漆黒の万能メイド

化野 雫

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第20話

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「そのまま見てろ。
 今度目を逸らせたら指だけじゃ済まんぞ」

 黒髪のメイドに町長は冷たく言い放った。黒髪のメイドはかつての主を悲し気な目で見たまま小さく頷いた。それを見て、町長はわざとゆっくりとしかも捻る様にしながら黒髪のメイドから指を引き抜いた。

「はああああっ……」

 町長の指が引き抜かれる瞬間、黒髪のメイドは鈍痛と異物感から解放された安ど感と、指がすり抜ける瞬間襲って来た経験した事のない快感が入り混じった感覚に思わず甘い声を漏らしてしまった。

「お前、こっちの方でも逝けそうだな。
 これは調教しがいがあるってものだ。
 筋金入りの変態メイドに仕上げてやるから覚悟しておけ」

 町長は黒髪のメイドの反応を見て愉快そうに笑った。しかし、黒髪のメイドは少しだけ悔し気な表情を浮かべただけだった。


 多少、顔や体に火傷の痕はあるが美人の上、非常に珍しい黒髪と黒い瞳を持つメイド。しかもこの黒髪のメイド『国家公認万能メイド』なのだ。そんなまるで夢の様な女が今、素っ裸で自分にその身と心のすべてを預ける様にしての膝に乗っている。そして、黒髪のメイドの元主人である若造は、目の前ですでに調教済みの他のメイドに股間の物を咥えれられ、その快楽に身もだえして嬌態を晒している。

 町長は今まさに、己の中に蛇の如く潜むサディズムが腹いっぱいになるのを感じ至福の時間を楽しんでいた。そして、これからまだしばらくはこの至福の時間が続くと信じて疑っていなかった。


「さて、私もそろそろ見てるだけではつまらなくなってきた」

 そう独り言のように呟くと町長は呟いた。

 そして、膝の上でその身を町長に預けながら、かつての主と見知らぬメイド姿の女との嬌態を悲し気な表情で見続ける黒髪のメイドに命じた。

「こっちも同じ様に楽しもうじゃないか」

 そう言いながら町長は黒髪のメイドを膝の上から下した。そしてその手で自らのズボンを下し、醜悪なその物を下着から引き出した。床に下ろされた黒髪のメイドは、町長の股間の物をちらりと見た後、何か問いたげに町長を見上げた。

「どうした、早く始めんか!」

 それを見た町長は一言、そう叱責する様に言い放っただけだった。すると黒髪のメイドは諦めた様な表情を浮かべ、ゆっくりと町長の股間に顔を近づけていった。長い黒髪を耳に掛ける仕草が町長には妙に艶めかしく感じられ股間の物はすぐに固くいきり立った。

 冷えた空気に包まれていたそれが生暖かく湿った感じに変わった。同時に何にも代えがたい快楽がそこから沸き起こって来るのを町長は感じた。この黒髪のメイドはこういう行為に常日頃慣れ親しんでいる。町長はそう確信していた。そして黒髪のメイドがこの行為にここまで長けているのは普段、あの若造にそうしてやっているからだと思うと町長は少なからず嫉妬を覚えた。しかしすぐに、今はこの黒髪のメイドが自分の物になっている事を確認し、深い満足感に浸り始めていた。

 町長はうっとり目を閉じ、股間から沸き起こるこの上なく甘美な快楽にその身を任せていった。


 その時だった。

 ぴたぴたと大理石の床を裸足で駆ける音が町長の耳に響いた。そしてそれは一直線に自分の方へと向かっていた。我に返り反射的に目を開けると……

 そこには、先ほどまであの若い商人の男の股間に顔を埋め、一心にそこにある物を口で奉仕していたはずの女が、短剣を両手で構えて一直線にこちらへ向かって駆けて来るのが見えた。

 大広間を真昼の様に照らす多くのロウソクの灯を反射して青白い刃がきらりと光った。

 一体、どこからあの女は短剣などを持ち出したんだ。あの女は裸にひん剥いて、体の奥まで隠せそうなところは全部、自分自身で何も隠してないのを確認したはずだ。町長は咄嗟にそう思った。

 そう思いながらも、すぐにその場から離れれば、相手は駆けているとはいえ何日も渡って嬲り者にされ弱っている女。十分に避ける事は出来た。しかし、今、自分の股間の大事な物は黒髪のメイドの口の中。しかも、かなり従順になったとは言え、まだ完全にその心を折ったとの手ごたえはまだなかった。ここで下手に動けば、この女、今までの屈辱を晴らすために、口の中にある物を噛み切る恐れを感じた。
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