アユミちゃん

まろ蔵

文字の大きさ
上 下
18 / 32

〈アユミちゃんと自動販売機〉

しおりを挟む
ある寒い朝の事のです。
いつもと違うルートでポチの散歩をしていたアユミちゃん。
真新しい自販機を発見。

「あら、こんな所に自動販売機。
いったいどんな飲み物が入っているのかしら?」

アユミちゃん機械に近づき物色します。

「ええっと、なになに、つめたいジュースは、オレンジ、グレープ、バナナにピーチ。
コーヒーが無糖に微糖にカフェオーレ。
紅茶はレモンにミルクにストレート。
炭酸飲料はソーダ、コーラ、ジンジャーエール。
なかなかのラインナップだけど、この寒いのにあんましいらないわよネ。
夏場だったら腰に手を当ててグイグイ飲む炭酸ソーダの喉越しシュワシュワ感がたまらんけどねぇ。
テッパンだよねぇ」

風呂上がりのおっさんみたいだねアユミちゃん。

「さてさて肝心のあたたかいのは、あ、こっちもコーヒー、紅茶は同んなじなんだね。
あとはぁ、つぶつぶコーンポタージュにミルクココア、ホットレモンにしょうが湯、おお中々の充実ぶり。
ん、んんーんっ!」

アユミちゃんの目が一点に釘付けになります。

「お、お、お、おしるこだあぁーーーーだ!!!」

そうなんですアユミちゃん、おぜんざいとみたらし団子と同じくらいにおしるこが大好物。

「これは、ずぅえったい、いっとくしか無いねぇー。
さあてっとぉ」

やおら硬貨を取り出してスリットへ投入すると、パンパン、二礼二拍手一礼。

えーっと、一応突っ込んどくけど、アユミちゃん、ここお宮さんじゃないし、お賽銭じゃないから。

アユミちゃん、白い歯見せてにっこり笑うと
「はい、ポチッとなぁ」

ガッシャーン。
んん?
取り出し口から出て来たのは、青緑の缶、冷たい炭酸ソーダです。

「えーっ!
なんで、なんでぇー!!
あ、あれ、あれ、おしるこのちょうど真上が炭酸ソーダかあ。
アユミ押し間違えちゃったみたい。てへぺろ」

アユミちゃん、気をとり直して再投入。
パンパン、二礼二拍手一礼。

「はい、ポチッとなぁっと」

ガッショーン!
え、ええーーーーっ!
取り出し口には、再び青緑色の憎い奴。

「なんで、なんでよぉー!
ねえ、ポチィー。
アユミ、確かにおしるこのボタンを押したよねぇー」
「ワン、ワン、ワオン!」
ポチも同意と頷きます。

「あっ!
ポチ、アユミ分かった、分かっちゃったよお。
これはね、きっと自動販売機の業者さんがあべこべに入れ間違えちゃったんだよ、テレコって奴だね。
そうと分かれば三度目の正直」

再々度、硬貨を取り出すアユミちゃん。
パンパン、二礼二拍手一礼。
自信に満ちた手で炭酸ソーダのボタンを押します。

「それっ、ポチッとなあ」

ガッチョーーン!!!

やっぱり、そこには青緑の缶が。

「え、え、えーーーっ!
なんでなんでなんでなんでぇー!!!
アユミ、間違いなぁく、炭酸ソーダのボタンを押したよねぇーーーっ!」

うんうんだから、炭酸ソーダが出てるんだよね、アユミちゃん。

「ちっくしょおーっ!
こんな機械、こうしてやるぅー!!!」

アユミちゃんの怒りの鉄槌、北斗神拳炸裂です。

ガチャ、ガチュ、ガッチョーーン。
ガチャ、ガチュ、ガッチョーーン。

強烈なダメージを浴びた自動販売機の取り出し口より、次々と青緑の缶々が飛び出して来ます。

ガチョ、ガチョ、ガリョ、ガロ、ガラガラ、ゲロゲロゲロゲロ、、、。
いつ果てる事とも無く炭酸ソーダ缶が吐き出され、辺り一面ソーダの海。

アユミちゃんとポチもどんぶらこどんぶらこっこと流されて行きます。
ああ、その先は滝!
アユミちゃんとポチの運命は如何に?

、、、もちろん、つづきません。
しおりを挟む

処理中です...