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「先程から黙って聞いておれば、よくも我が娘を散々愚弄してくれたな! 婚約破棄? 大いに結構。こちらとて結びたくて結んだ縁では無いわ! 其方の父……つまりこの国の王から是非にと請われ、頭を下げられた故、やむを得ず結んだもの。要らぬと言うならそれも良い。こちらから願い下げだ。そもそも我がグランベルク家のこの国における重要性すら分からぬ様な阿呆に、ワシとて可愛い愛娘をやりたくなどないわ!! そこのピンク頭の男爵令嬢と結婚したい? 頭の悪そうな者同士、お似合いではないか!」
ワシは目の前の小童に向かい、捲し立てる様にそう言って嘲笑ってやった。すると小童は目を吊り上げ何やら叫んた。
「阿呆だと!? 貴様、たかだか辺境伯の分際で王太子であるこの私に何と言う口の効き方だ!!」
はて? 今のワシの言葉の中で1番気になったのはそこか? 此奴、本物の阿呆だな……。
「ほう…。阿呆と呼ばれるのが気に食わぬか? ならば言い換えてやろう。阿婆擦れ女に誑かされ、物の本質すら見えぬこの大うつけが!!」
そしてワシは徐に隣にいるアルテミスちゃんに問い掛けた。
「のう娘よ。此奴、本当にこの国の王太子か?」
「ええ、お父様。残念だけど、この人がこの国の王太子エドガー殿下よ。それから……陛下は今、病に伏せっておられるわ……。だから今は彼が国王代理よ」
娘は痛ましそうに目を伏せ、首を横に振った。
「なんと……ダンケルが……」
娘の言葉にワシは言葉を失った。そんな話、ワシは聞いておらんぞ。ワシとダンケルの仲で考えられない事だった。恐らく誰かがワシの耳に入らぬ様、邪魔をしたに違いない。しかもこんな奴が国王代理とは……。
なる程、それ故この様な愚行を堂々と犯したのか……。
「それからお父様、ララ様は今はまだ男爵令嬢だけれど、私と殿下の婚約が無事に破棄されたら、宰相様の養女になられる事が決まっているらしいの……」
娘のその言葉でワシは合点がいった。
宰相はダンケルが病に倒れた事をこれ幸いにと、少々頭の弱い王太子を女を使って籠絡し、国を思いのままに動かす算段だな。ワシの頭の中にこの騒動のシナリオが出来上がった。
「分かったであろう? 父上が病に倒れた今、私がこの国で1番偉いのだ。それにお前の娘との婚約が破棄された今、ララは無事に宰相の養女となり、侯爵家の令嬢となるのだ。お前達より私達の方が身分は上だ。さぁ、辺境伯。私に跪き、先程の非礼を詫びよ! さすれば許してやらんでも無いぞ!!」
すると、やっとの事で床から立ち上がったエドガーが、勝ち誇ったかの様に歪な笑みを浮かべた。
ワシは即座に答える。
「要らん。其方に許して貰おうなどとは微塵も思っておらんわ。そもそもワシはお前の様な王に仕えるつもりは無い! お前の様な者に仕える位なら、ワシはこの国から独立するわ。そうだ! 丁度良い。グランベルク辺境伯家は本日この時を持ってこの国から独立し、新たな国としてワシが統治する!!」
「は?」
ワシの言葉に衝撃を受けたのか、エドガーは鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしてあんぐりと口を開いた。
「辺境伯、気でも可笑しくなられたか!? 独立などと、そんな勝手な事が許されるとでもお思いか!?」
そこに割って入って来たのは宰相だ。
「何故許されん? ダンケルは我が家の力が必要だから娘を此奴の嫁に欲しいと言った。だが、当の此奴はいらんと折角結んだ縁を断ち切りよった。ならば、此奴の治世に我がグランベルク家の力は必要ないと言う事だ。いらんと言うのなら結構。こちらとてこんな奴に跪いてまでこの国にいたいとは思わん。だから出て行く。それだけの事。それの何処が問題だ? なに、心配せずとも我が家は辺境伯家。その名の通り領地は国の東の果てにある。我が家が独立したところで国境線が僅かに西にズレる。王太子にとってはその程度の認識だろうよ」
ワシは宰相にそう言い放った。
「……許さん! そんな勝手、絶対に許さんぞ!!」
ワシのこの言葉に、宰相は怒りで体をワナワナと震えさせた。我が辺境伯家は東の砦。この国にとって隣国ルクソルを抑える為の防波堤の役割を担う。少なくともこの男には辺境伯家の重要性が分かっている様だ。
「宰相、何をそんなに怒っておる? 良いではないか? 辺境伯家はこの平和な世に軍備に金をかけ、領土に多数の鉱山を持ちながら全く税を納めぬこの国のお荷物。だからアルテミスと婚約は破棄しても何ら問題は無い…。父上も厄介払いが出来てむしろお喜びになる。そう申したのはお主ではないか?」
だが、この焦る宰相の様子を見てエドガーがそう不思議そうに声を上げた。
ワシは目の前の小童に向かい、捲し立てる様にそう言って嘲笑ってやった。すると小童は目を吊り上げ何やら叫んた。
「阿呆だと!? 貴様、たかだか辺境伯の分際で王太子であるこの私に何と言う口の効き方だ!!」
はて? 今のワシの言葉の中で1番気になったのはそこか? 此奴、本物の阿呆だな……。
「ほう…。阿呆と呼ばれるのが気に食わぬか? ならば言い換えてやろう。阿婆擦れ女に誑かされ、物の本質すら見えぬこの大うつけが!!」
そしてワシは徐に隣にいるアルテミスちゃんに問い掛けた。
「のう娘よ。此奴、本当にこの国の王太子か?」
「ええ、お父様。残念だけど、この人がこの国の王太子エドガー殿下よ。それから……陛下は今、病に伏せっておられるわ……。だから今は彼が国王代理よ」
娘は痛ましそうに目を伏せ、首を横に振った。
「なんと……ダンケルが……」
娘の言葉にワシは言葉を失った。そんな話、ワシは聞いておらんぞ。ワシとダンケルの仲で考えられない事だった。恐らく誰かがワシの耳に入らぬ様、邪魔をしたに違いない。しかもこんな奴が国王代理とは……。
なる程、それ故この様な愚行を堂々と犯したのか……。
「それからお父様、ララ様は今はまだ男爵令嬢だけれど、私と殿下の婚約が無事に破棄されたら、宰相様の養女になられる事が決まっているらしいの……」
娘のその言葉でワシは合点がいった。
宰相はダンケルが病に倒れた事をこれ幸いにと、少々頭の弱い王太子を女を使って籠絡し、国を思いのままに動かす算段だな。ワシの頭の中にこの騒動のシナリオが出来上がった。
「分かったであろう? 父上が病に倒れた今、私がこの国で1番偉いのだ。それにお前の娘との婚約が破棄された今、ララは無事に宰相の養女となり、侯爵家の令嬢となるのだ。お前達より私達の方が身分は上だ。さぁ、辺境伯。私に跪き、先程の非礼を詫びよ! さすれば許してやらんでも無いぞ!!」
すると、やっとの事で床から立ち上がったエドガーが、勝ち誇ったかの様に歪な笑みを浮かべた。
ワシは即座に答える。
「要らん。其方に許して貰おうなどとは微塵も思っておらんわ。そもそもワシはお前の様な王に仕えるつもりは無い! お前の様な者に仕える位なら、ワシはこの国から独立するわ。そうだ! 丁度良い。グランベルク辺境伯家は本日この時を持ってこの国から独立し、新たな国としてワシが統治する!!」
「は?」
ワシの言葉に衝撃を受けたのか、エドガーは鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしてあんぐりと口を開いた。
「辺境伯、気でも可笑しくなられたか!? 独立などと、そんな勝手な事が許されるとでもお思いか!?」
そこに割って入って来たのは宰相だ。
「何故許されん? ダンケルは我が家の力が必要だから娘を此奴の嫁に欲しいと言った。だが、当の此奴はいらんと折角結んだ縁を断ち切りよった。ならば、此奴の治世に我がグランベルク家の力は必要ないと言う事だ。いらんと言うのなら結構。こちらとてこんな奴に跪いてまでこの国にいたいとは思わん。だから出て行く。それだけの事。それの何処が問題だ? なに、心配せずとも我が家は辺境伯家。その名の通り領地は国の東の果てにある。我が家が独立したところで国境線が僅かに西にズレる。王太子にとってはその程度の認識だろうよ」
ワシは宰相にそう言い放った。
「……許さん! そんな勝手、絶対に許さんぞ!!」
ワシのこの言葉に、宰相は怒りで体をワナワナと震えさせた。我が辺境伯家は東の砦。この国にとって隣国ルクソルを抑える為の防波堤の役割を担う。少なくともこの男には辺境伯家の重要性が分かっている様だ。
「宰相、何をそんなに怒っておる? 良いではないか? 辺境伯家はこの平和な世に軍備に金をかけ、領土に多数の鉱山を持ちながら全く税を納めぬこの国のお荷物。だからアルテミスと婚約は破棄しても何ら問題は無い…。父上も厄介払いが出来てむしろお喜びになる。そう申したのはお主ではないか?」
だが、この焦る宰相の様子を見てエドガーがそう不思議そうに声を上げた。
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