揚げ物、お好きですか?外伝 勇者ララノア物語

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クエスト 山神様討伐

クエスト 山神様討伐 6

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 「これはこれは、異端の最たる者。勇者様ではありませんか?」

 アルステンの目は、まさに獲物を見るような目だった。
 その目に不快感を覚えながら、ララはまたたずねる。

 「目的は……なに?子供達はどうしたの?……リースリッドの両親は??早く答えて……。きっと、あなた達とは……考え方が……違いすぎる。正義のあり方が違うから……私達と話していても……結論はきっと出ない。」
 「そうでございますね。あなた方とは、価値観も考え方も違いますからね。話し合っても無駄でございますね。ただ、ちょっとした余興のつもりでごさいました。……それでは、質問に答えましょう。子供達は殺しましたよ。可哀想な事に、異端に生まれてしまいましたから。仕方ないですよね。それと、リースリッドの両親も同じです。異端の子を逃がした罪で処刑しました。」

 アルステンの悪びれもせず、当たり前の事に言う姿に、ナルは怒り言葉を飛ばす。

 「リースちゃんの両親の事はそうじゃないかと思ってたけど!!あんた!!罪もない子供を殺しておいて、何にも思わないわけ!?」
 「それは思いますよ。しかし、異端に生まれただけでも罪なのです。罪は罰でしか償えません。それに、子供達は、ただ死んだのではありませんよ。」

 アルステンの言った言葉にララが反応する。

 「……ただ、死んだんじゃない……?」

 その言葉にアルステンは愉快そうに笑いながらこたえる。

 「ええ。そうでございます。勇者様。子供達は、ただ死んだわけではございません。我々の糧となったのです!」
 「……糧?」
 「ええ。そうでございます。糧でございます。勇者様は目的が何か?とおたずねになりましたが。それを今からお教え致します。」

 そう言い、アルステンが指をならすと、エルステンが大きなドアを開ける。すると、そこから熊に似た生き物が姿を現した。
 熊にしては、毛が見当たらない。色、形は熊なのだが、歩いて近付いてくる様子から柔らかいゼリー状の物体にも見える。

 「紹介致しましょう。この子の名前はグレゴール。」

 そう紹介された、熊に似た生き物はアルステンの隣に座り込んだ。それの頭をアルステンは撫でながらこたえた。

 「なに?それ??モンスター?それとも熊??見たことないんだけど?」

 ナルの言葉にアルステンはこたえる。

 「そうでございますね。元は熊だったと申し上げましょう。」
 「……元?」
 「そうでございます。元でございます。我々の目的。それは生体実験でございます。そして、この村は生体実験を行う為の施設です。もう、ご存知かと思いますが、表の村はダミーでございますよ。」
 「あんなの、誰が見てもダミーだって気がつくわよ。バカじゃないの?」
 「わたくしもそう思います。誰かのタレコミのせいで女王にこの村の存在がバレ、カモフラージュを弟に任せたら、この有り様でございますよ。」

 アルステンが溜め息混じりにそう言うと、エルステンは怯えたように謝っている。
 そのやりとりを見ると、二人の上下関係と腫れた頬の理由がハッキリと分かる。

 「そんな……事は、どうでも……いい。それより、生体実験……って……何?」
 「それはですね。新しいモンスターを己の手で生み出す事です。我々の同胞として。」
 「そんな事、出来る訳がないじゃない?モンスターを生み出す、仲間にするなんて。それが出来るのは神くらいなものよ。」
 「そうでございますね。簡単に言えば、我々は神になったのですよ。賢人様。今からお見せ致します。……グレゴール。そこに座り込んでいる男、二人を切り刻んで食べなさい。」
 
 グレゴールは猛スピードでララ達より少し離れ、生気を無くしていた男、二人に襲い掛かる。
 とっさのことにララ達は反応出来ず、生気を無くしていた男達も避ける事が出来なかった。
 熊の爪で引き裂かれる様に、無残に男達は切り刻まれ、それを食い尽くすようにグレゴールの体は飛散するように広がり切り刻んだ男達を呑み込んだ。その場には血の一滴も残っていない。まるでスライムが捕食するようだった。
 その状況にララ達は言葉を無くす。
 その光景をアルステンだけがほくそ笑んでいる。そして。

 「くふふふ。いかがでございましたか?勇者様。賢人様。これが生体実験の成果でございます。」
 「どういうことよ……あれは、何?新種の熊?新種のスライム?」
 「さて、何でございましょうね?くふふふ。先程、申しました通り、元・熊でございますよ。」

 アルステンは不気味に笑う。それにエルステンが口を開いた。

 「兄貴。もうそろそろ、その気味の悪い喋り方止めてくれねえか?隠せなくなってきてるし、鳥肌がおさまんねぇよ。」
 「そうか?エルステン。それはすまねえな。俺は、これでも気に入っていたんだがな。……まあ、いいや。もう、めんどくさくなっちまったよ。」

 そう言ったアルステンの表情は一変した。
 人を見下した笑みから更に口角は上がり、殺気を放った残忍なものに変わる。
 瞳からあたたかみは消え、氷の彫刻のような美しい冷たさを纏う。
 その瞳を見て、ララは思った。
 人を殺す事に躊躇などしないのだろう。
 人を欺く事に罪など感じないのだろう。
 己の信念だけに忠実に生きている。その事に誇りを持っている。
 瞳が美しいと思ってしまったのはそのせいだろう。誇りを持つ者の瞳は何色でも、ジュエルでなくても美しい。
 やはり、自分達とは考え方が違いすぎる。
 己の中にある正義が違いすぎる。
 もう、押し問答なんてしても意味がない。
 アルステンは自分達を逃がすつもりもないだろう。
 生体実験の施設なら、資料があるはず。
 アルステン達を速やかに倒し、その資料を手に入れ、この施設を破壊する必要がある。あの生物がどんな物かは、それで分かるはず。
 ララはそう思い、エクスカリバーに手をかけた。
 しかし、ナルはアルステンに問い掛ける。
 
 「あの生物はなによ!子供達は何の糧になったのよ!?答えなさい!!」 
 
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