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プロローグ3
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そしてついにアメリア処刑の日が来た。
王都の中央広場には一段高い櫓が組まれ、そこにはそびえ建つかのような断頭台が設えられた。
やがて太陽が天中をやや過ぎた頃、三角の白い頭巾を被った騎士たちに前後左右を守られた一台の粗末な荷馬車が王城からゆっくりと出て来た。その荷馬車には質素な白い綿のワンピースだけを纏ったアメリアが立たされていた。
その両手と素足には重い木の枷が付けられ、頭には宝玉で飾られたティアラの代わりに無数の鉄の棘が付いた冠が載せられた。
その姿は、王女とは程遠い、一人の罪人の姿だった。
しかし、その姿こそ罪人に落ちぶれてはいたが、しっかりと前方を見据え、背筋を伸ばし凛と立つ姿はいまだ『王女』の威厳を保っていた。
「『呪われた狂王女』!」
「クレサリスの恥!」
「悪魔の所業を行った虐殺者に死を!」
「その命でその罪を贖え!」
それを見守る無数の国民は誰もが口汚く、侮蔑の言葉を叫び、憎悪と共に無数の石礫を投げつけた。
しかし、罪人となったアメリアはその石礫の雨を避ける事もせず、じっと前方を見詰めたまま微動だにしなかった。その姿は、狂おしいまでに威風堂々としていた。当時はその姿がより民衆の怒りを買い、より多くの罵りの言葉と石礫がアメリアに浴びせられた。
アメリアが断頭台の傍らに到着した時には、投げつけられた無数の石礫の為、まるで頭から赤いシャワーを浴びたかのようになっていた。もともと白かった綿のワンピースも流れる血で赤く染め上がっていたと言う。それでもアメリアはしっかりとした足取りで荷馬車から自らの足で誰の助けも借りずに降り、断頭台に上がって行った。
アメリアが断頭台の上に立つと、中央広場を埋め尽くす民衆から一際大きな罵りの声が上がった。
「我が市民たちよ、静粛に!」
それを、少し離れた建物のバルコニーに立つマリアが制した。
ざわめいていた中央広場が水を打ったかの様に一瞬で静まり返った。
「クレサレス王国第一王女『マリア=ミシュト=クレサレス』の名において、
ここに『アメリア=ダレア=クレサリス』の死刑執行を宣言する。
最後の慈悲である。
『アメリア=ダレア=クレサリス』言い残す事があれば申し述べるが良い」
ピンと引き絞られた弓の弦を思わせる様な緊張感が覆いつくす中央広場を、マリアの迷いのない澄み切った良く通る声が響いた。
「私に残すべき言葉など何一つもない。
粛々と処刑を始めるが良い」
アメリアはただ一言、まるで自身がこの国の女王の様に凛としてそう言ったと伝えられる。
結局、王女はその後、それを最後に最後の一瞬まで何の言葉も発しなかった。しかし、その姿勢が彼女の意思を雄弁に物語っていた。
故に後の世に……
『アメリア王女は冤罪だった。
彼女は、彼女が女王となる事を恐れた者たちによって謀殺されたのだ』
……と言う噂が常に絶える事無く密かに流れる様になった。
その日、稀代の英雄クレサレス王国第一王女『アメリア=ダレア=クレサリス』は断頭台にて、その首を切り落とされ、その三十年余りの生涯を国の恥『大悪人』として終えた。
アメリアの首が落ちた瞬間、中央広場を埋め尽くす観衆から地響きの様な歓喜の声が上がった。そして、マリアは最後の最後まで、その光景を瞬き一つせずじっと見つめていたと言う。
切り落とされたアメリアの頭と体は王都の広場に腐り落ちるまで晒しものにされた挙句、灰になるまで焼かれ、最後は大海の真っただ中に撒いて捨てられた。
アメリアの蛮行で、一時は不利な停戦交渉が進むと思われが、マリアが実の姉を罪人として公開死刑に処した事で、逆に強い立場に立つことが出来た。結局、最後まで抵抗を重ねていた隣国もクレサレスと和議を結び、事実上の属国となった。
結局、アメリアはその死をもって、クレサレスにこの地域全体の統一支配をもたらした事になったのだ。
クレサレスは、アメリアがその首を落とされてから一年後、王の死去に伴い唯一無二の王位第一継承者となったマリアが女王に即位する事になった。しかしマリアは『女王』を名乗らず、『クレサレス帝国』の樹立を宣言し、自らが初代『皇帝』となる事を宣言した。
こうして栄光あるクレサレス帝国の歴史は、初代皇帝『マリア=ミシュト=クレサレス』が実の姉の首を斬り落とす事で始まったのだ。
王都の中央広場には一段高い櫓が組まれ、そこにはそびえ建つかのような断頭台が設えられた。
やがて太陽が天中をやや過ぎた頃、三角の白い頭巾を被った騎士たちに前後左右を守られた一台の粗末な荷馬車が王城からゆっくりと出て来た。その荷馬車には質素な白い綿のワンピースだけを纏ったアメリアが立たされていた。
その両手と素足には重い木の枷が付けられ、頭には宝玉で飾られたティアラの代わりに無数の鉄の棘が付いた冠が載せられた。
その姿は、王女とは程遠い、一人の罪人の姿だった。
しかし、その姿こそ罪人に落ちぶれてはいたが、しっかりと前方を見据え、背筋を伸ばし凛と立つ姿はいまだ『王女』の威厳を保っていた。
「『呪われた狂王女』!」
「クレサリスの恥!」
「悪魔の所業を行った虐殺者に死を!」
「その命でその罪を贖え!」
それを見守る無数の国民は誰もが口汚く、侮蔑の言葉を叫び、憎悪と共に無数の石礫を投げつけた。
しかし、罪人となったアメリアはその石礫の雨を避ける事もせず、じっと前方を見詰めたまま微動だにしなかった。その姿は、狂おしいまでに威風堂々としていた。当時はその姿がより民衆の怒りを買い、より多くの罵りの言葉と石礫がアメリアに浴びせられた。
アメリアが断頭台の傍らに到着した時には、投げつけられた無数の石礫の為、まるで頭から赤いシャワーを浴びたかのようになっていた。もともと白かった綿のワンピースも流れる血で赤く染め上がっていたと言う。それでもアメリアはしっかりとした足取りで荷馬車から自らの足で誰の助けも借りずに降り、断頭台に上がって行った。
アメリアが断頭台の上に立つと、中央広場を埋め尽くす民衆から一際大きな罵りの声が上がった。
「我が市民たちよ、静粛に!」
それを、少し離れた建物のバルコニーに立つマリアが制した。
ざわめいていた中央広場が水を打ったかの様に一瞬で静まり返った。
「クレサレス王国第一王女『マリア=ミシュト=クレサレス』の名において、
ここに『アメリア=ダレア=クレサリス』の死刑執行を宣言する。
最後の慈悲である。
『アメリア=ダレア=クレサリス』言い残す事があれば申し述べるが良い」
ピンと引き絞られた弓の弦を思わせる様な緊張感が覆いつくす中央広場を、マリアの迷いのない澄み切った良く通る声が響いた。
「私に残すべき言葉など何一つもない。
粛々と処刑を始めるが良い」
アメリアはただ一言、まるで自身がこの国の女王の様に凛としてそう言ったと伝えられる。
結局、王女はその後、それを最後に最後の一瞬まで何の言葉も発しなかった。しかし、その姿勢が彼女の意思を雄弁に物語っていた。
故に後の世に……
『アメリア王女は冤罪だった。
彼女は、彼女が女王となる事を恐れた者たちによって謀殺されたのだ』
……と言う噂が常に絶える事無く密かに流れる様になった。
その日、稀代の英雄クレサレス王国第一王女『アメリア=ダレア=クレサリス』は断頭台にて、その首を切り落とされ、その三十年余りの生涯を国の恥『大悪人』として終えた。
アメリアの首が落ちた瞬間、中央広場を埋め尽くす観衆から地響きの様な歓喜の声が上がった。そして、マリアは最後の最後まで、その光景を瞬き一つせずじっと見つめていたと言う。
切り落とされたアメリアの頭と体は王都の広場に腐り落ちるまで晒しものにされた挙句、灰になるまで焼かれ、最後は大海の真っただ中に撒いて捨てられた。
アメリアの蛮行で、一時は不利な停戦交渉が進むと思われが、マリアが実の姉を罪人として公開死刑に処した事で、逆に強い立場に立つことが出来た。結局、最後まで抵抗を重ねていた隣国もクレサレスと和議を結び、事実上の属国となった。
結局、アメリアはその死をもって、クレサレスにこの地域全体の統一支配をもたらした事になったのだ。
クレサレスは、アメリアがその首を落とされてから一年後、王の死去に伴い唯一無二の王位第一継承者となったマリアが女王に即位する事になった。しかしマリアは『女王』を名乗らず、『クレサレス帝国』の樹立を宣言し、自らが初代『皇帝』となる事を宣言した。
こうして栄光あるクレサレス帝国の歴史は、初代皇帝『マリア=ミシュト=クレサレス』が実の姉の首を斬り落とす事で始まったのだ。
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