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「アルテミス! 其方の様な性根の腐った女はこの私に相応しくない!! よって其方との婚約は今、この場を持って破棄する!!」
王立学園の卒業を祝う為に開かれる、毎年恒例の祝賀パーティー。
その日、辺境伯であるワシは、溺愛する娘の晴れ姿を1目見ようと久しぶりに王都に赴いた。だがそんなワシの目に映ったのは、目を疑うような光景だった。
なんと! ワシの可愛い愛娘、アルテミスちゃんが、王太子エドガーに婚約破棄を言い渡されているではないか! 然もエドガーは、ピンク頭のいかにも頭の悪そうな女を隣に侍らせながら…だ。2人の後ろには、彼らを取り囲む様に王太子の側近達が立ち、王太子とピンク頭と一緒になって婚約破棄されたワシの娘を嘲笑う。信じられない事にその中には、ワシの義息ランスルもいた。
此奴、いずれ王家へと嫁ぐアルテミスちゃんを守る様にと散々言い聞かせたと言うのに、何という体たらく。
王太子のこの愚行を止めようともせず、他の側近達と共に婚約破棄された義姉を見て嘲笑っているとは……。確かに王太子の側近に選ばれた事は聞いていた。だが、己の本分も弁えず此奴は一体何をやっているのだ。ワシはこの一瞬でランスルを見限った。
辺境伯家は武門の家。身内を見放す様な奴は、いずれ窮地に陥れば仲間も簡単に見放す。そんな奴に辺境伯家を継がせる事など出来ない。
それにしても…多勢に無勢。然も義弟までもが王太子の側に立っている。周りを取り囲む卒業生達やその親族達が見ている中で、たった1人でこの場に立ち王太子達と対峙する娘の気持ちを考えると、ワシは怒りに震えた。
本来なら泣き出しても可笑しくはないはず。だが、気丈な娘はそうではなかった。
「私の性根が腐っていると? 酷い侮辱ですが、そうおっしゃる理由をお聞きしても宜しいでしょうか?」
娘はエドガーにそう言ってはっきりと反論した。流石は我が娘。その姿は神々しい程に気高く美しい。
「しらばっくれるつもりか! お前はこのか弱いララに嫌がらせを繰り返し、果ては木刀を持って追いかけ回したそうではないか!? 可哀想に……こんなに怯えて……」
ところがエドガーは頭の悪そうな女……もとい、彼がララと呼んだ娘の腰に手を回し自分の方へ更に引き寄せると、慈しむ様に優しく頭を撫ぜた。まるで周りにいる全ての者達に2人の仲を見せつける様に……だ。
「エドガーさまぁ~。私、とっても怖かったんですぅ~」
それに応える様にララもエドガーの体に自分の胸をギュッと密着させた。如何わしい事この上ない。
しかも頭の悪そうな令嬢は喋り方まで馬鹿丸出しだ。
情け無い事に、エドガーはララのこの行動にすっかり骨抜きにされ、鼻の下を伸ばし嬉しそうに微笑む。
「大丈夫だよ、ララ。其方の事はこの私が必ず守ってやるから」とか何とか甘く囁きながら……。
ワシは一体何を見せられているのだろうか? こんな奴が王太子だなどとは世も末だ。
今日ここには、学園の卒業生達だけではなくその親族達も招待されている。
エドガーは当然、卒業生の1人アルテミスちゃんの父であるワシがこの場にいるであろう事も知った上で、この愚行を犯しているのだ。
そして何よりこれだけの衆人環視のもと、王太子自らが発した言葉は、もう2度と取り返しがつかない。
娘がエドガーの婚約者に選ばれてから早6年。
その間まだ幼かった娘はワシら家族と別れ、未来の国母となる為にこの王都で必死に努力して来た。寂しくても苦しくても頑張って厳しい王太子妃教育に耐えてきたのだ。それをこいつらは揃いも揃って、娘のその血の滲む様な努力を全て台無しにした。
この馬鹿王子! どうしてくれようか!!
ワシは拳を握り締めた。
その時だ。
「はぁ~あ。要するに殿下は、なんだかんだ理由をつけてこの私との婚約を破棄し、そのピンク頭の男爵令嬢と結婚したいだけでしょう? それならそうと男らしくはっきりと仰ったら良いではありませんか!!」
娘が呆れた様子で盛大に溜息を吐いた後、エドガーに向かってそう言い放った。
娘に馬鹿にされたと思ったのだろう。途端にエドガーは顔を真っ赤に染め、事もあろうに大声で娘を罵倒したのだ。
「何だ! その不遜な態度は!? 全く可愛げの無い女だな。そんな事だから皆から悪役令嬢だと陰口を叩かれるんだ。お前みたいな婚約者を持って、この私がどれだけ恥ずかしい思いをしているか分かっているのか!!」
「へぇ、私が悪役令嬢ですか? ところで、それを言っている皆って誰なんですか? そこにいる殿下の側近達だけでしょう? それ以外にそんな事を仰っている方が本当にいらっしゃるならここに連れて来てくださいな。それから、お前みたいな婚約者を持って恥ずかしい? そのセリフ、そっくりそのまま殿下にお返し致しますわ。仮にも王太子ともあろうものが、公衆の面前で不貞を曝け出す。恥ずかしいとはお思いになられませんの!?」
「何だと!! 貴様! 言わせておけば!!」
エドガーは激昂し、そう叫ぶとツカツカとアルテミスちゃんの側まで来て大きく手を振りかぶった。
アルテミスちゃんが打たれる!!
ワシは即座にエドガーに拘束魔法を発動した。
「……っ! か…体が…体が動かない!!」
途端にエドガーが情けない叫び声を上げ、狼狽える。
ワシはゆっくりと前に歩み出て、娘の前に立ち塞がった。
「おなごに手を上げる様な愚かな者が王太子とは、この国はお先真っ暗だ。然もこの程度の拘束魔法すら自ら解けず叫び声を上げるなどと…。情け無いにも程がある!!」
ワシは指をパチンと鳴らした。エドガーの体の拘束が解け、奴は体のバランスを崩し床に手を突いてみっともなく倒れ込んだ。
「はぁー。この程度で倒れるとは…。普段の鍛錬が足りておらん証拠だ。其方、毎日何をやっているのだ? 見ればそこの令嬢とはただの仲ではあるまい? 毎日乳くりあっていたか?」
ワシは娘同様、呆れた様に盛大に溜息を吐いた。
「娘がその阿婆擦れ女に嫌がらせをした? ……それの何処が悪い? 木刀を持って追いかけ回わした? 人の物を勝手に盗む、手癖も頭も悪い泥棒猫を追い払おうとしただけではないか!!」
「……っ! 貴様、辺境伯! この私とララを愚弄する気か!」
エドガーは前に手を突いた不恰好な姿勢のまま顔だけをワシに向けて叫んだ。
ほう? このワシに喧嘩を売ると?
「黙れ、小童!!」
ならば……。売られた喧嘩はしっかりと買わせて貰おうではないか!
王立学園の卒業を祝う為に開かれる、毎年恒例の祝賀パーティー。
その日、辺境伯であるワシは、溺愛する娘の晴れ姿を1目見ようと久しぶりに王都に赴いた。だがそんなワシの目に映ったのは、目を疑うような光景だった。
なんと! ワシの可愛い愛娘、アルテミスちゃんが、王太子エドガーに婚約破棄を言い渡されているではないか! 然もエドガーは、ピンク頭のいかにも頭の悪そうな女を隣に侍らせながら…だ。2人の後ろには、彼らを取り囲む様に王太子の側近達が立ち、王太子とピンク頭と一緒になって婚約破棄されたワシの娘を嘲笑う。信じられない事にその中には、ワシの義息ランスルもいた。
此奴、いずれ王家へと嫁ぐアルテミスちゃんを守る様にと散々言い聞かせたと言うのに、何という体たらく。
王太子のこの愚行を止めようともせず、他の側近達と共に婚約破棄された義姉を見て嘲笑っているとは……。確かに王太子の側近に選ばれた事は聞いていた。だが、己の本分も弁えず此奴は一体何をやっているのだ。ワシはこの一瞬でランスルを見限った。
辺境伯家は武門の家。身内を見放す様な奴は、いずれ窮地に陥れば仲間も簡単に見放す。そんな奴に辺境伯家を継がせる事など出来ない。
それにしても…多勢に無勢。然も義弟までもが王太子の側に立っている。周りを取り囲む卒業生達やその親族達が見ている中で、たった1人でこの場に立ち王太子達と対峙する娘の気持ちを考えると、ワシは怒りに震えた。
本来なら泣き出しても可笑しくはないはず。だが、気丈な娘はそうではなかった。
「私の性根が腐っていると? 酷い侮辱ですが、そうおっしゃる理由をお聞きしても宜しいでしょうか?」
娘はエドガーにそう言ってはっきりと反論した。流石は我が娘。その姿は神々しい程に気高く美しい。
「しらばっくれるつもりか! お前はこのか弱いララに嫌がらせを繰り返し、果ては木刀を持って追いかけ回したそうではないか!? 可哀想に……こんなに怯えて……」
ところがエドガーは頭の悪そうな女……もとい、彼がララと呼んだ娘の腰に手を回し自分の方へ更に引き寄せると、慈しむ様に優しく頭を撫ぜた。まるで周りにいる全ての者達に2人の仲を見せつける様に……だ。
「エドガーさまぁ~。私、とっても怖かったんですぅ~」
それに応える様にララもエドガーの体に自分の胸をギュッと密着させた。如何わしい事この上ない。
しかも頭の悪そうな令嬢は喋り方まで馬鹿丸出しだ。
情け無い事に、エドガーはララのこの行動にすっかり骨抜きにされ、鼻の下を伸ばし嬉しそうに微笑む。
「大丈夫だよ、ララ。其方の事はこの私が必ず守ってやるから」とか何とか甘く囁きながら……。
ワシは一体何を見せられているのだろうか? こんな奴が王太子だなどとは世も末だ。
今日ここには、学園の卒業生達だけではなくその親族達も招待されている。
エドガーは当然、卒業生の1人アルテミスちゃんの父であるワシがこの場にいるであろう事も知った上で、この愚行を犯しているのだ。
そして何よりこれだけの衆人環視のもと、王太子自らが発した言葉は、もう2度と取り返しがつかない。
娘がエドガーの婚約者に選ばれてから早6年。
その間まだ幼かった娘はワシら家族と別れ、未来の国母となる為にこの王都で必死に努力して来た。寂しくても苦しくても頑張って厳しい王太子妃教育に耐えてきたのだ。それをこいつらは揃いも揃って、娘のその血の滲む様な努力を全て台無しにした。
この馬鹿王子! どうしてくれようか!!
ワシは拳を握り締めた。
その時だ。
「はぁ~あ。要するに殿下は、なんだかんだ理由をつけてこの私との婚約を破棄し、そのピンク頭の男爵令嬢と結婚したいだけでしょう? それならそうと男らしくはっきりと仰ったら良いではありませんか!!」
娘が呆れた様子で盛大に溜息を吐いた後、エドガーに向かってそう言い放った。
娘に馬鹿にされたと思ったのだろう。途端にエドガーは顔を真っ赤に染め、事もあろうに大声で娘を罵倒したのだ。
「何だ! その不遜な態度は!? 全く可愛げの無い女だな。そんな事だから皆から悪役令嬢だと陰口を叩かれるんだ。お前みたいな婚約者を持って、この私がどれだけ恥ずかしい思いをしているか分かっているのか!!」
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エドガーは激昂し、そう叫ぶとツカツカとアルテミスちゃんの側まで来て大きく手を振りかぶった。
アルテミスちゃんが打たれる!!
ワシは即座にエドガーに拘束魔法を発動した。
「……っ! か…体が…体が動かない!!」
途端にエドガーが情けない叫び声を上げ、狼狽える。
ワシはゆっくりと前に歩み出て、娘の前に立ち塞がった。
「おなごに手を上げる様な愚かな者が王太子とは、この国はお先真っ暗だ。然もこの程度の拘束魔法すら自ら解けず叫び声を上げるなどと…。情け無いにも程がある!!」
ワシは指をパチンと鳴らした。エドガーの体の拘束が解け、奴は体のバランスを崩し床に手を突いてみっともなく倒れ込んだ。
「はぁー。この程度で倒れるとは…。普段の鍛錬が足りておらん証拠だ。其方、毎日何をやっているのだ? 見ればそこの令嬢とはただの仲ではあるまい? 毎日乳くりあっていたか?」
ワシは娘同様、呆れた様に盛大に溜息を吐いた。
「娘がその阿婆擦れ女に嫌がらせをした? ……それの何処が悪い? 木刀を持って追いかけ回わした? 人の物を勝手に盗む、手癖も頭も悪い泥棒猫を追い払おうとしただけではないか!!」
「……っ! 貴様、辺境伯! この私とララを愚弄する気か!」
エドガーは前に手を突いた不恰好な姿勢のまま顔だけをワシに向けて叫んだ。
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