36 / 84
その頃のアルバート
「ちくしょう…………。今日はいつもにまして警備が厳しい。」
アルバートは密閉した空間で爪を噛む。
アレンを拉致して既成事実を作ろうとしたのがバレて、とうとう塔に監禁されるようになった。
やはり頼れるのは自分だけ。
なんとかしてここを出て、アレンに会わなければならない…!
だが、ここには騎士団と魔術師団からエリートが巡回している。
「うーん、うーん。」
考えていると、かつんかつんかつんと声が聞こえた。
なんだか騒々しい。
音はどんどん大きくなる。
何かが言い争いながら近づいてくるようだ。
「なによ!私は男爵令嬢よっ!聖女さまなのよっ!教会じゃなかったらヘイボーン男爵家に帰してよっ!なんで私がこんなところに幽閉されなきゃいけないのよっ!」
ん?この声はマーガレットか??
「仕方がないだろうっ!男爵家はお前をもう面倒見られないと除籍した!その代わりにと保護してくださった教会の顔に泥も塗って!逃げ出してニューイースト領で騒動を起こしたお前を、もう教会でも面倒見きれないときた!」
「何よっ!それでも叔父様は私の生活の面倒を見る義務があるでしょっ!」
「成人するまで学費や食費、ドレスに宝飾品費など、じゅうぶん面倒見てもらったのだろう!それに教会預かりになった時点で、今後の生活費の足しになるよう教会に男爵家から寄付がされている!男爵殿は義務を十分に果たしておられる。」
「なら教会は私を面倒見るべきじゃないっ!!」
「残念ながらその寄付金は、お前がうつした性病の治療代や教会の権威が失墜したことによる損害賠償でとんとんだな。」
「なんで私のせいで教会の権威が失墜すんのよ!」
「聖女と言い張って大々的に教会の名前で炊き出ししまくってた女が性病の原因だったら、そりゃあ失墜するだろう!そんなことも分からないのか!」
「でも私は幸せになりたかっただけよ!私を愛してくれる人を探していただけなのに、どうしてこんなふうに重罪人扱いを受けなければならないの!」
きいきいうるさいな…。学園では無邪気で愛らしいと思っていた。
本当にアレンに虐げられてかわいそうにと思ってたこともあったのになあ。
お前は重罪人だろ!
お前のせいで私が国王になれなくなったんだぞ!
アレンのこと勘違いして、つい追放しちゃったし!
それでこんなことになっちゃったし!
私の不幸の始まり女じゃないか!
この下げ女め!
「…………ハァぁ…。お前は希代の歩くトラブルメーカーになっちまったんだよ。重罪人だから塔に幽閉するんじゃなくて、これ以上誰も困らないようにというか、行き場のないお前を仕方なく王家が保護するけど、従業員としても雇えないしどうにもできないから塔に置くことにしたというか。」
「塔なんて嫌よ!出会いもないじゃない!それとも、あんたたちの誰かが私を愛してくれるっての?!」
「そんなに噛みついて、体を使った誘惑と甘言ばかりして、人の言うことをこれっぽっちも聞かない女を好む奴はすくなくとも俺たちの同僚にはいないな。」
「きぃいいい!!」
「だいたい、幸せになりたい、愛されたいって、男爵たちは充分愛してくれただろ!法王様や教会の聖女たちだって親身だった!過去は過去として、学園で素直に淑女教育で学んでいれば、生娘でなくても実直な下級貴族の令息や裕福な商家に嫁ぐことだって可能だっただろうし、教会で更生していればまた貴族令嬢として返り咲けたはずだ。元々の家庭環境が悪かったのだと法王様からは聞いているが、お前は恵まれている方だ…。お前みたいなのは放り出されて娼館送りになるケースが多い。ここにいれば衣食住保証される。貧しい思いはしなくていい。娼館送りになって早死にすることはないんだからな…。」
ふーん…。
「愛されたいって、気持ちはわかる。父親にも母親にも虐待されて育ったんだろ。でもそんなん、庶民にも貴族にもよくある話よ。いや、政略結婚の分、表向きは問題ない顔をしているだけで、貴族の方が多いかもな。だから我慢しておけばよかったとは言わんがな。お前はそんなふうに歪む前に叔父さんの養女になるべきだったのかもな…。きっとさ、お前が付き合った中の何名かは本気でお前を愛して大切にしてくれた奴だったと思う。それを捨てて、よりステータスのいい男を、って乗り継いでいった時点で、男からしたら体のいい遊び相手にしか見られなくなって、負の連鎖だよ。誰も言わなかったか、『誰彼すぐに関係を持つんじゃない』って。そういうこと言ってくれるのが、本当の愛情だよ。自分にとって誰が本当に大切な人だったのか、思い返してみろ。」
かちゃんと音が鳴り、隣の部屋にマーガレットは入れられたらしい。
何かを叫んでいるような雰囲気はするが、防音で聞こえない。
きっとマーガレットは隣に俺がいることなど、気づいていないだろうな。
マーガレットは愛が欲しかったのか。
「はて、しかし防音なのにどうして私は階段の声は聞こえたんだ…?もしかして、あまりの孤独に魔法の使い方が急にうまくなって遠くの声が聞こえるようになったとか…。牢屋同士は結界が互いにかかっているからうまく聞き取れないとして…。そういうことなのか???」
うーん、うーんと魔力を練ってみる。
そもそも魔力を使わないと破裂すると言われたので、魔力操作の鍛錬だけは続けているのだ。
<ようやく陛下がお決めになったみたいね。>
<アレン様が王太子になるんでしょう!これで国も安泰だわ!>
ん??これは侍女……違うな、下女たちか。
<こら、そんなことを軽々しく言うんじゃありません。間違っても外で言ってはいけませんよ!全くどこで聞いたのやら…!>
<そりゃあ雰囲気でわかりますよ!公爵家の馬車も来てましたし!>
<そうそう、アレン様もカエサル様もパイロン様も眼福でした!>
<隙間からこっそり見ました!>
<もうっ!気持ちは分かりますけどね、気をつけなさい!>
<はぁい…>
<でも、王配はどうなるんでしょうねぇ>
<知りません、はい、仕事仕事!>
アレンが王太子!!
王配……王配か………。
ぐふふふふふ………。
アルバートは密閉した空間で爪を噛む。
アレンを拉致して既成事実を作ろうとしたのがバレて、とうとう塔に監禁されるようになった。
やはり頼れるのは自分だけ。
なんとかしてここを出て、アレンに会わなければならない…!
だが、ここには騎士団と魔術師団からエリートが巡回している。
「うーん、うーん。」
考えていると、かつんかつんかつんと声が聞こえた。
なんだか騒々しい。
音はどんどん大きくなる。
何かが言い争いながら近づいてくるようだ。
「なによ!私は男爵令嬢よっ!聖女さまなのよっ!教会じゃなかったらヘイボーン男爵家に帰してよっ!なんで私がこんなところに幽閉されなきゃいけないのよっ!」
ん?この声はマーガレットか??
「仕方がないだろうっ!男爵家はお前をもう面倒見られないと除籍した!その代わりにと保護してくださった教会の顔に泥も塗って!逃げ出してニューイースト領で騒動を起こしたお前を、もう教会でも面倒見きれないときた!」
「何よっ!それでも叔父様は私の生活の面倒を見る義務があるでしょっ!」
「成人するまで学費や食費、ドレスに宝飾品費など、じゅうぶん面倒見てもらったのだろう!それに教会預かりになった時点で、今後の生活費の足しになるよう教会に男爵家から寄付がされている!男爵殿は義務を十分に果たしておられる。」
「なら教会は私を面倒見るべきじゃないっ!!」
「残念ながらその寄付金は、お前がうつした性病の治療代や教会の権威が失墜したことによる損害賠償でとんとんだな。」
「なんで私のせいで教会の権威が失墜すんのよ!」
「聖女と言い張って大々的に教会の名前で炊き出ししまくってた女が性病の原因だったら、そりゃあ失墜するだろう!そんなことも分からないのか!」
「でも私は幸せになりたかっただけよ!私を愛してくれる人を探していただけなのに、どうしてこんなふうに重罪人扱いを受けなければならないの!」
きいきいうるさいな…。学園では無邪気で愛らしいと思っていた。
本当にアレンに虐げられてかわいそうにと思ってたこともあったのになあ。
お前は重罪人だろ!
お前のせいで私が国王になれなくなったんだぞ!
アレンのこと勘違いして、つい追放しちゃったし!
それでこんなことになっちゃったし!
私の不幸の始まり女じゃないか!
この下げ女め!
「…………ハァぁ…。お前は希代の歩くトラブルメーカーになっちまったんだよ。重罪人だから塔に幽閉するんじゃなくて、これ以上誰も困らないようにというか、行き場のないお前を仕方なく王家が保護するけど、従業員としても雇えないしどうにもできないから塔に置くことにしたというか。」
「塔なんて嫌よ!出会いもないじゃない!それとも、あんたたちの誰かが私を愛してくれるっての?!」
「そんなに噛みついて、体を使った誘惑と甘言ばかりして、人の言うことをこれっぽっちも聞かない女を好む奴はすくなくとも俺たちの同僚にはいないな。」
「きぃいいい!!」
「だいたい、幸せになりたい、愛されたいって、男爵たちは充分愛してくれただろ!法王様や教会の聖女たちだって親身だった!過去は過去として、学園で素直に淑女教育で学んでいれば、生娘でなくても実直な下級貴族の令息や裕福な商家に嫁ぐことだって可能だっただろうし、教会で更生していればまた貴族令嬢として返り咲けたはずだ。元々の家庭環境が悪かったのだと法王様からは聞いているが、お前は恵まれている方だ…。お前みたいなのは放り出されて娼館送りになるケースが多い。ここにいれば衣食住保証される。貧しい思いはしなくていい。娼館送りになって早死にすることはないんだからな…。」
ふーん…。
「愛されたいって、気持ちはわかる。父親にも母親にも虐待されて育ったんだろ。でもそんなん、庶民にも貴族にもよくある話よ。いや、政略結婚の分、表向きは問題ない顔をしているだけで、貴族の方が多いかもな。だから我慢しておけばよかったとは言わんがな。お前はそんなふうに歪む前に叔父さんの養女になるべきだったのかもな…。きっとさ、お前が付き合った中の何名かは本気でお前を愛して大切にしてくれた奴だったと思う。それを捨てて、よりステータスのいい男を、って乗り継いでいった時点で、男からしたら体のいい遊び相手にしか見られなくなって、負の連鎖だよ。誰も言わなかったか、『誰彼すぐに関係を持つんじゃない』って。そういうこと言ってくれるのが、本当の愛情だよ。自分にとって誰が本当に大切な人だったのか、思い返してみろ。」
かちゃんと音が鳴り、隣の部屋にマーガレットは入れられたらしい。
何かを叫んでいるような雰囲気はするが、防音で聞こえない。
きっとマーガレットは隣に俺がいることなど、気づいていないだろうな。
マーガレットは愛が欲しかったのか。
「はて、しかし防音なのにどうして私は階段の声は聞こえたんだ…?もしかして、あまりの孤独に魔法の使い方が急にうまくなって遠くの声が聞こえるようになったとか…。牢屋同士は結界が互いにかかっているからうまく聞き取れないとして…。そういうことなのか???」
うーん、うーんと魔力を練ってみる。
そもそも魔力を使わないと破裂すると言われたので、魔力操作の鍛錬だけは続けているのだ。
<ようやく陛下がお決めになったみたいね。>
<アレン様が王太子になるんでしょう!これで国も安泰だわ!>
ん??これは侍女……違うな、下女たちか。
<こら、そんなことを軽々しく言うんじゃありません。間違っても外で言ってはいけませんよ!全くどこで聞いたのやら…!>
<そりゃあ雰囲気でわかりますよ!公爵家の馬車も来てましたし!>
<そうそう、アレン様もカエサル様もパイロン様も眼福でした!>
<隙間からこっそり見ました!>
<もうっ!気持ちは分かりますけどね、気をつけなさい!>
<はぁい…>
<でも、王配はどうなるんでしょうねぇ>
<知りません、はい、仕事仕事!>
アレンが王太子!!
王配……王配か………。
ぐふふふふふ………。
あなたにおすすめの小説
【完結】悪役令嬢モノのバカ王子に転生してしまったんだが、なぜかヒーローがイチャラブを求めてくる
路地裏乃猫
BL
ひょんなことから悪役令嬢モノと思しき異世界に転生した〝俺〟。それも、よりにもよって破滅が確定した〝バカ王子〟にだと?説明しよう。ここで言うバカ王子とは、いわゆる悪役令嬢モノで冒頭から理不尽な婚約破棄を主人公に告げ、最後はざまぁ要素によって何やかんやと破滅させられる例のアンポンタンのことであり――とにかく、俺はこの異世界でそのバカ王子として生き延びにゃならんのだ。つーわけで、脱☆バカ王子!を目指し、真っ当な王子としての道を歩き始めた俺だが、そんな俺になぜか、この世界ではヒロインとイチャコラをキメるはずのヒーローがぐいぐい迫ってくる!一方、俺の命を狙う謎の暗殺集団!果たして俺は、この破滅ルート満載の世界で生き延びることができるのか?
いや、その前に……何だって悪役令嬢モノの世界でバカ王子の俺がヒーローに惚れられてんだ?
2025年10月に全面改稿を行ないました。
2025年10月28日・BLランキング35位ありがとうございます。
2025年10月29日・BLランキング27位ありがとうございます。
2025年10月30日・BLランキング15位ありがとうございます。
2025年11月1日 ・BLランキング13位ありがとうございます。
第13回BL大賞で奨励賞をいただきました。これもひとえに皆様の応援のおかげです。本当にありがとうございました。
オメガだと隠して魔王討伐隊に入ったら、最強アルファ達に溺愛されています
水凪しおん
BL
前世は、どこにでもいる普通の大学生だった。車に轢かれ、次に目覚めた時、俺はミルクティー色の髪を持つ少年『サナ』として、剣と魔法の異世界にいた。
そこで知らされたのは、衝撃の事実。この世界には男女の他に『アルファ』『ベータ』『オメガ』という第二の性が存在し、俺はその中で最も希少で、男性でありながら子を宿すことができる『オメガ』だという。
アルファに守られ、番になるのが幸せ? そんな決められた道は歩きたくない。俺は、俺自身の力で生きていく。そう決意し、平凡な『ベータ』と身分を偽った俺の前に現れたのは、太陽のように眩しい聖騎士カイル。彼は俺のささやかな機転を「稀代の戦術眼」と絶賛し、半ば強引に魔王討伐隊へと引き入れた。
しかし、そこは最強のアルファたちの巣窟だった!
リーダーのカイルに加え、皮肉屋の天才魔法使いリアム、寡黙な獣人暗殺者ジン。三人の強烈なアルファフェロモンに日々当てられ、俺の身体は甘く疼き始める。
隠し通したい秘密と、抗いがたい本能。偽りのベータとして、俺はこの英雄たちの中で生き残れるのか?
これは運命に抗う一人のオメガが、本当の居場所と愛を見つけるまでの物語。
推しの為なら悪役令息になるのは大歓迎です!
こうらい ゆあ
BL
「モブレッド・アテウーマ、貴様との婚約を破棄する!」王太子の宣言で始まった待ちに待った断罪イベント!悪役令息であるモブレッドはこの日を心待ちにしていた。すべては推しである主人公ユレイユの幸せのため!推しの幸せを願い、日夜フラグを必死に回収していくモブレッド。ところが、予想外の展開が待っていて…?
BLゲームの展開を無視した結果、悪役令息は主人公に溺愛される。
佐倉海斗
BL
この世界が前世の世界で存在したBLゲームに酷似していることをレイド・アクロイドだけが知っている。レイドは主人公の恋を邪魔する敵役であり、通称悪役令息と呼ばれていた。そして破滅する運命にある。……運命のとおりに生きるつもりはなく、主人公や主人公の恋人候補を避けて学園生活を生き抜き、無事に卒業を迎えた。これで、自由な日々が手に入ると思っていたのに。突然、主人公に告白をされてしまう。
「禍の刻印」で生贄にされた俺を、最強の銀狼王は「ようやく見つけた、俺の運命の番だ」と過保護なほど愛し尽くす
水凪しおん
BL
体に災いを呼ぶ「禍の刻印」を持つがゆえに、生まれた村で虐げられてきた青年アキ。彼はある日、不作に苦しむ村人たちの手によって、伝説の獣人「銀狼王」への贄として森の奥深くに置き去りにされてしまう。
死を覚悟したアキの前に現れたのは、人の姿でありながら圧倒的な威圧感を放つ、銀髪の美しい獣人・カイだった。カイはアキの「禍の刻印」が、実は強大な魔力を秘めた希少な「聖なる刻印」であることを見抜く。そして、自らの魂を安定させるための運命の「番(つがい)」として、アキを己の城へと迎え入れた。
贄としてではなく、唯一無二の存在として注がれる初めての優しさ、温もり、そして底知れぬ独占欲。これまで汚れた存在として扱われてきたアキは、戸惑いながらもその絶対的な愛情に少しずつ心を開いていく。
「お前は、俺だけのものだ」
孤独だった青年が、絶対的支配者に見出され、その身も魂も愛し尽くされる。これは、絶望の淵から始まった、二人の永遠の愛の物語。
シナリオ回避失敗して投獄された悪役令息は隊長様に抱かれました
無味無臭(不定期更新)
BL
悪役令嬢の道連れで従兄弟だった僕まで投獄されることになった。
前世持ちだが結局役に立たなかった。
そもそもシナリオに抗うなど無理なことだったのだ。
そんなことを思いながら収監された牢屋で眠りについた。
目を覚ますと僕は見知らぬ人に抱かれていた。
…あれ?
僕に風俗墜ちシナリオありましたっけ?
大学一軍イケメンにいちご狩りに誘われた陰キャの俺、なぜかいちごじゃなくて俺が喰われたんだが(?)
子犬一 はぁて
BL
大学一軍イケメン×大学九軍陰キャ
喰われるなんて聞いてないんだが(?)
俺はただ、
いちご狩りに誘われただけだが。
なのに──
誘ってきた大学一軍イケメンの海皇(21)に
なぜか俺が捕まって食われる展開に?
ちょっと待てい。
意味がわからないんだが!
いちご狩りから始まる
ケンカップルいちゃらぶBL
※大人描写のある話はタイトルに『※』あり
当て馬に転生した俺、メインヒーローに懐かれすぎて物語が崩壊しています ~最強の騎士様、俺じゃなくてヒロインを追いかけてください!~
たら昆布
BL
処刑される元貴族に転生していたので婚約破棄して雑用係になった話