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伝えたかった事。伝えたい事。
伝えたかった事。伝えたい事。1
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「いやだ……。イヤだ……。嫌……だ……。嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ……嫌だ!!」
イリアには、どんなに叫んでも、どんなに涙を流しても、この状況が受け入れる事は出来なかった。
当たり前の事だろう。最愛の人を目の前で殺されたのだ。まるで、要らなくなったオモチャを壊すように簡単に。
それは、ララやエリにしても同じ事。
目の前で起こった事を、ただ見ているしかなかったのだから。ある意味、身動きの取れない、現実を目にしなかったターニャやアリシアは、幸せだったのかもしれない。イリアの絶叫を聞いただけなのだから。
……いや、絶叫が聞こえていたら何かを悟る事は出来たか……。
這いつくばったまま、ゼウスを睨み付け、イリアは唇を噛み締め考える。
正直、イリアは自分が分からなかった。
なぜ、こんな時、こんな状況なのに何かを考えられるのか?
幼い頃からそうだった。嫌に冷静になる時があるのだ。まるでもう一人、自分の中に自分が居るような感覚。そして、その自分が語り掛けてくる。
誰が……悪い?
自分か?
全力を出し切ったか?と聞かれれば、出し切ったとは言えない。明らかに余力はあった。それは、エリやララにも言える事だ。切り札を切っていないのだから……。このメンバーの中で全力を出したと言い切れるのは、アリシアくらいなものだろう。
戦う前から実力差がある事は分かっていた。
仮に全力を出し切ったからと言って勝てる相手でもなかった。
そもそも、神と言う存在がおかしいのだ。分かりきっていた。突破口を見つけようと必死だった。心理戦を吹きかけられる相手でもないのだ。
それでも、エルフという元来、生真面目な性格な種族の彼女達は、自分を責める。余力があったのだから尚更だ。
そして、イリアは当たり前に元凶であるゼウスに対する憎悪も膨らむ。
ヤマトをさらっただけに飽きたらず、ヤマトを手にかけたのだ。
ただでさえ、『神々の気まぐれ』や『イレギュラー』など、厄介事の主犯である神に対して嫌悪感しか持っていないイリアが怒りに飲まれるのは当たり前だった。
憎いの?
また、自分が問い掛ける。
ああ……当たり前だ。憎い以外に何がある?
憎い。憎い。憎い………。
マグマのように心の奥底から怒りの感情が、憎しみの感情が噴き出してくる。
幼い頃、ヤマトと出会い、ヤマトに恋をし、何時しか心のより所にしていた……心の中にあった確かなモノが壊れてしまったイリアは一つの真理にたどり着いた。
…………。
………。
……。
『この世界が憎い』
こんな糞みたいな世界は無くなってしまえばいい。
こんな理不尽しか無い世界なんて存在していても意味がない。
こんな世界……壊してしまえば……いい。
イリアの中で何かが弾けた。
「憎い!憎い!!憎い!!!憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い!!!!!!!」
イリアはまさに絶叫する。壊れたスピーカーのようにそのボリュームは調整出来ない。
その絶叫に呼応するかのように、イリアの動かなくなっていた手足に力が入る。
感情が高ぶり過ぎて、痛みが麻痺したのか、イリアの噛み締めた唇から血が流れ落ちる。
「熱い!熱い!!熱い!!!」
イリアは立ち上がった。そして、そう言いイリアは自分の顔を手で押さえる。
「イ……イリア……?」
さっきまで泣き続けていたエリは、ただならない様子のイリアに戸惑い声を掛ける。
「イリア……お嬢様……。」
意識が戻ったのか、ターニャはイリアに声を掛け、震える手で自分に回復魔法をかける。
上半身を起き上がらせるくらいに回復したターニャは戦況を確認し、今にも事切れそうなアリシアの元へ下半身を引きずりながら近寄る。そして、回復魔法をアリシアにかけた。
間一髪だっただろう。アリシアの呼吸は次第にしっかりし、安定する。傷もみるみる癒えていった。
「……ん……。」
そして、意識も回復する。
「良かった。アリシア……。」
ターニャはアリシアを抱きしめ、一命を取り留めた事に安堵する。
「……ここは?」
「ここは、まだ天界です。回復したばかりの、今のあなたに言うのは酷かと思いますが、動けますか?」
アリシアは自分の身体の感覚を確かめる。
「うん。大丈夫。動けるよ。」
「良かった。なら、ララとエリの回復をお願いしていいですか?」
「アリシアは?凄い脂汗だよ?それにボロボロだよ??」
ターニャの姿を見たアリシアはターニャを気遣う。
実際、動けない下半身を引きずりやって来たのだ、痛みがないはずがない。
それでも、ターニャは気丈に微笑み言う。
「……私は大丈夫です。もう少ししたら、マインドも回復します。そうしたら、回復魔法を自分でかけられますから。私より先にララとエリをお願いします。」
ターニャは、倒れたままのエリと動けずにいるララを視界にとらえた。
「……わかった。ありがとうね。ターニャ。」
アリシアはターニャに感謝を伝え、抱きしめた。そして、ララとエリの元へ向かう。
ゼウスの阻害もなく、難なく、エリの元にアリシアはたどり着いた。
「エリ、大丈夫?」
エリの顔は涙でと傷でグチョグチョだった。
アリシアには、なぜエリがこんなにも涙で頬を濡らしているか、その理由がまだ分かっていなかった。
「……ああ。オレは大丈夫だ。片手が動くくらいに回復魔法をかけてくれたら、後は自分で回復魔法をかけるから……。そうしたら、ララを早く回復させてやってくれ。どんな状態か分からないけど……イリアの様子がやべえ。」
エリの言葉にアリシアはイリアの方を見る。
イリアは両手で顔を押さえ、「熱い。」「憎い。」と呟きながら地団駄を踏んでいる状態だった。
誰がどう見ても異常な状態だ。
そして、何の妨害もしてこなかったゼウスへ視線を移す。
すると、ゼウスに胸を突かれたまま、人形のように動かなくなったヤマトの姿と、イリアに視線を奪われたゼウスの姿があった。
ヤマトの状態を見て、全てをアリシアは悟った。イリアの絶叫は意識の朦朧としていたアリシアには届いていなかったのだ。
アリシアもまた涙を流し、絶叫しそうになった。しかし、それを唇を噛んで堪えた。
泣きたい。叫びたい。でも、今、泣いてしまえば、叫んでしまえば、アリシアの中で全てが崩れ、ララに回復魔法すらかけられなくなる。おかしくなったイリアを助けられなくなる。
ターニャもそう感じていたのだろう。戦況を把握し、ヤマトがあんな状態になっているのを確認したにもかかわらず、取り乱す事もせず、感情を抑え込んだんだ。
泣きたかっただろう。叫びたかっただろう。
それでも、堪えたのだ。アリシアに今の現状を打破出来る可能性のある、ララとエリを託したのだ。ならば、自分はその想いに応えるだけだ。
まだ、今は泣けない!
ヤマトだって、今なら回復魔法をかければ間に合うかもしれない!
希望は捨てない!
一刻も早く、この状況を打破出来るかもしれない、エリに回復魔法を施し、ララの元へアリシアは駆け寄った。
イリアには、どんなに叫んでも、どんなに涙を流しても、この状況が受け入れる事は出来なかった。
当たり前の事だろう。最愛の人を目の前で殺されたのだ。まるで、要らなくなったオモチャを壊すように簡単に。
それは、ララやエリにしても同じ事。
目の前で起こった事を、ただ見ているしかなかったのだから。ある意味、身動きの取れない、現実を目にしなかったターニャやアリシアは、幸せだったのかもしれない。イリアの絶叫を聞いただけなのだから。
……いや、絶叫が聞こえていたら何かを悟る事は出来たか……。
這いつくばったまま、ゼウスを睨み付け、イリアは唇を噛み締め考える。
正直、イリアは自分が分からなかった。
なぜ、こんな時、こんな状況なのに何かを考えられるのか?
幼い頃からそうだった。嫌に冷静になる時があるのだ。まるでもう一人、自分の中に自分が居るような感覚。そして、その自分が語り掛けてくる。
誰が……悪い?
自分か?
全力を出し切ったか?と聞かれれば、出し切ったとは言えない。明らかに余力はあった。それは、エリやララにも言える事だ。切り札を切っていないのだから……。このメンバーの中で全力を出したと言い切れるのは、アリシアくらいなものだろう。
戦う前から実力差がある事は分かっていた。
仮に全力を出し切ったからと言って勝てる相手でもなかった。
そもそも、神と言う存在がおかしいのだ。分かりきっていた。突破口を見つけようと必死だった。心理戦を吹きかけられる相手でもないのだ。
それでも、エルフという元来、生真面目な性格な種族の彼女達は、自分を責める。余力があったのだから尚更だ。
そして、イリアは当たり前に元凶であるゼウスに対する憎悪も膨らむ。
ヤマトをさらっただけに飽きたらず、ヤマトを手にかけたのだ。
ただでさえ、『神々の気まぐれ』や『イレギュラー』など、厄介事の主犯である神に対して嫌悪感しか持っていないイリアが怒りに飲まれるのは当たり前だった。
憎いの?
また、自分が問い掛ける。
ああ……当たり前だ。憎い以外に何がある?
憎い。憎い。憎い………。
マグマのように心の奥底から怒りの感情が、憎しみの感情が噴き出してくる。
幼い頃、ヤマトと出会い、ヤマトに恋をし、何時しか心のより所にしていた……心の中にあった確かなモノが壊れてしまったイリアは一つの真理にたどり着いた。
…………。
………。
……。
『この世界が憎い』
こんな糞みたいな世界は無くなってしまえばいい。
こんな理不尽しか無い世界なんて存在していても意味がない。
こんな世界……壊してしまえば……いい。
イリアの中で何かが弾けた。
「憎い!憎い!!憎い!!!憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い!!!!!!!」
イリアはまさに絶叫する。壊れたスピーカーのようにそのボリュームは調整出来ない。
その絶叫に呼応するかのように、イリアの動かなくなっていた手足に力が入る。
感情が高ぶり過ぎて、痛みが麻痺したのか、イリアの噛み締めた唇から血が流れ落ちる。
「熱い!熱い!!熱い!!!」
イリアは立ち上がった。そして、そう言いイリアは自分の顔を手で押さえる。
「イ……イリア……?」
さっきまで泣き続けていたエリは、ただならない様子のイリアに戸惑い声を掛ける。
「イリア……お嬢様……。」
意識が戻ったのか、ターニャはイリアに声を掛け、震える手で自分に回復魔法をかける。
上半身を起き上がらせるくらいに回復したターニャは戦況を確認し、今にも事切れそうなアリシアの元へ下半身を引きずりながら近寄る。そして、回復魔法をアリシアにかけた。
間一髪だっただろう。アリシアの呼吸は次第にしっかりし、安定する。傷もみるみる癒えていった。
「……ん……。」
そして、意識も回復する。
「良かった。アリシア……。」
ターニャはアリシアを抱きしめ、一命を取り留めた事に安堵する。
「……ここは?」
「ここは、まだ天界です。回復したばかりの、今のあなたに言うのは酷かと思いますが、動けますか?」
アリシアは自分の身体の感覚を確かめる。
「うん。大丈夫。動けるよ。」
「良かった。なら、ララとエリの回復をお願いしていいですか?」
「アリシアは?凄い脂汗だよ?それにボロボロだよ??」
ターニャの姿を見たアリシアはターニャを気遣う。
実際、動けない下半身を引きずりやって来たのだ、痛みがないはずがない。
それでも、ターニャは気丈に微笑み言う。
「……私は大丈夫です。もう少ししたら、マインドも回復します。そうしたら、回復魔法を自分でかけられますから。私より先にララとエリをお願いします。」
ターニャは、倒れたままのエリと動けずにいるララを視界にとらえた。
「……わかった。ありがとうね。ターニャ。」
アリシアはターニャに感謝を伝え、抱きしめた。そして、ララとエリの元へ向かう。
ゼウスの阻害もなく、難なく、エリの元にアリシアはたどり着いた。
「エリ、大丈夫?」
エリの顔は涙でと傷でグチョグチョだった。
アリシアには、なぜエリがこんなにも涙で頬を濡らしているか、その理由がまだ分かっていなかった。
「……ああ。オレは大丈夫だ。片手が動くくらいに回復魔法をかけてくれたら、後は自分で回復魔法をかけるから……。そうしたら、ララを早く回復させてやってくれ。どんな状態か分からないけど……イリアの様子がやべえ。」
エリの言葉にアリシアはイリアの方を見る。
イリアは両手で顔を押さえ、「熱い。」「憎い。」と呟きながら地団駄を踏んでいる状態だった。
誰がどう見ても異常な状態だ。
そして、何の妨害もしてこなかったゼウスへ視線を移す。
すると、ゼウスに胸を突かれたまま、人形のように動かなくなったヤマトの姿と、イリアに視線を奪われたゼウスの姿があった。
ヤマトの状態を見て、全てをアリシアは悟った。イリアの絶叫は意識の朦朧としていたアリシアには届いていなかったのだ。
アリシアもまた涙を流し、絶叫しそうになった。しかし、それを唇を噛んで堪えた。
泣きたい。叫びたい。でも、今、泣いてしまえば、叫んでしまえば、アリシアの中で全てが崩れ、ララに回復魔法すらかけられなくなる。おかしくなったイリアを助けられなくなる。
ターニャもそう感じていたのだろう。戦況を把握し、ヤマトがあんな状態になっているのを確認したにもかかわらず、取り乱す事もせず、感情を抑え込んだんだ。
泣きたかっただろう。叫びたかっただろう。
それでも、堪えたのだ。アリシアに今の現状を打破出来る可能性のある、ララとエリを託したのだ。ならば、自分はその想いに応えるだけだ。
まだ、今は泣けない!
ヤマトだって、今なら回復魔法をかければ間に合うかもしれない!
希望は捨てない!
一刻も早く、この状況を打破出来るかもしれない、エリに回復魔法を施し、ララの元へアリシアは駆け寄った。
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