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PLOLAUGE・空虚なる大海原
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『こちらGB721、こちらGB721、どなたか応答願います……こちらGB721――』
宇宙塵の瀰漫する大海原――かつて〈馭者座δ星宇宙管区 第七宙域〉とよばれた場所――に佇む一隻の宇宙船から、一条の電波が疾駆する――だが、それを聴く者は誰ひとりとしていない。宇宙船の船体はあちこちへこんでおり、いくつか破孔もあいていた。船体に推力を与えるはずのエンジンは、四基中三基が沈黙している。
「――応答願います……はぁ、今日もだめだよ。全天探査も限定探査も反応なし」
〈GB721〉――民間宇宙船〈ポラリス7号〉の無電船室に坐る少女の片方が、探査装置の制御コンソールに赤々と表示された〈NEGATIVE〉の文字を見ながら呟く。――その探査装置は半径二光年の範囲を走査可能な代物であったが、その広大な空間にすら、宇宙船は一隻たりとも存在しなかったのだ。
少女の顔は見るからに憔悴しており、飢餓と疲労で落ちくぼんだ眼には濃く絶望の色が漂っている。
「まあまあ、明日やり直せばいいよ。ね?ほら、たまたま誰も応えなかっただけだって――うん、たまたま……」
もう片方の少女が、自分に言い聞かせるように、殊更に快活にいう。だが、彼女らはこの作業をかれこれ一ヵ月は続けていた。頼るべき大人たちは全員、二号エンジン・ルームの爆発事故で死亡し、あとには彼女ら二人だけが残されていた。
――かくして彼女らは、無意味と知りつつ考える。何者が、なにゆえに、何のために――と。
宇宙塵の瀰漫する大海原――かつて〈馭者座δ星宇宙管区 第七宙域〉とよばれた場所――に佇む一隻の宇宙船から、一条の電波が疾駆する――だが、それを聴く者は誰ひとりとしていない。宇宙船の船体はあちこちへこんでおり、いくつか破孔もあいていた。船体に推力を与えるはずのエンジンは、四基中三基が沈黙している。
「――応答願います……はぁ、今日もだめだよ。全天探査も限定探査も反応なし」
〈GB721〉――民間宇宙船〈ポラリス7号〉の無電船室に坐る少女の片方が、探査装置の制御コンソールに赤々と表示された〈NEGATIVE〉の文字を見ながら呟く。――その探査装置は半径二光年の範囲を走査可能な代物であったが、その広大な空間にすら、宇宙船は一隻たりとも存在しなかったのだ。
少女の顔は見るからに憔悴しており、飢餓と疲労で落ちくぼんだ眼には濃く絶望の色が漂っている。
「まあまあ、明日やり直せばいいよ。ね?ほら、たまたま誰も応えなかっただけだって――うん、たまたま……」
もう片方の少女が、自分に言い聞かせるように、殊更に快活にいう。だが、彼女らはこの作業をかれこれ一ヵ月は続けていた。頼るべき大人たちは全員、二号エンジン・ルームの爆発事故で死亡し、あとには彼女ら二人だけが残されていた。
――かくして彼女らは、無意味と知りつつ考える。何者が、なにゆえに、何のために――と。
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