虐げられても最強な僕。白い結婚ですが、将軍閣下に溺愛されているようです。

むかしむかしあるところに

むかしむかし、あるところにかわいそうな仔狐の王子がいました。

子狐はおとうさんとおかあさんを殺されて、お兄さんと生き別れ。

きっと、お兄さんはもう死んでしまったことでしょう。


ぼくをたすけるために、おにいさまが…！


かなしくてなきたかったけれど、かぞくで愛した国がめちゃくちゃになっていくのを止めるのも、仇を討てるのもきっとじぶんだけ。

ぼくはみんなの王なのだから、しっかりしなければ。


ちいさなちいさな王子様は、みんなの王様になりました。

泣くのをがまんして、せいいっぱいみんなを励まして、悪い魔女に放り出された真っ暗な森の中を、いっしょうけんめい進みます。

そうして、いっしょに逃れることができたお兄様の部下や奥さんになるはずだった人たちの家族と冒険をして、力をつけ、気が付けば10年以上も経っていました。

充分な力をつけた仔狐は、本当の名前を隠し、きれいな金色の毛並みを茶色に染めて、別人として故郷の国に戻って来ました。

仔狐は、もう仔狐ではなく、りっぱな狐になっていました。


狐は、冒険者として名声を得ていたので、お城の騎士になりました。
そうして活躍して、騎士の一番偉い人になって、いつか悪い王様を倒す機会をうかがっていました。

狐は、悪い王様のいうことを聞くふりをして、他の国に戦争にいきました。

狐は、征服したふりをして、その国の王子達を仲間にしました。

虎と蛇が仲間になりました。

蛇の王子様は体温で生き物の居場所がわかるので、隠密や索敵に向いていました。
虎は、ジャンプ力や素早さ、鋭い爪で、頼りになる戦力でした。

それから、女神さまの巡り合わせで、狐は綺麗な竜をお嫁さんにすることができました。


二人は政略結婚でしたが、お互い本当に愛し合うようになりました。


頼もしい仲間と、強くて美しいお嫁さんの力で、悪い王様を倒すことができました。



二人は新しい王様と王妃様になって、仲睦まじく暮らし、二人の間に新しい命が芽生えました。


ですが、実は、お嫁さんの竜は、竜の国の悪い王様に命を狙われていたのです。
キラキラ輝く夜のように美しい黒髪の、星の瞬く夜空のような瞳の綺麗な竜は、本当は竜の国の王様になるべき運命の人でした。
国王の座をどうしても奪いたかった悪い竜が、自分のお兄さんであり、お嫁さんのお父さんである夫婦を殺していたのです。
ですが、本当の王様の証である力は、お嫁さんに継承されていたのでした。


王様になった狐は、仲間と一緒に悪い竜を倒しました。
悪い竜に苦しめられていた竜の国の人たちも、ばんざいをしました。



こうして、世界が平和になり、二人を不幸にする人は誰もいなくなりました。

家族を亡くした二人は、たくさん子どもをもうけて、幸せにくらしました。







「ちょっとメルヘンチックすぎるかな？」

「ティア、絵本描いているの？」


「うん。あんまり残酷な描写とか細かいことは避けているけど。」お兄さんの下りとか。「悪い魔女のこと、戒めとして残したかったのとね。みんなから昔のこと聞いているうちに、エディのこと、ぎゅって抱きしめたくなったんだ。小さいエディを抱きしめて、頭なでなでしてあげたかったの。」


「たくさん…子どもをもうけて…って。」

エディがかあっと真っ赤になる。

「たーくさん、産みたいなぁ。今後の予定？」

「こればっかりは授かりものだから…。」

そう言いながらも、大きなベッドにぱたんと倒れるシルエットは仲睦まじく。



天井では光の珠のような精霊たちが嬉しそうに跳ねたり飛び回ったりしていた。





end