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魔王様、おじゃまします
魔王様、おじゃまします1
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スライムバーを発売してから数週間。
この世界の冬。もちろん、クリスマスなどはない。新年を祝う行事がある程度。平和な日常が続いていた。
そして、我が家の食卓にも秋の味覚の代表格、サツマイモが天ぷらと大学芋になって、食後のおやつとして、テーブルの上に山盛りに積んであった。
収穫したてより、熟成させたサツマイモの方が美味しい。芋類は確かそうだったはず。
土を洗わず、10~15℃の温度。適温は13℃だと聞いたことがある。湿度は85~90%。低温や乾燥に弱く、20℃を超えると発芽し始めるんだったか……。
それをふまえ、熟成にチャレンジしてみた。
箱に入れ新聞紙を被せ、冷暗所で約1ヶ月熟成させる。この時、魔原石をフル活用した。魔原石というのは本当に便利だ。
「本当に、サツマイモって美味しいですね。」
「……うん。芋がこんなに甘くて美味しいものだと知らなかった。」
「そうだな。ご飯とは別腹だ。」
イリア達はモリモリとサツマイモを平らげていく。エリのご飯とは『別腹』発言には正直驚くが……。
秋の味覚の代表格、サツマイモはこの世界にも、もちろんあった。居酒屋でポテトチップを教えた時に知ってはいたけど……。あの時のサツマイモは熟成していなかった。まさに穫りたて。味はイマイチだったのだ。
それに、正確にはサツマイモという名前ではなかったが。そこはサツマイモという事にした。しかも、今までは馬や家畜の餌になる事が多かったらしく、安価で手に入る。
昨日は焼き芋をあんなに平らげたのに、本当によく食べる。しかも、エルフは太らない。
「ヤマト様は、食べないんですか?」
イリアは大学芋を美味しそうに頬張りながら俺に聞いてくるが……流石に、その食べっぷりをみていると、こちらはお腹がいっぱいになる。
「ああ。ありがとう。俺の事は気にしなくていいから、じゃんじゃん食べてくれ。」
そうですか?と首を傾げながら、イリアは次々と大学芋を口に入れていく。
「主様。だいぶ寒くなったのに、スライムバーの売れ行きは落ちませんね。」
エリは大学芋を食べながらそう言う。この大学芋にはスライムを溶かした物を使っているからだろう。
スライムバーやスライム餅と言った黒蜜などを掛けたあんみつ系。販売を始めて数週間だが、相変わらずの売れ行き。暖かい部屋で食べるスライムバー。風呂上がりにスライムバー。寒い中、食べるスライムバーも好評だった。もちろん、からあげなどの商品の売れ行きも絶好調だけれど、
「デザートも出来た事だし、新店舗オープンまでにはまだまだ、新商品を考えたいよな。」
これから寒くなるしな。温まる新しいメニューを考えないといけないな……。
そんな事を考えていると、ドンドンとドアを叩く音がする。
ん?誰だ?こんな夜遅くに??
「は~い。」
俺はそう返事をし、ドアを開ける。
「ヤマトや。久しいな。元気にしておったか?」
ドアに入りきらないシルエット。そして、どこまで透き通っている声。女王様だ。
「こんばんは。女王様。お久しぶりです。」
女王様という言葉に、イリアとエリは反応する。
「「女王様、いらっしゃいませ。」」
二人は深々と頭を下げる。一方、ララはマイペースに「……女王様、こんばんは。」そう挨拶をした。
「皆、元気そうでなによりじゃ。」
そう言い、女王様は女王様らしからぬ仕草でクンクンと鼻を鳴らす。
「何か良い匂いがするのぉ?何の匂いじゃ??」
「サツマイモの天ぷらと大学芋です。お食べになられますか?」
俺の言葉に女王様は興味を示す。
「ほぉ。芋と言うから、あの馬などの家畜どもがよく食べる芋か。美味いのかえ?」
「はい。俺の居た世界では、秋の味覚の代表格ですよ。『熟成』させてありますから、甘味も旨味も格段に上がってます。焼いてもよし、蒸してもよし、揚げてもよしです。」
女王様の「食べる。」という言葉より早く、イリアは料理をエリは椅子を、ララはテーブルを持って外へ出た。
ちなみに、ウチはドアを一度、広くしたが元に戻している。
テーブルなんかはイリア達が用意してくれたし。俺は魔原石ヒーターを持って来た。
「おぬしら、用意が早いな。なら、言葉に甘えて、いただいてみるかのぉ。」
女王様は天ぷらを一口食べる。
「ぬお?!何じゃこのホクホクとしていて、甘いのぉ?!何を使ったのじゃ??芋がこんなにも甘いのか?!」
「いえいえ、普通のサツマイモですよ?」
「なんと……馬共の食らう物がこんなに美味かったとは……。して、こちらのは……。」
大学芋を食べて女王様の細い細い目は、カッ!!と音が出んばかりに見開かれる。
「な、なんたる美味!!なんたる美味よ!!甘い餡のからまった芋のなるたる美味よ!!そして、このゴマがまた良い!!」
「ふふふ。女王様。このサツマイモは『熟成』されているのです。収穫期の芋より、糖度が増し、食感も違うのですよ。」
イリアは俺が説明した事をもう一度、女王様に説明した。無い胸を張って、自慢気に。
サツマイモの天ぷらと大学芋はあっという間に無くなった。
「誠に美味であった。ヤマトよ。」
女王様は満足そうに食後のお茶を飲んでいる。
「喜んで頂けて光栄です。女王様。食後直ぐで申し訳ないのですが、俺に何かご用だったのでは?」
「おっ。そうであった。おぬし達に、ちと届け物を頼みたくてな。」
届け物?誰にだろう??
女王様はお付きの人に合図をおくる。
この世界の冬。もちろん、クリスマスなどはない。新年を祝う行事がある程度。平和な日常が続いていた。
そして、我が家の食卓にも秋の味覚の代表格、サツマイモが天ぷらと大学芋になって、食後のおやつとして、テーブルの上に山盛りに積んであった。
収穫したてより、熟成させたサツマイモの方が美味しい。芋類は確かそうだったはず。
土を洗わず、10~15℃の温度。適温は13℃だと聞いたことがある。湿度は85~90%。低温や乾燥に弱く、20℃を超えると発芽し始めるんだったか……。
それをふまえ、熟成にチャレンジしてみた。
箱に入れ新聞紙を被せ、冷暗所で約1ヶ月熟成させる。この時、魔原石をフル活用した。魔原石というのは本当に便利だ。
「本当に、サツマイモって美味しいですね。」
「……うん。芋がこんなに甘くて美味しいものだと知らなかった。」
「そうだな。ご飯とは別腹だ。」
イリア達はモリモリとサツマイモを平らげていく。エリのご飯とは『別腹』発言には正直驚くが……。
秋の味覚の代表格、サツマイモはこの世界にも、もちろんあった。居酒屋でポテトチップを教えた時に知ってはいたけど……。あの時のサツマイモは熟成していなかった。まさに穫りたて。味はイマイチだったのだ。
それに、正確にはサツマイモという名前ではなかったが。そこはサツマイモという事にした。しかも、今までは馬や家畜の餌になる事が多かったらしく、安価で手に入る。
昨日は焼き芋をあんなに平らげたのに、本当によく食べる。しかも、エルフは太らない。
「ヤマト様は、食べないんですか?」
イリアは大学芋を美味しそうに頬張りながら俺に聞いてくるが……流石に、その食べっぷりをみていると、こちらはお腹がいっぱいになる。
「ああ。ありがとう。俺の事は気にしなくていいから、じゃんじゃん食べてくれ。」
そうですか?と首を傾げながら、イリアは次々と大学芋を口に入れていく。
「主様。だいぶ寒くなったのに、スライムバーの売れ行きは落ちませんね。」
エリは大学芋を食べながらそう言う。この大学芋にはスライムを溶かした物を使っているからだろう。
スライムバーやスライム餅と言った黒蜜などを掛けたあんみつ系。販売を始めて数週間だが、相変わらずの売れ行き。暖かい部屋で食べるスライムバー。風呂上がりにスライムバー。寒い中、食べるスライムバーも好評だった。もちろん、からあげなどの商品の売れ行きも絶好調だけれど、
「デザートも出来た事だし、新店舗オープンまでにはまだまだ、新商品を考えたいよな。」
これから寒くなるしな。温まる新しいメニューを考えないといけないな……。
そんな事を考えていると、ドンドンとドアを叩く音がする。
ん?誰だ?こんな夜遅くに??
「は~い。」
俺はそう返事をし、ドアを開ける。
「ヤマトや。久しいな。元気にしておったか?」
ドアに入りきらないシルエット。そして、どこまで透き通っている声。女王様だ。
「こんばんは。女王様。お久しぶりです。」
女王様という言葉に、イリアとエリは反応する。
「「女王様、いらっしゃいませ。」」
二人は深々と頭を下げる。一方、ララはマイペースに「……女王様、こんばんは。」そう挨拶をした。
「皆、元気そうでなによりじゃ。」
そう言い、女王様は女王様らしからぬ仕草でクンクンと鼻を鳴らす。
「何か良い匂いがするのぉ?何の匂いじゃ??」
「サツマイモの天ぷらと大学芋です。お食べになられますか?」
俺の言葉に女王様は興味を示す。
「ほぉ。芋と言うから、あの馬などの家畜どもがよく食べる芋か。美味いのかえ?」
「はい。俺の居た世界では、秋の味覚の代表格ですよ。『熟成』させてありますから、甘味も旨味も格段に上がってます。焼いてもよし、蒸してもよし、揚げてもよしです。」
女王様の「食べる。」という言葉より早く、イリアは料理をエリは椅子を、ララはテーブルを持って外へ出た。
ちなみに、ウチはドアを一度、広くしたが元に戻している。
テーブルなんかはイリア達が用意してくれたし。俺は魔原石ヒーターを持って来た。
「おぬしら、用意が早いな。なら、言葉に甘えて、いただいてみるかのぉ。」
女王様は天ぷらを一口食べる。
「ぬお?!何じゃこのホクホクとしていて、甘いのぉ?!何を使ったのじゃ??芋がこんなにも甘いのか?!」
「いえいえ、普通のサツマイモですよ?」
「なんと……馬共の食らう物がこんなに美味かったとは……。して、こちらのは……。」
大学芋を食べて女王様の細い細い目は、カッ!!と音が出んばかりに見開かれる。
「な、なんたる美味!!なんたる美味よ!!甘い餡のからまった芋のなるたる美味よ!!そして、このゴマがまた良い!!」
「ふふふ。女王様。このサツマイモは『熟成』されているのです。収穫期の芋より、糖度が増し、食感も違うのですよ。」
イリアは俺が説明した事をもう一度、女王様に説明した。無い胸を張って、自慢気に。
サツマイモの天ぷらと大学芋はあっという間に無くなった。
「誠に美味であった。ヤマトよ。」
女王様は満足そうに食後のお茶を飲んでいる。
「喜んで頂けて光栄です。女王様。食後直ぐで申し訳ないのですが、俺に何かご用だったのでは?」
「おっ。そうであった。おぬし達に、ちと届け物を頼みたくてな。」
届け物?誰にだろう??
女王様はお付きの人に合図をおくる。
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