?口利き等してもらえないだろうか…。」
「どうして?この家はうまくいっているのでしょう?王妃様に見返りを求めたら、関係性が変わってしまうわ。そんなことできないわよ。」
「あ、ああ……。そうだな…。」
………あれ?おかしい。
どうして急にうまくいかなくなったんだ。
というより、これが『普通』だということをどうして私は忘れていたんだ。
天候に左右されることがあるのは当たり前。
だから、不測の事態に備えて、あらかじめ対策を取っておくべきなのは当然。
うまい話には嘘や裏があるのも当たり前。
だから、事前に自分で情報の真偽を確かめてから乗る必要がある。
それなのに、いつから私はそういう当たり前の努力をしなくなった?
いつからか、ミスをしてもミスにならなくなった。
何も考えずとも富が得られるようになっていた。
そういえば、あれをこの家に迎えてからだ。
ドラゴと顔を入れ替えようとしてもうまくいかなかったアレ。
そういえば、アレはとりあえず離れに押しやっていたが、だれかアレの世話をする者がいただろうか。
いや、いない。
あんな幼子が市井育ちとはいえ、一人で暮らせるだろうか。
食料や衣類などをやった覚えもないのに。
考えたら『野たれ死ね』と言わんばかりの扱いだった。
なのに、どうしてアレは生き延びていたのか。
どうして、変だと気付かなかった?
ああ、もしかして、アレは……。あの子は……精霊の……女神の………⁉
だから今、私は罰を受けているのか……!?
(旦那様、急にどうしたのかしら…。)
ローズは独り言ちた。
旦那様の様子がおかしい。
私に王妃様のご機嫌をとれだなんて…。
冗談じゃない!
同じ悪い魔女、対等な存在のあの女に誰が頭を垂れるものか!
たらしこんだ男が王様だったというだけじゃないか。
急に仕事がうまくいかなくなったというのかしら。
それなら、私がこの魔女の力で、旦那様のもとへ良い縁をつなぐだけよ。
手駒になりそうなやつらは洗脳してしもべにすればいいわね。
洗脳ってやりすぎると廃人にしちゃうけど、他人なんてどうでもいいし。
ライバルはみんな殺してしまえばいい!
父親は真実に気づき始め、自分が大切なものを失ったことをようやく知るようになり。
母親は罪に罪を重ねようとしていた時。
二人の愛する息子であるドラゴは何不自由なく、甘やかされて育った。
離れで暮らす父親の元愛人の子の顔が本当は自分の顔だといわれたが、確かに奇麗だけれどどちらかといえば男の相手となりそうな容姿に、むしろ今の姿の方が男らしくて好ましい、あの顔でなくてこちらもよかったと思った。
魔女の母親が亡くなったらしく、引き取られてきたが、離れで一人暮らし。
進学もしないから、学園で会うことも社交界に一緒に参加することもなく、ただいるだけ。
(俺は美しい王女様を妻にして、お父様の爵位、この家のすべてを受け継ぐ。あいつには何もない。将来はどこかの男に嫁として出されるんだ。)
学園生活は天国だった。
だって公爵家である。
同じ世代に王族はおらず、学園内で自分より立場が上の者などいない。
他人の婚約者だろうと構わず、気に入った女は力ずくでも生徒会室に引きずり込んでコトに及んだ。
婚約解消になった者。
心の病になった者。
学園時代が被った者たちにどれだけ恨みを買っているかなど、ドラゴは気にも留めていなかった。
そういう行いが、今、父親を追い詰めているなんて、知る由もなかった。
まさか、婚約者を穢された令息や穢された令嬢、その家族たちが恨みに思って、父親の商談に罠を張って陥れているなど、考えもしなかった。
1,151
あなたにおすすめの小説
悪役令息の七日間
リラックス@ピロー
BL
唐突に前世を思い出した俺、ユリシーズ=アディンソンは自分がスマホ配信アプリ"王宮の花〜神子は7色のバラに抱かれる〜"に登場する悪役だと気付く。しかし思い出すのが遅過ぎて、断罪イベントまで7日間しか残っていない。
気づいた時にはもう遅い、それでも足掻く悪役令息の話。【お知らせ:2024年1月18日書籍発売!】
冤罪で追放された王子は最果ての地で美貌の公爵に愛し尽くされる 凍てついた薔薇は恋に溶かされる
尾高志咲/しさ
BL
旧題:凍てついた薔薇は恋に溶かされる
🌟2025年11月アンダルシュノベルズより刊行🌟
ロサーナ王国の病弱な第二王子アルベルトは、突然、無実の罪状を突きつけられて北の果ての離宮に追放された。王子を裏切ったのは幼い頃から大切に想う宮中伯筆頭ヴァンテル公爵だった。兄の王太子が亡くなり、世継ぎの身となってからは日々努力を重ねてきたのに。信頼していたものを全て失くし向かった先で待っていたのは……。
――どうしてそんなに優しく名を呼ぶのだろう。
お前に裏切られ廃嫡されて最北の離宮に閉じ込められた。
目に映るものは雪と氷と絶望だけ。もう二度と、誰も信じないと誓ったのに。
ただ一人、お前だけが私の心を凍らせ溶かしていく。
執着攻め×不憫受け
美形公爵×病弱王子
不憫展開からの溺愛ハピエン物語。
◎書籍掲載は、本編と本編後の四季の番外編:春『春の来訪者』です。
四季の番外編:夏以降及び小話は本サイトでお読みいただけます。
なお、※表示のある回はR18描写を含みます。
🌟第10回BL小説大賞にて奨励賞を頂戴しました。応援ありがとうございました。
🌟本作は旧Twitterの「フォロワーをイメージして同人誌のタイトルつける」タグで貴宮あすかさんがくださったタイトル『凍てついた薔薇は恋に溶かされる』から思いついて書いた物語です。ありがとうございました。
【完結】伯爵家当主になりますので、お飾りの婚約者の僕は早く捨てて下さいね?
MEIKO
BL
【完結】伯爵家次男のマリンは、公爵家嫡男のミシェルの婚約者として一緒に過ごしているが実際はお飾りの存在だ。そんなマリンは池に落ちたショックで前世は日本人の男子で今この世界が小説の中なんだと気付いた。マズい!このままだとミシェルから婚約破棄されて路頭に迷う未来しか見えない!
僕はそこから前世の特技を活かしてお金を貯め、ミシェルに愛する人が現れるその日に備えだす。2年後、万全の備えと新たな朗報を得た僕は、もう婚約破棄してもらっていいんですけど?ってミシェルに告げる。なのに対象外のはずの僕に未練たらたらなのどうして?
※R対象話には『*』マーク付けます。
BLゲームの展開を無視した結果、悪役令息は主人公に溺愛される。
佐倉海斗
BL
この世界が前世の世界で存在したBLゲームに酷似していることをレイド・アクロイドだけが知っている。レイドは主人公の恋を邪魔する敵役であり、通称悪役令息と呼ばれていた。そして破滅する運命にある。……運命のとおりに生きるつもりはなく、主人公や主人公の恋人候補を避けて学園生活を生き抜き、無事に卒業を迎えた。これで、自由な日々が手に入ると思っていたのに。突然、主人公に告白をされてしまう。
【完結】顔だけと言われた騎士は大成を誓う
凪瀬夜霧
BL
「顔だけだ」と笑われても、俺は本気で騎士になりたかった。
傷だらけの努力の末にたどり着いた第三騎士団。
そこで出会った団長・ルークは、初めて“顔以外の俺”を見てくれた人だった。
不器用に愛を拒む騎士と、そんな彼を優しく包む団長。
甘くてまっすぐな、異世界騎士BLファンタジー。
婚約破棄されてヤケになって戦に乱入したら、英雄にされた上に美人で可愛い嫁ができました。
零壱
BL
自己肯定感ゼロ×圧倒的王太子───美形スパダリ同士の成長と恋のファンタジーBL。
鎖国国家クルシュの第三王子アースィムは、結婚式目前にして長年の婚約を一方的に破棄される。
ヤケになり、賑やかな幼馴染み達を引き連れ無関係の戦場に乗り込んだ結果───何故か英雄に祭り上げられ、なぜか嫁(男)まで手に入れてしまう。
「自分なんかがこんなどちゃくそ美人(男)を……」と悩むアースィム(攻)と、
「この私に不満があるのか」と詰め寄る王太子セオドア(受)。
互いを想い合う二人が紡ぐ、恋と成長の物語。
他にも幼馴染み達の一抹の寂寥を切り取った短篇や、
両想いなのに攻めの鈍感さで拗れる二人の恋を含む全四篇。
フッと笑えて、ギュッと胸が詰まる。
丁寧に読みたい、大人のためのファンタジーBL。
他サイトでも公開しております。
【完結】家も家族もなくし婚約者にも捨てられた僕だけど、隣国の宰相を助けたら囲われて大切にされています。
cyan
BL
留学中に実家が潰れて家族を失くし、婚約者にも捨てられ、どこにも行く宛てがなく彷徨っていた僕を助けてくれたのは隣国の宰相だった。
家が潰れた僕は平民。彼は宰相様、それなのに僕は恐れ多くも彼に恋をした。
平民男子と騎士団長の行く末
きわ
BL
平民のエリオットは貴族で騎士団長でもあるジェラルドと体だけの関係を持っていた。
ある日ジェラルドの見合い話を聞き、彼のためにも離れたほうがいいと決意する。
好きだという気持ちを隠したまま。
過去の出来事から貴族などの権力者が実は嫌いなエリオットと、エリオットのことが好きすぎて表からでは分からないように手を回す隠れ執着ジェラルドのお話です。
第十一回BL大賞参加作品です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる