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完成!新店舗!!
完成!新店舗!! 1
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夏の新緑は時より吹く風になびき、静かに葉音を奏で、その演奏に蝉が唄をつける。
緑も少なく、元の世界の都会の雑踏の中では、蝉の鳴き声を鬱陶しいと思ってたけど、環境が変われば、楽しむ事も出来るものだ。
少しクーラーも欲しい気がするけど、35℃を超える猛暑日なんてものはないし、ゲリラ豪雨のような激しい夕立もなく、自分の幼少期に降っていた夕立のような雨が降る。
そのおかげで、夜はそれなりに涼しくなり、夜に鳴く虫の声にも涼を感じる。風鈴があれば最高なんだろうが、この暑さを楽しむのも、おつなのかもしれないなぁ。
そんな事を思いながら、額の汗をタオルで拭い、俺は新しく仕入れた調理機材をせっせと拭く。
気がつけばあっという間に迎える、エルヘイムで過ごす二度目の夏は、目まぐるしくも、どこか余裕というものを、少し感じられる。
そして、今日はしばらく世話になったイリア宅から、新居に引っ越す日だ。
「ヤマト。この、お茶碗はどこに仕舞えばいいですか?」
「ああ。何時も使う食器だからな、取りやすい食器棚の右下に入れておいてくれ。」
「分かりました。ふふふ。お茶碗というのは何時見ても、不思議な形をしていますね。ボウルのようなのに、どこかあたたかみのある形です。そう言えば、前にニホンの文献で読んだ時、気になる事が書いてありましたね。ええと……私とヤマトのお茶碗を二つ横に並べれば……。確かこれで……夫婦茶碗です。ふふふ。夫婦だなんて、照れますね。ぐふ、ぐふふふ。ララ達の茶碗は少し離して置きましょう。ぐふふふ。」
ゼウス様の一件から幼少期の呼び方に戻ったイリアは、ブツブツと何か独り言を言いながら楽しそうに茶碗を並べては眺め、並べては眺めを繰り返し、ニヤケている。
……こええな。あいつ。何度もやる事じゃないし、笑い声と顔がやべぇ。よだれ垂れてるし……。
「……マスター。鍛冶屋から……新しい包丁セットが届いたよ。」
「おお!なら、シンクの包丁立てに綺麗になおしておいて。」
「ん……。ちゃんと綺麗になおす。……やっぱり、よく使う……順かな?……あっ、サイズもある……のかな?」
箱に入った包丁セットを嬉しそうに抱えてやってきたララは、包装を開け、微かに微笑んだように、包丁立てとにらめっこをし始めた。
……可愛いやつめ。そんなに、新しい包丁が嬉しいのか。
「おい!アリシア!!何勝手に主様の横の席を取ろうとしてやがんだ!昨日、くじ引きで今月の場所決まっただろうが!!」
「そうですよ。今月は、わ・た・く・し、アナスティアナ・フォン・ダイクンこと、ターニャがヤマト様の右隣です。何勝手にクッションを置こうとしているのですか?」
エリとターニャさんは、昨日決まった席順を無視しようとするアリシアに文句を言っているようだ。
「いいじゃんか~。ボクはヤマト君の部屋から一番遠い部屋になっちゃったんだから、これくらい。」
「これくらいって何だよ。ちゃんと公平、公正なくじ引きだっただろう?それに文句を付けるとは、どういう事だよ?!エルフの風上にもおけねえな!」
駄々をこねるアリシアに、エルフらしく、規律や約束事に厳しいエリは少しご立腹のようだ。
口調が少し荒くなってきている。
しかし、ターニャさんは、最初の一言を言って以来、それを止める気配はない。
最初の言葉を放った後、エリとアリシアの言い争いから興味が無くなったかのように、アリシアが置いたクッションを手で持ち上げ、不思議そうに眺めていた。
「アリシア、この両面に『イエス!』と『イエス!?』書いてあるハート型のクッションは何なのです?」
「あっ!?それ?それね~、『イエス!イエス!?クッション』。ボクが作ったんだ~。」
「『イエス!イエス!?クッション』?文字通りのクッションですね?これに何か意味でも?」
「ふっふっふ~ん。それは……ね?」
ターニャさんの話を聞いて、どうやら、エリも興味を持ったらしく、文句を言うのを止めてアリシアの言葉を待った。
「いつまで経ってもボク達に手を出さない、ヤマト君に、『今日、ボク、OKだよ?』ってサインを送るクッションなんだ。夜這いでも、誘われても、どっちもOKなの。エヘヘヘヘ。いいでしょ?」
アリシアはとんでもないことを口走る。
な、なんだ?YES、NO枕に似ているけど、それじゃ、断るという選択肢がないじゃないか?
「………それは素晴らしいクッションですね。奥手な淑女や、誘っていいタイミングの分からない殿方に売れるかもしれませんよ。」
「ああ……。そうだな。オレもそのクッション、欲しいぜ。でもよ、アリシア。それなら、普通……イエスかノーじゃないのかい?イエスとイエスじゃ、淑女じゃなくて、どちらかと言うと淫乱女って思われるんじゃないか?」
お!流石、エリ。まともな事を言う。
そりゃそうだ。『何時でも私、やれます!いけます!!準備万端!夜這いに来てください!!』『今夜、部屋に言っても良いですか?』って言っているようなものだ。淫乱だと思われても仕方がないだろう。
しかし、アリシアは違う意見をエリに言った。
「何言ってるのさ、エリ。『花の命は短し、恋せよ乙女。悠久の時、枯れし花は二度と咲かぬ。』ってことわざがあるじゃない?ボク達、エルフは長命だけど、子供は出来にくい。長い時間を一緒に過ごしていく中で倦怠期が訪れないって事は100%言えないでしょ?ボクとヤマト君の間じゃ、そんな事は無いとは思うんだけど……。それでも、後悔はしたくないじゃない??子供だって出来れば早く欲しいしさ。沢山欲しい。一度、体の絆が出来たら……今よりも、もっとヤマト君の事を身近に感じられるし。きっと、今までに見たことがない世界が広がっているんだと思うんだ。それに……やっぱり、イチャイチャしたいしさ。それも、ずっとイチャイチャしたい。気持ち悪がられても、イチャイチャしたいの。ことわざ通り、花は枯らしたくないんだ。奥手なヤマト君には、ボクの意思を示す必要があるじゃない?何もせずに、指だけ咥えていたら、何も出来やしないんだし。」
それを聞いたエリは、力強く頷いた。
そして、アリシアはエリの耳元で、
「それに、よく考えてよ。奥手のエリだって、これさえあれば、言葉を使わず、簡単にヤマト君を誘えるんだよ?」
エリはその言葉に、ゴクリと唾を飲み込む音が聞こえる。
おいおい。そんなにか??ってか、今、気がついたけど、俺の耳もかなり良くなったな。エルフの心臓を移植して貰って、この世界に住めているのだけれど、ラックスターの心臓が俺に馴染んできたって事だろうか?耳の良いエルフがどこまで聞き取れているかは分からないけど、エリの唾を飲み込む音が聞こえるくらいだから……。
自分の耳の良さに感心している俺を置いて、アリシアはエリに追い込みをかけた。
「今度、ヤマト君の隣の席譲ってくれるなら、エリにも作ってあげるよ?『イエス!イエス!?』クッション。……どうかな?」
「……本当かい?」
「もちろん。家族だしさ。みんなに幸せになって欲しいじゃん?」
「ああ。……ありがとう。アリシア。」
「良いって。良いって。」
どうやら、交渉は成立したようだ。
ニヤケたアリシアと何を想像しているのだろう?頬を赤くしたエリはがっちりと肩を組ながら、握手をしていた。
……なんか悪い交渉をしているようだな。
そして、その話を聞いていたのか、いつの間にかイリアとララもアリシアの元にいた。
「私もそのクッション欲しいですね。アリシア、私にも作ってくれませんか?対価は、私もヤマトの隣が当たった時、譲りましょう。」
「ん……。私もイリアと同じ条件で……欲しい……。」
アリシアの変なクッションを巡り、ターニャさんも参戦した。
「私もいいですか?アリシア。今月の席はアリシアに譲りますから。それと、出来ればイリアお嬢様用のもお願いします。色違いで。」
「毎度あり~!」
アリシアはホクホク顔だ。
しかし、ララの言葉で一変する。
「……ふと……思ったんだけど……もし、みんなでする時は……どうするの?」
その言葉に、みんなハッとした表情になった。
「そ、そうだな。ララの言うとおり……オレ達は、みんなで主様の嫁になったんだ。みんなでする時だってあるはずだ……その時は、どうするんだ?」
ララの指摘とそれに疑問をもったエリの一言で、一瞬にしてアリシアの旗色が悪くなる。
「そうですね。確かに……そうです。ヤマトは特別階級証を持っていますから、法でも認められていますし、私達も仲が良い。そのような場面に出くわす可能性は高いはずです。体調や色々な事をふまえて、全員ではなくとも、二人や三人で……と言う可能性もあります。もちろん、一人で。と言うのもあります。」
「ヤマト様の気分もありますからね。お疲れになっている時は皆を相手に……とはいかないでしょう。」
イリアとターニャさんも意見を述べる。
「えっと……ど、どうだろうね?体調が悪い時は、このクッションを使わないといいわけだし……。」
どうやら、アリシアは何も考えていなかったようだ。歯切れが悪い。
「誰がいいとか……それは……ヤマト君に決め……。」
そう言った途端、途中で言葉を止めた。
俺に選ばせよう。って意見だったんだろうが、状況を考えたのだろう。選ばれる事。選ばれない事。その時の状況を。
正直、一夫多妻や一妻多夫の悩み所だろう。貴族や俺みたいに特権階級証を持っているなら認められる権利だが、普通は一夫一妻なのだ。彼女達も純粋な貴族のターニャさん以外は一夫多妻制が当たり前でもない。一夫多妻の場合は、妻が増える度に妻同士の了承が必要だと言っていたが、誰が床を共にするか、それも了承が必要なのか?
それにしても……美女達がするとか言うと生々しいな……。
俺以外、みんな女だから、そこら辺の遠慮がないのか……。
もっと恥じらいというものを持ってもらわないと……こう、オブラートに包んでくれないと……おじさん、ちょっと、どういう顔をしていいのか困っちゃう。出来れば俺の居ない所でやって欲しいものだ。
それに、マーガレットも明後日からこちらに引っ越して来るし、来週には後二人、一緒に住む事になっている。
マーガレットとはそんな関係でもないし、後に来る二人は双子でまだ魔動学校高等部を今年、卒業したばかりだ。少しは自重してもらわないと……。
そうこう俺が考えていると、アリシアの悲鳴が聞こえた。『策士、策に溺れる。』まさにその通りだったようだ。
緑も少なく、元の世界の都会の雑踏の中では、蝉の鳴き声を鬱陶しいと思ってたけど、環境が変われば、楽しむ事も出来るものだ。
少しクーラーも欲しい気がするけど、35℃を超える猛暑日なんてものはないし、ゲリラ豪雨のような激しい夕立もなく、自分の幼少期に降っていた夕立のような雨が降る。
そのおかげで、夜はそれなりに涼しくなり、夜に鳴く虫の声にも涼を感じる。風鈴があれば最高なんだろうが、この暑さを楽しむのも、おつなのかもしれないなぁ。
そんな事を思いながら、額の汗をタオルで拭い、俺は新しく仕入れた調理機材をせっせと拭く。
気がつけばあっという間に迎える、エルヘイムで過ごす二度目の夏は、目まぐるしくも、どこか余裕というものを、少し感じられる。
そして、今日はしばらく世話になったイリア宅から、新居に引っ越す日だ。
「ヤマト。この、お茶碗はどこに仕舞えばいいですか?」
「ああ。何時も使う食器だからな、取りやすい食器棚の右下に入れておいてくれ。」
「分かりました。ふふふ。お茶碗というのは何時見ても、不思議な形をしていますね。ボウルのようなのに、どこかあたたかみのある形です。そう言えば、前にニホンの文献で読んだ時、気になる事が書いてありましたね。ええと……私とヤマトのお茶碗を二つ横に並べれば……。確かこれで……夫婦茶碗です。ふふふ。夫婦だなんて、照れますね。ぐふ、ぐふふふ。ララ達の茶碗は少し離して置きましょう。ぐふふふ。」
ゼウス様の一件から幼少期の呼び方に戻ったイリアは、ブツブツと何か独り言を言いながら楽しそうに茶碗を並べては眺め、並べては眺めを繰り返し、ニヤケている。
……こええな。あいつ。何度もやる事じゃないし、笑い声と顔がやべぇ。よだれ垂れてるし……。
「……マスター。鍛冶屋から……新しい包丁セットが届いたよ。」
「おお!なら、シンクの包丁立てに綺麗になおしておいて。」
「ん……。ちゃんと綺麗になおす。……やっぱり、よく使う……順かな?……あっ、サイズもある……のかな?」
箱に入った包丁セットを嬉しそうに抱えてやってきたララは、包装を開け、微かに微笑んだように、包丁立てとにらめっこをし始めた。
……可愛いやつめ。そんなに、新しい包丁が嬉しいのか。
「おい!アリシア!!何勝手に主様の横の席を取ろうとしてやがんだ!昨日、くじ引きで今月の場所決まっただろうが!!」
「そうですよ。今月は、わ・た・く・し、アナスティアナ・フォン・ダイクンこと、ターニャがヤマト様の右隣です。何勝手にクッションを置こうとしているのですか?」
エリとターニャさんは、昨日決まった席順を無視しようとするアリシアに文句を言っているようだ。
「いいじゃんか~。ボクはヤマト君の部屋から一番遠い部屋になっちゃったんだから、これくらい。」
「これくらいって何だよ。ちゃんと公平、公正なくじ引きだっただろう?それに文句を付けるとは、どういう事だよ?!エルフの風上にもおけねえな!」
駄々をこねるアリシアに、エルフらしく、規律や約束事に厳しいエリは少しご立腹のようだ。
口調が少し荒くなってきている。
しかし、ターニャさんは、最初の一言を言って以来、それを止める気配はない。
最初の言葉を放った後、エリとアリシアの言い争いから興味が無くなったかのように、アリシアが置いたクッションを手で持ち上げ、不思議そうに眺めていた。
「アリシア、この両面に『イエス!』と『イエス!?』書いてあるハート型のクッションは何なのです?」
「あっ!?それ?それね~、『イエス!イエス!?クッション』。ボクが作ったんだ~。」
「『イエス!イエス!?クッション』?文字通りのクッションですね?これに何か意味でも?」
「ふっふっふ~ん。それは……ね?」
ターニャさんの話を聞いて、どうやら、エリも興味を持ったらしく、文句を言うのを止めてアリシアの言葉を待った。
「いつまで経ってもボク達に手を出さない、ヤマト君に、『今日、ボク、OKだよ?』ってサインを送るクッションなんだ。夜這いでも、誘われても、どっちもOKなの。エヘヘヘヘ。いいでしょ?」
アリシアはとんでもないことを口走る。
な、なんだ?YES、NO枕に似ているけど、それじゃ、断るという選択肢がないじゃないか?
「………それは素晴らしいクッションですね。奥手な淑女や、誘っていいタイミングの分からない殿方に売れるかもしれませんよ。」
「ああ……。そうだな。オレもそのクッション、欲しいぜ。でもよ、アリシア。それなら、普通……イエスかノーじゃないのかい?イエスとイエスじゃ、淑女じゃなくて、どちらかと言うと淫乱女って思われるんじゃないか?」
お!流石、エリ。まともな事を言う。
そりゃそうだ。『何時でも私、やれます!いけます!!準備万端!夜這いに来てください!!』『今夜、部屋に言っても良いですか?』って言っているようなものだ。淫乱だと思われても仕方がないだろう。
しかし、アリシアは違う意見をエリに言った。
「何言ってるのさ、エリ。『花の命は短し、恋せよ乙女。悠久の時、枯れし花は二度と咲かぬ。』ってことわざがあるじゃない?ボク達、エルフは長命だけど、子供は出来にくい。長い時間を一緒に過ごしていく中で倦怠期が訪れないって事は100%言えないでしょ?ボクとヤマト君の間じゃ、そんな事は無いとは思うんだけど……。それでも、後悔はしたくないじゃない??子供だって出来れば早く欲しいしさ。沢山欲しい。一度、体の絆が出来たら……今よりも、もっとヤマト君の事を身近に感じられるし。きっと、今までに見たことがない世界が広がっているんだと思うんだ。それに……やっぱり、イチャイチャしたいしさ。それも、ずっとイチャイチャしたい。気持ち悪がられても、イチャイチャしたいの。ことわざ通り、花は枯らしたくないんだ。奥手なヤマト君には、ボクの意思を示す必要があるじゃない?何もせずに、指だけ咥えていたら、何も出来やしないんだし。」
それを聞いたエリは、力強く頷いた。
そして、アリシアはエリの耳元で、
「それに、よく考えてよ。奥手のエリだって、これさえあれば、言葉を使わず、簡単にヤマト君を誘えるんだよ?」
エリはその言葉に、ゴクリと唾を飲み込む音が聞こえる。
おいおい。そんなにか??ってか、今、気がついたけど、俺の耳もかなり良くなったな。エルフの心臓を移植して貰って、この世界に住めているのだけれど、ラックスターの心臓が俺に馴染んできたって事だろうか?耳の良いエルフがどこまで聞き取れているかは分からないけど、エリの唾を飲み込む音が聞こえるくらいだから……。
自分の耳の良さに感心している俺を置いて、アリシアはエリに追い込みをかけた。
「今度、ヤマト君の隣の席譲ってくれるなら、エリにも作ってあげるよ?『イエス!イエス!?』クッション。……どうかな?」
「……本当かい?」
「もちろん。家族だしさ。みんなに幸せになって欲しいじゃん?」
「ああ。……ありがとう。アリシア。」
「良いって。良いって。」
どうやら、交渉は成立したようだ。
ニヤケたアリシアと何を想像しているのだろう?頬を赤くしたエリはがっちりと肩を組ながら、握手をしていた。
……なんか悪い交渉をしているようだな。
そして、その話を聞いていたのか、いつの間にかイリアとララもアリシアの元にいた。
「私もそのクッション欲しいですね。アリシア、私にも作ってくれませんか?対価は、私もヤマトの隣が当たった時、譲りましょう。」
「ん……。私もイリアと同じ条件で……欲しい……。」
アリシアの変なクッションを巡り、ターニャさんも参戦した。
「私もいいですか?アリシア。今月の席はアリシアに譲りますから。それと、出来ればイリアお嬢様用のもお願いします。色違いで。」
「毎度あり~!」
アリシアはホクホク顔だ。
しかし、ララの言葉で一変する。
「……ふと……思ったんだけど……もし、みんなでする時は……どうするの?」
その言葉に、みんなハッとした表情になった。
「そ、そうだな。ララの言うとおり……オレ達は、みんなで主様の嫁になったんだ。みんなでする時だってあるはずだ……その時は、どうするんだ?」
ララの指摘とそれに疑問をもったエリの一言で、一瞬にしてアリシアの旗色が悪くなる。
「そうですね。確かに……そうです。ヤマトは特別階級証を持っていますから、法でも認められていますし、私達も仲が良い。そのような場面に出くわす可能性は高いはずです。体調や色々な事をふまえて、全員ではなくとも、二人や三人で……と言う可能性もあります。もちろん、一人で。と言うのもあります。」
「ヤマト様の気分もありますからね。お疲れになっている時は皆を相手に……とはいかないでしょう。」
イリアとターニャさんも意見を述べる。
「えっと……ど、どうだろうね?体調が悪い時は、このクッションを使わないといいわけだし……。」
どうやら、アリシアは何も考えていなかったようだ。歯切れが悪い。
「誰がいいとか……それは……ヤマト君に決め……。」
そう言った途端、途中で言葉を止めた。
俺に選ばせよう。って意見だったんだろうが、状況を考えたのだろう。選ばれる事。選ばれない事。その時の状況を。
正直、一夫多妻や一妻多夫の悩み所だろう。貴族や俺みたいに特権階級証を持っているなら認められる権利だが、普通は一夫一妻なのだ。彼女達も純粋な貴族のターニャさん以外は一夫多妻制が当たり前でもない。一夫多妻の場合は、妻が増える度に妻同士の了承が必要だと言っていたが、誰が床を共にするか、それも了承が必要なのか?
それにしても……美女達がするとか言うと生々しいな……。
俺以外、みんな女だから、そこら辺の遠慮がないのか……。
もっと恥じらいというものを持ってもらわないと……こう、オブラートに包んでくれないと……おじさん、ちょっと、どういう顔をしていいのか困っちゃう。出来れば俺の居ない所でやって欲しいものだ。
それに、マーガレットも明後日からこちらに引っ越して来るし、来週には後二人、一緒に住む事になっている。
マーガレットとはそんな関係でもないし、後に来る二人は双子でまだ魔動学校高等部を今年、卒業したばかりだ。少しは自重してもらわないと……。
そうこう俺が考えていると、アリシアの悲鳴が聞こえた。『策士、策に溺れる。』まさにその通りだったようだ。
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