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第9話
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「ふふふふっ……私、これでも、もう三十路を優に越えてますのよ。
いえ、正直言えば四十路の方が近いくらいです」
男の言葉にメイドは少し自嘲気味の笑いを浮かべてそう答えた。
「な、何と! それは信じられぬ事!」
メイドの言葉に言葉に男は思わず驚きの声を上げた。最初はその職務故、言葉遣いなどから大人びた感じから二十歳前後かとも思った。しかし、仮面で顔が隠され年齢が分かり辛い事はあったが、その仮面の下から覗く口元や恥じらう様子から、むしろ逆に十代後半かもしれないと思い始めていたところだったのだ。
「これも髪や瞳、それに肌同様に私達部族の特徴です。
極端な例では……
六十歳近い女性がこちらの男性から熱烈な求婚された例もあります。
なんでもその男性は二十歳半ばの方で自分より少しだけ年上と思われたとか。
せいぜい三十路程度と思ってので実際の歳を聞いて腰を抜かしたそうです」
そう言ってメイドはくすくすと笑った。
「いや、キルシュ殿にお会いするまではそんな話聞いても、
与太話として笑って信じる事はなかったでしょうが、
今は率直に信じてしまいますよ。
でもあなたがもしそこまでのお歳だったとしても、
私もその男と同じ様な事をしてしまいそうですよ」
男はそう言って自嘲気味に笑った。
ちょうどその時、執務室のドアをノックする音が聞こえた。
「旦那様、失礼いたします……」
ドアの向こうから聞こえた執事の声に男はすぐさま答えた。
「ヨーゼフか、入れ!」
その時、男の顔には何故かその声を待ちわびていたかの様な嬉しそうな表情が一瞬浮かんだ。
同時に執務室のドアが開き、黒服を着た執事が車輪付きのワゴンを押しながら部屋に入って来た。
「旦那様、淹れたてのお茶と焼きたてのお菓子をお持ちしました」
執事は、メイドと男が座るソファーの脇にワゴンを止めるとそう言って、男に深々と頭を下げた。そして、慣れた手つきでワゴンに乗ったティーセットや焼き菓子が山盛りになった大皿をテーブルの上へを移動させた。
「せっかくこちらまでご足労頂けたのですから、
もう少しだけ旅のお話などお茶でも飲みながら聞かせてください。
このお茶は特別に取り寄せたアックス山脈産のクラックスですし、
我が家の焼き菓子も決して帝都の物に負けぬ自信があります」
男はメイドを人懐っこい笑みを浮かべて見詰めながらそう言った。
「まあ、私の主もこの街でそれなりに楽しんでおられる頃合いでしょう。
慌てて帰っても、それはそれで野暮って物でしょうね。
ですので、お言葉に甘えさせていただきます」
メイドが仮面の下から見える口元に笑みを浮かべてそう答えると、男は嬉しそうな顔で自分のカップを手に取り一口美味しそうに啜った。それを見てメイドも、自分の前に置かれたティーカップを手に取り口を付けた。
「では、ごゆっくり……」
執事は二人がお茶を飲み、再び話を始めるのを確認すると、軽く一礼してそう言うとワゴンを押しながら執務室を出て行った。
確かの男が言う様にこのお茶も焼き菓子も、帝都の有名店に匹敵する程美味しい物だった。それにこの町長、その建物や服、調度品のセンスには少々癖はあるが、人懐っこく話し上手であった。
メイドは男に急かされるまま、今まで主と共に旅をして来た色々な地方の面白い話をした。男はそのどれも興味津々の様子でにこやかに時折、相槌を打ったり質問を返したりして聞いていた。
そして、しばらくした頃だった。
メイドは急に目の前の風景がぐにゃりと歪む様な不思議な感覚に襲われた。同時に体全体からするりと力が抜けてゆく様な嫌な感じがした。やがて、まるで建物全体がゆらゆら揺れる様な感覚になり、自身の上半身もふらふら揺れ始めるのが分かった。同時に、手に持ったティーカップがやたら重く感じた。それはすぐに鉛の塊の如き重さになり、とても片手で支えられなくなった。
いえ、正直言えば四十路の方が近いくらいです」
男の言葉にメイドは少し自嘲気味の笑いを浮かべてそう答えた。
「な、何と! それは信じられぬ事!」
メイドの言葉に言葉に男は思わず驚きの声を上げた。最初はその職務故、言葉遣いなどから大人びた感じから二十歳前後かとも思った。しかし、仮面で顔が隠され年齢が分かり辛い事はあったが、その仮面の下から覗く口元や恥じらう様子から、むしろ逆に十代後半かもしれないと思い始めていたところだったのだ。
「これも髪や瞳、それに肌同様に私達部族の特徴です。
極端な例では……
六十歳近い女性がこちらの男性から熱烈な求婚された例もあります。
なんでもその男性は二十歳半ばの方で自分より少しだけ年上と思われたとか。
せいぜい三十路程度と思ってので実際の歳を聞いて腰を抜かしたそうです」
そう言ってメイドはくすくすと笑った。
「いや、キルシュ殿にお会いするまではそんな話聞いても、
与太話として笑って信じる事はなかったでしょうが、
今は率直に信じてしまいますよ。
でもあなたがもしそこまでのお歳だったとしても、
私もその男と同じ様な事をしてしまいそうですよ」
男はそう言って自嘲気味に笑った。
ちょうどその時、執務室のドアをノックする音が聞こえた。
「旦那様、失礼いたします……」
ドアの向こうから聞こえた執事の声に男はすぐさま答えた。
「ヨーゼフか、入れ!」
その時、男の顔には何故かその声を待ちわびていたかの様な嬉しそうな表情が一瞬浮かんだ。
同時に執務室のドアが開き、黒服を着た執事が車輪付きのワゴンを押しながら部屋に入って来た。
「旦那様、淹れたてのお茶と焼きたてのお菓子をお持ちしました」
執事は、メイドと男が座るソファーの脇にワゴンを止めるとそう言って、男に深々と頭を下げた。そして、慣れた手つきでワゴンに乗ったティーセットや焼き菓子が山盛りになった大皿をテーブルの上へを移動させた。
「せっかくこちらまでご足労頂けたのですから、
もう少しだけ旅のお話などお茶でも飲みながら聞かせてください。
このお茶は特別に取り寄せたアックス山脈産のクラックスですし、
我が家の焼き菓子も決して帝都の物に負けぬ自信があります」
男はメイドを人懐っこい笑みを浮かべて見詰めながらそう言った。
「まあ、私の主もこの街でそれなりに楽しんでおられる頃合いでしょう。
慌てて帰っても、それはそれで野暮って物でしょうね。
ですので、お言葉に甘えさせていただきます」
メイドが仮面の下から見える口元に笑みを浮かべてそう答えると、男は嬉しそうな顔で自分のカップを手に取り一口美味しそうに啜った。それを見てメイドも、自分の前に置かれたティーカップを手に取り口を付けた。
「では、ごゆっくり……」
執事は二人がお茶を飲み、再び話を始めるのを確認すると、軽く一礼してそう言うとワゴンを押しながら執務室を出て行った。
確かの男が言う様にこのお茶も焼き菓子も、帝都の有名店に匹敵する程美味しい物だった。それにこの町長、その建物や服、調度品のセンスには少々癖はあるが、人懐っこく話し上手であった。
メイドは男に急かされるまま、今まで主と共に旅をして来た色々な地方の面白い話をした。男はそのどれも興味津々の様子でにこやかに時折、相槌を打ったり質問を返したりして聞いていた。
そして、しばらくした頃だった。
メイドは急に目の前の風景がぐにゃりと歪む様な不思議な感覚に襲われた。同時に体全体からするりと力が抜けてゆく様な嫌な感じがした。やがて、まるで建物全体がゆらゆら揺れる様な感覚になり、自身の上半身もふらふら揺れ始めるのが分かった。同時に、手に持ったティーカップがやたら重く感じた。それはすぐに鉛の塊の如き重さになり、とても片手で支えられなくなった。
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