悪役令息上等です。悪の華は可憐に咲き誇る

竜鳴躍

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その頃のアルバート

「ちくしょう…………。今日はいつもにまして警備が厳しい。」
アルバートは密閉した空間で爪を噛む。


アレンを拉致して既成事実を作ろうとしたのがバレて、とうとう塔に監禁されるようになった。

やはり頼れるのは自分だけ。


なんとかしてここを出て、アレンに会わなければならない…!

だが、ここには騎士団と魔術師団からエリートが巡回している。



「うーん、うーん。」


考えていると、かつんかつんかつんと声が聞こえた。
なんだか騒々しい。

音はどんどん大きくなる。


何かが言い争いながら近づいてくるようだ。


「なによ!私は男爵令嬢よっ!聖女さまなのよっ!教会じゃなかったらヘイボーン男爵家に帰してよっ!なんで私がこんなところに幽閉されなきゃいけないのよっ!」


ん?この声はマーガレットか??


「仕方がないだろうっ!男爵家はお前をもう面倒見られないと除籍した!その代わりにと保護してくださった教会の顔に泥も塗って!逃げ出してニューイースト領で騒動を起こしたお前を、もう教会でも面倒見きれないときた!」

「何よっ!それでも叔父様は私の生活の面倒を見る義務があるでしょっ!」

「成人するまで学費や食費、ドレスに宝飾品費など、じゅうぶん面倒見てもらったのだろう!それに教会預かりになった時点で、今後の生活費の足しになるよう教会に男爵家から寄付がされている!男爵殿は義務を十分に果たしておられる。」

「なら教会は私を面倒見るべきじゃないっ!!」

「残念ながらその寄付金は、お前がうつした性病の治療代や教会の権威が失墜したことによる損害賠償でとんとんだな。」

「なんで私のせいで教会の権威が失墜すんのよ!」

「聖女と言い張って大々的に教会の名前で炊き出ししまくってた女が性病の原因だったら、そりゃあ失墜するだろう!そんなことも分からないのか!」

「でも私は幸せになりたかっただけよ!私を愛してくれる人を探していただけなのに、どうしてこんなふうに重罪人扱いを受けなければならないの!」


きいきいうるさいな…。学園では無邪気で愛らしいと思っていた。
本当にアレンに虐げられてかわいそうにと思ってたこともあったのになあ。

お前は重罪人だろ!

お前のせいで私が国王になれなくなったんだぞ!
アレンのこと勘違いして、つい追放しちゃったし!
それでこんなことになっちゃったし!
私の不幸の始まり女じゃないか!

この下げ女め!


「…………ハァぁ…。お前は希代の歩くトラブルメーカーになっちまったんだよ。重罪人だから塔に幽閉するんじゃなくて、これ以上誰も困らないようにというか、行き場のないお前を仕方なく王家が保護するけど、従業員としても雇えないしどうにもできないから塔に置くことにしたというか。」

「塔なんて嫌よ!出会いもないじゃない!それとも、あんたたちの誰かが私を愛してくれるっての?!」


「そんなに噛みついて、体を使った誘惑と甘言ばかりして、人の言うことをこれっぽっちも聞かない女を好む奴はすくなくとも俺たちの同僚にはいないな。」

「きぃいいい!!」

「だいたい、幸せになりたい、愛されたいって、男爵たちは充分愛してくれただろ!法王様や教会の聖女たちだって親身だった!過去は過去として、学園で素直に淑女教育で学んでいれば、生娘でなくても実直な下級貴族の令息や裕福な商家に嫁ぐことだって可能だっただろうし、教会で更生していればまた貴族令嬢として返り咲けたはずだ。元々の家庭環境が悪かったのだと法王様からは聞いているが、お前は恵まれている方だ…。お前みたいなのは放り出されて娼館送りになるケースが多い。ここにいれば衣食住保証される。貧しい思いはしなくていい。娼館送りになって早死にすることはないんだからな…。」



ふーん…。



「愛されたいって、気持ちはわかる。父親にも母親にも虐待されて育ったんだろ。でもそんなん、庶民にも貴族にもよくある話よ。いや、政略結婚の分、表向きは問題ない顔をしているだけで、貴族の方が多いかもな。だから我慢しておけばよかったとは言わんがな。お前はそんなふうに歪む前に叔父さんの養女になるべきだったのかもな…。きっとさ、お前が付き合った中の何名かは本気でお前を愛して大切にしてくれた奴だったと思う。それを捨てて、よりステータスのいい男を、って乗り継いでいった時点で、男からしたら体のいい遊び相手にしか見られなくなって、負の連鎖だよ。誰も言わなかったか、『誰彼すぐに関係を持つんじゃない』って。そういうこと言ってくれるのが、本当の愛情だよ。自分にとって誰が本当に大切な人だったのか、思い返してみろ。」

かちゃんと音が鳴り、隣の部屋にマーガレットは入れられたらしい。


何かを叫んでいるような雰囲気はするが、防音で聞こえない。


きっとマーガレットは隣に俺がいることなど、気づいていないだろうな。



マーガレットは愛が欲しかったのか。



「はて、しかし防音なのにどうして私は階段の声は聞こえたんだ…?もしかして、あまりの孤独に魔法の使い方が急にうまくなって遠くの声が聞こえるようになったとか…。牢屋同士は結界が互いにかかっているからうまく聞き取れないとして…。そういうことなのか???」

うーん、うーんと魔力を練ってみる。

そもそも魔力を使わないと破裂すると言われたので、魔力操作の鍛錬だけは続けているのだ。





<ようやく陛下がお決めになったみたいね。>

<アレン様が王太子になるんでしょう!これで国も安泰だわ!>


ん??これは侍女……違うな、下女たちか。


<こら、そんなことを軽々しく言うんじゃありません。間違っても外で言ってはいけませんよ!全くどこで聞いたのやら…!>

<そりゃあ雰囲気でわかりますよ!公爵家の馬車も来てましたし!>
<そうそう、アレン様もカエサル様もパイロン様も眼福でした!>
<隙間からこっそり見ました!>

<もうっ!気持ちは分かりますけどね、気をつけなさい!>

<はぁい…>

<でも、王配はどうなるんでしょうねぇ>

<知りません、はい、仕事仕事!>


アレンが王太子!!

王配……王配か………。



ぐふふふふふ………。
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