悪役令息上等です。悪の華は可憐に咲き誇る

竜鳴躍

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アルバート=ロス=ファーマ

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アレンがスラム街の領主となって一週間…。


アルバート=ロス=ファーマは自分の部屋に軟禁されていた。

学園を卒業した今、本来ならば王子として役割を与えられ、バリバリと仕事をしているはずだった。
だが、王位継承権をはく奪された今、王族の仕事は回ってこない。
王太子の空いた地位は空白のままだが、そこに返り咲けるめどはない。

将来は父親の後を継いで国王陛下になる。
難しいことや面倒くさいことは家臣にやらせればいいし、何ならアレンなら簡単に終わらせてしまうから、『国王』という仕事は煌びやかな世界で玉座にふんぞり返って玉璽を押すだけの楽勝な仕事………。

そう思っていたから、これまで家庭教師の授業も学校の授業も真剣に受けてこなかったし、剣の鍛錬も形だけしか身についていない。外国語だってわからないのだ。
こうなって、自分が王族どころか貴族としても何もできないのだと知る。


今となってはアルバートはどこかの領地の領主になるしかないが、どこの土地がもらえるのか、爵位はどうなるのか、何ができるかもさっぱりわからない。


アレンの言った通り、『聖女』だと主張したせいでマーガレットは神殿に連れていかれてしまった。



(つまらないな……。)


ベッドに着衣のまま横になり、ころころと転がる。
窓の外からは騎士団が訓練している掛け声が聞こえるが、見苦しくて聞き苦しいから分厚いカーテンをしめた。
カーテンの隙間から漏れる光は、悪くはない。


なんとなく悶々とするものの、アルバートの足りない頭では、何に悶々としているかもわからなければ、自分が何をしたらいいかもわからない。

ただずっと部屋にいて、お腹がすけば食事をして、また眠る。そういった繰り返し。
心なしか少しばかり体が重くなった気がする。
ズボンのボタンはまだ……大丈夫。


口を開けば小難しいことばかり言う陰気なアレンよりも、明るくて話の合うマーガレットといるのは心地よかった。
だけど、心地よかっただけで、本当に愛していたのかというとアレンにも分からない。

だって、こうして離れ離れになったけど、寂しかったのは最初だけで、だんだんそれも薄れている。


アレンがマーガレットを苛めているなんて、よく考えればマーガレットの被害妄想にしか過ぎないことくらい分かったはずだ。
だが、それを鵜呑みにすることを選択して、婚約破棄を突き付けたのは自分。


婚約者にしてやったのに、とたんに冷たくなって、婚約は本意ではないとばかりのアレンに腹を立てて、どうにかして自分を見てほしかった。
思いたかったのだ。

アレンが嫉妬してくれてると。



王子教育が始まる5歳の頃だった。
初めてアレンと会ったのは。




叔父のファーメット公爵に連れられて、現れたアレンは雪の妖精のようだった。

「おお、アルフォート!久しいな。その子か…。」

「アルバトロス陛下におかれましては……。」

「ここには王家の侍従くらいしか他にはいないのだから、兄上と呼んでくれ。」


「おうこくのたいようにごあいさついたします。わたしは、あれん=ふぁーめっと。あるふぉーと=ふぁーめっと公爵のちょうなんでございます。こちらはぶんけのものでわたしのせんじゅうのカエサルです。」

キラキラと絹のような白銀の髪に、きめ細やかな真っ白な肌。瞳は真っ赤なルビーのようで、まるで兎のようでかわいらしい。

目をひく妖精が拙いながらもちょこんと紳士の礼をとり、後ろに控える黒髪黒目の少年は、彼の白い日傘を片手に提げ、腰に細身の剣をぶら下げていた。

「今日からアルバートは王子教育が始まるが、アレンも一緒に受けるのだ。ともに勉強する者がいた方が張り合いもあるだろう。アレンは先に公爵家で当主教育も始めているから先に進んでいるところもあるだろう。教えてもらいなさい。」



隣で学ぶアレンの瞳はキラキラしていて。
教えてもらうのも心地よくて。
近づけば花のようなほのかな匂いがした。


常に日傘を片手に、木陰からほほ笑んでくれるアレン。


きっとアレンも俺を好きでいてくれると思っていたのに、婚約を結んだ途端、アレンは事務的になった。

それほどまで嫌だった?

だけど、どうすればアレンを自分のものにできた?



アレンの側にいつもいる、黒髪の騎士。

彼とばかりいつも楽しそうに笑っているのに。



「ああっ!あぁっ!くそっ!!!!」



何もかもがうまくいかない。

婚約破棄などしなければよかった。泣いて縋って折れると思っていたのに。

城に閉じ込めて、毎日毎晩愛を囁いて、ベッドに縫い留めてしまえばよかっただろうか。

その胎に種を常に満たして、子を孕ませてしまえばよかっただろうか。


スラムに行ってしまったアレン。
あの騎士をつれていってしまった。


悔しい。

憎々しい。


アレは俺のものだ。

アレンの気持ちなんて関係ない。欲しいから手に入れる。




「—…そうだ。反省した姿勢をみせて、軟禁を解いてもらおう。スラムの近くの領地でももらって……、アレンを迎えに行って…!!」

そうしたら今度こそ………。君が俺のものだって分からせてあげる。





アルバートの部屋の片隅には、古今東西の宝ものが山積みになっている。
アルバートは欲を我慢できない。
今までもずっと。
モノも人も。
気に入ったものは全て手に入れてきたのだ。


それがたとえ、他の誰かのものだったとしても。

そこに一切の悪気はない。
だからこそ質が悪い。


そしてこんなふうに『欲』が暴走しそうな時、諫めてそれとなく止めていたアレンは、もうそばにいない。

幼い頃ならカワイイ我儘?とも見られていた衝動的な行動は、大人になった今、王太子という身分もあり、始末に負えない状態になっていた。


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