くず勇者にざまあ。虐げられた聖者に一目ぼれした魔王の側近はやり直す

あれから10年

私がユース様と結婚して10年の月日が過ぎた。


ユース様との間には、8歳の長男と６歳の次男が生まれている。

長男のキースは物静かで頭がよく、光魔法と神聖魔法が得意。
次男のルースは活発な男の子で、闇魔法と剣が得意だ。


ミシュラン様も実家の両親も、二人のことを目に入れても痛くないくらい可愛がっている。



今日は、王太子殿下の戴冠式。
シロナ様がいよいよ王妃になる。


そして、シロナ様が産んだマシロ殿下が王太子に。


お祝いで、ルシフェル様達も家族で駆けつけたから、久しぶりに皆、ロイヤルガーデンでお茶会をしている。



「私も、侍女たちのお陰で若さを保っているつもりですけれど、やっぱりセリーナさまやユース様の肌艶は衰え知らずですわね。やはり伴侶の影響かしら…。」




ディユの環境が若さの秘訣であれば、ユースに影響がでるはずもないし、デイユに帰らないカルディ様がお変わりないのは説明がつかない。



大人たちだけで囲む円卓で、扇子に口元を隠しながら、シロナ様は神妙な顔をした。

目線の先には、無邪気に遊ぶマシロ殿下とキース、ルース。そしてルシフェル様とセリーナさまの小さなレディ。




「みなさん。デイユは今や、仲の良い国の一つで、国交も正常化し、国際結婚も増えておりますわ。その中で、デイユの人間と結婚した者までが若さを保っていることで、今、こうささやかれておりますの。」



―デイユの人間の血肉には、若さと美貌の秘訣がある。――

伴侶たちが若いのは、夫婦関係で知らずに体液を受けているからではないか、と。




「ばかばかしい。安いピンク映画じゃあるまいし。」

「カルディ、あながち言い切れないよ？僕たち、調べたことないじゃない。種族としてそういうものだ、って思ってたし。異種族で結婚したのは僕たちの代からだ。そういう風に作用していてもおかしくないよ。」

ルシフェル様は、真剣な顔で考えている。


「シロナ様、あなたはデイユの民や混血児が、若さ目当ての人さらいに遭うことを懸念されているのですね。」


シロナ様は頷く。


「もちろん、そうならないように未然に手は打ちますわ。ですが、皆様もお気を付けくださいね。」







キースやルース。

罪もない人たちが、今度はそういう目的で狩られるかもしれない。