揚げ物、お好きですか?リメイク版

ツ~

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楽しい休日。だったはずなのに?!

楽しい休日。だったはずなのに?!6

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 「そうじゃな。決闘は、二週間後じゃ。場所はコーエンの洞窟、地下五階、主の間でよかろう。主さえ倒せば、しばらくは自由に使えるからな。ルールは簡単。刃物などは禁止、木刀や杖など木製の物を使用。どちらかが戦闘不能になるまでじゃ。もちろん、魔法やスキルの使用も許可しよう。不慮の事故で相手が死んでも構わぬ。良いな。」
 女王様はそう言い、スティングを連れて城へ戻った。
 決闘までの間、ララは俺達の元へ居る事も許可された。
 スティングが居なくなった後、ララは申し訳なさそうに言う。
 「……ごめんなさい。マスター。ご迷惑を掛けて、怪我までさせて……。」
 相変わらず表情は乏しいが、それでも、気持ちは伝わってくる。
 結局のところ、なぜ、ララがあの男に従うのかが、俺には分からなかった。
 元・勇者である、ララがスティングに勝てないはずがない。何か裏があるのだろうか?
 「こんな所で、何時までも立ち話をするのは、皆さんの邪魔になりますし、どこかへ移動しましょう。」
 ララと同じく、この場に残ったターニャさんの提案で、とりあえず、家に移動する事になった。

 小さなテーブルを中心に、狭い部屋に四人。何か空気が重いな。
 やっぱり、こういう時は甘いものでもあった方がいいかも。
 そうと決まれば、久しぶりにドーナツを作ろう。
 この世界はケーキもあるから、薄力粉なんかも、ちゃんとある。もちろん、ベーキングパウダーもだ。まあ、正確には名前が違ったりするが……。
 今から作るのは、俺が小さい頃、母さんから教えてもらって、初めて作った料理だ。言うなれば、我が家のドーナツ。
 薄力粉に片栗粉、ベーキングパウダー、砂糖に塩を入れて混ぜ、後はタマゴに牛乳を入れて、コネコネ。少し寝かせたら、大きめのスプーンに取って、油へドン!揚げあがったら、粉糖をまぶして出来上がり。バニラエッセンスもあれば良かったけど、生憎、まだ探していない。
 
 出来上がったドーナツを入れ立ての紅茶と一緒にテーブルの上に置く。神妙だった雰囲気は、ドーナツの良い匂いで、少し柔らかくなった気がした。
 「……良い香り。」
 まず、言葉を発したのは、ララだった。
 「そうですね。素朴な感じもしますけど。とても良い香りです。ふわふわとして美味しいですね。」 
  ターニャさんもどうやら、気に入ってくれたみたいだ。
 「……まずは、私の事から話さないといけない。」
 ララは一つドーナツを食べて話し始めた。
 「私の生まれた国は……バザルーナ王国。その小さな村。名前をカルム村と言う。」
 ん?王国??この世界って、他に国あるの?エルヘイム王国じゃないの?女王様が国王で??
 「あれ?この世界って女王様が治めるエルヘイムだけじゃないの?」
 「あ~。ヤマト様は、まだご存知無かったですね。この世界をエルヘイムと言います。まあ、ここは世界の中心、この世界の根本の国、エルヘイム女王国といいますが、この世界には、他にも、ララが言った、バザルーナ王国……。ちょっと説明し辛いですね。地図持って来ます。」
 イリアは立ち上がり、ごそごそと自分のタンスを漁る。
 スペースが無い分、机などは置けない。そのために、タンスに色々な物を仕舞ってあるのだ。
 「お待たせしました。」
 そう言い、いったん、ドーナツなどを退かして、地図を広げた。
 「この世界はエルヘイム女王国が中心になって、幾つかの国が存在します。西側にララの故郷、バザルーナ王国があります。」
 イリアはそう言い、地図を指差す。ララの故郷の国は、この国の隣りだった
 驚いた事に地図を見る限り、そこそこの国があった。こんなに国があったら、戦争とか起こるんじゃないか?
 「こんなに国があるなら、戦争は起きないのか?」
 「はい。それは大丈夫です。女王様がこの世界のトップであらせられますから。女王様を中心として、各国の国王、王族がいますし。全ての国の仲がよろしい訳ではありませんが、争いを起こすほどではありません。この世界は、エルフ同士が争うより、モンスターと戦う事が大変ですので。」
 でも、前にイリアは、ダンジョン以外のモンスターはそんなに好戦的ではないとか言ってなかったっけ?今は聞かない方が良いのかな?話がややこしくなるから。
 イリアの説明が終わるのを待っていたかのように、ララが話を再開する。
 「私の村は……とても貧しい村だった。モンスター用の結界も張れないような……腕利きの冒険者を雇えるような余裕もなかった。」
 この街だけ見れば、そんなに貧富の差は無いのかと思っていたけど、やっぱり、この世界にもあるんだな。
 「……そして、運命の日がやってきた。聖剣が、私の村にやってきて。それを、私が……抜いた。抜いてしまった。」
 聖剣って、巡回で街から街へ、村から村へって回っていくのかな?
 それに、ララは抜いた事を喜んではいないようだ。
 「なあ、聖剣って誰かが運んでくるの?そのお役目の人が居るって事?」
 「いえ。聖剣は、突如として、その場所に現れます。神託と共に。出現する時間もタイミングもわかりません。突如としてそこに現れます。」
 ターニャさんが俺の質問に答える。
 「そこから……私の運命も。村の運命も大きく変わった。私は、リヴァイアサンを討伐するために、全てを犠牲にした。……三歳だった私は、それこそ、寝る時間と食事の時間以外は全て、修行に励んだ。」
 予想通り、やはり、ララは全てを犠牲にするほど頑張ったんだ。それなら、ララ本人としては、抜いた事は喜べないのかな?
 でも、聖剣を抜いたんだ。村から勇者がでたなら、名誉な事で周りは喜んでくれたのじゃないのか?
 「……私が聖剣を抜いてしまったせいで、村は大変になった。……ただでさえ、貧しくて結界を張れないのに、モンスターが前より襲って来るようになったから。」
 え?聖剣を抜いたら、モンスターに襲われやすくなるの?
 「聖剣を抜いたからといって、良いことばかりではないのです。抜いた本人の身体的な強化や名誉、村や町の名誉は手には入りますが、ララが言うように、その町や村が襲われる事は当たり前になります。ましてや、ララの住んでいた村のように貧しいとなると、最悪です。結界も無く、用心棒の冒険者も居ない。魔法を使えるエルフだからと言って、狂暴化したモンスターを相手にするのは危険なのです。」
 「何で襲われやすくなるんだ?」
 「……それは、分かっているようで……分かってはいません。」
 俺はマヌケな顔をしていたのだろう。イリアが言葉を濁しながら答えてくれた。  
 
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