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始まりの日
始まりの日6
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追いつかない頭の中を整理しながら、とりあえず、女王様がご所望するトンカツを作る事になった。女王様は、腹を満たさないと、これ以上言葉を発する気力もないらしい。
まあ、確かに、腹が減っている時は思考が回らない。ごもっともな事なので仕方ないな。
俺とイリアさんはターニャさんを残し、女王の間を後にし、調理場へ向かう事にした。そして。
「本当に申し訳ありませんでした!」
女王の間を出るなり、イリアさんは深々と頭を下げる。
ん~。頭を下げられてもな……。正直、いくら頭を整理していても、どうにかなるような問題ではないような気がする。どう考えても、俺は元の世界に戻る事は出来ないみたいだし。結局は、もう、俺が腹を決めるしかない。それだけの問題になっているような気がした。
「もういいですよ。考えてもどうにもならなそうな事ですし。その代わりにイリアさんでも答えれる事は答えて下さい。」
「はい。分かりました。」
そうだな。もうそれしか無い。こんな時、脳天気な自分で良かったと思う。そうと決まったなら、今は現状をより確認する必要がある。まず、簡単であろう、直ぐ答えられそうな質問をする。
「なぜ、おじさんに変装したのですか?」
「変装するなら、イケメンになりたいじゃないですか?あの立派なお腹。我々、エルフでは、どうやっても手に入れられないのですよ。」
「どういう事ですか?自堕落な生活してたり、食べ過ぎれば、その分、脂肪として蓄えられるでしょう?」
「エルフは人間と違って、いくら食べてもあまり体重や体型が変わる事がないのです。」
「それなら、なぜ、女王様はあんな……。」
言い終わらない俺より先にイリアさんが口を開く。
「女王様は特別なお方なのです。変わり映えのしない我々とは違い、体型も変わられる。それはとても尊い。長命であり、変わる事のほぼない我々にすれば、それはとても尊いのです。」
イリアさんの話を聞いて、俺は少し思いあたる事があった。
「もしかして、イリアさんが俺をこの世界に連れて来たのは?」
「昨日は大声で叫んでらっしゃいましたけど……ヤマト様が、お店でぼそぼそと、何時もおっしゃっていたので……。この世界ならば、カロリーや塩分など気になさらずに、料理が出来るのではないか?と思いまして……。」
一瞬、イリアさんは言葉を躊躇ったかのように見えたが、その理由を口にする。
そうだったのか……。これは俺自身が望んだ事でもあったのかもしれない……。
でも、肝心な事がある。
「トンカツなら、自分達で作ればいいじゃないですか?あるでしょ?似たような料理は??」
「いえ。この世界には、揚げ物がないのです。それどころか、この世界は食が乏しいのです。……そうですね。ヤマト様の世界で言いますと、共通している食材や食べ物……サラダやパン、ケーキは豊富にあるのです。もちろん、お米もあります。炊いて食べたりします。しかし、おかずという物があまりないのです。それに……調味料も私が知る限り、塩、コショウ、砂糖他には……。忘れてしまいましたが、それほど多くはありません。」
「揚げ物がない?!」
「はい。先ほども申しましたが、昨日、ヤマト様がお出ししてくれた、酢キャベツのようなサラダはよく食べるのです。しかし、揚げ物なんてありません。それどころか、お米以外、炊くとか煮込むという事もあまりやりません。……ターニャがヤマト様に出した焼き鳥を覚えてらっしゃいますか?」
「はい。鶏の串ですよね?」
「そうです。あの味付け、塩だけでしたよね?」
「確かに塩だけでしたね。それがどうしたのです?素材を生かす為に、あえて塩だけとか、シンプルな料理もあるでしょう?」
「いえ。シンプルとかそういう問題ではないのです。『アレ』しかないのです。お肉は塩をふって焼く。それだけです。お魚も塩ふって焼く。それだけなのです。」
「え?まさか、コショウすらかけないんですか??」
「はい。そういう事です。コショウはあるのに、それをしないのです。コショウを使うだけでも料理の幅は格段に広がるのに、なぜ、そうしないのか……サラダには普通に使うのですよ?使う意味も理由も分かっているのに、しないのです。私も、ヤマト様のお料理を食べるまでは疑問にすら思いませんでした。その事に何か意味があるのか分かりませんが、この世界は食に……鈍感過ぎるのです。そして、女王様は食に飢えているのです。」
信じられない。そんな世界があるのか?食を楽しむという事はしないのだろう?それだけ食材がいいのだろうか?そう言えば、あの鶏肉もかなり美味しかった。
「でも、あの鶏肉は美味しかったですよ。あの鶏肉は何て名前だったんですか?」
「コカトリスです。」
はい?コカトリス??
「コカトリス??」
「はい。コカトリスです。」
「あの……鶏と蛇を掛け合わせたような??」
「やはり、よくご存知ですね。ヤマト様。はい。その通りですよ。」
「まさか~。あれは、想像上の……空想上の生物ですよね?」
「居ますよ?この世界には普通に。養殖なんかは出来ませんが、ダンジョンや野生にも生息していますよ。」
え??まじ?あんな化け物が普通に生息してるの?じゃ、じゃあ。
「仮に外に出たら、いきなりコカトリスに襲われるという事はあるんですか?」
最早、この世界で生きて行く事しか出来ない俺としては、必要な知識だ。あんな物に遭遇してしまった日には命が幾つあっても足りないだろう。
そんな危険なはずのモンスターが居るのに、イリアさんは平然とこたえる。
「そうですね。街や村、結界の外に出れば襲われる危険性がありますね。」
……まじか。
まあ、確かに、腹が減っている時は思考が回らない。ごもっともな事なので仕方ないな。
俺とイリアさんはターニャさんを残し、女王の間を後にし、調理場へ向かう事にした。そして。
「本当に申し訳ありませんでした!」
女王の間を出るなり、イリアさんは深々と頭を下げる。
ん~。頭を下げられてもな……。正直、いくら頭を整理していても、どうにかなるような問題ではないような気がする。どう考えても、俺は元の世界に戻る事は出来ないみたいだし。結局は、もう、俺が腹を決めるしかない。それだけの問題になっているような気がした。
「もういいですよ。考えてもどうにもならなそうな事ですし。その代わりにイリアさんでも答えれる事は答えて下さい。」
「はい。分かりました。」
そうだな。もうそれしか無い。こんな時、脳天気な自分で良かったと思う。そうと決まったなら、今は現状をより確認する必要がある。まず、簡単であろう、直ぐ答えられそうな質問をする。
「なぜ、おじさんに変装したのですか?」
「変装するなら、イケメンになりたいじゃないですか?あの立派なお腹。我々、エルフでは、どうやっても手に入れられないのですよ。」
「どういう事ですか?自堕落な生活してたり、食べ過ぎれば、その分、脂肪として蓄えられるでしょう?」
「エルフは人間と違って、いくら食べてもあまり体重や体型が変わる事がないのです。」
「それなら、なぜ、女王様はあんな……。」
言い終わらない俺より先にイリアさんが口を開く。
「女王様は特別なお方なのです。変わり映えのしない我々とは違い、体型も変わられる。それはとても尊い。長命であり、変わる事のほぼない我々にすれば、それはとても尊いのです。」
イリアさんの話を聞いて、俺は少し思いあたる事があった。
「もしかして、イリアさんが俺をこの世界に連れて来たのは?」
「昨日は大声で叫んでらっしゃいましたけど……ヤマト様が、お店でぼそぼそと、何時もおっしゃっていたので……。この世界ならば、カロリーや塩分など気になさらずに、料理が出来るのではないか?と思いまして……。」
一瞬、イリアさんは言葉を躊躇ったかのように見えたが、その理由を口にする。
そうだったのか……。これは俺自身が望んだ事でもあったのかもしれない……。
でも、肝心な事がある。
「トンカツなら、自分達で作ればいいじゃないですか?あるでしょ?似たような料理は??」
「いえ。この世界には、揚げ物がないのです。それどころか、この世界は食が乏しいのです。……そうですね。ヤマト様の世界で言いますと、共通している食材や食べ物……サラダやパン、ケーキは豊富にあるのです。もちろん、お米もあります。炊いて食べたりします。しかし、おかずという物があまりないのです。それに……調味料も私が知る限り、塩、コショウ、砂糖他には……。忘れてしまいましたが、それほど多くはありません。」
「揚げ物がない?!」
「はい。先ほども申しましたが、昨日、ヤマト様がお出ししてくれた、酢キャベツのようなサラダはよく食べるのです。しかし、揚げ物なんてありません。それどころか、お米以外、炊くとか煮込むという事もあまりやりません。……ターニャがヤマト様に出した焼き鳥を覚えてらっしゃいますか?」
「はい。鶏の串ですよね?」
「そうです。あの味付け、塩だけでしたよね?」
「確かに塩だけでしたね。それがどうしたのです?素材を生かす為に、あえて塩だけとか、シンプルな料理もあるでしょう?」
「いえ。シンプルとかそういう問題ではないのです。『アレ』しかないのです。お肉は塩をふって焼く。それだけです。お魚も塩ふって焼く。それだけなのです。」
「え?まさか、コショウすらかけないんですか??」
「はい。そういう事です。コショウはあるのに、それをしないのです。コショウを使うだけでも料理の幅は格段に広がるのに、なぜ、そうしないのか……サラダには普通に使うのですよ?使う意味も理由も分かっているのに、しないのです。私も、ヤマト様のお料理を食べるまでは疑問にすら思いませんでした。その事に何か意味があるのか分かりませんが、この世界は食に……鈍感過ぎるのです。そして、女王様は食に飢えているのです。」
信じられない。そんな世界があるのか?食を楽しむという事はしないのだろう?それだけ食材がいいのだろうか?そう言えば、あの鶏肉もかなり美味しかった。
「でも、あの鶏肉は美味しかったですよ。あの鶏肉は何て名前だったんですか?」
「コカトリスです。」
はい?コカトリス??
「コカトリス??」
「はい。コカトリスです。」
「あの……鶏と蛇を掛け合わせたような??」
「やはり、よくご存知ですね。ヤマト様。はい。その通りですよ。」
「まさか~。あれは、想像上の……空想上の生物ですよね?」
「居ますよ?この世界には普通に。養殖なんかは出来ませんが、ダンジョンや野生にも生息していますよ。」
え??まじ?あんな化け物が普通に生息してるの?じゃ、じゃあ。
「仮に外に出たら、いきなりコカトリスに襲われるという事はあるんですか?」
最早、この世界で生きて行く事しか出来ない俺としては、必要な知識だ。あんな物に遭遇してしまった日には命が幾つあっても足りないだろう。
そんな危険なはずのモンスターが居るのに、イリアさんは平然とこたえる。
「そうですね。街や村、結界の外に出れば襲われる危険性がありますね。」
……まじか。
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