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本編
恋のキューピッド部
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放課後の放送が鳴る時
二人の生徒は噂をしていた
ねぇ、知ってる?この学校に恋の願いを叶えるキューピッドがいるらしいよ
それってホント?
うん、恋を叶えてもらった子も
いるんだって
へー、それでその部活はどこにあるの?
確か、旧校舎の音楽室にあるらしいよ
旧校舎の音楽室では放課後、
かの有名なクラッシックがオルゴール調で
流れている
そこに一人の女生徒が音楽室の扉を開ける
「あの~」
室内にいた人物の一人である青年が
女生徒の声に気付きスピーカーを止める
そして立ち上がり女生徒の近くに向かい
「ようこそ」
「「恋のキューピッド部へ」」
「…え?」
少し時が止まった
本当に恋のキューピッド部という名前で
あったし、なんとも某部活動漫画に雰囲気が似ているような気がして胡散臭いのだ
女生徒の不安な様子をよそに
青年はそのまま発言を続ける
「ほ~ら、君も」
「いいよ。俺は!」
「いいから、ほら」
この場を仕切る青年は
あまり乗り気では無いスカートをはいた部員らしき生徒に
一連の動作をさせようとしているらしい
「ようこそ!」
「恋のキューピッド部へ…」
とても嫌そうな顔で生徒は言った
青年は満足そうな顔をしている
「よし!あぁ、失礼した。どうぞこちらに」
女生徒をエスコートし席に座らせると
青年も席につき口を開いた
「まず、自己紹介からしようか
僕はここの部長を務めている中川環だ
よろしく」
女生徒もそれに倣い口を開いた
「よろしくお願いします。
えと、私は1年美術コースの難波千尋です」
「よろしく。君も恋を叶えにきたんだよね」
「はい。本当に叶えられるんですよね
どんな恋でも」
「あぁ、どんな恋でもね」
「どんな風に叶えてくれるんですか?」
「それはこのキューピッドの矢でね!」
そう言って青年_環は
ピンクの装飾が施された銃を掲げた
それを見た女生徒_千尋は目を見開き驚いた
「え、それって銃じゃないんですか⁉︎
銃刀法違反で捕まったりとかは…」
「しないよ!
なんせキューピッドの持ち物なんだから」
「はぁ、それで相手を射止めるって
ことですか」
「もちろん。Hey!雑用係くん!
資料を持ってきてくれ。あと説明もよろしく」
「雑用係じゃないんですけど…」
"雑用係くん“ そう呼ばれた生徒は
少し不満気な様子でホワイトボードの
ある方向へと歩いていき途中、
ルービックキューブを持ったズボンの生徒に資料を渡すよう話していた
準備が整い"雑用係くん”は口を開いた
「では、難波千尋さん。これからプランの説明をさせていただきます」
「プラン?」
千尋がそう問うとセールスマンの様に
説明を始めた
「はい。こちらのサービス合計で5つのプランに分かれておりまして、依頼者様のご希望に合わせてお選びいただけます。こちらから簡単に説明させていただきますね。まずはプランA、使用弾数が4弾とこの中で一番多いプランとなっております。そしてプランB、プランC、プランDは使用弾数が1弾ずつ減り、それぞれ3弾、2弾、1弾。最後のプランEはご自身で撃つ代わりに弾数が3弾と言った具合です。」
「はぇ~、やっぱり弾数っていうんですね。
なんだか物騒…」
千尋は長くそして早口な説明に追いつけず
そんな感想しか出なかった
「なんか質問とかあるか?」
全く説明を理解していなかった千尋は
質問の有無を聞かれ手元の資料を見た
「えっと…。あ、報酬の差とかって
あるんですかね。値段とか…」
「お金をもらうをもらうことはないから
心配することはないよ。安心したまえ!
そもそも学生からお金を取るなんて、
キューピッドの風上にも置けないね!」
千尋は学生以外ならお金取るのかなと思いながら
「じゃあ、(学生は)タダってことですか⁈」
「いや、お金の代わりにこちらのお願いを1つ聞いてもらうことにしているんだ」
「そうなんですね。分かりました。じゃあお願いしまs」
「ちょっと待った!」
千尋が依頼をしようとした時、何かが話を遮った
それはプランの説明をした生徒だった
「黙って聞こうと思ったけどやっぱりダメだ。
お前、依頼はやめといた方がいい」
「な、なんでですか?」
「俺は2年看護コースの八木普だ。実は俺も当時同好会だったこの部に依頼した人間なんだが報酬として一つお願いを聞くということはこの部の部員になることだしかも強制的に」
「え」
~回想~
「ありがとうございます!おかげで恋が叶いました」
生徒…普は晴れやかな笑顔を浮かべ対面に座る環に礼を述べた
「それは良かったよ。それで報酬のことなんだが」
「お願いを一つ聞くっていうのでしたよね」
「あぁ、その願いだが…」
もったいぶりながら話す環に無茶振りをされるのではと不安になり喉が鳴った
その時、環は願いを言った
「この同好会の部員になってくれないか!」
「はい!っていやいやいや、俺別の部活に入ってますしこの学校兼部ダメですし無理です」
普は一息で環の申し入れを断ったが…
「入ってくれるのかありがとう!いや~良かった」
環は普の断りが聞こえなかったかのように喜んだ
「だから無理ですって!」
「断るなら失恋させちゃおっかなぁ。キューピッドにはそれくらい簡単なんだからな」
「それは…」
「さぁ、どうする」
普が選べる選択肢はひとつしかなかった
~回想終了~
「てな感じで入部させられて今まで雑用からトラブル処理までなんでもやらされてんだよ。だからやめとけ。被害者を増やしたくない」
「人聞きの悪いヤツだね。そんなことさせてないよ」
「ウソつけコノヤロウ。つーか、恋を叶えたのも自分の力だったわ」
「依頼人の背中を押すのもキューピッドの務めさ!」
「な?こんな屁理屈言うヤツにお前の大事な恋を預けても良いのか?今なら引き返せる」
環と言い合いをしていた普は千尋に依頼を止めるよう言った
「でも…私……依頼します!」
「おう!依頼するんだな、良かった…って、えっ!今なんて?」
普は見事なノリツッコミをした
「依頼しますと言いました」
「そうか。じゃあ話を進めよう」
「ちょっと!ホントにいいのか?もう引き返せないぞ?」
話を進める2人に普は止めた
「はい。もう此処に依頼しないと恋を叶える手段がないんです」
「…何か特別な恋をしているみたいだね。じゃあ依頼云々は置いといって!」
環は話を置くのではなく投げた
「おい!話をぶん投げるな!」
「どう言った恋をしているのか教えてくれるかな」
環は普のツッコミを無視し千尋に質問した
「はい。私は同じ写真部の人に恋をしています」
「それは誰だい?」
「言わないとダメですかね?」
「あぁ。相手が分からないと叶えようがないからね」
「…2年看護コースの浅沼馨先輩です。異名が令和のスーパーウルトラナイチンゲールの先輩です」
「相変わらずすごい名前だな」
彼女の異名は小学生がつけたような感じと言われている
「あぁ、彼女か。どうして彼女を好きになったんだい?」
「…元々、先輩は被写体として写真部に所属していまして、私も先輩をカメラで撮ってたんです。最初は綺麗な先輩だとしか思わなかったんですけど、写真を褒めてくれた時があって、その時のいつもとは違った笑顔がとても印象に残ってもっと、他の表情も見たくなってこれは恋だなって思いました」
「いや~、甘酸っぱい青春だねぇ」
千尋が照れながら話していると普が手を掴んだ
「あの?」
「その気持ち、すっっっごく分かる!そうだよな。他の表情も見たくなるよな。んで、めちゃくちゃ目で追っちゃうんだよな」
「…あの、気持ち悪くないんですか?」
「何が?」
「だって…同性、なんですよ」
千尋は暗い顔をしたが普はなんてこともない様な顔をして言った
「あぁ、そんなことか」
「そんなことって」
「そんなことだよ。だって恋することに性別はないしなんらおかしくないことだ。ただ好きになった相手の性別が同性だっただけ。まぁ、だからと言って此処を頼ったのは大きいな間違いだけど。一回別のアプローチをしてから依頼を考えよう?な?」
千尋は普の言葉に顔をあげた
そしてずっと気になっていたことをきいた
「はい…あの、質問いいですか?」
「いいぞ、何が気になることがあるのか?」
「お二方の後ろで何かを探している方はどなたですか」
ずっとウロウロと歩いているズボンの生徒に目をむけた
「あぁ、あいつはこの部の副部長の青木。そして自らこの部活を選んだ変人だ」
「青木、何を探しているんだ」
ズボンの生徒…青木は3人の方に振り返った
「さっき、環が投げた話を探しているんだが見つからなくてな。確かこの辺に落ちたはずなんだが」
「物理的に探してらっしゃる?確かに変人..」
千尋は青木の奇行に少し引いている
「青木ー。その話なら八木が拾ってるぞ」
「そうだったか」
「そうだから、じっとしててくれ。話を進めたいから」
普は環と青木の茶番に呆れながら言う
「勝手に仕切らないでくれる?部長はこの僕なんだから」
「はいはい、お菓子あげるから許してくださいね」
環は普をじっと睨むが慣れたように普はキャンディを渡す
「お菓子ぐらいで許すわけないんだけど、まぁ、お菓子に罪はないからね。でも後は樸がしきるよ」
環の機嫌は治っていた
「じゃあ、お願いします」
「まずは依頼は保留ってことでいいかな」
「はい」
「分かった。とりあえず、うちの八木を貸そう。2人でどうにかならなかったら言ってくれ。そこからまたプランを決めていこう」
「はい、ありがとうございます」
「じゃあ、後よろしくね。行くぞ青木」
環と青木は部室から出ていった
普は椅子に座り口を開いた
「無難な方法で好感度上げていこう」
「無難な方法ですか?」
「あぁ例えば、手料理作って渡すとか」
「なるほど!やってみます!」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
千尋は弁当を持って2年生の教室にいた
「印象に残りやすいのはやっぱりキャラ弁だよね。先輩はホラー映画が好きだって言ってたからホラーな感じにしてみたけど...」
普と浅沼が帰ってくる
それに気づいた千尋は慌てて去っていく
「やっと買えたよ」
「普、ほんとにソレ好きだよね。いつも買ってる」
「これ美味いんだからな。1度食って見ろよ。このチョコチップメロン練乳焼きそばパン」
「遠慮しとくよ...あれ?」
浅沼が弁当に気づく
普は事情を知ってるため思わず笑みを浮かべる
「なんだ?お前の弁当じゃないのか?」
「うん...あっ、誰かが私にくれたみたい」
浅沼は弁当箱の下に置いてあった紙を取る
「マジで?やっぱ、モテるやつは違うなぁ」
「そんなんじゃないよ。でも、誰がくれたんだろう?お礼が言いたいんだけど...」
「開けてみれば?なんかわかるかもよ」
「うん、そうするよ」
2人は浅沼のモテエピソードを話しながら弁当をあける
が、浅沼はすぐにしめる
「どうしたんだよ。」
「いや、その...」
「俺があけてやるよ」
普が弁当をあけるとそこには目玉が印象的な中身があった
「うわぁぁぁ!なにこれ、呪いの弁当?黒と紫だらけじゃん。これ食うの?」
「...落し物として届けてくるよ」
「おう...」
— — — — — — — — — — — — — — —
放課後
千尋はキュピ部の机に突っ伏していた
「...ドンマイ」
「無難にすれば良かったです...絶対ヤバいやつだと思われましたよ。どうしましょ..」
「まぁ、次さ!」
「何すればいいですかね」
「うーん」
2人はずっと考えている
その時青木が部室に入ってくる
青木は空間の寒気に驚いているが普と千尋の顔色を見て納得した
「あ~、どうした?」
「青木...」
「困ってんなら助けるけど....」
「青木さん~、実はかくかくしかじかなんです」
千尋は今までの経緯を話した
「なるほどなぁ...パイでも投げつければいいんじゃないのか?印象に残るだろう」
「んなことしたら、余計に拗れるっつーの」
「冗談だ。ちゃんと考える...」
普は真顔で冗談を言うなよ と思った
「...じゃあ、千尋の得意分野で勝負すればいいんじゃないか」
「あぁ、なるほど。その手が1番が有効だな」
「私と言えばって物を渡すってことですか?」
「簡単に言えばそうだな」
「私と言えばか....」
「やっぱり写真か絵じゃないか?」
「写真か絵....そうですね」
「んじゃ、手っ取り早く写真を渡すのがいいか」
「そうしてみます!どんな写真にしますか?私が撮ってるのだと風景か浅沼先輩のしかないんですけど...」
「風景写真は似たり寄ったりで印象に残りにくいよな」
「じゃあ、浅沼の写真か」
「ですね。えっとどれにします?今持ってるのだとこれくらいしかないんですけど」
千尋はカバンからアルバムを取り出す
中々の厚さだ
3人は写真を選んでいる
途中、青木がアルバムを持とうとするが千尋が素早く取り返すなどの場面があった
「おっ、コレとかいいんじゃない?綺麗に見えるしかっこよく見える」
「ですね!後はコレとコレとかですかね」
「コレは良くないんじゃないか?真正面すぎる」
「そうですか。じゃあ、コレとかどうですか」
「いいんじゃないか」
「なんか...目線が外れている写真が多い気が..」
「そうですよね。別の写真にしますか?」
「いや、そうじゃなくて。なんで目線が合ってない写真がこんなにもあるんだって聞いてるんだよ」
「え?」
「もしかして盗撮だったりして」
「ち、違いますよ」
空気が凍る
「冗談で言ったつもりだったんだが本当だったりするのか?」
「違いますよ!そういう感じの写真が撮りたくて先輩にお願いにして撮ったんですよ」
「本当だよな?」
普と青木が千尋をじっと見る
「それより!目線が合ってるものを選びますか?そうなると、数を減らさないと多すぎる気が...」
「いや、これでいいだろ。想いが強いほど人は喜ぶもんだろ...知らんけど」
「そういうもんですかね?」
「まぁ、いいんじゃねぇの。悩めば悩むほどドツボにハマるぞ」
「じゃあ、これで渡します!」
「頑張れよ」
「報告待ってるからな」
「はい」
— — — — — — — — — — — — — —
放課後前 教室
普はクラスメイトと話していた
「ねぇ、八木知ってる?」
「なにを?」
「浅沼ってストーカー被害にあってるらしいよ」
「は?」
「なんかさ、机の中に写真が沢山入ってたんだって~。綺麗に梱包はされてたらしいんだけどさ」
「あいつ、直接渡せなかったか...」
普は想定外の展開に頭を抱えた
「ん?」
「なんでもない。それで?」
「うん、それでさその写真のほとんどが浅沼の目線が合ってなくて、しかも画質がいいってもんだからストーカーに違いないって噂がたってんの」
「なるほど~。で、件の浅沼の反応は?」
「浅沼はなんの反応もなかったらしいよ。ただ写真をじっと見てカバンにしまったから、犯人探しするつもりなんじゃないのかなって」
「そっか、じゃあ俺、部活行ってくるから」
普は荷物を持って部室に向かった
— — — — — — — — — — — — — —
部室
「難波!大丈夫か!」
千尋は机に突っ伏していた
若干のデジャブである
「だいじょばないみたいんだな」
「もう終わりです。諦めた方がいいみたいです。ストーカーなんて同性に片思いよりもハードルが上がりましたよ」
「そんなこと言うなって。浅沼は写真を見ても引いてはなかったらしいぞ」
「あからさまじゃないってだけでしょ。バレたら今度こそ終わります」
「まぁまぁ」
青木と環が部室にやってくる
「千尋、大丈夫か?」
「もうダメです。無理なんですよ」
「やっぱりダメっぽいかな?さすがに雑用係くんだけの力じゃ」
「環さん...」
「恋のキューピッドの手、借りちゃうかい?」
「はい、そうします」
差し伸べた環の手を千尋は握った
「それでいいかな、君たちも」
「俺はいいぞ~」
「仕方ないのか?」
「まぁ、最初はキューピッドの矢はまだ使わないけどね」
「そうなんですか?」
「流石に人知を超えたモノを使うのはあまり良くないからね。まずは、情報収集をしよう」
普は初っ端から使おうとしてただろ思ったが口には出さなかった
「情報収集ですか?」
「敵情を知るならまずは情報収集だろう?」
「敵情って...浅沼に対しての扱いが中々に酷いな」
「浅沼についてなら同じクラスの普か同じ部活の千尋に聞くのがはやいだろ」
「そうだね、さぁざつようがか...いや八木、難波くん!浅沼くんのことについて教えてくれたまえ!」
「今、雑用係って言おうとしたよな?!...はぁ、浅沼の何を教えればいいんだよ」
「そうだねぇ。生年月日とか好きな物とかかな?」
千尋は生年月日?と思った
「好きな物は分かるけど生年月日は何に使うんだよ」
普も同じ疑問をもっていた
「後々、キューピッドの矢を使うのに必要なんだよ。さぁ教えておくれ」
千尋と普は理解はできてないが納得はした
「えーと、生年月日は2005年9月7日」
「好きな物は確か...可愛いもの?って言ってた気がします」
「ふむふむ、では可愛いものを送るのはどうだろう」
安直だなぁと普は思った
「具体的にはどんなものがいいですかね」
「それは君が考えるんだよ」
「そうですよね。なんだろう...ストラップとか動物の写真とか?」
普はふと前にした会話を思い出した
「そういえば、浅沼は猫が好きって言ってたな」
「猫ですか..猫..ねこ」
「なんかひらめきそうか?」
問いかける普を環は止める
「少し考える時間をあげよう」
「だな」
少しの時間、3人は千尋が思いつくのを待った
すると、千尋は何かを思い出したかのようにカバンからとあるものを取りだした
「あの、こういう猫のストラップはどうですか?環さん」
「なんで今持ってんだ?」
「浅沼先輩の誕生日プレゼントに買ったんですけど渡せなくてずっと持ってたんです。それでどうですか?環さん」
環は考え事をしていたが千尋の呼びかけに気づき口を開いた
「ん?あぁ、いいんじゃないか?ただし!あまり変な行動や発言はしないように。流石に好感度が下がるとキューピッドの矢も効かなくなってしまうからね」
「はい!ありがとうございます!」
「確か浅沼。今日用事あるって言ってたから、そろそろ帰るかも」
「じゃあ、今から行ってきます!」
千尋は立ち上がり浅沼のところに向かった
「ちゃんと直接渡すんだぞ~!...聞こえたのかな」
「どうなるんだろうね」
「さぁね」
環はいつもと変わらぬ笑みを浮かべた
— — — — — — — — — — — — — —
教室
浅沼は帰り支度をしていると千尋が入ってきたのに気づいた
キューピッド部は先回りをして浅沼のいない隙に棚に隠れた
「ニャンコちゃんだ。どうしたの?2年生の教室に来るなんて珍しいね」
「あの、コレ1ヶ月遅れなんですけど誕生日プレゼントです!あ、いらなかったら別に....」
千尋は早まったかなと思い、プレゼントを持った手を引っ込めたが浅沼に掴まれて引き寄せられた
「嬉しい!...開けてもいい?」
「はい...」
浅沼は袋をあけ、猫のストラップを見ると微笑みストラップを抱きしめた
「ありがとう。すごく可愛い。猫好きなんだ。大切にするね」
「はい!」
「じゃあ、私帰らないといけないから。...ニャンコちゃんは?」
「あ、まだ残ります...」
「そっか、残念...またね」
「はい、さよなら」
浅沼は教室から出ようとするとキューピッド部を見た
キューピッド部はバレたからと思ったがそのまま浅沼は千尋に手を振り去っていった
浅沼が見えなくなったのを確かめて3人は出てきた
千尋は驚いたが喜びでそれどころじゃなかった
「渡せてよかったな。千尋」
「はい!」
「にしても、浅沼はお前の事ニャンコちゃんって呼んでるんだな」
「はい。というか写真部のみんなからはそう呼ばれているんです。自己紹介の時に『にゃんば』って言っちゃったんですよね。かんじゃって」
3人は"あー”と納得した
「一歩、前進しましたかね?」
「きっとしてるさ」
普も頷いた
「どう思いますか!環さん」
環は思案顔だったが千尋の言葉に微笑む
「してると思うよ、前進。後はこの僕に任せてくれたまえ」
— — — — — — — — — — — — — —
噂話
「ねぇ、知ってる?難波ってレズなんだって」
「聞いた聞いた。気持ち悪いよね」
「ね、私も狙われたらどうしよ~ww」
嘲笑うような声が響いていた
— — — — — — — — — — — — — —
キューピッド部部室
部員達は座っていた
あまり顔色がいいとは言えなかった
そこに部員達以上に暗い顔をした千尋が入ってくる
「難波!」
「八木先輩...やっぱり同棲をすきになるのはダメなことで、気持ちの悪いことなんですね」
「そんなことない!そんなことないんだよ」
「でも、周りの人は言うんです。気持ち悪いって普通じゃないって」
「....」
普は何も言うことができなかった
「なんで周りの人と違うだけでこんな否定の言葉を言われないといけないんですかね?」
「それは...」
普は何か言おうとしたが何を言えばいいのか分からなかった
青木は見かねて普の代わりに口を開いた
「それは、人が本能的になっているからだ」
「本能的?」
青木は説明がめんどくさいという顔で環を見た
環は仕方ないという感じに説明し始めた
「古来より生物は異端な存在や自分たちとは違った思考、容姿をした存在を迫害したがるんだ。例えば魔女狩り、黒人差別、キリシタン弾圧、その他諸々。だから君はおかしくないんだよ。ね、青木」
「そういうことだ。だから、堂々としとけ。本能で動いて相手を傷つけるバカともに惑わされるな」
環と青木の言葉に自分は悪くないと気づいた千尋は顔を上げた
「...はい!」
「でも、これからどうすんだ?あまり浅沼に接触はできないと思うぞ」
「それは、難波くんが決めることさ。告白するかこのまま諦めるか。こうなった以上、キューピッドの矢を使っても効果をなさない」
「だな。環の矢はギリシャ神話のエロスのような万能なものでは無いし。どうするかはお前次第だ、千尋」
「私次第...」
「そうだよ。君の行動次第で君の恋の結末は変わる。もちろん、浅沼くんの返事によるところもあるけどね」
「....私、告白してきます!」
千尋は意を決したようにそう言った
その顔は初めてキューピッド部に来た時とは全く違った堂々としたものだった
「あぁ!報告待ってるよ」
普が安堵したように千尋に言うと千尋はキューピッド部に深く礼をして走り去った
きっと浅沼のところに向かうのだろう
「さて、恋の結末はどうなる事やら」
環はそう言って千尋の後ろ姿を見つめた
— — — — — — — — — — — — — —
教室
千尋は浅沼を待っていた
少しすると浅沼は教室に入ってきた
いつものように優しい先輩の顔である
「どうしたの?ニャンコちゃん。話があるって、何か相談事?」
「いえ、相談ではないんですけど、言いたいことがあって....えっと、その...なんというか..」
千尋は少し躊躇した
怖かったのだ
浅沼に告白をしてもいいのか
してしまったら以前のような関係には戻れない
もしかしたら浅沼に軽蔑されるかもしれない
そう思うと言葉が詰まり逃げ出したくなる
事実、千尋は後ろに下がり始めている
それに気づいてか浅沼は千尋の手を掴み引き寄せ、微笑んだ
「ん?良いよ。ゆっくり落ち着いて話してくれる?ちゃんと待つから。ね?」
やっぱり浅沼は良い先輩でそんなところに千尋は惚れたのだ
千尋はどうなってもいい、この気持ちを伝えたい
そう思った
「浅沼先輩!私....貴女のことが!」
— — — — — — — — — — — — — —
「さて、難波くんの恋の結末は浅沼くんの返事によって変わってくる。と言ってもここは物語のワンシーン。どうせなら読者の君たちに彼女らの恋の結末を決めてもらおうじゃないか。ハッピーエンドかグッドエンド。深く考えなくていい。君たちが見たいと思う方を選んでくれたまえ。君たちが選んだ道で僕達恋のキューピッド部は待っているよ」
ハッピーエンドver→このまま読み進めてくれ
グッドエンドver→もう1話飛んで読んでくれ
「君の選択はどちらだろうね」
二人の生徒は噂をしていた
ねぇ、知ってる?この学校に恋の願いを叶えるキューピッドがいるらしいよ
それってホント?
うん、恋を叶えてもらった子も
いるんだって
へー、それでその部活はどこにあるの?
確か、旧校舎の音楽室にあるらしいよ
旧校舎の音楽室では放課後、
かの有名なクラッシックがオルゴール調で
流れている
そこに一人の女生徒が音楽室の扉を開ける
「あの~」
室内にいた人物の一人である青年が
女生徒の声に気付きスピーカーを止める
そして立ち上がり女生徒の近くに向かい
「ようこそ」
「「恋のキューピッド部へ」」
「…え?」
少し時が止まった
本当に恋のキューピッド部という名前で
あったし、なんとも某部活動漫画に雰囲気が似ているような気がして胡散臭いのだ
女生徒の不安な様子をよそに
青年はそのまま発言を続ける
「ほ~ら、君も」
「いいよ。俺は!」
「いいから、ほら」
この場を仕切る青年は
あまり乗り気では無いスカートをはいた部員らしき生徒に
一連の動作をさせようとしているらしい
「ようこそ!」
「恋のキューピッド部へ…」
とても嫌そうな顔で生徒は言った
青年は満足そうな顔をしている
「よし!あぁ、失礼した。どうぞこちらに」
女生徒をエスコートし席に座らせると
青年も席につき口を開いた
「まず、自己紹介からしようか
僕はここの部長を務めている中川環だ
よろしく」
女生徒もそれに倣い口を開いた
「よろしくお願いします。
えと、私は1年美術コースの難波千尋です」
「よろしく。君も恋を叶えにきたんだよね」
「はい。本当に叶えられるんですよね
どんな恋でも」
「あぁ、どんな恋でもね」
「どんな風に叶えてくれるんですか?」
「それはこのキューピッドの矢でね!」
そう言って青年_環は
ピンクの装飾が施された銃を掲げた
それを見た女生徒_千尋は目を見開き驚いた
「え、それって銃じゃないんですか⁉︎
銃刀法違反で捕まったりとかは…」
「しないよ!
なんせキューピッドの持ち物なんだから」
「はぁ、それで相手を射止めるって
ことですか」
「もちろん。Hey!雑用係くん!
資料を持ってきてくれ。あと説明もよろしく」
「雑用係じゃないんですけど…」
"雑用係くん“ そう呼ばれた生徒は
少し不満気な様子でホワイトボードの
ある方向へと歩いていき途中、
ルービックキューブを持ったズボンの生徒に資料を渡すよう話していた
準備が整い"雑用係くん”は口を開いた
「では、難波千尋さん。これからプランの説明をさせていただきます」
「プラン?」
千尋がそう問うとセールスマンの様に
説明を始めた
「はい。こちらのサービス合計で5つのプランに分かれておりまして、依頼者様のご希望に合わせてお選びいただけます。こちらから簡単に説明させていただきますね。まずはプランA、使用弾数が4弾とこの中で一番多いプランとなっております。そしてプランB、プランC、プランDは使用弾数が1弾ずつ減り、それぞれ3弾、2弾、1弾。最後のプランEはご自身で撃つ代わりに弾数が3弾と言った具合です。」
「はぇ~、やっぱり弾数っていうんですね。
なんだか物騒…」
千尋は長くそして早口な説明に追いつけず
そんな感想しか出なかった
「なんか質問とかあるか?」
全く説明を理解していなかった千尋は
質問の有無を聞かれ手元の資料を見た
「えっと…。あ、報酬の差とかって
あるんですかね。値段とか…」
「お金をもらうをもらうことはないから
心配することはないよ。安心したまえ!
そもそも学生からお金を取るなんて、
キューピッドの風上にも置けないね!」
千尋は学生以外ならお金取るのかなと思いながら
「じゃあ、(学生は)タダってことですか⁈」
「いや、お金の代わりにこちらのお願いを1つ聞いてもらうことにしているんだ」
「そうなんですね。分かりました。じゃあお願いしまs」
「ちょっと待った!」
千尋が依頼をしようとした時、何かが話を遮った
それはプランの説明をした生徒だった
「黙って聞こうと思ったけどやっぱりダメだ。
お前、依頼はやめといた方がいい」
「な、なんでですか?」
「俺は2年看護コースの八木普だ。実は俺も当時同好会だったこの部に依頼した人間なんだが報酬として一つお願いを聞くということはこの部の部員になることだしかも強制的に」
「え」
~回想~
「ありがとうございます!おかげで恋が叶いました」
生徒…普は晴れやかな笑顔を浮かべ対面に座る環に礼を述べた
「それは良かったよ。それで報酬のことなんだが」
「お願いを一つ聞くっていうのでしたよね」
「あぁ、その願いだが…」
もったいぶりながら話す環に無茶振りをされるのではと不安になり喉が鳴った
その時、環は願いを言った
「この同好会の部員になってくれないか!」
「はい!っていやいやいや、俺別の部活に入ってますしこの学校兼部ダメですし無理です」
普は一息で環の申し入れを断ったが…
「入ってくれるのかありがとう!いや~良かった」
環は普の断りが聞こえなかったかのように喜んだ
「だから無理ですって!」
「断るなら失恋させちゃおっかなぁ。キューピッドにはそれくらい簡単なんだからな」
「それは…」
「さぁ、どうする」
普が選べる選択肢はひとつしかなかった
~回想終了~
「てな感じで入部させられて今まで雑用からトラブル処理までなんでもやらされてんだよ。だからやめとけ。被害者を増やしたくない」
「人聞きの悪いヤツだね。そんなことさせてないよ」
「ウソつけコノヤロウ。つーか、恋を叶えたのも自分の力だったわ」
「依頼人の背中を押すのもキューピッドの務めさ!」
「な?こんな屁理屈言うヤツにお前の大事な恋を預けても良いのか?今なら引き返せる」
環と言い合いをしていた普は千尋に依頼を止めるよう言った
「でも…私……依頼します!」
「おう!依頼するんだな、良かった…って、えっ!今なんて?」
普は見事なノリツッコミをした
「依頼しますと言いました」
「そうか。じゃあ話を進めよう」
「ちょっと!ホントにいいのか?もう引き返せないぞ?」
話を進める2人に普は止めた
「はい。もう此処に依頼しないと恋を叶える手段がないんです」
「…何か特別な恋をしているみたいだね。じゃあ依頼云々は置いといって!」
環は話を置くのではなく投げた
「おい!話をぶん投げるな!」
「どう言った恋をしているのか教えてくれるかな」
環は普のツッコミを無視し千尋に質問した
「はい。私は同じ写真部の人に恋をしています」
「それは誰だい?」
「言わないとダメですかね?」
「あぁ。相手が分からないと叶えようがないからね」
「…2年看護コースの浅沼馨先輩です。異名が令和のスーパーウルトラナイチンゲールの先輩です」
「相変わらずすごい名前だな」
彼女の異名は小学生がつけたような感じと言われている
「あぁ、彼女か。どうして彼女を好きになったんだい?」
「…元々、先輩は被写体として写真部に所属していまして、私も先輩をカメラで撮ってたんです。最初は綺麗な先輩だとしか思わなかったんですけど、写真を褒めてくれた時があって、その時のいつもとは違った笑顔がとても印象に残ってもっと、他の表情も見たくなってこれは恋だなって思いました」
「いや~、甘酸っぱい青春だねぇ」
千尋が照れながら話していると普が手を掴んだ
「あの?」
「その気持ち、すっっっごく分かる!そうだよな。他の表情も見たくなるよな。んで、めちゃくちゃ目で追っちゃうんだよな」
「…あの、気持ち悪くないんですか?」
「何が?」
「だって…同性、なんですよ」
千尋は暗い顔をしたが普はなんてこともない様な顔をして言った
「あぁ、そんなことか」
「そんなことって」
「そんなことだよ。だって恋することに性別はないしなんらおかしくないことだ。ただ好きになった相手の性別が同性だっただけ。まぁ、だからと言って此処を頼ったのは大きいな間違いだけど。一回別のアプローチをしてから依頼を考えよう?な?」
千尋は普の言葉に顔をあげた
そしてずっと気になっていたことをきいた
「はい…あの、質問いいですか?」
「いいぞ、何が気になることがあるのか?」
「お二方の後ろで何かを探している方はどなたですか」
ずっとウロウロと歩いているズボンの生徒に目をむけた
「あぁ、あいつはこの部の副部長の青木。そして自らこの部活を選んだ変人だ」
「青木、何を探しているんだ」
ズボンの生徒…青木は3人の方に振り返った
「さっき、環が投げた話を探しているんだが見つからなくてな。確かこの辺に落ちたはずなんだが」
「物理的に探してらっしゃる?確かに変人..」
千尋は青木の奇行に少し引いている
「青木ー。その話なら八木が拾ってるぞ」
「そうだったか」
「そうだから、じっとしててくれ。話を進めたいから」
普は環と青木の茶番に呆れながら言う
「勝手に仕切らないでくれる?部長はこの僕なんだから」
「はいはい、お菓子あげるから許してくださいね」
環は普をじっと睨むが慣れたように普はキャンディを渡す
「お菓子ぐらいで許すわけないんだけど、まぁ、お菓子に罪はないからね。でも後は樸がしきるよ」
環の機嫌は治っていた
「じゃあ、お願いします」
「まずは依頼は保留ってことでいいかな」
「はい」
「分かった。とりあえず、うちの八木を貸そう。2人でどうにかならなかったら言ってくれ。そこからまたプランを決めていこう」
「はい、ありがとうございます」
「じゃあ、後よろしくね。行くぞ青木」
環と青木は部室から出ていった
普は椅子に座り口を開いた
「無難な方法で好感度上げていこう」
「無難な方法ですか?」
「あぁ例えば、手料理作って渡すとか」
「なるほど!やってみます!」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
千尋は弁当を持って2年生の教室にいた
「印象に残りやすいのはやっぱりキャラ弁だよね。先輩はホラー映画が好きだって言ってたからホラーな感じにしてみたけど...」
普と浅沼が帰ってくる
それに気づいた千尋は慌てて去っていく
「やっと買えたよ」
「普、ほんとにソレ好きだよね。いつも買ってる」
「これ美味いんだからな。1度食って見ろよ。このチョコチップメロン練乳焼きそばパン」
「遠慮しとくよ...あれ?」
浅沼が弁当に気づく
普は事情を知ってるため思わず笑みを浮かべる
「なんだ?お前の弁当じゃないのか?」
「うん...あっ、誰かが私にくれたみたい」
浅沼は弁当箱の下に置いてあった紙を取る
「マジで?やっぱ、モテるやつは違うなぁ」
「そんなんじゃないよ。でも、誰がくれたんだろう?お礼が言いたいんだけど...」
「開けてみれば?なんかわかるかもよ」
「うん、そうするよ」
2人は浅沼のモテエピソードを話しながら弁当をあける
が、浅沼はすぐにしめる
「どうしたんだよ。」
「いや、その...」
「俺があけてやるよ」
普が弁当をあけるとそこには目玉が印象的な中身があった
「うわぁぁぁ!なにこれ、呪いの弁当?黒と紫だらけじゃん。これ食うの?」
「...落し物として届けてくるよ」
「おう...」
— — — — — — — — — — — — — — —
放課後
千尋はキュピ部の机に突っ伏していた
「...ドンマイ」
「無難にすれば良かったです...絶対ヤバいやつだと思われましたよ。どうしましょ..」
「まぁ、次さ!」
「何すればいいですかね」
「うーん」
2人はずっと考えている
その時青木が部室に入ってくる
青木は空間の寒気に驚いているが普と千尋の顔色を見て納得した
「あ~、どうした?」
「青木...」
「困ってんなら助けるけど....」
「青木さん~、実はかくかくしかじかなんです」
千尋は今までの経緯を話した
「なるほどなぁ...パイでも投げつければいいんじゃないのか?印象に残るだろう」
「んなことしたら、余計に拗れるっつーの」
「冗談だ。ちゃんと考える...」
普は真顔で冗談を言うなよ と思った
「...じゃあ、千尋の得意分野で勝負すればいいんじゃないか」
「あぁ、なるほど。その手が1番が有効だな」
「私と言えばって物を渡すってことですか?」
「簡単に言えばそうだな」
「私と言えばか....」
「やっぱり写真か絵じゃないか?」
「写真か絵....そうですね」
「んじゃ、手っ取り早く写真を渡すのがいいか」
「そうしてみます!どんな写真にしますか?私が撮ってるのだと風景か浅沼先輩のしかないんですけど...」
「風景写真は似たり寄ったりで印象に残りにくいよな」
「じゃあ、浅沼の写真か」
「ですね。えっとどれにします?今持ってるのだとこれくらいしかないんですけど」
千尋はカバンからアルバムを取り出す
中々の厚さだ
3人は写真を選んでいる
途中、青木がアルバムを持とうとするが千尋が素早く取り返すなどの場面があった
「おっ、コレとかいいんじゃない?綺麗に見えるしかっこよく見える」
「ですね!後はコレとコレとかですかね」
「コレは良くないんじゃないか?真正面すぎる」
「そうですか。じゃあ、コレとかどうですか」
「いいんじゃないか」
「なんか...目線が外れている写真が多い気が..」
「そうですよね。別の写真にしますか?」
「いや、そうじゃなくて。なんで目線が合ってない写真がこんなにもあるんだって聞いてるんだよ」
「え?」
「もしかして盗撮だったりして」
「ち、違いますよ」
空気が凍る
「冗談で言ったつもりだったんだが本当だったりするのか?」
「違いますよ!そういう感じの写真が撮りたくて先輩にお願いにして撮ったんですよ」
「本当だよな?」
普と青木が千尋をじっと見る
「それより!目線が合ってるものを選びますか?そうなると、数を減らさないと多すぎる気が...」
「いや、これでいいだろ。想いが強いほど人は喜ぶもんだろ...知らんけど」
「そういうもんですかね?」
「まぁ、いいんじゃねぇの。悩めば悩むほどドツボにハマるぞ」
「じゃあ、これで渡します!」
「頑張れよ」
「報告待ってるからな」
「はい」
— — — — — — — — — — — — — —
放課後前 教室
普はクラスメイトと話していた
「ねぇ、八木知ってる?」
「なにを?」
「浅沼ってストーカー被害にあってるらしいよ」
「は?」
「なんかさ、机の中に写真が沢山入ってたんだって~。綺麗に梱包はされてたらしいんだけどさ」
「あいつ、直接渡せなかったか...」
普は想定外の展開に頭を抱えた
「ん?」
「なんでもない。それで?」
「うん、それでさその写真のほとんどが浅沼の目線が合ってなくて、しかも画質がいいってもんだからストーカーに違いないって噂がたってんの」
「なるほど~。で、件の浅沼の反応は?」
「浅沼はなんの反応もなかったらしいよ。ただ写真をじっと見てカバンにしまったから、犯人探しするつもりなんじゃないのかなって」
「そっか、じゃあ俺、部活行ってくるから」
普は荷物を持って部室に向かった
— — — — — — — — — — — — — —
部室
「難波!大丈夫か!」
千尋は机に突っ伏していた
若干のデジャブである
「だいじょばないみたいんだな」
「もう終わりです。諦めた方がいいみたいです。ストーカーなんて同性に片思いよりもハードルが上がりましたよ」
「そんなこと言うなって。浅沼は写真を見ても引いてはなかったらしいぞ」
「あからさまじゃないってだけでしょ。バレたら今度こそ終わります」
「まぁまぁ」
青木と環が部室にやってくる
「千尋、大丈夫か?」
「もうダメです。無理なんですよ」
「やっぱりダメっぽいかな?さすがに雑用係くんだけの力じゃ」
「環さん...」
「恋のキューピッドの手、借りちゃうかい?」
「はい、そうします」
差し伸べた環の手を千尋は握った
「それでいいかな、君たちも」
「俺はいいぞ~」
「仕方ないのか?」
「まぁ、最初はキューピッドの矢はまだ使わないけどね」
「そうなんですか?」
「流石に人知を超えたモノを使うのはあまり良くないからね。まずは、情報収集をしよう」
普は初っ端から使おうとしてただろ思ったが口には出さなかった
「情報収集ですか?」
「敵情を知るならまずは情報収集だろう?」
「敵情って...浅沼に対しての扱いが中々に酷いな」
「浅沼についてなら同じクラスの普か同じ部活の千尋に聞くのがはやいだろ」
「そうだね、さぁざつようがか...いや八木、難波くん!浅沼くんのことについて教えてくれたまえ!」
「今、雑用係って言おうとしたよな?!...はぁ、浅沼の何を教えればいいんだよ」
「そうだねぇ。生年月日とか好きな物とかかな?」
千尋は生年月日?と思った
「好きな物は分かるけど生年月日は何に使うんだよ」
普も同じ疑問をもっていた
「後々、キューピッドの矢を使うのに必要なんだよ。さぁ教えておくれ」
千尋と普は理解はできてないが納得はした
「えーと、生年月日は2005年9月7日」
「好きな物は確か...可愛いもの?って言ってた気がします」
「ふむふむ、では可愛いものを送るのはどうだろう」
安直だなぁと普は思った
「具体的にはどんなものがいいですかね」
「それは君が考えるんだよ」
「そうですよね。なんだろう...ストラップとか動物の写真とか?」
普はふと前にした会話を思い出した
「そういえば、浅沼は猫が好きって言ってたな」
「猫ですか..猫..ねこ」
「なんかひらめきそうか?」
問いかける普を環は止める
「少し考える時間をあげよう」
「だな」
少しの時間、3人は千尋が思いつくのを待った
すると、千尋は何かを思い出したかのようにカバンからとあるものを取りだした
「あの、こういう猫のストラップはどうですか?環さん」
「なんで今持ってんだ?」
「浅沼先輩の誕生日プレゼントに買ったんですけど渡せなくてずっと持ってたんです。それでどうですか?環さん」
環は考え事をしていたが千尋の呼びかけに気づき口を開いた
「ん?あぁ、いいんじゃないか?ただし!あまり変な行動や発言はしないように。流石に好感度が下がるとキューピッドの矢も効かなくなってしまうからね」
「はい!ありがとうございます!」
「確か浅沼。今日用事あるって言ってたから、そろそろ帰るかも」
「じゃあ、今から行ってきます!」
千尋は立ち上がり浅沼のところに向かった
「ちゃんと直接渡すんだぞ~!...聞こえたのかな」
「どうなるんだろうね」
「さぁね」
環はいつもと変わらぬ笑みを浮かべた
— — — — — — — — — — — — — —
教室
浅沼は帰り支度をしていると千尋が入ってきたのに気づいた
キューピッド部は先回りをして浅沼のいない隙に棚に隠れた
「ニャンコちゃんだ。どうしたの?2年生の教室に来るなんて珍しいね」
「あの、コレ1ヶ月遅れなんですけど誕生日プレゼントです!あ、いらなかったら別に....」
千尋は早まったかなと思い、プレゼントを持った手を引っ込めたが浅沼に掴まれて引き寄せられた
「嬉しい!...開けてもいい?」
「はい...」
浅沼は袋をあけ、猫のストラップを見ると微笑みストラップを抱きしめた
「ありがとう。すごく可愛い。猫好きなんだ。大切にするね」
「はい!」
「じゃあ、私帰らないといけないから。...ニャンコちゃんは?」
「あ、まだ残ります...」
「そっか、残念...またね」
「はい、さよなら」
浅沼は教室から出ようとするとキューピッド部を見た
キューピッド部はバレたからと思ったがそのまま浅沼は千尋に手を振り去っていった
浅沼が見えなくなったのを確かめて3人は出てきた
千尋は驚いたが喜びでそれどころじゃなかった
「渡せてよかったな。千尋」
「はい!」
「にしても、浅沼はお前の事ニャンコちゃんって呼んでるんだな」
「はい。というか写真部のみんなからはそう呼ばれているんです。自己紹介の時に『にゃんば』って言っちゃったんですよね。かんじゃって」
3人は"あー”と納得した
「一歩、前進しましたかね?」
「きっとしてるさ」
普も頷いた
「どう思いますか!環さん」
環は思案顔だったが千尋の言葉に微笑む
「してると思うよ、前進。後はこの僕に任せてくれたまえ」
— — — — — — — — — — — — — —
噂話
「ねぇ、知ってる?難波ってレズなんだって」
「聞いた聞いた。気持ち悪いよね」
「ね、私も狙われたらどうしよ~ww」
嘲笑うような声が響いていた
— — — — — — — — — — — — — —
キューピッド部部室
部員達は座っていた
あまり顔色がいいとは言えなかった
そこに部員達以上に暗い顔をした千尋が入ってくる
「難波!」
「八木先輩...やっぱり同棲をすきになるのはダメなことで、気持ちの悪いことなんですね」
「そんなことない!そんなことないんだよ」
「でも、周りの人は言うんです。気持ち悪いって普通じゃないって」
「....」
普は何も言うことができなかった
「なんで周りの人と違うだけでこんな否定の言葉を言われないといけないんですかね?」
「それは...」
普は何か言おうとしたが何を言えばいいのか分からなかった
青木は見かねて普の代わりに口を開いた
「それは、人が本能的になっているからだ」
「本能的?」
青木は説明がめんどくさいという顔で環を見た
環は仕方ないという感じに説明し始めた
「古来より生物は異端な存在や自分たちとは違った思考、容姿をした存在を迫害したがるんだ。例えば魔女狩り、黒人差別、キリシタン弾圧、その他諸々。だから君はおかしくないんだよ。ね、青木」
「そういうことだ。だから、堂々としとけ。本能で動いて相手を傷つけるバカともに惑わされるな」
環と青木の言葉に自分は悪くないと気づいた千尋は顔を上げた
「...はい!」
「でも、これからどうすんだ?あまり浅沼に接触はできないと思うぞ」
「それは、難波くんが決めることさ。告白するかこのまま諦めるか。こうなった以上、キューピッドの矢を使っても効果をなさない」
「だな。環の矢はギリシャ神話のエロスのような万能なものでは無いし。どうするかはお前次第だ、千尋」
「私次第...」
「そうだよ。君の行動次第で君の恋の結末は変わる。もちろん、浅沼くんの返事によるところもあるけどね」
「....私、告白してきます!」
千尋は意を決したようにそう言った
その顔は初めてキューピッド部に来た時とは全く違った堂々としたものだった
「あぁ!報告待ってるよ」
普が安堵したように千尋に言うと千尋はキューピッド部に深く礼をして走り去った
きっと浅沼のところに向かうのだろう
「さて、恋の結末はどうなる事やら」
環はそう言って千尋の後ろ姿を見つめた
— — — — — — — — — — — — — —
教室
千尋は浅沼を待っていた
少しすると浅沼は教室に入ってきた
いつものように優しい先輩の顔である
「どうしたの?ニャンコちゃん。話があるって、何か相談事?」
「いえ、相談ではないんですけど、言いたいことがあって....えっと、その...なんというか..」
千尋は少し躊躇した
怖かったのだ
浅沼に告白をしてもいいのか
してしまったら以前のような関係には戻れない
もしかしたら浅沼に軽蔑されるかもしれない
そう思うと言葉が詰まり逃げ出したくなる
事実、千尋は後ろに下がり始めている
それに気づいてか浅沼は千尋の手を掴み引き寄せ、微笑んだ
「ん?良いよ。ゆっくり落ち着いて話してくれる?ちゃんと待つから。ね?」
やっぱり浅沼は良い先輩でそんなところに千尋は惚れたのだ
千尋はどうなってもいい、この気持ちを伝えたい
そう思った
「浅沼先輩!私....貴女のことが!」
— — — — — — — — — — — — — —
「さて、難波くんの恋の結末は浅沼くんの返事によって変わってくる。と言ってもここは物語のワンシーン。どうせなら読者の君たちに彼女らの恋の結末を決めてもらおうじゃないか。ハッピーエンドかグッドエンド。深く考えなくていい。君たちが見たいと思う方を選んでくれたまえ。君たちが選んだ道で僕達恋のキューピッド部は待っているよ」
ハッピーエンドver→このまま読み進めてくれ
グッドエンドver→もう1話飛んで読んでくれ
「君の選択はどちらだろうね」
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